星降る夜を貴方に

ごま

文字の大きさ
上 下
34 / 50

発覚と報告

しおりを挟む


とりあえず、教室の前まで戻ってきたけど__中で誰か話しているみたいだ。

扉の近くに背中をつけて耳を壁に押し当て中の様子を探る。

廊下に人があまり残っていないので、少し大胆に行動してしまっているけど冷静になるとこの体勢やばいな~

さっさと中に入った方が、手っ取り早く決定打得られたりしないかな。

てっきり、先生と受験者2人で話していると思っていたけど3人?4人中にいるみたい。

体を壁から離して息を吐いたその瞬間後ろから声をかけられた。

「どうかした?」

教室の中に意識を向けていた為、ものすごくびっくりした。……さっきの体勢見られてないよね!?

振り返ると、試験前に教室を出ていった4人のうちの1人が立っていた。

「えっと、この教室で先生が相談に乗ってくれると聞いたので来てみたのですが…」

「ああ!君もなのか。さあさあ中に入って。」

「え?あ、はい」

よく分からないまま、その人に押されて教室に入ってしまった。



中には、顔面蒼白の男性とその周りを囲うように立つ2人の男性。教卓の前には、監督の先生がいて女性と話している。

「この教室では、試験に不安がある子たちへの救済を行っているんだよ。」

「そうなんですね」

救済?何をしているの?

「…具体的にはどのようなことを?」

「試験に受からないけど、どうしても学園に入学したいっていう子にお金を貸したり、告発しないであげたり…ね」

「なるほど、それはすごいですね。」

そんなのは救済なんかじゃない。弱みを握って意のままに操ろうとしているだけ。どうせ、利息も法外なんでしょう?ただの地獄への片道切符だ。
……こんなことを堂々とやるなんて、この人には罪悪感というものが無いのね。心底軽蔑するわ。

「それで、君は何に困っているのかい?」

やっぱりなんでもない、では帰れないよね…

「……試験に合格しているかどうかが知りたくて……」

「うーん、残念だけどそれはまだ分からないよ、採点は全ての地点で試験が終わってからだしね。心配なのかな?」

「はい……」

「君は、どうしたい?」

下卑た笑いで私を見つめる目の前の男。こんな汚い奴のせいで未来を摘み取られた人達がいるなんて許せない。

「まだ……決められません。私では、何も分からない。」

憤りを表に出さないように、拳を代わりに震わせて耐える。まだ、まだ。

「そう?じゃあ名前だけ教えて?頼りたくなったら、僕達のところに来てね。僕は、パトリックだ。」

……まったく反吐が出る。そのザマで「高貴なもの」という名前を貰っているのね。本当に滑稽だわ。

「ええ、またパトリックさん。私はセスです。」

ニッコリとパトリックさんに向かって微笑んだ。













「……ただいま戻りました。」

「あぁお疲れ様。どうだった?」

「酷い有り様でした。」

「そうだろうと思ったよ。さぁ、話を聞かせて?」

殿下はくすくすと笑いながら、さも面白そうに私の話を聞いていた。









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

もう二度とあなたの妃にはならない

葉菜子
恋愛
 8歳の時に出会った婚約者である第一王子に一目惚れしたミーア。それからミーアの中心は常に彼だった。  しかし、王子は学園で男爵令嬢を好きになり、相思相愛に。  男爵令嬢を正妃に置けないため、ミーアを正妃にし、男爵令嬢を側妃とした。  ミーアの元を王子が訪れることもなく、妃として仕事をこなすミーアの横で、王子と側妃は愛を育み、妊娠した。その側妃が襲われ、犯人はミーアだと疑われてしまい、自害する。  ふと目が覚めるとなんとミーアは8歳に戻っていた。  なぜか分からないけど、せっかくのチャンス。次は幸せになってやると意気込むミーアは気づく。 あれ……、彼女と立場が入れ替わってる!?  公爵令嬢が男爵令嬢になり、人生をやり直します。  ざまぁは無いとは言い切れないですが、無いと思って頂ければと思います。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

結婚二年目、愛情は欠片もありません。

ララ
恋愛
最愛の人との結婚。 二年が経ち、彼は平然と浮気をした。 そして離婚を切り出され……

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

王子妃だった記憶はもう消えました。

cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。 元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。 実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。 記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。 記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。 記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。 ★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日) ●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので) ●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。  敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。 ●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

別に構いませんよ、離縁するので。

杉本凪咲
恋愛
父親から告げられたのは「出ていけ」という冷たい言葉。 他の家族もそれに賛同しているようで、どうやら私は捨てられてしまうらしい。 まあいいですけどね。私はこっそりと笑顔を浮かべた。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...