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5章
5章①
しおりを挟む暗い場内に、ステージだけが光り輝く。
ほとばしる熱気。汗。音の洪水。智弥はステージに立つ度に、ああ、やっぱり好きだなと思う。
ライブ自体来たことがなく、ましてやスタンディングのライブなぞ初体験の光希は、ライブハウスに入る時からすでにワクワクが止まらないようだった。
「ずっと立ちっぱなしだぞ。大丈夫か?」
「うん」
「荷物とか、気をつけて……てか心配だから預かっとく」
「うん」
「俺、向かって右側だから。なるべく見えるとこにいて。この辺、前の方」
「うん」
「智弥、心配しすぎ」
子どもじゃねえんだから、と今日助っ人を頼んできた堀秀平が、大口を開けて笑いながら通り過ぎていく。そう言われてはっとした。こほん、と咳払いをしてから光希を見る。
それもそうだ。相手は年上の男。……とてもそうは見えないけど。
「じゃ、俺まだリハとかあるから……どうする? 控室に行っとく?」
光希はううん、と首を横に振った。
「ここで見とく」
慌ただしく動き回るスタッフたちの邪魔にならないように、光希はなるべく隅っこに移動した。智弥はそれを見届けて、自分のギターを手にステージへと上がった。
いつもならリハーサルの間でも演奏に集中できるのに。スタッフ達がやたらと光希に話しかけているのが気になる。
今日の光希はオーバーサイズのパーカーにスキニージーンズという格好だ。さらりとした黒髪に、大きな瞳。一見、可愛い女の子に見えなくもない。
……連れてきたの間違いだったかな。
「智弥、集中」
メインボーカルである秀平から、めっ、と睨みつけられた。すんません、と肩を竦め、視線を指先に戻した。
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