【完結】悪役令嬢の妹ですが幸せは来るのでしょうか?

まるねこ

文字の大きさ
上 下
19 / 52

19

しおりを挟む
 私はその後も変わらずに学院の授業を受けている。

学院3年生の男の進路は基本的に王宮へ文官として働きに出るか、騎士になるかが一般的なの。嫡男であれば領地経営のために就職しない事もあるけれど、親がいるためはじめの間は働きに出る。女はほぼ卒業と同時に結婚する。

平民や身分が低く、嫁ぎ先が決まっていない人が王宮に就職すると言っても過言ではないのよね。私はもう平民だから気にせず就職に向かっているけれど。結婚は向いていないのは充分に理解しているわ。私は一生独身かも知れない。むしろその方が良いとさえ思っている。

試験も終わった事で毎日授業をのんびり受けていると担任の先生から呼び出しがあった。

「先生、何かあったのですか?」

「トレニアさん。はい、これ。王宮からの呼び出し状よ。おめでとう。これから忙しくなりそうね」

受け取った手紙には一見するだけでも上質な手紙に王宮の印が押されている。

「先生、本当!?手が震えてしまっているわ」

震える手で封を開けると、そこには合格の文字と手続きの日程が書かれていた。

「先生、有難う!私、頑張った甲斐があった」

私は感極まって涙が頬を伝う。

「そうね。トレニアさんは誰にも負けないくらい頑張っていたわ。良かったわね。さぁ、今日は寮へ戻って王宮へ行く準備をしてきなさい」

先生に促されて私はお礼と共に寮へと帰る。部屋に入ってからはローサと父に手紙を書いて寮母さんに速達便で送って貰った。はぁ。今日くらいは浮かれても良いと思うの。

今日は時間もまだまだあるし、街に出てお買い物をしよう。今日は美味しい物を食べたいわ!そうそう、王宮へ上がる為には服も必要よね。平民ならドレスでなくても良い。あ、制服でいいのかな。買わなくていいかも。

 なんだかんだと悩んだ挙句、商店で肉と野菜を買って帰る事にした。



ふふふ、今こそレシピを再現する時がきたのよ!保養地視察先の村長さんの奥様から教えて貰ったレシピ。まずは、こうやって切って、水に漬けておく?肉はこうやって切るのね。ふむふむ。炒め煮ってこうやるのかしら?スープはこうね。調味料を入れてっと。

私がレシピ通りに作っていると扉を叩く音がする。

「お嬢様!ローサです!手紙を貰って急いで来ました」

「ローサ!良い所に来たわ!」

私は急いでローサを部屋へと迎え入れる。

「ちょうど良いわローサ教えて頂戴?このレシピなんだけど、ここまで作ったんだけど、最後がよく分からなくて」

ローサはスプーンを取り出し、味見をしている。

「お嬢様、とても上手く作れています。後は砂糖をもう少し入れて煮込むと味が落ち着いてきます」

かなり早めだけれど夕食の準備が出来たわ。

「お嬢様、侯爵様からお手紙をお持ちしました。旦那様からお嬢様が王宮へ上がるまでここに侍女として住むように仰せつかっております。宜しくお願いしますね」

ローサから手紙を受け取り、開封する。父からの手紙は元気でやっているか?お祝いの言葉とローサを数日付けるので足りない物はローサに言いなさいと書いてあった。あと、ソニアがトレニアやトレニアのクラスメイトに迷惑をかけていると聞いた。すまない、と。家族と離れた事で父は私に対して少し優しくなったように思える。

これくらいの距離でしか家族と上手くいかないのも悲しいわね。

 私はローサと作った料理を一緒に食べ始める。

「ローサはこの味を覚えている?私は初めて他の領地の家庭料理を食べて感動したの。野菜がこんなに美味しく食べられるなんて凄いわよね。ガーランドの領地ではよく領民達に振る舞って貰っていたの。どれも愛情を感じる料理だったけど、領地が違えばこんなにも違うんだなって思うと感慨深いわ」

「…ルーカス様もジョシュア様も大馬鹿者です。こんなにトレニア様は素敵なのに。あいつら顔だけで選んで、今頃きっと後悔しているに違いないです。私がトレニア様を嫁に貰いたい位なのに。トレニア様、あいつらが後悔しているって話しかけてきたら絶対にざまぁ!って言ってやりましょうね」

ローサは泣きながら、文句を言いながら料理を食べている。

「ローサ、有難う。こんなに私を思ってくれるのはローサだけだわ。私もローサがお嫁さんになってくれれば凄く幸せなのに。世の中って上手くいかないものね」

私はローサと女同士愚痴を言い合いながら、褒めながら夜は更けていった。
しおりを挟む
感想 542

あなたにおすすめの小説

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

【完結済】どうして無能な私を愛してくれるの?~双子の妹に全て劣り、婚約者を奪われた男爵令嬢は、侯爵子息様に溺愛される~

ゆうき
恋愛
優秀な双子の妹の足元にも及ばない男爵令嬢のアメリアは、屋敷ではいない者として扱われ、話しかけてくる数少ない人間である妹には馬鹿にされ、母には早く出て行けと怒鳴られ、学園ではいじめられて生活していた。 長年に渡って酷い仕打ちを受けていたアメリアには、侯爵子息の婚約者がいたが、妹に奪われて婚約破棄をされてしまい、一人ぼっちになってしまっていた。 心が冷え切ったアメリアは、今の生活を受け入れてしまっていた。 そんな彼女には魔法薬師になりたいという目標があり、虐げられながらも勉強を頑張る毎日を送っていた。 そんな彼女のクラスに、一人の侯爵子息が転校してきた。 レオと名乗った男子生徒は、何故かアメリアを気にかけて、アメリアに積極的に話しかけてくるようになった。 毎日のように話しかけられるようになるアメリア。その溺愛っぷりにアメリアは戸惑い、少々困っていたが、段々と自分で気づかないうちに、彼の優しさに惹かれていく。 レオと一緒にいるようになり、次第に打ち解けて心を許すアメリアは、レオと親密な関係になっていくが、アメリアを馬鹿にしている妹と、その友人がそれを許すはずもなく―― これは男爵令嬢であるアメリアが、とある秘密を抱える侯爵子息と幸せになるまでの物語。 ※こちらの作品はなろう様にも投稿しております!3/8に女性ホットランキング二位になりました。読んでくださった方々、ありがとうございます!

毒家族から逃亡、のち側妃

チャイムン
恋愛
四歳下の妹ばかり可愛がる両親に「あなたにかけるお金はないから働きなさい」 十二歳で告げられたベルナデットは、自立と家族からの脱却を夢見る。 まずは王立学院に奨学生として入学して、文官を目指す。 夢は自分で叶えなきゃ。 ところが妹への縁談話がきっかけで、バシュロ第一王子が動き出す。

私のことを愛していなかった貴方へ

矢野りと
恋愛
婚約者の心には愛する女性がいた。 でも貴族の婚姻とは家と家を繋ぐのが目的だからそれも仕方がないことだと承知して婚姻を結んだ。私だって彼を愛して婚姻を結んだ訳ではないのだから。 でも穏やかな結婚生活が私と彼の間に愛を芽生えさせ、いつしか永遠の愛を誓うようになる。 だがそんな幸せな生活は突然終わりを告げてしまう。 夫のかつての想い人が現れてから私は彼の本心を知ってしまい…。 *設定はゆるいです。

王妃は涙を流さない〜ただあなたを守りたかっただけでした〜

矢野りと
恋愛
理不尽な理由を掲げて大国に攻め入った母国は、数カ月後には敗戦国となった。 王政を廃するか、それとも王妃を人質として差し出すかと大国は選択を迫ってくる。 『…本当にすまない、ジュンリヤ』 『謝らないで、覚悟はできています』 敗戦後、王位を継いだばかりの夫には私を守るだけの力はなかった。 ――たった三年間の別れ…。 三年後に帰国した私を待っていたのは国王である夫の変わらない眼差し。……とその隣で微笑む側妃だった。 『王妃様、シャンナアンナと申します』 もう私の居場所はなくなっていた…。 ※設定はゆるいです。

喋ることができなくなった行き遅れ令嬢ですが、幸せです。

加藤ラスク
恋愛
セシル = マクラグレンは昔とある事件のせいで喋ることができなくなっていた。今は王室内事務局で働いており、真面目で誠実だと評判だ。しかし後輩のラーラからは、行き遅れ令嬢などと嫌味を言われる日々。 そんなセシルの密かな喜びは、今大人気のイケメン騎士団長クレイグ = エヴェレストに会えること。クレイグはなぜか毎日事務局に顔を出し、要件がある時は必ずセシルを指名していた。そんなある日、重要な書類が紛失する事件が起きて……

【完結】冤罪で殺された王太子の婚約者は100年後に生まれ変わりました。今世では愛し愛される相手を見つけたいと思っています。

金峯蓮華
恋愛
どうやら私は階段から突き落とされ落下する間に前世の記憶を思い出していたらしい。 前世は冤罪を着せられて殺害されたのだった。それにしても酷い。その後あの国はどうなったのだろう? 私の願い通り滅びたのだろうか? 前世で冤罪を着せられ殺害された王太子の婚約者だった令嬢が生まれ変わった今世で愛し愛される相手とめぐりあい幸せになるお話。 緩い世界観の緩いお話しです。 ご都合主義です。 *タイトル変更しました。すみません。

婚約破棄ですか。お好きにどうぞ

神崎葵
恋愛
シェリル・アンダーソンは侯爵家の一人娘として育った。だが十歳のある日、病弱だった母が息を引き取り――その一年後、父親が新しい妻と、そしてシェリルと一歳しか違わない娘を家に連れてきた。 これまで苦労させたから、と継母と妹を甘やかす父。これまで贅沢してきたのでしょう、とシェリルのものを妹に与える継母。あれが欲しいこれが欲しい、と我侭ばかりの妹。 シェリルが十六を迎える頃には、自分の訴えが通らないことに慣れ切ってしまっていた。 そうしたある日、婚約者である公爵令息サイラスが婚約を破棄したいとシェリルに訴えた。 シェリルの頭に浮かんだのは、数日前に見た――二人で歩く妹とサイラスの姿。 またか、と思ったシェリルはサイラスの訴えに応じることにした。 ――はずなのに、何故かそれ以来サイラスがよく絡んでくるようになった。

処理中です...