【完結】悪役令嬢の妹ですが幸せは来るのでしょうか?

まるねこ

文字の大きさ
上 下
49 / 52

ー if story ー カイン1

しおりを挟む

 セシリアが遅い朝食を食べている間に、出発の準備もすっかり整っていたので、早速、大国ゼフィランスに向かうコトを告げる。

 とにかく、アゼリア王国の権力が届く範囲から、逃げないとね
 思い入れも何にもない、あの国の為に、もう、あんな苦しい思いしたくないし

 グレンは少しだけ微妙な顔をしたが、何も言わずに頷いて、今までセシリアが使っていた椅子とテーブルを馬車の中にしまい、御者台へと向かう。

 お腹が、ポテポテコロコロした感じになったレオと、グリフォンの雛
 私の周りを走る姿、なんか可愛くて、癒されるわぁ~……

 ほっこりしているセシリアの視線の先で、ルリは、ちょっと首を傾げてから、楽しそうに走り回っていたレオとグリフォンの雛を捕獲する。

 「アタシは、こいつら連れて先に入ってるよ…リアもユナも、さっさとはいっといで」

 ルリはそう言って、捕まえた2人を左右の腕に抱えて、馬車の中に入っていた。

 うふふふ……おチビちゃん達も、馬車に入ったコトだし、私達も入りますか

 「それじゃ、私達も馬車に入ろうか、ユナ」

 「うん」

 ユナと手を繋ぎ、セシリアは楽し気に馬車に乗るのだった。
 全員が馬車に乗り、忘れ物が無いコトを確認し、グレンは馬車を出発させた。

 「あっ…動き始めた……たぶん、この馬車って、それなりに良いモノなんだろうけど、けっこう振動がきついよねぇ………」

 セシリアの言葉に、ルリが首を傾げる。

 「こんなモンじゃないのかい?…アタシが檻に入れられて乗せられたモノはもっとガタガタいってたけど?」

 「う~ん……ユナは記憶が無いから…わからないなぁ……」
 
 などと話している間に、レオとグリフォンの雛は、セシリアが寄りかかるのに使っていたクッションのひとつに、ひっつい2人で眠っていた。

 「あらあら……もう、ねむっちゃったのねぇ~…ふふふふ…可愛いわぁ~…」

 異種族だけど、兄弟みたいに育ってくれるかなぁ~…
 それにしても、はたから観たアレは、いっちゃなんだけど

 かなり、面白かったなぁ……はぁ~……
 この世界って、ラノベあるある的に、ろくな娯楽が無いからねぇ……

 ずぅ~っと、つらく苦しい生活だったけど、今は自由なんだから
 これからの今生は、豊かなスローライフを目指すわよ

 勿論、それには豊かな食生活も欠かせないわ
 大国…それも帝国と付く強国なら、色々な作物の種とかもあるだろうし

 辺境に行く前に、色々と仕入れないとねぇ………
 香辛料に、作物の種、出来れば薬草の種も欲しいわねぇ

 下手すっと、お金よりも、物々交換が主流のところもあるだろうしね
 ……っと、今日こそは、グレンに金貨とかの価値を聞かないと

 たしか、デュバインが崩したお金も入れたって言ってたけど
 何処にいれたのかなぁ?

 次の休憩の時にでも、探して聞かないとね
 ああ、あと、聞こうと思っていたコト思い出したわ

 「あっ…そうだ…ルリ、聞こうと思っていたんだけど、昨日のお肉とか、どうしてんの?」

 「うん?どうしてんの?ってはどういう意味だい?」

 「いや、だって…魔道具の冷凍庫とか無いでしょ?あのままだったら、腐っちゃうでしょ?」

 セシリアの説明に、ルリがなるほどと言う表情で頷く。

 「ああ、そういう意味かい……それなら、ほら…あの一角に積み込んで、アタシが《時止め》の魔法をかけておいたよ」

 その言葉で、ルリが特殊な魔獣であるコトを、改めて知る。
 同時に、させなくて良い魔力の消費をさせたことに罪悪感を感じる。

 なんと言っても、今のルリは、極度な栄養失調に魔力だって不安定た妊娠中なのだから。
 できるなら、出産した後、身体が癒えるまで、無理をさせたくないと思ったいただけに、自分の失態に頭痛を覚えつつ言う。

 「えっとね……その……アイテムボックスあるんだけど」

 セシリアの言葉に、バッと振り返ったルリが言う。

 「本当に?」

 「うん…この腕輪がアイテムボックス…あと、マジックポーチもあるよ」

 私の言葉に、ルリは脱力して言う。

 「そういうのは、早く言って欲しかったわぁ……アイテムボックスやマジックポーチがあるなら、アタシが無理して《時止め》使わなくてよかったんじゃない………」

 クテっとしてみせるルリに、セシリアは腰に着けなおしたばかりのマジックポーチをはずして言う。

 「なんなら、マジックポーチ、ルリが持つ?」

 セシリアの言葉に、ちょっと悩む素振りをみせてから、ルリは首を振って言う。

 「いいや、それだったら、そのマジックポーチはユナに持たせな……アタシは狩りをするから、持っているのにむかないよ」

 「ああ…そっか……それじゃ、このマジックポーチはユナが持っててね」

 昨日の魔獣も、ルリが獲ったって言ってたっけ
 解体されていたから、どんな魔獣だったか知らないけど

 たぶん、聞かない方が良いよね……
 正体を知って食べられなくなるのはイヤだもん

 「はい……ユナが持つね………ルリお姉ちゃん、マジックポーチに入れるから、もう《時止め》をはずして良いよぉ…魔力を食うんでしょ」

 「ああ、助かるよ……流石に、ずっと《時止め》を維持すると、魔力が減るからねぇ……こんなに、弱った身体じゃなきゃぁ……たいしたコトないんだけどねぇ……はぁ~…」

 ルリが《時止め》を解除したと同時に、ユナが壷などに入ったモノを次々としまう。
 そして、今着ないような衣類など、直ぐ使わないモノを次々とマジックポーチに入れて行く。

 保存食や水の壷なども、すべてマジックポーチの中に消え、馬車の中が広くなったコトで、セシリアはちょっと落ち込む。

 嗚呼…いくらテンパリ状態だからって、気付こうよ私
 最初からこうしたら、もっと馬車の中を広く使えたんだよねぇ

 「ふふふふ…随分と広くなったねぇ……これなら、アタシも本体の姿なっても良いねぇ…昨日、リアが毛皮を被っても寒そうに寝てたからね……本体で添い寝してやれるよ」

 ルリの言葉に、セシリアは内心でちょっとウホッとする。

 うわぁ~…モフモフのルリの添い寝……凄く楽しみぃ~……うふふふ

 猫型魔獣のルリに、もふりついて寝る夢想にちょっとうっとりするセシリアに、ルリが尋ねる。

 「そう言えば、あの『隠蔽結界』とかいうヤツ解いたのかい?」

 ルリの言葉に、セシリアは馬車の天井の上を視る。

 あははは………張ったまま忘れていたわ………どうしようかなぁ?
 このままでも、大丈夫だとは思うけど…ここは、それとなくルリに聞いてみよう

 「あっ…張ったままだったわ……でも…このままでも支障ないから良いかな?」

 セシリアの言葉に、ルリは頭痛を覚えたようにこめかみに指先をあてていう。

 「あるに決まっているだろう……リアは、弱っているんだよ」

 と、静かな叱責に、肩を竦め、ペロッと舌を出し、てへぺろをしつつ、隠蔽結界を解除するのだった。

 今の私がやっても、可愛くないかもだけど、てへぺろしかないわ
 あ~あ…ルリに怒られちゃった


 







しおりを挟む
感想 542

あなたにおすすめの小説

【完結済】どうして無能な私を愛してくれるの?~双子の妹に全て劣り、婚約者を奪われた男爵令嬢は、侯爵子息様に溺愛される~

ゆうき
恋愛
優秀な双子の妹の足元にも及ばない男爵令嬢のアメリアは、屋敷ではいない者として扱われ、話しかけてくる数少ない人間である妹には馬鹿にされ、母には早く出て行けと怒鳴られ、学園ではいじめられて生活していた。 長年に渡って酷い仕打ちを受けていたアメリアには、侯爵子息の婚約者がいたが、妹に奪われて婚約破棄をされてしまい、一人ぼっちになってしまっていた。 心が冷え切ったアメリアは、今の生活を受け入れてしまっていた。 そんな彼女には魔法薬師になりたいという目標があり、虐げられながらも勉強を頑張る毎日を送っていた。 そんな彼女のクラスに、一人の侯爵子息が転校してきた。 レオと名乗った男子生徒は、何故かアメリアを気にかけて、アメリアに積極的に話しかけてくるようになった。 毎日のように話しかけられるようになるアメリア。その溺愛っぷりにアメリアは戸惑い、少々困っていたが、段々と自分で気づかないうちに、彼の優しさに惹かれていく。 レオと一緒にいるようになり、次第に打ち解けて心を許すアメリアは、レオと親密な関係になっていくが、アメリアを馬鹿にしている妹と、その友人がそれを許すはずもなく―― これは男爵令嬢であるアメリアが、とある秘密を抱える侯爵子息と幸せになるまでの物語。 ※こちらの作品はなろう様にも投稿しております!3/8に女性ホットランキング二位になりました。読んでくださった方々、ありがとうございます!

毒家族から逃亡、のち側妃

チャイムン
恋愛
四歳下の妹ばかり可愛がる両親に「あなたにかけるお金はないから働きなさい」 十二歳で告げられたベルナデットは、自立と家族からの脱却を夢見る。 まずは王立学院に奨学生として入学して、文官を目指す。 夢は自分で叶えなきゃ。 ところが妹への縁談話がきっかけで、バシュロ第一王子が動き出す。

永遠の誓いを立てましょう、あなたへの想いを思い出すことは決してないと……

矢野りと
恋愛
ある日突然、私はすべてを失った。 『もう君はいりません、アリスミ・カロック』 恋人は表情を変えることなく、別れの言葉を告げてきた。彼の隣にいた私の親友は、申し訳なさそうな顔を作ることすらせず笑っていた。 恋人も親友も一度に失った私に待っていたのは、さらなる残酷な仕打ちだった。 『八等級魔術師アリスミ・カロック。異動を命じる』 『えっ……』 任期途中での異動辞令は前例がない。最上位の魔術師である元恋人が裏で動いた結果なのは容易に察せられた。 私にそれを拒絶する力は勿論なく、一生懸命に築いてきた居場所さえも呆気なく奪われた。 それから二年が経った頃、立ち直った私の前に再び彼が現れる。 ――二度と交わらないはずだった運命の歯車が、また動き出した……。 ※このお話の設定は架空のものです。 ※お話があわない時はブラウザバックでお願いします(_ _)

王妃は涙を流さない〜ただあなたを守りたかっただけでした〜

矢野りと
恋愛
理不尽な理由を掲げて大国に攻め入った母国は、数カ月後には敗戦国となった。 王政を廃するか、それとも王妃を人質として差し出すかと大国は選択を迫ってくる。 『…本当にすまない、ジュンリヤ』 『謝らないで、覚悟はできています』 敗戦後、王位を継いだばかりの夫には私を守るだけの力はなかった。 ――たった三年間の別れ…。 三年後に帰国した私を待っていたのは国王である夫の変わらない眼差し。……とその隣で微笑む側妃だった。 『王妃様、シャンナアンナと申します』 もう私の居場所はなくなっていた…。 ※設定はゆるいです。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

喋ることができなくなった行き遅れ令嬢ですが、幸せです。

加藤ラスク
恋愛
セシル = マクラグレンは昔とある事件のせいで喋ることができなくなっていた。今は王室内事務局で働いており、真面目で誠実だと評判だ。しかし後輩のラーラからは、行き遅れ令嬢などと嫌味を言われる日々。 そんなセシルの密かな喜びは、今大人気のイケメン騎士団長クレイグ = エヴェレストに会えること。クレイグはなぜか毎日事務局に顔を出し、要件がある時は必ずセシルを指名していた。そんなある日、重要な書類が紛失する事件が起きて……

【完結】冤罪で殺された王太子の婚約者は100年後に生まれ変わりました。今世では愛し愛される相手を見つけたいと思っています。

金峯蓮華
恋愛
どうやら私は階段から突き落とされ落下する間に前世の記憶を思い出していたらしい。 前世は冤罪を着せられて殺害されたのだった。それにしても酷い。その後あの国はどうなったのだろう? 私の願い通り滅びたのだろうか? 前世で冤罪を着せられ殺害された王太子の婚約者だった令嬢が生まれ変わった今世で愛し愛される相手とめぐりあい幸せになるお話。 緩い世界観の緩いお話しです。 ご都合主義です。 *タイトル変更しました。すみません。

婚約破棄ですか。お好きにどうぞ

神崎葵
恋愛
シェリル・アンダーソンは侯爵家の一人娘として育った。だが十歳のある日、病弱だった母が息を引き取り――その一年後、父親が新しい妻と、そしてシェリルと一歳しか違わない娘を家に連れてきた。 これまで苦労させたから、と継母と妹を甘やかす父。これまで贅沢してきたのでしょう、とシェリルのものを妹に与える継母。あれが欲しいこれが欲しい、と我侭ばかりの妹。 シェリルが十六を迎える頃には、自分の訴えが通らないことに慣れ切ってしまっていた。 そうしたある日、婚約者である公爵令息サイラスが婚約を破棄したいとシェリルに訴えた。 シェリルの頭に浮かんだのは、数日前に見た――二人で歩く妹とサイラスの姿。 またか、と思ったシェリルはサイラスの訴えに応じることにした。 ――はずなのに、何故かそれ以来サイラスがよく絡んでくるようになった。

処理中です...