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23.エルガー王国からの知らせ
しおりを挟む俺は驚いてラーディンを見た。
「え。……パルダン王国の手の者って……、どうしてですか? 俺は別に、パルダン王国の方に恨まれるようなことは、何もしてないと思いますが」
「ああ、おまえのせいではない。私の責任だ」
ラーディンは、俺の顔に頬を擦りつけるようにして言った。ちょっとくすぐったいんですが。
「私がおまえを本気で愛していると、そう知ったバルミラ妃が、おまえを殺害しようとしたのだ。……すまない。父の妃だからと今まで手出しを控えていた、私の責任だ」
「え」
俺は絶句してラーディンを見た。
あ、愛……、している、って。なんかすごくサラッと言われたけど。愛しているって!
「すまない、アンスフェルム。私のせいでおまえを危険な目に遭わせてしまった」
ちゅっ、ちゅっと顔中にキスを落とされ、俺は真っ赤になって硬直した。
「いや、あの、謝罪はもう十分ですので、あの、ちょっと……、殿下!」
「ラジーだ」
言うなり口づけられ、俺は目を白黒させながらもそれを受け入れた。
しかし!
し、舌が! 舌入れられてる! 口の中にラーディンの舌が! ちょっと待て!
俺はラーディンの肩を叩いて抗議したが、ぜんぜん力がゆるまない。それどころか、
「っ!」
腰をそろりと撫でられ、俺は硬直した。
ちょ、まさかこのまま……、え、ウソだろ、ええええ!?
俺は目だけを動かして、周囲を見た。こんなとこ誰かに見られたら……、と思ったところで、気が付いた。
あああ! さっき俺、人払いしたんだった! 魔力属性についてラーディンに話すために、二人きりになったんだった! 俺のバカ!
「っ!」
ラーディンの指が、服の上から際どいところをなぞり、俺はびくりと反応した。
ウソ、まさか本当に、このままヤるつもりか!?
「アンスフェルム」
「あ、っあ!」
ようやく口づけから解放されたと思ったら、今度は耳を甘噛みされ、思わず俺は声を上げた。
な、なんだこの甘えたような声! これほんとに俺の声か!? ぜんぜん嫌がってなさそう! ていうか、まるでその先をねだっているみたいな……。
「アンスフェルム……」
服をまくり上げられ、ラーディンの熱い手に下肢を探られる。
どど、どうするどうする、なんか体の力が抜けて抵抗できないんだけど……。
俺は熱に浮かされたような頭で、無意識にラーディンの背中に腕を回した。その時、
『失礼いたします、アンスフェルム様!』
慌てたような声とともに、誰かが部屋に入ってきた。
俺は硬直し、部屋に入ってきた人物を見上げた。
『え……っ』
そこにいたのは、ナシブ伯爵だった。
長椅子に押し倒された俺と、その上にのしかかるラーディンを見て、ナシブ伯爵は明らかに「しまった」という表情をしている。
『あ、その……、失礼いたしました。エルガー王国から知らせが……、いえ、あの、その、出直します』
『待ってください!』
俺はラーディンを蹴りとばし、長椅子に起き直った。みぞおちを蹴られたラーディンが隣で呻いているが、気にしない。
『エルガー王国から、何の知らせが?』
俺はラーディンにはだけられた服を直し、ナシブ伯を見上げた。
まだうまく働かない頭で、俺は必死に考えた。
この時期、エルガー王国の軍に動きはないはずだ。まだ同盟を正式に締結してもいないのに、いきなりパルダン王国の国境を侵したりするはずがない。
だとしたら、いったい何が……、と考えていると、
『王宮から、アンスフェルム様に……、先王エアハルト陛下が、病に倒れられたと』
『エアハルト様が!?』
俺は思わず大声を上げた。
バカな。そんなはずはない。
二度のやり直した人生で、エアハルト様がこの時期に病を得たことなんてなかった。
それとも、俺の未来が変わったせいで、エアハルト様の運命も変わってしまったのか?
「アンスフェルム、大丈夫か」
思いっきり蹴ったはずなのに、ラーディンはすぐに立ち直ったらしく、俺を胸に抱き寄せて言った。
「……先王エアハルト陛下の御不例は、前回もあったことなのか?」
ナシブ伯爵にわからないように、ラーディンは大陸語で俺に問いかけた。
俺はラーディンの目を見て、首を横に振った。
やり直した二回の人生で、エアハルト様が病に倒れたことはない。少なくとも、俺が殺されるまでは。
これはいったい、どういうことなんだろう。
まさか、俺のせいなのか?
俺の行動が引き起こした変化が、エアハルト様に及んで、それで……?
わからない。
何が原因なのか、どう動くのが正解なのか。
俺はラーディンに抱きしめられたまま、どうするべきなのかを必死に考えていた。
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