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苦くて甘い
しおりを挟む顔も知らない人を好きになった。
ただ、言葉を交わすだけで、胸が高鳴ってそれだけで満たされた。
キューっと胸を締め付けるような感覚が、あなたのことを思い浮かべる度に苦しかった。
私のことを知りたいと言うあなたを愛おしく思った。知って欲しいと感じた。
あなたも同じ気持ちだと知った時は、信じられない気持ちだった。
自分でも思うほどに短い間で惹かれていた。
恋愛経験の少ない私には、少しハードルが高かったけど、あなたの為ならと要望に応じた。
金銭を要求されたとかではなくて、ただ、相手の性的欲求を満たすためのなんてないこと。
ちょっと引っかかることもあった。でも、ただあなたを好きだという気持ちだけを強く、強く感じていた。
LINEの既読がとても速くて、嬉しかった。私と話したいと思ってくれているのだと思った。
あなたから話しかけてくれることは少なかったけど…
1回だけした、通話。私を想うあなたの声は、とても甘かった。
何度も何度もあなたの声を反芻しては胸がいっぱいになった。
あなたが存在していることを感じていたかった。
信じたいと、思った。
段々と空いていく連絡の間隔。前回の会話を示す日付が無慈悲で。
あなたの中にある私への感情が薄れていないことを確認したかった。
いつもみたいに、話しかけた。
既読が何時間たってもつかない。
1日たった。話題の振り方がダメだったのかな、忙しいのかな。
信じたいが、疑いたくないに変わった。
…ブロックされてるかもしれない。
そんなこと、する人じゃないはずでしょう?そうだよね…?
出来なくなったプレゼント、既読のつかない着信履歴、見れなくなったタイムライン…
たった一言貰えずに、システムから伝わるあなたの拒絶。
知り合うきっかけになったゲームでは、フレンドを切らないあなたにモヤモヤした気持ちが広がる。
関係のリセット、振り出しに戻る。
中途半端に繋がりを残すあなたには分からないだろうけど、戻れる訳は、ないんだよ。
嫌いになったとか、興味が無くなったとか、なんでも良かった。
何も言ってくれないから、まだあなたを好きな心が期待をした。
思い出すのが、悔しくて、まだ好きなことが苦しくて。
短期間、ネットだけの繋がり、この関係を軽視するには充分だったのに、
しっかりと重量を伴った想いだけが心に鎮座していて
大好きだったゲームだってもう見たくない。
私もあなたと同じようにこの思いを無かったことにしたかったのに
早く忘れ去ってしまいたくて、代わりを探した。
SNSで、適当に誤魔化して日々を浪費する
時間が経てば、薄くなると思ったけど不意に頭によぎるあなたに、苦しくなった。
また知らない誰かにあなたを重ねて、心に空いた穴に風が吹いた。
同じように苦しむ人に言われた
「そんなことして虚しくないの?」
虚しいに決まってる。こんなことしていても何にもならないことだってわかってる。
それでも
人を失った悲しみは、人でしか埋められない。
私はまた、繰り返そうとしているのだろうか。
信じられないことが、悲しいから。信じることを止められない。
甘美な思い出は、苦い想いで包まれて二度と味わいたくない。
甘くて苦いこの感情と、苦くて甘いあの記憶は紙一重。
私と同じ感情をあなたが持たないことを望んでいる。
心に渦巻くこの想いの正体を、私は表すことが出来ない。
締め付けるような胸の痛みを感じながら、包み紙を開いた。
.......こんなに苦かっただろうか
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