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メッセージ

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 目を開けたくない。だるい、身体を動かしたくない。

 記憶にある、俺の最後いた場所は更衣室だった。

 床にダイブしたと思うからか頬が痛い。鈍い痛みじゃなく、鋭い痛みが走る。
 これ、頬が痛いんじゃなくて、口内を切っているのか? 口内の右頬を舌で撫でると、ピリッと痛みが全身に広がる。

 ここは床じゃないと最初から分かっていた。現状の俺はうつ伏せじゃないし、身体は仰向けで、床がベッドのようにフカフカだ。

 俺が普段使っている更衣室の床はこんなにフカフカじゃない。


「やっと起きたようだね」

 安心するような声音の女の人の声がする。俺は目も開けていないのに、俺が起きているのを看破している。

 そう、ルイコ先生の声がする。

 すぐに目を開け、上半身を起こす。周りを見渡すとカーテンで締め切られている。ここは病院か? ルイコ先生がいるということは病院か。

「あ、無理しなくていいよ」

「そう言う訳にはいきません」

「そう?」

 ルイコ先生の顔を見ると、目元にうっすらとクマが出来ていた。

「私が更衣室から君をここまで運んだんだ」

 感謝してよ。と付け加えるとピンッとデコにしならせた中指を当てられた。デコピンと言う奴だ。デコは少しも痛くないが、少し涙ぐんでるルイコ先生には、悪いことをしたなと思ってしまった。

「私のメッセージを無視した君が悪いけど、幹部クラスの怪人を倒すなんて驚きしかなかった」

「ルイコ先生はなんで俺が倒したって確信しているんですか?」

「ん? あの左手に掴んでた悪の力は倒したって事で良いんだよね?」

 そうか、俺が気絶した後にルイコ先生は更衣室に来てくれたんだ。あの莫大な悪の力を見たら俺が倒したという見解に至るか。

「あっ! はいそうです」

「ミロフシ町の結界が無くなった時に、問題を起こした怪人が倒されてるという報告を受けてね。更衣室に急いで駆け付けた私を褒めて欲しい」

 俺はルイコ先生に助けてもらうばっかりだ。ルイコ先生が急いで来てくれなかったら、更衣室を使うバイト連中に見つかって、ややこしい事になってたような気がする。

 ルイコ先生にペコりと頭を下げて、「ありがとうございます」と感謝の言葉を言った。

「あの、悪の力は?」

「自分に取り込む予定だった? ごめんなさい、もう正義の力に反転させているわ」

「自分に取り込む予定はありません、正義の力に変えてもらったのなら大丈夫です」

 悪の力を見たと言うルイコ先生。そうだよな、悪の力をどこにありますかと聞く方がどうかしている。

「君が寝続けて二日。やっと私も寝られる」

「寝てないんですか?」

「君が心配で……って言えるなら可愛らしいんだけど、幹部クラスの悪の力を反転するのに二日もかかっただけよ、気にしないで」

 ルイコ先生は気にしないでと言う。

「でも……」

「ん、気にしないで」

 ルイコ先生は相槌を打って、俺の言葉を遮ると、再度『気にしないで』と言う。

 全部が俺の為だ。二日間眠っていた俺には受け入れるしかないことだ。俺が何を言っても過去が変わるわけじゃない。

 俺の重りにならないようにルイコ先生は気にするなと言ったんだ。

 俺は再度頭を下げる。

「ありがとうございます」

「ん、よく出来ました。ここのベッド、一日は使ってもいいわよ。まぁでもすぐに帰りたかったら、好きにして」

 顔を上げると、ルイコ先生は欠伸をしながら立ち上がり、閉まっていたカーテンを開ける。

「ルイコ先生、俺に出来ることならなんでも、なんでも言ってくださいね!」

「私は君の活動に感謝している一人だよ。それで十分」

 ルイコ先生は「じゃあね」と言いながらカーテンを閉める。そしてすぐにスライドの扉の開閉音が聞こえた。


 活動? 無所属の怪人が事件を起こすのを未然に止めているからか? その情報もルイコ先生なんだけどな。

 本当にルイコ先生には頭が上がらない。

 早速ダルい身体でベッドから起き上がり、病院のローブのような服を畳んでベッドに置く。そしてベッドの横にあった机の上から、綺麗に畳まれた制服を取って着替える。

 制服はクリーニングに出してくれたのだろうか? 凄く清潔で綺麗だ。土まみれでクリーニングに出そうとしてたから助かった。


 着替え終わて机に置いてあった俺のスマホを取り、電源を入れる。

「夜の七時か」

 電源を入れて最初に表示されたのが時間と、スマホの着信は五十六件あった。俺は一人暮らしだし、そんなに心配されるほどに友達も居ない。

 スマホのロックを解除して、着信の欄を見る。

「なんで、愛華?」

 着信は殆どが桜川愛華だった。八件は後輩の岡村で、五件は怪人の先輩。

 岡村は無視してもいい。そして怪人の先輩はどうせ飲みの誘いだろうし折り返さなくていい。

 俺は桜川愛華の名前を指でクリックして、スマホを耳に当てた。

「もしもし」

 すぐにプー、ピポパと電子音が聞こえて、1コールも鳴らずに、「もしもし」と綺麗な声が耳元で聞こえた。

 俺は喉をゴクリと鳴らす。

「愛華、少し会えないか?」

「嫌よ」

 そして、拒絶と共にブツ、プーと電子音が聞こえた。


「それもそうか」

 愛華との会話が終わり、「腹減ってねぇか?」と岡村にメッセージを飛ばして、スマホをポケットに入れる。

 俺は転移石を使って、更衣室に転移した。





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