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6章
6章①
しおりを挟むライブハウスの控室にある、古ぼけたソファに横たわっていた光希がううん、とぼんやり目を開いた。
「ここは……」
顔を上げて智弥がのぞき込んでいるのを発見し、安心したような笑顔を見せる。その左頬には湿布が貼られている。
「俺、どうしたんだっけ……」
しゃべりながら、頬が痛むことが分かってそっと湿布に触れた。いたた、と顔をしかめる。
「あんた、ぶん殴られたんだよ。なに話してたんだよやつらと」
湿布の上から保冷剤の塊を乗せてやる。気持ちいい、と目を閉じた。
「なにって……あいつら、ずっときみの文句ばっかり言ってて。全然曲も聴いてないし。むかむかしてたらもう一人の人が聴かないなら出てけって言い出して……向こうが殴ってきたから止めようとしたんだ」
体重が軽いから吹っ飛ばされたんだな。
光希の華奢な体を見やる。
「ねえ、差支えなければ訊いてもいい? あいつら、なんなの?」
智弥が逃げないようにか、保冷剤を持つ右手をがっしりと掴まれる。
「……俺の昔のバンド仲間」
「昔ってことは智弥が抜けたってこと? ケンカ別れしたの?」
「それについては俺たちが説明しよう!」
鉄製のドアをばんと開いて、哲志と秀平が入ってきた。智弥は立ち上がって、秀平にぺこりと頭を下げた。
「シュウさん、すみません。迷惑かけて……俺が今日いなければ」
「お前いなかったら他に俺の曲弾けるやついねえし」
秀平がばしん、と背中を思いきり叩いて、ニッと笑ってのぞきこんでくる。
「まあなんとか最後までライブできたし、今日のところは結果オーライだな」
となぜか哲志が話を締めくくる。
「……で、お尋ねの件だが」
秀平が近くにあったパイプ椅子を引きずってきて腰をおろし、光希に笑いかけた。
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