79 / 88
75.中盤戦(VSイケメンの亡霊)
しおりを挟む「お二人とも、お下がりください!」
エスターが剣を構えたが、
「よせ、亡霊に剣は効かぬ!」
「しかし、攻撃魔法を使うわけには」
二人が言い合うのを、わたしは慌てて止めた。
「ちょ、ちょっと待ってください、さっきの言葉、聞こえました?」
銀色の亡霊は「ここはどこだ」、「彼女はどこにいる」と言っていた。こちらに攻撃を仕掛けようという意図は見えない。だけど、
「言葉? 何の話だ」
ラインハルトが怪訝そうに言った。
いや、あの亡霊が言ってたんですけど……、え、まさか幻聴?
わたしは銀色に透ける亡霊に向き直った。
なぜか亡霊もわたしを見ている……、ような気がする。
「……あの、あなたは、誰かを探してる……、んです、か?」
亡霊になんと話しかければいいのか。わたしは恐る恐る、銀色のイケメン亡霊に声をかけた。
《……君は……?》
不思議そうな声が、頭に響いた。
おお! 話が通じてる! かもしれない!
「あの、わたしはこっちの世界に魔法で召喚された人間です。……ひょっとして、あなたも同じじゃないですか? この世界に、異世界から召喚されてやって来たんじゃないですか?」
《…………》
「このテニスラケット、これ、あなたの物じゃないですか?」
《……ラケッ、ト……》
ラケットを見て、亡霊がわたしに向けて手を伸ばした。が、
「ユリ様!」
エスターがさっとわたしの前に立ち、亡霊に剣を向けた。
「亡霊に不用意に関わってはなりません、危険です!」
「いや、あの人、ひょっとしたらわたしと同じ世界の人かも」
「しかし」
エスターと言い合っていると、
《ラケット……、呪具……》
亡霊が一歩、わたし達に向かって足を踏み出した。
《それは、僕の、モノだ……、カエ、セ……!》
な、なんか頭に響く口調が変化している。
よくわからないけどマズい感じ。
「ユリ様、お下がりください!」
「……やむを得ん、魔法を使うぞ」
ラインハルトが杖を構える。エスターも剣先を亡霊に向けたままで、二人ともやる気満々だ。
対する亡霊も、全身に銀色の炎がゆらめいている。こっちも臨戦態勢って感じ。
「いやいやいや、ちょっと待って! これ、このテニスラケット! これが欲しいなら返しますから! だからちょっと話を」
亡霊の手の平に、めらめらと銀色の炎が燃え上がり、ボッと大きく膨れ上がった。
そのまま、手の平をこちらへ向けて――
「ユリ様!」
『炎の盾!』
銀色の炎が一直線にこちらに向かって飛んでくる。これは『炎の槍』だ。しかも、かなり威力が高い。以前のラインハルトと同じか、それ以上の……。
エスターがわたしを隠すように、ぎゅっと抱きしめた。
ラインハルトの魔法だけでは防ぎきれないと思ったのか、自ら盾となってわたしを守ろうとしている。
「エスター、やめて!」
もがいたが、エスターの腕は緩まなかった。
「やめて!」
ラインハルトの防御魔法を破り、銀色の炎が凄まじい勢いでわたしに向かって襲いかかってきた。
どうしよう!
0
お気に入りに追加
241
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、
目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
楠ノ木雫
恋愛
病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。
病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。
元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!
でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

異世界に行った、そのあとで。
神宮寺 あおい@受賞&書籍化
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる