星降る夜を貴方に

ごま

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ピクニック

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始まりはこの一言。



「ピクニックしたいわね。」





あれから4人での定期お茶会が決定し、私達は徐々に仲を深めていっている。

今日は、エリザベス様のご要望にそって4人でピクニックに来ている。
シュトラウス領に、綺麗な平原があるのでそこに行こうと4人で決めた。


お弁当は、エリザベス様がご用意して下さるとのことなので、ほとんど手ぶらになってしまった。……申し訳なくてアリスと一緒にクッキーを焼いて持ってきた。

格好もラフなものにしてある。新緑のワンピースにレースの靴下、パンプスを合わせた。




ピクニックなんて久しぶりでとても楽しみだ。
屋敷に集合してそこから馬に乗って目的地まで行くのだけど……

エリザベス様は、というより高位のご令嬢は馬に乗れないし乗らない。でも、せっかくお家にお馬さんがいるのに乗らないなんてもったいないと思って私はよく乗っている。

だから、私は1人でも目的地までみんなを先導していける。なのに。



「俺と一緒に乗ってくれないの?」

「へ?」



スティール様に、お願い?をされてしまっため1人で乗る気満々だった恋愛初心者の私にハードモードが課されたのだった……












はぁ~今から乗る時のことを想像してしまって胸がドキドキする……スティール殿下は、きっと、私のことを気遣ってああ言って下さったんだ、だから、それ以外の気持ちはない!



……そう、ないんだから。






その後、屋敷に到着した3人と目的地まで向かう。いよいよ、2人1組になって馬に乗る。


「ん。」


「あ、ありがとうございます。」


スティール様に手伝ってもらい、馬に跨った。
1人では乗りなれているけれど、2人で乗るのは初めてなので、緊張する。……なんだか景色も違って見える気がした。



「それじゃあ出発しようか。」


「うん。」

ルブラン殿下の呼び掛けに答えたスティール殿下が、ゆっくりと馬を走らせて行く。

横座りだと、落ちそうで怖い。スティール殿下の両腕があるとは言えなかなかの不安感が拭えない。……これは恥を忍んで言うしかないかぁ。




「あの、殿下……。」

スティール殿下の眉間にシワがよった。

「呼び方。」


「……スティール殿下。」


「…わざと?それとももう忘れたの。」


少し、拗ねたような声色で言う。


「……スティール、様。」


「なに?」

素っ気ない返事なのに、表情はとても柔らかくて、瞳が優しくて。…少しずるいなと思った。







それは、いつものように4人でお茶会をしていた時のこと。



エリザベス様と、ルブラン殿下を2人だけにするために、スティール殿下と席を離れていた。


『 ねぇ、俺のことも呼び捨てにしてよ。』

『…恐れ多いです。 』

『俺は、エリザベス嬢との関係までにはいかなくとも仲良くなれていると思ったけど。……この関係をもっと気兼ねないものにしたいんだ。 』

『 ……スティール、様。しばらくは、これで勘弁してくださいませ…』

『 ありがとう。』


…殿下の立場を考えると、自分ではいけないような気がしてくる…でも。

殿下の立場だからこそ、スティール様だからこそ、応えたい、とそう思ってしまった。


あの時の、あの嬉しそうな笑顔が瞼に焼き付いて離れてくれない。










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