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4章
4章②
しおりを挟む「うそ! 24!?」
そんなガキっぽい顔して?
「……童顔だって言うんだろ」
「いや、別に」
心を読まれたようでドキリとした。自分より四つも上にはとても見えない。
「いいよ隠さなくて。よく言われるし」
ふてくされたようにビールのジョッキを呷る。学生が無理して飲んでいるようでとても似つかわしくない。
「ところで、こないだなんであんな格好だったの」
「ああ、それは……」
「お、智弥じゃん」
おつかれーい、と手を挙げて近寄ってきたのは先日助っ人を頼んできた坂本哲志だ。
「昨日はありがとな。また頼むわ」
「ウス」
ドクロのついた大きな指輪を嵌めた手で、ばんばんと力任せに肩を叩いてきた。体は細いくせに力は強い。
ハイトーンボイスで、小柄な体に髪を逆立てているのでいつもポメラニアンを思い浮かべてしまう。その耳にこれでもかとついているピアスを光希がもの珍しそうに眺めている。
「ずるいぞテツ。次はオレんとこって約束だったろーが」
横から、長い髪を緩くまとめている男が哲志を小突いた。こちらは同じく智弥がギターとして助っ人に入っている別バンドの堀秀平だ。
「へいへい、順番な。――そんじゃまたよろしく」
智弥と、横にいる光希にも目配せして二人は去って行った。
「……もしかして、昨日の格好って」
智弥は軽く頷いた。
「ああ、あの人のバンドの助っ人。フツーのカッコで行ったら逆に目立つ」
「へええ……そうだよな。成瀬くんの曲調と昨日の格好が結びつかないなって思ってた」
気になってたんだけど、と光希がジョッキを傾けながら続ける。
「その髪の色は地毛なの? 染めてるの? すごい綺麗な色だけど」
「これは地毛」
智弥も同じくジョッキを手にする。
「へえー。よく見たら、顔もちょっと日本人離れしてるっていうか……鼻高い」
酔いのせいか、元々の性格なのか、光希が無遠慮にジロジロのぞきこんでくるので少し背を反らす。
「……家系が複雑なんだよ」
「どんなふうに?」
「父親はイギリス人と日本人のハーフで、母親はベルギーとフランスと中国とフィンランドが混じってる」
きょとん、と目を丸くして光希の動きが止まった。
「……ごめん、覚えられなかった」
「いいよ別に覚えなくて。俺だって時々分かんなくなる」
「ふうん。なるほど。よく見たら瞳の色も綺麗。青みがかってる灰色」
光希の顔がさらに近づいてきたので、智弥はさらに体をずらす。そこへ「お待たせしました~」と鶏の唐揚げを乗せた皿が運ばれてきて、二人の間に置かれる。
「俺、ライブとか行ったことないんだよね。楽しそうだよねえ」
「……まあな」
じーっと見つめてくる酔っ払いの視線に、何らかの意図を読み取った智弥はそれに乗るかどうかしばし逡巡した。
「……一回、見に来るか?」
結局乗せられて、こちらから誘いの文句を口にしてしまう。ぱあっと顔を輝かせて、光希がこくこくと激しく頷いた。
「やったあ。楽しみ~」
満面の笑顔のまま、光希は鶏の唐揚げを口に運んだ。揚げたてだったのか、あつあつ、と口の中で転がしている。
「――ほら、水。だから年上に見えねえってんだよ」
「成瀬くんは逆に老けて見えるからねっ」
水を口に含んで冷やした後で、拗ねたようにぷいっと顔を逸らした。その態度がますます子どもっぽくて、智弥は苦笑をもらした。
「あのさ」
「……なに」
「『くん』はいらねえ。名前呼び捨てでいい。……その呼ばれ方なんか慣れない」
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