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嫉妬のち肉体で丸め込まれる奥様

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 天は二物を与えずという言葉は百合本秀一にはあてはまらない。



 神は、秀一に何物も与えた。



 整っているが中性的とは違う、男らしさや野性的な魅力も失っていない容姿、日本人にしては高めの百八十センチという身長、優秀な頭脳やビジネスセンス、裕福な家庭に生まれた育ちの良さ。



 もし彼に足りないものがあるとすれば、それは自分以上に愛し、大事にできる存在だったろう。だがそれも今では彼の傍にいてくれる。



 秀一は妻の瑛里を愛していた。この言い方では足りない。言い直そう。溺愛していた。



 文字どおり彼女を自分の愛に溺れさせ、他の人間など視界に入らないようにしたいと思ってしまうほどに。



 そんな秀一に対し、瑛里も惜しみない愛を返してくれる。夫婦はお互いのことを深く求め合っていた。



 だから夫婦仲はとてもいい。一般的には理想の夫婦なはず。だが時として秀一の強すぎる愛情が夫婦感に摩擦を生むこともある。



 たとえば今日、瑛里は帰宅途中でマンションの同フロアに住む男性とエントランスで行き合い、エレベーターを待つ間に言葉を交わした。彼女からしてみれば隣人とのたわいないコミュニケーションである。ご近所付き合い。向こうだってそれ以上の狙いはない。



 だのに後からエレベーター待ちに加わった秀一は、妻が他の男と楽しそうに話し、笑顔を振りまく様子が面白くなかった。つい彼女の身体を抱き寄せ、彼女は渡さないぞと牽制してしまう。



 秀一は物事を合理的に考える理性の人である。普段の彼なら瑛里にも隣人にも他意がないことくらい分かる。馬鹿らしい妄想や取り越し苦労。



 それでも妻のこととなれば不安になる。瑛里は魅力的な女なのだ。短時間でも話をして、笑顔を向けられたら、勘違いしない男などいるだろうか?



 妻は美人なのに飾ることなく接してくる性格であり、仕事への誇りもあり勤勉だし、明るく快活だし、これといった弱点がない。こうやって美点を挙げると本当に欠点が見当たらない完璧な女性なのだ。



 瑛里を狙う者は数多く存在するだろう。彼女の魅力に取りつかれた人間には、左手薬指に輝く指輪も抑止力にならない。



「あの態度は少し失礼だったんじゃないかしら」



 玄関のドアを閉めると、瑛里が隣人への振る舞いについて苦言を呈した。エレベーターの中でも秀一は彼女を抱き寄せ、ぴったりと身体をくっつけて僕たちは仲良し夫婦です、他人が入り込む隙間などありませんアピールに余念がなかった。



「……別にいいじゃないか」



「良くないわよ。私に近づく男の人みんなに嫉妬するつもり?」



「僕は君を大切にしたいんだ」



「もう十分すぎるほど大切にされているわ。それに私はあなたの妻でしょ? 他の男性に靡くわけないじゃない」



 信用されてないようで嫌だわ、と瑛里は呟く。



 瑛里とて本気で怒っている訳ではない。彼の行動が子供じみた独占欲から来るものであることや、彼がそうした感情を向ける対象が自分だけなことを理解していた。



 そんな彼を愛おしいとも想う。しかし、周りの人間を無闇に牽制するような嫉妬の仕方は、今後のためにもならない。ちゃんと注意しておかなくては。



 瑛里の機嫌を取るように、秀一の腕が背後から回された。ぎゅっと抱きしめられる心地好さに、つい頬が緩む。彼は瑛里の首筋へ鼻先を埋めながら囁いた。



「君は僕のものだ。誰にも渡さない」



「そうやって誤魔化すんだから。いつもそう。今日は謝るまで許さないわよ」



「瑛里が魅力的だから悪い虫がつくんじゃないか心配なんだ。ただでさえ君は社交的で誰とも打ち解けられるし、優しくされた男は勘違いするものだから」



 秀一は瑛里の肩口に顔を埋める。そのまま唇を押し当て、強く吸い上げた。



「あっ……」



 びくん、と瑛里の腰が小さく跳ねる。彼女は首を傾け、秀一の口づけを受けた場所を鏡越しに見た。白い肌には赤い鬱血痕がくっきり刻まれている。所有印のようなキスマーク。自分のものという証。



 秀一は瑛里の背中に密着し、右手を前に回す。ブラウスの上を滑らせて胸に触れた。ゆっくり乳房を揉みしだいていく。同時に瑛里のうなじに舌を這わせ、耳元に息を吹きかけた。



「んぅっ」



 彼女が身を捩らせる。秀一は瑛里に寄り添い、後ろからしっかりと身体を絡め取った。



「はぁ、あ……」



 瑛里の声に熱がこもり始める。秀一は彼女の下腹部へと手を伸ばした。スカートの中、ストッキング越しに股間を撫で上げる。すでにそこは湿り気を帯びていた。



「こんなに濡らしているなんて、いけない子だな。まだ服を脱いでいないのに。どうしてそんなに興奮してしまったんだろう」



 秀一は瑛里の耳に唇を寄せ、甘く囁きかける。



「あなたのせいじゃない」



 秀一の溺愛ぶりは当然ベッドの上でも発揮される。彼と交際してから瑛里は何度啼かされたか分からない。自分が気持ち良くなるより、瑛里が僕で気持ち良くなってくれる姿を見るほうが万倍も嬉しいと話す夫は、彼女を何度も絶頂させ、精根尽き果てさせた。それでいてなお瑛里を求め続ける。底なしの体力である。



 そんな夫に毎晩開発された瑛里の身体は、軽い触れ合いだけで期待してしまうようになっていた。



 だが今日は駄目だ。まだ怒ってる最中なのだから。瑛里は秀一の手を掴み、そろりと離させる。



「だめ。今はそういう気分じゃ……きゃあっ!?」



 振り向くと、秀一が瑛里を横向きに抱え上げた。そのまま寝室まで連れて行かれる。



「ちょっと!  降ろして!」



「暴れないでくれ。落としたりしたら危ないだろう。万が一にも僕が瑛里に怪我をさせるような真似するはずないけどね」



 瑛里をベッドの上に寝かせると、秀一は自分のネクタイを外した。さり気ない日常の動作も彼がやると匂い立つような色香を放つ。



 秀一の手が後頭部に回される。優しくだが力強く引きつけられた。押しつけられた彼の唇。すっかり覚えてしまった夫の感触を楽しむ間もなく、唇を舌先でツンツンされる。



(私は怒ってるのに。そうやってまた男の魅力を使って誤魔化そうとする)



 まだ怒りが解けてない瑛里は、このまま受け入れてしまうことに躊躇いを見せるが、結局は秀一の舌を受け入れる。



 息をもつかせぬ噛みつくようなキスが次から次に襲う。瑛里は秀一の愛を受け入れるのに精いっぱい。途中で息継ぎをしようと唇を離すのだが、一呼吸置いたかと思うとすぐに引き寄せられ、先ほどよりもさらに深く繋がることを求められる。



 そんなに力を入れてるふうには見えないのに、後頭部を掴む手は瑛里が抜け出そうとしても抜け出せない。それが自分と秀一の関係を表してるようにも思えた。



 この人は私を愛しすぎていると瑛里は思う。そして自分も彼を愛していた。



 秀一がようやく唇を解放した時には、瑛里はもうヘトヘトになっていた。



「も、ダメ……許して……」



「何を許す必要があるんだい?」



 秀一の瞳には情欲の炎がちらついている。彼は自分のワイシャツを脱ぎ捨てた。



「僕がどれだけ瑛里のことを愛していて、大事にしているのか、その身をもって知ってもらうだけだ。君はただ感じていればいい。何も考えなくていい。君が僕で気持ち良くなって、僕を求める顔をたくさん見せて。それだけで、僕は幸せなんだよ」



 秀一は瑛里のブラウスに手をかけ、ボタンをひとつずつ丁寧に外していく。露わになったブラジャーをずらすと、柔らかそうな乳房がぷるんと揺れた。



「恥ずかしいわ」



「綺麗だよ。僕の瑛里はとても美しい」



 秀一は瑛里に抱きつくと、彼女の胸の谷間に舌を這わせた。心臓に一番近い部分を舐められ、彼女はぴくりと身体を跳ねさせる。



「やめ、汚いから」



「全然。むしろ興奮するよ」



 秀一の唇が胸の至る場所に降ってくる。快感を与えるためではなく、愛しさを伝えるためのスキンシップ。性感よりもくすぐったさが優るそれを受け、瑛里の息は徐々に荒くなっていった。



「あっ」



 唐突に彼の唇が胸の頂に触れてきて声が漏れる。



 強い刺激ではないが胸を中心に広範囲へ痺れが走った。



「ここが感じるんだよね」



 秀一は瑛里の乳首を指で摘まむと、くにくにと転がしたり引っ張ったりして弄ぶ。



「あ、あっ、あっ」



 瑛里の口から甘い喘ぎが溢れる。彼は両方の乳首を同時に責めた。



「ふっ、うんっ、あっ、あっ」



 瑛里の身体が小刻みに震え出す。



「どう? 気持ちいい?」



 秀一は瑛里の胸元に顔を埋めたまま問いかける。彼が喋るたびに熱い吐息を感じた。胸が上下に動き、まるで鼓動を高鳴らせているかのごとく反応してしまう。そんな自分を認めたくない。でも身体は正直だ。



「……は、はい」



「良かった」



 秀一が瑛里の胸にしゃぶりついた。



「あぁっ! あんっ! くぅうっ!」



 指で弄られ、ぷっくりと立ち上がっていた果実を頬張られると、ぬめりを帯びた熱に身体が震えた。舌先が表面を押し込みながら丹念に弾く。



「んんっ!」



 唇で強く挟み込まれた状態で吸引されるとたまらない快楽に襲われ、喉の奥から堪えきれない悲鳴が上がった。硬く勃ち上がった突起は、吸い上げられたかと思うとじっくり舐められ、周りのぷっくり膨らんだ輪にも舌を使われる。甘やかしてばかりかと思うと、絶妙なタイミングで歯を立ててきて、彼の性格そのものな愛撫だ。



「本当に可愛いよ瑛里。食べてしまいたいくらい」



 強めに先端を噛まれても感じるのは痛みより快感。恐怖より幸福。



 彼の手に乳房を揉まれ、乳首を指で挟まれる、そして反対側の乳首はあめ玉を転がすように優しく撫で回される。



 縦横無尽に動き回る彼の舌が絡みついてくると、瑛里の身体は奥底に火が灯る。その熱に溶かされたロウのように愛蜜が漏れ出してくる。



「ああぁ」



 濡れてしまってるのが恥ずかしくて内ももを擦り合わせる。それに気付いたのか、秀一が笑みを浮かべた。



「もっと、他のところにも触れてほしい?」



 妻の答えを待たずに秀一は手を下へと落としていく。



 足の付け根を軽く触れられるとたまらなかった。自然と膝を立てて内股気味になってしまう。そんな彼女の仕草を楽しみつつ秀一はさらに攻めていく。



 下着越しにも分かるほどに花びらは潤い始めていた。



「凄いな」



 彼は少しだけ驚いたような声で呟きながらも割れ目に指を当ててきた。



 すでにそこは十分すぎるほどに準備万端だった。だけどそれをはっきりと口にするのははしたない。こちらが何も言わずとも彼には気づいて、侵入してきてほしいと思う。



 だけどSっ気に火がついた彼は許してくれないようだ。



「言ってごらん」



 分かってるくせに。瑛里はそう言いたい気持ちをこらえて、代わりに彼の手を掴んだ。彼の手の上から自分の秘所を撫でる。こうされたい。自分じゃなく、あなたの手でと無言で伝える。



 それに応えて彼の指が下着の隙間から侵入してきた。



 秀一の指先は秘裂を割り開き、最も敏感な肉芽を捕らえた。瞬間的に腰を引いてしまうが、夫の手は逃がしてくれない。長い指がどこまでも追いかけてくる気がした。



 瑛里自身の蜜で滑りを良くした夫の指が、快感の真珠を転がす。彼によって開発されてしまった弱点をいじられて、一気に性感が高まってしまう。秀一に開発された肉体なのだと再認識させられる。



 指先で肉芽をカリカリされながら、胸の頂にも舌を這わされる。上下で敏感な場所を同時に刺激され続けると、秀一の指を伝って手のひらまで濡らすほど大量の蜜が溢れてくる。



 秀一はそんな瑛里の反応を見てさらに追い詰めたくなった。



 手の動きを速めると瑛里の口が半開きになった。そこから細切れに湿った吐息が漏れる。



 声を抑えることができない瑛里は、快感に耐え切れず、シーツを強く掴む。



「気持ちいい?」



「そこ、あ、いい、すごくいい……気持ちいい」



 妻の声を聞き、秀一は嬉しそうに目を細めて彼女の頭を撫でる。普段から落ち着いている瑛里だが、自分に愛されている時は可愛らしく乱れてくれる。この姿を見れるのは自分だけなのだと思うと、嗜虐心が疼く。



「どうして欲しいのかな? こうかい?」



「んっ、やあっ、両方なんて、無理、あっ」



「無理じゃないだろう?」



「ああああっ!」



 悦楽に脱力する瑛里の両脚は、さらなる幸せを求めだらんと開く。秀一は下着のクロッチ部分をずらし、愛妻の一番恥ずかしいところを剥き出しにした。



「ほら、こんなにトロトロになってるよ」



 彼の言うとおり、瑛里の蜜壺はもうぐちゃぐちゃになっていた。



「君のここはいつも素直だよね。僕が欲しいよってお口を開けてる」



「やめ……そんなこと……いわないで……」



「どうしてだい?」



「はずかし……い……」



「僕に見られるの、嫌?」



 瑛里は首を横に振る。



「それならもう少しよく見せて」



 秀一は舌先を尖らせて、一番敏感な突起をつつく。すると瑛里の身体はビクンと跳ねた。続いて舌の腹を使ってゆっくりと舐め上げる。



 瑛里の口から甘い喘ぎがこぼれる。



「やぁ、んっ、あっ、あぁっ」



 彼の熱い吐息を一番敏感な場所で感じる。唇や舌の感触に一々身を震わせた。いきなり乱暴に吸い付いてくるようなことはせず、触れるか触れないか程度のもどかしい接触を繰り返してくる。かえって瑛里はもっと情熱的で淫らな愛撫がほしいと望んでしまう。



 それが秀一の術中に嵌まってる状態だと知りながら。



「ああっ、だめぇ、イク、イッちゃう」



「まだだよ」



 瑛里が絶頂を訴えると、お預けするように彼の愛撫が止まった。



 夫の唇が陰核から離れると、身体は行き場を失った熱に震える。



「やだ、やめないで、お願い」



「ちゃんとおねだりできたら考えてあげる」



 普段は冷静で的確な判断をできる妻が、今はすっかり理性を失ってしまったようだ。寝室に入るまでの怒りなど忘れ、泣きそうな声で懇願する。彼女の切なげな顔は夫を余計に高ぶらせた。



 秀一は瑛里の耳元で囁く。



「ねぇ、どうしてほしいの?」



「秀一さんの、舌で、私のあそこ擦ってほしい」



「どこを? どういう風に? 具体的に教えてくれないと分からないよ」



「ここ、舐めて、いっぱい、舌入れて」



「うん、いい子だ」



 秀一は再び彼女の股間に顔を埋めた。今度は迷わず敏感な場所にしゃぶりつく。



「あああっ!」



 待ちに待った刺激を与えられ、瑛里は歓喜の声を上げた。彼の舌は、指よりもずっと繊細に、そして大胆に動く。まるで蛇のように、膣内を這いまわってくる。



「ふっ、うぅんっ!」



 秀一は舌を膣内に挿入したまま、ぐるりと回転させた。



「ひぃ、や、やああ!」



 突然の刺激に、瑛里は悲鳴を上げる。



 秀一は瑛里の中に舌を入れながら、親指でクリトリスを撫でていた。舌と指で同時に責められ、下腹部に力が入りっぱなしになる。



 強い締めつけが秀一にも伝わったらしく、彼は楽しげに笑みを浮かべた。



「これは脱いでしまおうか」



 秀一の手が瑛里からショーツを奪い取る。無防備な秘所を晒す心許なさは一瞬。それ以上は何も考えさせまいと秀一の愛撫が再開した。



 男の長く、節くれ立った人差し指と中指が膣穴に突き入れる。溢れてきた蜜のおかげですんなりと第二関節まで飲み込んだ。



「すごい……。もうこんなになってる……」



 興奮を押し殺した夫の声に瑛里の耳が犯される。彼の熱情が伝わってきてこちらまで下腹部がゾクゾクした。



 濡れてヒクつく膣ヒダの具合を確かめるように、ゆっくりと彼の指が往復する。



「もっと脚を開いてみようか。ここをグチャグチャに弄って、気持ち良くしてあげる」



 淫靡な誘いは抗い難い魔力を秘めていた。瑛里は膝を立て大きく足を開いた。



「いい子だ。瑛里は僕にここを触ってもらいたいんだね」



 瑛里の華奢な身体が強張った。秀一の指が根本まで突き入れられたからだ。



 先だっての口淫奉仕により準備が進んでいた蜜道は、息を吹きかけられただけで全身が戦慄いてしまうほど敏感になっている。その状態で瑛里の肉体を瑛里以上に知り尽くしている秀一の指が、妻をたっぷり可愛がってあげるべく動き出す。



「はぁ、あん、ふぅ……んんっ」



 指がバラバラに蠢く度に、腰が揺らめき、奥が疼いて、頭がくらくらしてしまう。艶っぽい声が喉を震わせた。その声で自分がいかに感じてるかを思い知らされる。恥ずかしい。なのに止められない。



 羞恥と快感に同時に苛まれながら身体をくねらせる。



 そんな妻の痴態をうっとりした顔で見ていた修一は、おもむろに身を屈めて彼女の胸にむしゃぶりついた。じゅるるるっといやらしい音を立てて乳首が吸われる。乳房の形が変わるのではないかと思うほど強く、荒々しい吸引だった。



「やあぁあ! あああっ!」



 瑛里は悲鳴にも似た嬌声を上げる。しかしそれで夫が止めてくれるはずもない。彼は瑛里の小さな乳首を口の中で転がすように味わうと、蜜道では指を曲げて内側の壁を押す。



 そこを圧迫するようにぐりぐりされる。



「はぁっ……それ、気持ち……いいっ……あんっ!」



 彼の手つきは決して乱暴ではないけれど、確実に瑛里の弱点を知り尽くしていた。最小限の手数と、壊れ物を扱うような繊細なタッチで、瞬く間に彼女は追い詰められる。



「だめぇっ! もう、イク……イク……ぅうっ!」



 ひときわ大きな波が来て、絶頂へと駆け上がっていくのを感じた次の瞬間には、瑛里は達していた。



 背中を弓なりに反らして絶頂を迎えた彼女の顔は、赤く上気し瞳は潤んでいる。演技ではない、心の底から達したときにしかできない表情に、秀一も大いに満足したようだ。



 彼は素速く脱衣すると指や舌よりも強く、激しく、情熱的に愛を伝えられる部分を近づける。



 絶頂に達したばかりでヒクつく妻の入り口に宛がうと、一気に奥まで貫いた。



「ダメ、そんな……今、敏感になって……もう少しだけ、待って」



 太く硬いものに敏感な場所を擦り上げられ、瑛里は小さく声を漏らしたが、それも束の間。肉壁をゴリゴリ擦られ始めると、声を殺すこともできないほどの快楽に全身を支配されてしまう。



 肉と肉が激しくぶつかり合う音が響く中、何度も何度も最奥部を突き上げられた。何度も訪れる官能の大きな波に翻弄されながらも、しっかりと愛しい夫の動きに合わせて自分も腰を振る。



 体内で彼のモノが一段階膨らむのが分かった。彼も気持ち良くなっているのだ、私で感じているのだと思うと胸が暖かくなる。



「しゅういちさ……んっ、キス、してください……んぅ」



 強請るように腕を伸ばしたらすぐさま唇を重ねてくれた。舌が口腔に捻じ込まれ、こちらも荒々しく蹂躙される。



 お互いの唾液を交換し合ってから唇を離した時には、二人ともすっかり息が上がっていた。秀一はそのまま耳元へ唇を寄せる。



「可愛いよ。愛してる」



 低く甘い声を直接耳に注ぎ込まれたら、それだけでまた軽く達してしまった。



「本当に君は僕の何もかもが好きなんだな」



 そうなのだ。彼に囁かれるとたまらない気分になる。もっと恥ずかしいことを囁いて、言葉でも犯してほしいと思ってしまう。



 秀一は瑛里の反応を見て嬉しそうに目を細めると、再び彼女に口付けた。



「んむぅ……ちゅ……れろ……」



 濃厚なディープキスを楽しみながら、秀一はピストン運動を再開する。



「あっ、あっ、ああっ!」



 子宮口を突かれる度に声が漏れ出る。気持ちいいところを余すところなく擦り上げられる感覚に、気を抜けば意識を持っていかれそうになる。指先まで痺れる身体を秀一に力強く突き上げられる。テンポの速い律動で最奥を力強く叩かれ、一刺し毎に絶頂に達する。



 抽送を繰り返すうちに膣内はさらに愛液が溢れ出し、滑りが良くなっていく。それに伴い秀一の動きも加速していく。



 パンッパンッと肌を打つ音が大きくなる。



「あんっ! ああぁっ! ふかいっ! おくっ! おくにぃ――!」



 指や舌とは比べものにならないくらい深い場所を穿たれ、瑛里は髪を振り乱しながら悶え狂う。秀一もまた限界が近いのか、余裕のない表情を見せていた。



 お互い相手の限界も近いことを悟った夫婦は、協力してラストスパートをかける。



「そろそろ出すぞ」



「きてっ!」



 二人はほぼ同時に達した。秀一は亀頭の先から大量の白濁液を放出させる。熱い飛沫を叩きつけられ、瑛里の中はそれを一滴残らず搾り取ろうとするかのように収縮した。



 最後の一滴まで残さず吐き出した後、秀一はゆっくりと肉棒を抜く。栓を失った蜜壺からは白い液体が流れ出た。



 激しい情事を終えた二人の息はまだ荒いままだった。秀一は自分のものを処理してから、隣に横たわった妻の唇に自分のそれを重ね合わせる。優しい口づけを交わしていると、次第に呼吸が落ち着いてきた。やがてどちらともなく唇を離すと見つめ合い、微笑みあう。



「すごく良かった」



「私も」



 幸せそうな笑みを交わす二人の間に流れる空気はとても甘いものだった。しばらくそのまま抱き合っていたが、瑛里の熱を傍で感じていると秀一の欲は一向に収まりを見せない。



「続きはお風呂に入ってからにしましょう」



 夫の気持ちを汲み取った瑛里の提案に彼も異論はなかった。







「瑛里ここに座って。今日は僕が洗ってあげる」



 そう言って秀一は風呂用の椅子に妻を誘導する。



 シャワーヘッドを手に取りお湯の温度を確かめた後、適温になったところで瑛里の背中にかける。まずは身体全体を温め、湯温に馴らしていく。



「お風呂に入りたいって一緒にという意味ではなかったのだけど」



「嫌なら僕は出てようか?」



「……もう、そんな意地悪なことできるはずないでしょ」



 瑛里の言葉を受けて楽しそうに笑う夫を軽く睨みつけてから、彼女も小さく笑った。背中を流すという名目のもと、秀一の手が肩から腕にかけて優しく撫でるように行き来する。くすぐったいような気持ち良いような感覚を覚えながら、瑛里はその愛撫を受け入れた。



 彼女の反応を確かめるように、時折脇腹や腹部を撫でたり揉んだりするのだが、決して性的な意味を込めた触り方はしない。あくまでも妻の身体を労わるような触れ方だ。それが逆に焦らされているようでもどかしい。



「お湯加減は如何ですか」



「ちょうどいい感じよ」



 お決まりの台詞を言い合いながら互いの存在を確認するように触れ合う。ただ肌を密着させているだけなのに、とても満たされた気分になる。先ほどまでの激しい行為とは違う、もっと穏やかにお互いの存在を感じ取り、呼吸を一つに合わせて寄り添うような時間。それはまるで神聖な儀式のようだった。



 一通り身体を洗い流すと、彼は瑛里の髪から洗い始めた。



 シャンプーを手に取って泡立てると髪に馴染ませていく。指の腹を使って頭皮を刺激するように丁寧に洗う。



 ここでも秀一は瑛里の好む加減を完璧に理解していた。彼が頭皮を揉み込む強さは極上の指圧のよう。プロのヘッドスパでも、ここまで私の好みには合わせてくれないと感じるほど、絶妙な力加減だった。



 髪が終わると今度は首回りだ。うなじから肩にかけてのラインに沿って親指を動かし、揉みほぐすようにマッサージされる。首から肩を入念に解されると思わず吐息が漏れた。そのまま鎖骨へと移動し、骨の周りを円を描くようにしてなぞる。



 頭皮から続く一体を入念に揉みほぐされ、至れり尽くせりの気分でリンスまで済まされる。



「じゃあ次は背中を流してくれるかしら」



「かしこまりました」



 恭しくお辞儀をした秀一はボディーソープを手に取る。手のひらで泡立てると素手で妻の身体を洗い始めた。ぬるりと滑る感触がとてもくすぐったく、それでいて気持ちが良い。女性の繊細な肌を傷つけない絶妙な力加減で妻の肌を擦っていく。



 リンパの流れを促すためと称して腋の下を丹念に揉まれると、くすぐったかった。だが同時にじわじわと快楽も湧き上がってくるのを感じた。腋と乳房の際にある窪んだ部分は特に念入りに擦られて、むず痒い感覚に襲われる。



「んっ……」



 変な声が出てしまいそうで、慌てて口を噤んだ。そんな瑛里の様子に気付いていないのか、それとも気付いていて敢えて無視しているのか、秀一の手つきは変わらない。それどころか先ほどよりもやや大胆な動きになっていた。両方の胸を下から持ち上げるようにして包み込み、ゆっくりと回すように動かしてから手を離す。



 ぷるんっと揺れながら元の位置に戻る様子を眺めつつ、指先で乳首を弾いた。



 突然の強い刺激にビクッと身体が跳ねる。



「あっ……だめ……そこ……触られたら……」



 まだ身体を洗ってる最中なのに、またしてもしたくなってしまう。



 親指と人差し指で薔薇の蕾を摘ままれた。少し強めの力で引っ張られるとジンとした甘い疼きが込み上げてくる。もっと強く触ってほしいけれど、あまり強くすると痛いかもしれないと彼は遠慮しているようだ。



 物足りなさを感じていると彼の唇が耳元に寄せられた。



「どうして欲しい? 言ってごらん」



 彼の声は瑛里にとって媚薬に等しい。その声で言われると欲望に逆らうことができなくなる。



「……乳首……たくさん……弄って、ほしい」



 恥ずかしさのあまり消え入りそうな声になってしまったが、それでもちゃんと聞き取ってくれたらしい。彼は満足げに頷くと胸の突起を扱き出した。



 乳輪ごと摘み上げ、指で挟んでくりくりとこね回したり、痛みで眉間に皺が寄る強さで磨り潰そうとしてきたりする。



「ひうっ! んぁっ! あああぁっ!」



 秀一は暴れる瑛里の身体を逃すまいと後ろから抱きしめ、さらに攻め立ててくる。片方の手は胸を可愛がったまま、もう片方の腕を下腹部へ伸ばした。茂みをかき分け秘裂に指を這わせる。



 そこは愛液と白濁で、ぬるぬるしていた。



「また濡らしてる」



「だってぇ……しゅういちさんがっ……」



「洗っても洗ってもぬるぬるが落ちないな。指じゃ間に合わないよ」



 指以外なら何で洗えばいいと思う? と誘導尋問を投げ掛けられた瑛里は、そっと後ろ手で彼のモノに触れる。



「ここで」



 恥ずかしそうに顔を赤らめながらも彼女ははっきりと告げた。鏡越しに彼を見れば、秀一は思いどおりの展開で嬉しそうに微笑んでいた。



「それじゃあ、立って壁に手をついてごらん」



 言われた通りに立ち上がる。お尻を突き出した体勢になると期待に蜜口がひくついた。そこへ熱いものが宛がわれる。お腹の奥がキュンとなる。



「ふぅ~~……」



 体内に溜めておけない熱が口から吐き出された。



 肩幅に開いた脚の間から秀一の分身が顔を覗かせている。



「瑛里の要望どおり僕のここで洗ってあげる」



 これは瑛里が望んだことだと彼は告げる。あくまでも自分は身体を貸してあげているだけで、こうしてほしいと言ったのは君なんだよと。



 秀一は腰を引いた。脚の間から覗いていた彼の分身が姿を隠す。二人の間でボディーソープが泡立つ。一拍置いて今度は腰が突き出される。パンッと音がして彼の腰と瑛里の臀部が打ち合った。



 そのままゆっくり前後に揺らされる。派手な動きはしていない。単調に擦り合わせているだけ。それなのに彼のモノで花芽を擦られて快感が押し寄せてくる。



「ああっ……やぁっ……」



 徐々に速まっていく抽送運動に合わせて喘ぎ声が漏れ出た。いつの間にか秀一の動きに合わせて自ら腰をくねらせていた。



「ああっ、いいっ……凄く気持ちいい」



「僕もだよ」



 背後から耳朶を舐められながら囁かれた言葉に頭がクラクラする。瑛里は彼の方を振り返った。唇を塞がれる。バスルームにリップ音が奏でられる。



「秀一さん、もう……きて……」



 また彼と一つになりたい。その思いから震える声で誘う。



 秀一は一旦離れるとシャワーを手に取った。互いの身体についた泡を流し落とすと、立位で向かい合ったまま腰の位置を合わせる。



 瑛里は片脚を浴槽の縁に乗せ、彼の訪れを待った。



「挿れるよ」



 それ以上の言葉は不要とばかりに短い宣言だけで彼は入って来る。



 ゆっくりと中を確かめるように進んでいたそれは、入ってきたときと同じスピードで引き抜かれる。段差が大きく、クッキリした形の彼が出て行くと、ゾリゾリゾリッと中で引っ掛かった。



 そして再び押し入ってくるとき、今度は同じ場所が巻き込まれる。背筋を反らして快感に耐える瑛里は、脚から力が抜け倒れてしまわないよう彼の腕にしがみつく。



 腰に回された秀一の腕は女の自分とは違う筋肉質なもの。トレーニングを趣味にしている夫の腕は、細身に見えても瑛里の身体を支えるくらい訳ないのだ。



「んっ♡ はっ、あぁっ、んっ、ぁ♡ あっぁあっ!」



 痙攣しながら収縮を繰り返す蜜壺の動きを味わうかのように、秀一はゆっくりと挿入を繰り返した。蜜を絡め取って掻き出す動きが繰り返される。中でグチョグチョと音がするのを恥じ入りながら聞いた。



「もっと奥までしてほしい?」



「うん……お願い……もっと奥に来て……」



「いいよ。お望みのままに」



 そう答えると秀一は一気に最奥まで貫いた。子宮口に硬いモノが当たる感覚があった。そのままグリグリと押し付けるように動かされる。敏感な箇所をほじくり返すように刺激され、瑛里は悲鳴を上げた。



「ああぁーっ!」



 それだけで軽く達してしまった。だが当然これで終わりではない。むしろここからが始まりだ。一度入り口近くまで引き抜いた後、一気に奥まで貫かれると膝に力が入らなくなるほどの衝撃が走った。そのまま激しいピストンが続く。



「ああっ! は、激し……あっ、あん♡ あっ、あっ、あっ、ああぁっ♡」



 膣内を行き来するペニスの形まで分かってしまうほど敏感になった粘膜を容赦なく擦られ続ける。感じるところをカリ高の大きな亀頭でゴリッと擦られる度に目の前がチカチカと明滅した。



 あまりの気持ち良さに息もできない。



 早くも悦楽に翻弄される妻をさらに愛してあげるべく、秀一は突き込みの角度を変えて新鮮な刺激を送り込んだ。



 より深く、斜め下から抉り込むように突き上げ、時に緩急を付けて抜き差しし、快楽に慣れないように翻弄し続ける。激しく攻め立てられると瑛里はもう何も考えられない。ただ喘いで悶える以外はさせてもらえない。



「あっ、あんっ、しゅういちさっ……好きっ♡ だいすきぃ♡」



「んっ……僕もだよ……愛してる」



 至近距離で見つめ合ったまま愛の言葉を交わした二人は、お互いの身体を抱き寄せる。精神的な盛り上がりに連動して肉体の興奮度合いも増していく。ばちゅん、ぐちゃ、という生々しい音と共に結合部から体液が飛び散る。



 何度も出し入れを繰り返し、すっかり蕩けてしまった膣内に秀一は己の分身を突き立てた。一番奥にぶつかるように押し付けてから、素早く引き抜く。



「あぁ――っ!」



 一際大きな声を上げた瑛里の背中が三日月型に仰け反った。



「あんッ、あぁっ、あぁっ、あぁっ、あぁっ!」



 絶え間なく襲い来る快楽に耐え切れず瑛里の身体は崩れ落ちそうになる。しかし秀一はそれを許さなかった。しっかりと抱き抱えたまま抽送を続ける。もはや彼女は自力で立つことすらできず、彼に支えられてようやく立っている状態だった。



 すぐそばで聞こえる彼の息づかいは獣のように荒い。いつもの余裕が一切ない、切羽詰まって張り詰めている。



 またイクんだ。彼も限界なんだ。そう感じた瑛里は最後の気力を振り絞り、彼がイクまでは我慢しようと気持ちを立て直す。



「しゅういちさんっ、しゅういちさんっ」



「瑛里……瑛里っ」



 名前を呼び合いながら口づけを交わす。舌を絡ませて唾液を交換する。上でも下でも繋がり合ってドロドロに溶け合う。



「しゅういちさん、もう、だめっ」



「イキそうなんだね。いいよ、一緒にいこう」



 ラストスパートをかけるために秀一は腰使いを変えた。これまで以上に力強い抽送で瑛里の身体が浮き上がる。床に残っていたほうの脚を抱え上げた秀一は、彼女を壁に押し付けるようにして突き上げた。



 重力に従って落ちる自身の重みで、さらに深く突き刺さった剛直に子宮口を圧迫され、瑛里の口から断末魔の叫びにも似た喘ぎ声が上がる。



 それが合図だったかのように秀一は射精した。



 どくんどくんと脈打つ分身の先端から白濁液が溢れ出る。



 大量の白濁液によって満たされていく感覚に陶酔しながら、瑛里も絶頂に達する。くたりと弛緩する身体は秀一の手で椅子に戻される。



 虚ろな眼差しで虚空を見つめ、放心している妻に秀一はそっとキスを落とす。ちゅっと音を立てて吸ってあげると妻の意識が現実世界へ帰ってきた。焦点のあった目でこちらを見て、照れ臭そうな笑みを浮かべる彼女につられて微笑み返しながら、秀一は尋ねる。



「気持ちよかったかい」



「とても」



 頭を撫でながら再びキスを落とされる。



 その後、秀一は再びシャワーを手に取ると、丁寧に瑛里の身体を清めてくれた。そして二人で身を寄せ合いながら湯船に浸かった。湯の温度は少しぬるかったけれど、火照った身体にはちょうど良い具合である。



 それに。どのみちゆっくり浸かってもいられなかった。



 後ろから抱きしめられる形で湯に浸かりながら、秀一の手が胸を揉み始めたのだ。最初は全体を包み込むように揉んでいたが、次第に乳首を摘まむようになり、やがて指先で転がすように弄ぶようになった。



「あんっ♡ もう、えっちなんだからぁ♡」



 口では非難しながらも瑛里の表情は悦びに満ちている。瑛里のスイッチも寝室からずっと入りっぱなしだ。



「君も期待しているようだけど?」



「それはそうだけどぉ……」



 彼女の身体はこの先の展開を待ち望んでいる。



「このままここで挿れてもいいかな? それともベッドに行く?」



「ここでしたあと、続きはベッドで」



「分かったよ」



 そう言うと秀一は背後から覆い被さってきた。うなじにキスを一つ落とした後、唇を移動させて耳の裏を舐め上げる。くすぐったさに身をよじれば、逃さないとばかりに両腕でぎゅっと抱き締められた。密着した肌と肌が擦れ合う感触が心地好い。



「私が挿れるわね」



 バスタブの縁を掴み、腰を浮かせて彼のモノに位置を合わせた。根本に手を添え角度を固定した上に腰を下ろしていく。



「ああんっ♡ あっ……あっ……あっ……あぁ~~っ♡」



 膣肉を押し広げて入ってくる男根の感触に思わず声が漏れてしまう。背面座位で根元まで呑み込むと子宮口に先端が当たる。コリコリ、ぷにぷにした臓器に剛直が押しつけられると喜悦で腰が痺れた。



 気持ちいい。もっと気持ち良くなりたい。己を奮い立たせ欲望のままに腰を動かす。前後に揺らしたり上下に揺すったりしているうちに、だんだんと動きが激しくなっていく。



 水面が激しく波打った。



 自らイイところに当たるように調整して動くようになる頃には、すっかり夢中になっていた。



「あっ、あっ、いいっ、そこいいっ!」



「ここがいいのかな」



「うん、うんっ♡ 好きぃっ……好きなのぉっ……はぁ……あぁっ……あぁっ……」



「とってもエッチだよ。そういう瑛里の顔も好きだからよく見せて」



「私も好きよっ♡ 秀一さんが好きっ♡」



 甘い言葉を囁かれながら下から突き上げられる快感に酔いしれる。全身が溶けてしまいそうなほど気持ちが良かった。



 特にへその裏にある性感帯を強く擦られると堪らない快感に襲われる。そこを重点的に攻められて何度も達した。それでもまだ足りない。もっともっと欲しい。



 貪欲に求め続けるうちに、いつの間にか体勢を変えられていた。浴槽の中で壁に手をつき、お尻を突き出す。



 夢うつつの間に立ちバックで犯された。



「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ……ああっ……んぁっ……あぁんっ……♡」



 激しいピストン運動に合わせて声が弾む。膣内を掻き回されると愛液が溢れ出した。



 前に回ってきた手にクリトリスを押し潰されると、頭の中が真っ白になるほどまで追い詰められた。ガクガクと膝を震わせ崩れ落ちそうになるところを秀一の腕が支えてくれる。



「苦しいなら座ってしようか」



「いい、いいっ! このまま! 抜くなんて嫌よ。このまま続けて」



 秀一の提案を拒否してそのまま続けさせることにした。自分を気づかってくれてのことだとは分かっているが、今は片時も離れたくない。これを抜いてほしくないという思いのほうが強かった。



「それじゃあ、できるだけ早くイケるようにしてあげる」



 宣言どおり秀一は激しく腰を打ち付けてきた。力強く奥深くにまで突き込まれる。激しい律動によって与えられる快楽で頭がおかしくなりそうだ。目の前がチカチカしていた。



 秀一は腰を突き上げて、瑛里を何度も貫いてくる。



「これでイキなよ」



 ひときわ大きく腰を引き、トドメの一撃とばかり強く最奥を叩かれた。狙いすました動きに瑛里は息を詰める。



「――――! はぁんっ!」



 身体中に痺れるほどの快感が駆け巡った。足先がぎゅうっと丸まり、身体の奥底から震えがこみ上げてくる。



「――――ふっ、ぐ……うぅ、はっ♡」



 本当に感動が深いときは声も出ない。瑛里は深い絶頂感を噛みしめるように息を止め、両目を固く閉ざした。それは秀一も同様で、彼もまた振動する膣内の動きを味わい尽くさんと膣奥に留まり、射精し続ける剛直を肉ヒダにしゃぶらせていた。



「続きはベッドで、だったよね」



「そうよ。早く行きましょう♡」



 甘い吐息混じりの声を出しながら、瑛里は秀一の腕を掴み寝室へと誘った。
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