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翌朝…

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翌朝、美代子は仕事に向かった。彼女は地元の博物館の館長をしていた。ゴールデンウイークでも休みは無いようだ。二人の娘が朝食を用意してくれていた。ゆうとゆめは、みつきにまとわりついている。
「みつき姉さん、来年も来てね」山名家を後にするとき、名残惜しそうに姉妹が手を振っていた

「みつきはすっかり気に入られたようだね」美代子の勤務する博物館に向かう途中、私はみつきに言った
「そうですね、ジンギスカン屋さんであったとき、あの子たちがサインを送ってきたんです。ユリっ子にはユリっ子にしかわからないサインがあるんでよ」
「そうなの、どんなサイン」
「な・い・しょ」みつきは楽しそうに微笑んだ

美代子が館長を務める博物館は図書館に隣接されており、街の高台にあった。
「この町は昔かなり栄えていたのね」知識欲の高い高学歴のみつきは展示物に興味津々のようだ。
「そうか、柳田〇男の作品はここをモチーフにしていたのね、ふむふむ」名前くらいは知っている作家についてうんちくを語るみつき、しかし私の頭にはちっとも入って来ない。
「いらっしゃいませ」美代子が近づいて来た。胸には金バッジに館長とあった
「こんにちは、館長さん」みつきが芝居がかった挨拶をした
「どうですか、この町の歴史は」
「とっても興味深いです」
「お連れ様は少し飽きちゃったようですね」美代子が私に微笑みかけた
「いえいえ、とっても興味深いですよ、館長さん」
「ふふ、ノンらしい、上の階の巨大スクリーンで物語を上映しているからどうぞ」館長の案内で我々は階段を昇った。
「こんにちは館長さん」すれ違う小学生たちが美代子に挨拶して行く。その一人一人に美代子は笑顔で挨拶を交わす
「美代子さん、子供好きなんですね」みつきが感心している
「ええ、大好きですよ」美代子が私を見つめて微笑んだ

スクリーンで15分ほどの物語が5本選べるようになっていて、みつきがその一つを選んだ。20人くらいの観客がベンチに腰掛け上映を見入っている。一番後ろのベンチに腰掛け私たちは上映を楽しんだ。その物語は少し切ない話になっていた。館内を見回っていた美代子が上映終了の数分前に再び現れ、そして私の耳元で囁いた
「赤ちゃん出来てたら産むね」その言葉に私はハッとしたが、みつきに悟られないようにそれ以上は美代子と会話をしなかった

「ここから出て、石段を上ると、神社があって、さらに上に昇ると公園があるの。そこから町が一望できて、桜も見ごろよ」入口とは別の出口を美代子に案内され、私たちは美代子と別れた
「また来年も絶対美代子さんたちに会いに来ようね」みつきは上機嫌で石段を登りはじめた。すると桜の花びらが舞って、祭り太鼓の音色が響いた。神社では子供たちの太鼓に合わせた舞踊が披露されていた。その様子を横目に見ながら、私たちは頂上の公園にたどり着いた。息を切らし、昇りついたその先には、街の風景と数本の巨大な桜が咲き誇っていた。
「高台だから、少し咲くのも遅いのね」ゴールデンウイークの後半にこのエリアでソメイヨシノの花を愛でられるのは珍しい。私はさっきの美代子の囁きが気になっていたが、みつきの微笑みと、街の風景と散りゆく桜の美しさに心が満たされて行った。

遠野の街を離れると、私たちは仙台に戻り、街歩き、ご当地グルメを満喫し、お土産を沢山買い込んだ。そして、日常生活の拠点であるS県に向けて車を走らせた
「とっても楽しい旅だったな~」みつきが旅の思い出を振り返る
「そうだね、みつきの喜ぶ顔が見れてとっても良かった」
「ふふ、ノン様はとっても優しい。私もノン様の優しさや、夜のタフさに触れて楽しかった」
「そんなに夜、タフだったかな」
「すっごいタフだよ~」みつきの手が私の股間に触れた
「おいおい、もう無理だよ」
「やだ~、この辺で少し休憩して行こう」車はようやく北関東に差し掛かったくらいだった。
「そうだね、明日帰ればいいね」
「やった~」私たちは街道沿いのラブホに入り、旅の余韻を楽しんだ…
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