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19章
19章①
しおりを挟む「智弥ぁ」
「あん?」
「そんな辛気臭いツラしかできねーんなら、厨房行って来いや」
「……分かったよ」
「いくらフラれたからっていつまでもメソメソしてんじゃねえよ!」
岳大の言葉に心臓が抉られそうに痛む。
ブランカのカウンターに立ってから、もう何度ため息をついただろう。
「やっぱ……フラれたのかな、俺」
「はしたなく迫って『ごめん』って逃げられてまた連絡つかねえんだろ? しかも今度は既読スルーなんだろ? 意図的に避けられてんじゃん」
ああ……なんで岳大さんにべらべら喋っちまったんだ、俺。
これ以上、岳大と話していると立ち直れそうにないので大人しく厨房へ足を向けることにする。
「お、らっしゃーい」
岳大の声に振り向くと、少し険しい顔をした山崎がカウンターに手をついた。
「智弥くん、ちょっと話があるんだけど」
前回と同じく、カウンターから一番近いテーブルに、さらに同じく向かい合わせに座る。――相変わらずカッコいいな、くそ。
「……悪い、そう言えば伝言伝えそこねた」
「それはもういいよ。直接伝えられたし」
「あっそ」
同じ職場という立場が今は心底羨ましい。
「あいつ、最近おかしいんだ。ぼーっとしてミスが増えたし、会議中に急に喋れなくなったり。……きみが何かしたんだろ」
した。しかも泣かせた。でもそれは。
「……俺のせいじゃねえよ、多分」
――あんたのことがまだ好きなせいじゃねえの。それか、あのバーテンダーのせいかもしれないし。
「恋煩いってやつじゃねえの。俺じゃない誰かに対しての」
「……羽根田が恋煩う相手が、きみ以外にいるっていうの?」
「いるんだろ。俺はきっぱりフラれた身ですから」
「フラれた? あいつがきみをフッたってこと?」
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