(性的に)呪われた騎士を救えと言われても、テニスラケットしか持ってません!

倉本縞

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75.中盤戦(VSイケメンの亡霊)

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「お二人とも、お下がりください!」
 エスターが剣を構えたが、
「よせ、亡霊に剣は効かぬ!」
「しかし、攻撃魔法を使うわけには」
 二人が言い合うのを、わたしは慌てて止めた。

「ちょ、ちょっと待ってください、さっきの言葉、聞こえました?」
 銀色の亡霊は「ここはどこだ」、「彼女はどこにいる」と言っていた。こちらに攻撃を仕掛けようという意図は見えない。だけど、

「言葉? 何の話だ」
 ラインハルトが怪訝そうに言った。
 いや、あの亡霊が言ってたんですけど……、え、まさか幻聴?

 わたしは銀色に透ける亡霊に向き直った。
 なぜか亡霊もわたしを見ている……、ような気がする。
「……あの、あなたは、誰かを探してる……、んです、か?」
 亡霊になんと話しかければいいのか。わたしは恐る恐る、銀色のイケメン亡霊に声をかけた。

《……君は……?》

 不思議そうな声が、頭に響いた。
 おお! 話が通じてる! かもしれない!

「あの、わたしはこっちの世界に魔法で召喚された人間です。……ひょっとして、あなたも同じじゃないですか? この世界に、異世界から召喚されてやって来たんじゃないですか?」

《…………》

「このテニスラケット、これ、あなたの物じゃないですか?」

《……ラケッ、ト……》

 ラケットを見て、亡霊がわたしに向けて手を伸ばした。が、
「ユリ様!」
 エスターがさっとわたしの前に立ち、亡霊に剣を向けた。

「亡霊に不用意に関わってはなりません、危険です!」
「いや、あの人、ひょっとしたらわたしと同じ世界の人かも」
「しかし」
 エスターと言い合っていると、

《ラケット……、呪具……》

 亡霊が一歩、わたし達に向かって足を踏み出した。

《それは、僕の、モノだ……、カエ、セ……!》

 な、なんか頭に響く口調が変化している。
 よくわからないけどマズい感じ。

「ユリ様、お下がりください!」
「……やむを得ん、魔法を使うぞ」
 ラインハルトが杖を構える。エスターも剣先を亡霊に向けたままで、二人ともやる気満々だ。
 対する亡霊も、全身に銀色の炎がゆらめいている。こっちも臨戦態勢って感じ。

「いやいやいや、ちょっと待って! これ、このテニスラケット! これが欲しいなら返しますから! だからちょっと話を」
 亡霊の手の平に、めらめらと銀色の炎が燃え上がり、ボッと大きく膨れ上がった。
 そのまま、手の平をこちらへ向けて――
「ユリ様!」
『炎の盾!』

 銀色の炎が一直線にこちらに向かって飛んでくる。これは『炎の槍』だ。しかも、かなり威力が高い。以前のラインハルトと同じか、それ以上の……。

 エスターがわたしを隠すように、ぎゅっと抱きしめた。
 ラインハルトの魔法だけでは防ぎきれないと思ったのか、自ら盾となってわたしを守ろうとしている。
「エスター、やめて!」
 もがいたが、エスターの腕は緩まなかった。
「やめて!」

 ラインハルトの防御魔法を破り、銀色の炎が凄まじい勢いでわたしに向かって襲いかかってきた。

 どうしよう!

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