37 / 52
36
しおりを挟む
翌日、ローサに起こしてもらい、ローサに準備してもらい、ローサと共に辻馬車に乗って侯爵家へ向かった。私ってばローサがいないと何にも出来ない子になりそう。
久々の侯爵家。3年ぶりね。
「トレニアお嬢様、お帰りなさい」
侯爵邸の扉を開けると使用人達が総出で迎えてくれた。中には涙してくれている侍女もいてこっちまで涙が出てしまいそうになった。あの時は自分の事だけで精一杯だったなとしみじみ思う。
「お父様は執務室かしら?」
執事に聞くとお父様とルーカス様は執務室に居るらしい。執事の案内で執務室へと入るとあの時より痩せた父とルーカス様がソファに座っていた。
やはりお姉様達に苦労させられっぱなしなのかしら。
「お父様、ルーカス様お久しぶりです。今日は隣国から帰国した報告とお土産を持ってきました」
私はブランデーと葉巻を渡すと父は喜んでいる様子。
「トレニア、有難う。ところで仕事の方はどうだ?辛くはないか?」
「お父様、ファーム薬師長や他の方々からも良くして貰っていてとても楽しく仕事をしています。このブランデーと葉巻もカイロニアのカイン殿下のお勧めだそうですわ。今は仕事をし始めて沢山の人に会って充実していますし、やりがいも感じています。
そうだ、ルーカス様。先日初子が産まれたとローサから聞きました。おめでとうございます。待望の男の子だそうですね。これは少しですが私からのお祝いです。これでガーランド侯爵家も安泰ですね」
私はローサから伝え聞いて慌てて出産祝いの品を買ったの。洋服と小さなぬいぐるみをルーカスに渡す。
「トレニア、有難う。トレニア、ガーランド邸にいつでも帰っておいで。お義父上も寂しがっているからね」
父が寂しがっている?
何の冗談かしら?
あ、母も姉も妹もそういえば居ないのだっけ。まぁ、寂しいかもしれないわね。
「ふふっ。気が向けば邸に寄らせて頂きますね。これからは姉も甥っ子も邸に帰ってくるでしょうし」
ルーカス様は少し困った表情をしている。
「それが、グリシーヌは息子を王都に行かせても自分は別邸から出たくないらしくてね。困ったもんだよ。」
「そうでしたか。甥っ子と乳母だけ来る訳にはいかないでしょうから待つしかないでしょうね」
私が手を出すことは無い。ここは父となったルーカス様や父が頑張っていかないといけない所よね。
「そういえばお父様、ここに来た1番の理由は領地の薬草を数株カイロニア王宮へ送って貰いたいのです」
「そうすると我が家が今まで輸出していた薬草の取引が減るのではないか?」
「実はカイロニアからもここでは入手出来ない薬草を分けて貰ったのです。今、王宮の薬草園に植えていて株をある程度増やしてからガーランド領で栽培をして頂きたいのです。入手した大衆薬の原料なので国内での販売が大幅に見込まれる予定です。
今よりも領地は潤うとお墨付きをファーム公爵から頂いていますわ。そして詳細は陛下の印が付いているこの書類に書いてあるそうです」
サッと私は書類を父に差し出すと父は困惑しながらも領地が潤う事を聞き嫌悪感は無くなったようだ。ルーカス様も一緒に目を通している。
「詳しい話は私には分かりかねるのでファーム公爵から後日連絡があります。その時にお聞き下さい」
「トレニア、有難う。前向きに検討する。薬草の方はしっかりとカイロニアへ送っておくから心配は要らない」
私は用事も済んだのでさっさと邸を出る事にした。父もルーカス様も寂しそうにしていたけれど、私の家はもうここでは無いもの。
私はローサと侯爵家の馬車で寮まで送ってもらい帰ってきた。いつのまにかローサの手には新しいレシピが書かれた紙があったわ。料理長が私のために用意してくれていたらしい。
感謝よね!
勿論ローサはこっそり料理長にお酒を渡していたみたいだけど。
ふふっ。新しい料理も早く食べたいわ。
久々の侯爵家。3年ぶりね。
「トレニアお嬢様、お帰りなさい」
侯爵邸の扉を開けると使用人達が総出で迎えてくれた。中には涙してくれている侍女もいてこっちまで涙が出てしまいそうになった。あの時は自分の事だけで精一杯だったなとしみじみ思う。
「お父様は執務室かしら?」
執事に聞くとお父様とルーカス様は執務室に居るらしい。執事の案内で執務室へと入るとあの時より痩せた父とルーカス様がソファに座っていた。
やはりお姉様達に苦労させられっぱなしなのかしら。
「お父様、ルーカス様お久しぶりです。今日は隣国から帰国した報告とお土産を持ってきました」
私はブランデーと葉巻を渡すと父は喜んでいる様子。
「トレニア、有難う。ところで仕事の方はどうだ?辛くはないか?」
「お父様、ファーム薬師長や他の方々からも良くして貰っていてとても楽しく仕事をしています。このブランデーと葉巻もカイロニアのカイン殿下のお勧めだそうですわ。今は仕事をし始めて沢山の人に会って充実していますし、やりがいも感じています。
そうだ、ルーカス様。先日初子が産まれたとローサから聞きました。おめでとうございます。待望の男の子だそうですね。これは少しですが私からのお祝いです。これでガーランド侯爵家も安泰ですね」
私はローサから伝え聞いて慌てて出産祝いの品を買ったの。洋服と小さなぬいぐるみをルーカスに渡す。
「トレニア、有難う。トレニア、ガーランド邸にいつでも帰っておいで。お義父上も寂しがっているからね」
父が寂しがっている?
何の冗談かしら?
あ、母も姉も妹もそういえば居ないのだっけ。まぁ、寂しいかもしれないわね。
「ふふっ。気が向けば邸に寄らせて頂きますね。これからは姉も甥っ子も邸に帰ってくるでしょうし」
ルーカス様は少し困った表情をしている。
「それが、グリシーヌは息子を王都に行かせても自分は別邸から出たくないらしくてね。困ったもんだよ。」
「そうでしたか。甥っ子と乳母だけ来る訳にはいかないでしょうから待つしかないでしょうね」
私が手を出すことは無い。ここは父となったルーカス様や父が頑張っていかないといけない所よね。
「そういえばお父様、ここに来た1番の理由は領地の薬草を数株カイロニア王宮へ送って貰いたいのです」
「そうすると我が家が今まで輸出していた薬草の取引が減るのではないか?」
「実はカイロニアからもここでは入手出来ない薬草を分けて貰ったのです。今、王宮の薬草園に植えていて株をある程度増やしてからガーランド領で栽培をして頂きたいのです。入手した大衆薬の原料なので国内での販売が大幅に見込まれる予定です。
今よりも領地は潤うとお墨付きをファーム公爵から頂いていますわ。そして詳細は陛下の印が付いているこの書類に書いてあるそうです」
サッと私は書類を父に差し出すと父は困惑しながらも領地が潤う事を聞き嫌悪感は無くなったようだ。ルーカス様も一緒に目を通している。
「詳しい話は私には分かりかねるのでファーム公爵から後日連絡があります。その時にお聞き下さい」
「トレニア、有難う。前向きに検討する。薬草の方はしっかりとカイロニアへ送っておくから心配は要らない」
私は用事も済んだのでさっさと邸を出る事にした。父もルーカス様も寂しそうにしていたけれど、私の家はもうここでは無いもの。
私はローサと侯爵家の馬車で寮まで送ってもらい帰ってきた。いつのまにかローサの手には新しいレシピが書かれた紙があったわ。料理長が私のために用意してくれていたらしい。
感謝よね!
勿論ローサはこっそり料理長にお酒を渡していたみたいだけど。
ふふっ。新しい料理も早く食べたいわ。
201
お気に入りに追加
4,833
あなたにおすすめの小説

【完結済】どうして無能な私を愛してくれるの?~双子の妹に全て劣り、婚約者を奪われた男爵令嬢は、侯爵子息様に溺愛される~
ゆうき
恋愛
優秀な双子の妹の足元にも及ばない男爵令嬢のアメリアは、屋敷ではいない者として扱われ、話しかけてくる数少ない人間である妹には馬鹿にされ、母には早く出て行けと怒鳴られ、学園ではいじめられて生活していた。
長年に渡って酷い仕打ちを受けていたアメリアには、侯爵子息の婚約者がいたが、妹に奪われて婚約破棄をされてしまい、一人ぼっちになってしまっていた。
心が冷え切ったアメリアは、今の生活を受け入れてしまっていた。
そんな彼女には魔法薬師になりたいという目標があり、虐げられながらも勉強を頑張る毎日を送っていた。
そんな彼女のクラスに、一人の侯爵子息が転校してきた。
レオと名乗った男子生徒は、何故かアメリアを気にかけて、アメリアに積極的に話しかけてくるようになった。
毎日のように話しかけられるようになるアメリア。その溺愛っぷりにアメリアは戸惑い、少々困っていたが、段々と自分で気づかないうちに、彼の優しさに惹かれていく。
レオと一緒にいるようになり、次第に打ち解けて心を許すアメリアは、レオと親密な関係になっていくが、アメリアを馬鹿にしている妹と、その友人がそれを許すはずもなく――
これは男爵令嬢であるアメリアが、とある秘密を抱える侯爵子息と幸せになるまでの物語。
※こちらの作品はなろう様にも投稿しております!3/8に女性ホットランキング二位になりました。読んでくださった方々、ありがとうございます!

毒家族から逃亡、のち側妃
チャイムン
恋愛
四歳下の妹ばかり可愛がる両親に「あなたにかけるお金はないから働きなさい」
十二歳で告げられたベルナデットは、自立と家族からの脱却を夢見る。
まずは王立学院に奨学生として入学して、文官を目指す。
夢は自分で叶えなきゃ。
ところが妹への縁談話がきっかけで、バシュロ第一王子が動き出す。

王妃は涙を流さない〜ただあなたを守りたかっただけでした〜
矢野りと
恋愛
理不尽な理由を掲げて大国に攻め入った母国は、数カ月後には敗戦国となった。
王政を廃するか、それとも王妃を人質として差し出すかと大国は選択を迫ってくる。
『…本当にすまない、ジュンリヤ』
『謝らないで、覚悟はできています』
敗戦後、王位を継いだばかりの夫には私を守るだけの力はなかった。
――たった三年間の別れ…。
三年後に帰国した私を待っていたのは国王である夫の変わらない眼差し。……とその隣で微笑む側妃だった。
『王妃様、シャンナアンナと申します』
もう私の居場所はなくなっていた…。
※設定はゆるいです。

喋ることができなくなった行き遅れ令嬢ですが、幸せです。
加藤ラスク
恋愛
セシル = マクラグレンは昔とある事件のせいで喋ることができなくなっていた。今は王室内事務局で働いており、真面目で誠実だと評判だ。しかし後輩のラーラからは、行き遅れ令嬢などと嫌味を言われる日々。
そんなセシルの密かな喜びは、今大人気のイケメン騎士団長クレイグ = エヴェレストに会えること。クレイグはなぜか毎日事務局に顔を出し、要件がある時は必ずセシルを指名していた。そんなある日、重要な書類が紛失する事件が起きて……

【完結】冤罪で殺された王太子の婚約者は100年後に生まれ変わりました。今世では愛し愛される相手を見つけたいと思っています。
金峯蓮華
恋愛
どうやら私は階段から突き落とされ落下する間に前世の記憶を思い出していたらしい。
前世は冤罪を着せられて殺害されたのだった。それにしても酷い。その後あの国はどうなったのだろう?
私の願い通り滅びたのだろうか?
前世で冤罪を着せられ殺害された王太子の婚約者だった令嬢が生まれ変わった今世で愛し愛される相手とめぐりあい幸せになるお話。
緩い世界観の緩いお話しです。
ご都合主義です。
*タイトル変更しました。すみません。

婚約破棄ですか。お好きにどうぞ
神崎葵
恋愛
シェリル・アンダーソンは侯爵家の一人娘として育った。だが十歳のある日、病弱だった母が息を引き取り――その一年後、父親が新しい妻と、そしてシェリルと一歳しか違わない娘を家に連れてきた。
これまで苦労させたから、と継母と妹を甘やかす父。これまで贅沢してきたのでしょう、とシェリルのものを妹に与える継母。あれが欲しいこれが欲しい、と我侭ばかりの妹。
シェリルが十六を迎える頃には、自分の訴えが通らないことに慣れ切ってしまっていた。
そうしたある日、婚約者である公爵令息サイラスが婚約を破棄したいとシェリルに訴えた。
シェリルの頭に浮かんだのは、数日前に見た――二人で歩く妹とサイラスの姿。
またか、と思ったシェリルはサイラスの訴えに応じることにした。
――はずなのに、何故かそれ以来サイラスがよく絡んでくるようになった。

【完結】婚約者も両親も家も全部妹に取られましたが、庭師がざまぁ致します。私はどうやら帝国の王妃になるようです?
鏑木 うりこ
恋愛
父親が一緒だと言う一つ違いの妹は姉の物を何でも欲しがる。とうとう婚約者のアレクシス殿下まで欲しいと言い出た。もうここには居たくない姉のユーティアは指輪を一つだけ持って家を捨てる事を決める。
「なあ、お嬢さん、指輪はあんたを選んだのかい?」
庭師のシューの言葉に頷くと、庭師はにやりと笑ってユーティアの手を取った。
少し前に書いていたものです。ゆるーく見ていただけると助かります(*‘ω‘ *)
HOT&人気入りありがとうございます!(*ノωノ)<ウオオオオオオ嬉しいいいいい!
色々立て込んでいるため、感想への返信が遅くなっております、申し訳ございません。でも全部ありがたく読ませていただいております!元気でます~!('ω')完結まで頑張るぞーおー!
★おかげさまで完結致しました!そしてたくさんいただいた感想にやっとお返事が出来ました!本当に本当にありがとうございます、元気で最後まで書けたのは皆さまのお陰です!嬉し~~~~~!
これからも恋愛ジャンルもポチポチと書いて行きたいと思います。また趣味趣向に合うものがありましたら、お読みいただけるととっても嬉しいです!わーいわーい!
【完結】をつけて、完結表記にさせてもらいました!やり遂げた~(*‘ω‘ *)

え?私、悪役令嬢だったんですか?まったく知りませんでした。
ゆずこしょう
恋愛
貴族院を歩いていると最近、遠くからひそひそ話す声が聞こえる。
ーーー「あの方が、まさか教科書を隠すなんて...」
ーーー「あの方が、ドロシー様のドレスを切り裂いたそうよ。」
ーーー「あの方が、足を引っかけたんですって。」
聞こえてくる声は今日もあの方のお話。
「あの方は今日も暇なのねぇ」そう思いながら今日も勉学、執務をこなすパトリシア・ジェード(16)
自分が噂のネタになっているなんてことは全く気付かず今日もいつも通りの生活をおくる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる