71 / 98
71.衝撃の告白
しおりを挟む
「さあ急いで、ロッテンマイヤー様!」
私は背負ってきた袋から、ぽいぽいと地味な色目のワンピース、フード付きのローブや靴などを寝台の上に放り投げた。
「これを着て、この塔から出るんです。さっ、立って!」
私の差し出した手を、ロッテンマイヤーさんはまじまじと見た。
「……どうして? もうわたくしには、利用できるものなんて何もないわよ? どうせ遅かれ早かれわたくしは死」
「死んだりしません!」
私は素早くさえぎった。
「ロッテンマイヤー様は、死んだりしません。ここを脱出して、神殿経由で隣国へ逃げるんです。この鞄に、宝石とかお金とか、少しですけど入れておきましたから」
私も貴族令嬢であるから、少しは宝飾品も持ってるし、フォール地方で働いたお金もある。これだけあれば、隣国で小さな家を借りて一、二か月、職探しをするくらいの間はもつはずだ。
あぜんとして私を見上げるロッテンマイヤーさんに、私は急かすように言った。
「早く! 見張りの交代時間まで、そんなに間がないんです!」
「……どうしてわたくしを助けようとするの? あなたが聖女だから?」
「違いますよ!」
私は少しイライラして言った。
ここで逃げなければ命の危機だというのに、ロッテンマイヤーさん、悠長すぎる!
「聖女とかそういうのは関係ないです! ロッテンマイヤーさん、頭に来ないんですか!? よってたかって利用されて、あげくポイ捨てされたんですよ! 見返してやるって、そう思わないんですか!?」
「え? ……え?」
ロッテンマイヤーさんは目を白黒させて私を見た。
「聖女だからとか、そんなふざけた理由でロッテンマイヤーさんを助けるわけじゃありません! 私は、ロッテンマイヤーさんを取り巻く状況すべてに、腹が立っているだけです! 理由なんて、しいて言うなら、ロッテンマイヤーさんが美人で、ステキな名前だからです!」
はあ!?とロッテンマイヤーさんが間抜けな声を上げたが、もう待ってはいられない。
私は床に膝をつき、強引にロッテンマイヤーさんから室内履きをはぎ取り、靴を履かせた。良かった、サイズ合ってた。
「さあ立って! でないと無理やり服を脱がせますよ!」
聞きようによっては18禁なセリフだが、誓ってやましい意図はないので、お許し下さい、世界名作劇場(全年齢対象)!
「わたくし……、わたくしは……」
ロッテンマイヤーさんは、戸惑ったように私を見上げた。
そして、小さな声で言った。
「わたくしは……、本当は、ロッテンマイヤーではないの……」
「え?」
「ごめんなさい……。せっかく褒めてくれたのに、ロッテンマイヤーは、わたくしの本当の名前じゃないの……」
ああー、やっぱそうか……。
私は少し残念な気持ちになった。
ロッテンマイヤーって、どう考えても南方の名前だもんね。
隣国の王族の名前じゃないよね、そりゃそうだよね……。
私は、泣きそうな表情のロッテンマイヤーさん(偽名)の肩を軽くたたいた。
「いや、いいんですよ、名前は違っても、ロッテンマイヤーさんが美人なのに変わりはないんだし」
「わたくし……」
ロッテンマイヤーさん(偽名)が、私を見上げて言った。
「わたくしの本当の名前は、クララっていうの……」
衝撃の告白に、私はグフォッと吹き出し、床に倒れ込んだ。
マジ!?
ちょっと、ウソでしょ、クララって!
「マリア様!? マリア様、大丈夫!?」
お腹を押さえてうずくまる私に、ロッテンマイヤー改めクララが慌てたように声をかけた。
「どこか痛むの!? 誰か……」
「……い、いえ、だいじょうぶ……、です」
ふうーと深呼吸し、私は上体を起こした。
「ク……、クララ、様……」
私はよろよろと立ち上がり、クララに手を差し伸べた。
クララは素直に私の手をとり、立ち上がった。
「……クララが立った!」
我慢できずに言ってしまった。
呼び捨てにしてごめんなさい、でもどうしても、どうしても言いたかったんです……。
こぶしを握り、感動に打ち震える私を、クララが不思議そうな目で見ていた。
私は背負ってきた袋から、ぽいぽいと地味な色目のワンピース、フード付きのローブや靴などを寝台の上に放り投げた。
「これを着て、この塔から出るんです。さっ、立って!」
私の差し出した手を、ロッテンマイヤーさんはまじまじと見た。
「……どうして? もうわたくしには、利用できるものなんて何もないわよ? どうせ遅かれ早かれわたくしは死」
「死んだりしません!」
私は素早くさえぎった。
「ロッテンマイヤー様は、死んだりしません。ここを脱出して、神殿経由で隣国へ逃げるんです。この鞄に、宝石とかお金とか、少しですけど入れておきましたから」
私も貴族令嬢であるから、少しは宝飾品も持ってるし、フォール地方で働いたお金もある。これだけあれば、隣国で小さな家を借りて一、二か月、職探しをするくらいの間はもつはずだ。
あぜんとして私を見上げるロッテンマイヤーさんに、私は急かすように言った。
「早く! 見張りの交代時間まで、そんなに間がないんです!」
「……どうしてわたくしを助けようとするの? あなたが聖女だから?」
「違いますよ!」
私は少しイライラして言った。
ここで逃げなければ命の危機だというのに、ロッテンマイヤーさん、悠長すぎる!
「聖女とかそういうのは関係ないです! ロッテンマイヤーさん、頭に来ないんですか!? よってたかって利用されて、あげくポイ捨てされたんですよ! 見返してやるって、そう思わないんですか!?」
「え? ……え?」
ロッテンマイヤーさんは目を白黒させて私を見た。
「聖女だからとか、そんなふざけた理由でロッテンマイヤーさんを助けるわけじゃありません! 私は、ロッテンマイヤーさんを取り巻く状況すべてに、腹が立っているだけです! 理由なんて、しいて言うなら、ロッテンマイヤーさんが美人で、ステキな名前だからです!」
はあ!?とロッテンマイヤーさんが間抜けな声を上げたが、もう待ってはいられない。
私は床に膝をつき、強引にロッテンマイヤーさんから室内履きをはぎ取り、靴を履かせた。良かった、サイズ合ってた。
「さあ立って! でないと無理やり服を脱がせますよ!」
聞きようによっては18禁なセリフだが、誓ってやましい意図はないので、お許し下さい、世界名作劇場(全年齢対象)!
「わたくし……、わたくしは……」
ロッテンマイヤーさんは、戸惑ったように私を見上げた。
そして、小さな声で言った。
「わたくしは……、本当は、ロッテンマイヤーではないの……」
「え?」
「ごめんなさい……。せっかく褒めてくれたのに、ロッテンマイヤーは、わたくしの本当の名前じゃないの……」
ああー、やっぱそうか……。
私は少し残念な気持ちになった。
ロッテンマイヤーって、どう考えても南方の名前だもんね。
隣国の王族の名前じゃないよね、そりゃそうだよね……。
私は、泣きそうな表情のロッテンマイヤーさん(偽名)の肩を軽くたたいた。
「いや、いいんですよ、名前は違っても、ロッテンマイヤーさんが美人なのに変わりはないんだし」
「わたくし……」
ロッテンマイヤーさん(偽名)が、私を見上げて言った。
「わたくしの本当の名前は、クララっていうの……」
衝撃の告白に、私はグフォッと吹き出し、床に倒れ込んだ。
マジ!?
ちょっと、ウソでしょ、クララって!
「マリア様!? マリア様、大丈夫!?」
お腹を押さえてうずくまる私に、ロッテンマイヤー改めクララが慌てたように声をかけた。
「どこか痛むの!? 誰か……」
「……い、いえ、だいじょうぶ……、です」
ふうーと深呼吸し、私は上体を起こした。
「ク……、クララ、様……」
私はよろよろと立ち上がり、クララに手を差し伸べた。
クララは素直に私の手をとり、立ち上がった。
「……クララが立った!」
我慢できずに言ってしまった。
呼び捨てにしてごめんなさい、でもどうしても、どうしても言いたかったんです……。
こぶしを握り、感動に打ち震える私を、クララが不思議そうな目で見ていた。
応援ありがとうございます!
22
お気に入りに追加
6,402
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる