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41.偽聖女の後悔
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その後、私は全力を出して牢内の怪我人、すべてを治療した。
がんばりすぎて頭がクラクラしたが、必死に意識を保ち、治療を終えた。
「マリア、大丈夫? ずいぶん顔色が悪いけど」
「……ううん、平気」
私は申し訳なさすぎてリリアの顔を見られなかった。
私のバカな浅知恵のせいで、リリアに辛い思いをさせてしまった。
リリアは普段、王妃様付きの侍女として働いている。
こんな風に限界まで魔力を使用することなど、当たり前だが一度もないはずだ。
それなのに、私が頼んだから、リリアは無理に治癒術をかけ続けてくれた。
本当にごめん。ごめんなさい。
うなだれる私に、リリアも王子様も困惑した様子だった。
牢内の治療を終えたため、私達は地上に戻った。
地下牢では時間の経過がわからなかったが、外はすでに黄昏時になっていた。
「殿下、お時間をとらせてしまい、重ね重ね申し訳ございません。今日はどうもありがとうございました」
「そんなことはかまわないが。……体調は本当に大丈夫なのか?」
王子様の言葉に、さらに申し訳なさがつのる。
「私は平気です。どうかリリアについていて下さいませんか」
「まあ、マリア、わたしは大丈夫よ。あなたが祝福してくれたんだもの」
にこっと笑いかけられ、罪悪感で胸が痛んだ。
「ああ、彼女は僕がちゃんと送り届けよう。……が、あなたに少し話がある。リリア、向こうで待っていてくれるか?」
リリアは王子様の言葉に礼をし、私に微笑みかけた。
「それではまたね、マリア。あなたが気にすることは何もないのよ、本当に」
「リリア……」
容姿も性格も完璧な聖女だ。
なのに何故、力が発動しないんだろう。
考え込む私に、王子様が言った。
「……あなたは、何か隠しているね」
「殿下」
私は驚いて顔を上げた。
すぐ近くに王子様の顔がある。
「あなたは、彼女が祝福の力をふるうのを期待していたようだった」
王子様の言葉に、私はぎくりと体をこわばらせた。
さすが王子様。カンが鋭い。
「それは……」
「何故そんなことを?」
ど、どうしよう。
本当の理由を打ち明けるわけにはいかないが、うまい言い訳も思い浮かばない。
「わ、私はただ」
王子様から顔を背けると、ぐいと顎をつかまれ、強引に視線を合わせられた。
「聖女どの」
その時だった。
黒く鞭のようにしなる闇が、ひゅん、と王子様の腕にからみついた。
「えっ!?」
とっさに王子様が何かの術を放ち、その闇を切り払う。
私が唖然として立ち尽くしていると、
「マリア」
ぜいぜいと息を切らしたお兄様が、視線の先に立っていた。
……お兄様、いま王太子殿下に対して、攻撃魔法つかいませんでした!?
がんばりすぎて頭がクラクラしたが、必死に意識を保ち、治療を終えた。
「マリア、大丈夫? ずいぶん顔色が悪いけど」
「……ううん、平気」
私は申し訳なさすぎてリリアの顔を見られなかった。
私のバカな浅知恵のせいで、リリアに辛い思いをさせてしまった。
リリアは普段、王妃様付きの侍女として働いている。
こんな風に限界まで魔力を使用することなど、当たり前だが一度もないはずだ。
それなのに、私が頼んだから、リリアは無理に治癒術をかけ続けてくれた。
本当にごめん。ごめんなさい。
うなだれる私に、リリアも王子様も困惑した様子だった。
牢内の治療を終えたため、私達は地上に戻った。
地下牢では時間の経過がわからなかったが、外はすでに黄昏時になっていた。
「殿下、お時間をとらせてしまい、重ね重ね申し訳ございません。今日はどうもありがとうございました」
「そんなことはかまわないが。……体調は本当に大丈夫なのか?」
王子様の言葉に、さらに申し訳なさがつのる。
「私は平気です。どうかリリアについていて下さいませんか」
「まあ、マリア、わたしは大丈夫よ。あなたが祝福してくれたんだもの」
にこっと笑いかけられ、罪悪感で胸が痛んだ。
「ああ、彼女は僕がちゃんと送り届けよう。……が、あなたに少し話がある。リリア、向こうで待っていてくれるか?」
リリアは王子様の言葉に礼をし、私に微笑みかけた。
「それではまたね、マリア。あなたが気にすることは何もないのよ、本当に」
「リリア……」
容姿も性格も完璧な聖女だ。
なのに何故、力が発動しないんだろう。
考え込む私に、王子様が言った。
「……あなたは、何か隠しているね」
「殿下」
私は驚いて顔を上げた。
すぐ近くに王子様の顔がある。
「あなたは、彼女が祝福の力をふるうのを期待していたようだった」
王子様の言葉に、私はぎくりと体をこわばらせた。
さすが王子様。カンが鋭い。
「それは……」
「何故そんなことを?」
ど、どうしよう。
本当の理由を打ち明けるわけにはいかないが、うまい言い訳も思い浮かばない。
「わ、私はただ」
王子様から顔を背けると、ぐいと顎をつかまれ、強引に視線を合わせられた。
「聖女どの」
その時だった。
黒く鞭のようにしなる闇が、ひゅん、と王子様の腕にからみついた。
「えっ!?」
とっさに王子様が何かの術を放ち、その闇を切り払う。
私が唖然として立ち尽くしていると、
「マリア」
ぜいぜいと息を切らしたお兄様が、視線の先に立っていた。
……お兄様、いま王太子殿下に対して、攻撃魔法つかいませんでした!?
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