15 / 52
15
しおりを挟む
そうこうしている間に季節は2つも過ぎ去ったある日、父から邸に顔を出すように手紙が来た。
私はついにこの日が来たと覚悟を決めて邸に戻った。
執務室へ入るとやはり姉の時と同じような雰囲気が漂っている。そこには父と母、ソニアとジョシュア様が居たわ。姉は婚約者のルーカス様の卒業と共に結婚式を挙げる事が決まっており、忙しくてこの場には居ないらしい。
「トレニアお姉様!ごめんなさい。ジョシュア様との婚約が決まっていたのに、私が変わる事になってしまって」
潤んだ瞳で私に先制攻撃を仕掛けてくる。この場に居る人達はソニアの味方しか居ない。
「私の常識はおかしいのでしょうか?プロポーズをされて婚約が決まったのは私なのに、何故お母様から釣書が届くのかしら?それも訳ありばかりの」
私は束になった釣書を父の机にバサリと雑に置くと父は何事かと目を通し、ジョシュア様にも目を通させる。
父は母がしていた事を知らなかったのか、一瞬目を見開いたが、眉を顰めて母の方をひと睨みするだけで口を開く気は無いらしい。
「ジョシュア様、婚約者は私なはずなのに不貞を平気で行う、しかも婚約者の実の妹と。驚きました。私が何も知らないとでも思っていましたの?」
私は更にローサや邸の者達が集めてくれた母やソニアの行っていた事の報告書とジョシュア様の従者から集めて貰った報告書を父に手渡し、話す。ジョシュア様の従者はソニアに思う所があったようで喜んで協力してくれたわ。
「ジョシュア様がしてきた事の報告書はライト侯爵様にも出しております。どうぞ婚約破棄をお願いしますわ。そして不貞をした御二方、どうぞ私に慰謝料の支払いをお願いします」
「トレニア!ソニアが可哀想じゃない!ソニアにはもう貰い手が無いのよ!お腹にも子供がいるんだから。邪魔しないで頂戴!」
母が私に向かって怒りを露わにしている。
「お母様はいつから常識のカケラも無くなってしまったのです?娘の不貞、4度目の婚約破棄。未婚なのに子供まで。私、こんな方々と家族でいたくありません。
… ジョシュア様、私、とても失望しました。どうぞソニアと仲良くライト侯爵家を盛り立てて下さいまし。話はこれだけでしょうか?」
私が用意した書類の束や自分が送った釣書を見て不味いと思ったのか母は私に怒鳴り散らして騒いだ。暴言を吐き続けた。母は1人ヒートアップし、まだまだ文句を言い足りないようだったわ。けれど、話が進まないと父の指示で執事に無理矢理に部屋を出された。
「トレニア、今後のことだが、「お父様、私、前にもいいましたわ。この家にいたくないと。やはり家族でいる事は難しいです。今回の事でもう十分です。勘当して下さい。貴族籍を抜いて下さい。姉も結婚が決まり、妹も私の婚約者だった方と恋愛を謳歌し、嫁ぎ先が決まりました。
私は2度も姉妹に婚約者を変更させられました。姉妹にも、婚約者達にも、裏切られ捨てられました。もう、私にはまともな婚姻は生涯出来ないでしょう。私に姉達より良い婚姻を用意出来ると宣言出来ますか?出来ないですよね?
母が契約しようとしていた釣書はお父様より年上の介護者として求められているためだけの後妻、公衆の面前で妻を裸にさせ家畜として扱うような人。愛人10人と生活する伯爵。どれも有名人ばかりですね。
お母様はどうしても私を売りたいらしいですし、ソニアも同じく、私が売られる事をここぞとばかりに望んでいますわ。そんな人達と家族ではいられません」
私は父の言葉を遮り話をする。ジョシュア様は母やソニアの行っていた事や今後の私の置かれる状況を知り、青い顔をしている。
遅いわ。
ソニアも母と一緒になってしていたのだし、これを見たジョシュア様の熱も醒めてしまうかも知れないわね。
父は前回よりは冷静な所が残っているようで何も言えない様子だった。私はソニアに向き直る。
「ソニアはジョシュア様と結婚したかったのでしょう?だからわざわざ呼ばれるお茶会の度に姉のトレニアを後妻や愛人に迎えてやってくれと大々的に勧めていたのよね?
結婚出来ないお姉様が可哀想って。私のお友達や勧められた方が直接私に会いに来たのよ?私って相当家族から嫌われて馬鹿にされているのね。ジョシュア様も後でその報告書をきちんと読んでおいた方がいいですわよ? ソニアがどんな妹か知る事が出来ますわ。
… お父様、後日手続きの書類をお送り致します。では失礼しますわ」
私は淑女らしくしっかりと礼をし、邸を後にする。
その後、ローサからの手紙では私が帰った後、ソニアや母に父が激怒していたらしい。もう、あんな人達は私の家族ではないわ。人生で一番の幸せから一気にどん底に叩き落とされたんだもの恨みしか残っていない。
私は翌日の朝一番に王宮へ向かい貴族籍を抜ける手続きを取った。
ようやく2年生も最後の試験が終わり、新入生を迎えるための長期休みに入った。
私は今回も1位を取る事が出来たわ。そして姉のグリシーヌとルーカス様が結婚したとの手紙があった。それと共に貴族籍を抜ける書類に父のサインがされてあった。
そして、籍を抜けたからといって学院やその他に掛かる費用は全て持つので気にせずに過ごしなさいと手紙に書いてあった。
父なりの優しさなのかしら。
私はついにこの日が来たと覚悟を決めて邸に戻った。
執務室へ入るとやはり姉の時と同じような雰囲気が漂っている。そこには父と母、ソニアとジョシュア様が居たわ。姉は婚約者のルーカス様の卒業と共に結婚式を挙げる事が決まっており、忙しくてこの場には居ないらしい。
「トレニアお姉様!ごめんなさい。ジョシュア様との婚約が決まっていたのに、私が変わる事になってしまって」
潤んだ瞳で私に先制攻撃を仕掛けてくる。この場に居る人達はソニアの味方しか居ない。
「私の常識はおかしいのでしょうか?プロポーズをされて婚約が決まったのは私なのに、何故お母様から釣書が届くのかしら?それも訳ありばかりの」
私は束になった釣書を父の机にバサリと雑に置くと父は何事かと目を通し、ジョシュア様にも目を通させる。
父は母がしていた事を知らなかったのか、一瞬目を見開いたが、眉を顰めて母の方をひと睨みするだけで口を開く気は無いらしい。
「ジョシュア様、婚約者は私なはずなのに不貞を平気で行う、しかも婚約者の実の妹と。驚きました。私が何も知らないとでも思っていましたの?」
私は更にローサや邸の者達が集めてくれた母やソニアの行っていた事の報告書とジョシュア様の従者から集めて貰った報告書を父に手渡し、話す。ジョシュア様の従者はソニアに思う所があったようで喜んで協力してくれたわ。
「ジョシュア様がしてきた事の報告書はライト侯爵様にも出しております。どうぞ婚約破棄をお願いしますわ。そして不貞をした御二方、どうぞ私に慰謝料の支払いをお願いします」
「トレニア!ソニアが可哀想じゃない!ソニアにはもう貰い手が無いのよ!お腹にも子供がいるんだから。邪魔しないで頂戴!」
母が私に向かって怒りを露わにしている。
「お母様はいつから常識のカケラも無くなってしまったのです?娘の不貞、4度目の婚約破棄。未婚なのに子供まで。私、こんな方々と家族でいたくありません。
… ジョシュア様、私、とても失望しました。どうぞソニアと仲良くライト侯爵家を盛り立てて下さいまし。話はこれだけでしょうか?」
私が用意した書類の束や自分が送った釣書を見て不味いと思ったのか母は私に怒鳴り散らして騒いだ。暴言を吐き続けた。母は1人ヒートアップし、まだまだ文句を言い足りないようだったわ。けれど、話が進まないと父の指示で執事に無理矢理に部屋を出された。
「トレニア、今後のことだが、「お父様、私、前にもいいましたわ。この家にいたくないと。やはり家族でいる事は難しいです。今回の事でもう十分です。勘当して下さい。貴族籍を抜いて下さい。姉も結婚が決まり、妹も私の婚約者だった方と恋愛を謳歌し、嫁ぎ先が決まりました。
私は2度も姉妹に婚約者を変更させられました。姉妹にも、婚約者達にも、裏切られ捨てられました。もう、私にはまともな婚姻は生涯出来ないでしょう。私に姉達より良い婚姻を用意出来ると宣言出来ますか?出来ないですよね?
母が契約しようとしていた釣書はお父様より年上の介護者として求められているためだけの後妻、公衆の面前で妻を裸にさせ家畜として扱うような人。愛人10人と生活する伯爵。どれも有名人ばかりですね。
お母様はどうしても私を売りたいらしいですし、ソニアも同じく、私が売られる事をここぞとばかりに望んでいますわ。そんな人達と家族ではいられません」
私は父の言葉を遮り話をする。ジョシュア様は母やソニアの行っていた事や今後の私の置かれる状況を知り、青い顔をしている。
遅いわ。
ソニアも母と一緒になってしていたのだし、これを見たジョシュア様の熱も醒めてしまうかも知れないわね。
父は前回よりは冷静な所が残っているようで何も言えない様子だった。私はソニアに向き直る。
「ソニアはジョシュア様と結婚したかったのでしょう?だからわざわざ呼ばれるお茶会の度に姉のトレニアを後妻や愛人に迎えてやってくれと大々的に勧めていたのよね?
結婚出来ないお姉様が可哀想って。私のお友達や勧められた方が直接私に会いに来たのよ?私って相当家族から嫌われて馬鹿にされているのね。ジョシュア様も後でその報告書をきちんと読んでおいた方がいいですわよ? ソニアがどんな妹か知る事が出来ますわ。
… お父様、後日手続きの書類をお送り致します。では失礼しますわ」
私は淑女らしくしっかりと礼をし、邸を後にする。
その後、ローサからの手紙では私が帰った後、ソニアや母に父が激怒していたらしい。もう、あんな人達は私の家族ではないわ。人生で一番の幸せから一気にどん底に叩き落とされたんだもの恨みしか残っていない。
私は翌日の朝一番に王宮へ向かい貴族籍を抜ける手続きを取った。
ようやく2年生も最後の試験が終わり、新入生を迎えるための長期休みに入った。
私は今回も1位を取る事が出来たわ。そして姉のグリシーヌとルーカス様が結婚したとの手紙があった。それと共に貴族籍を抜ける書類に父のサインがされてあった。
そして、籍を抜けたからといって学院やその他に掛かる費用は全て持つので気にせずに過ごしなさいと手紙に書いてあった。
父なりの優しさなのかしら。
192
お気に入りに追加
4,833
あなたにおすすめの小説

【完結済】どうして無能な私を愛してくれるの?~双子の妹に全て劣り、婚約者を奪われた男爵令嬢は、侯爵子息様に溺愛される~
ゆうき
恋愛
優秀な双子の妹の足元にも及ばない男爵令嬢のアメリアは、屋敷ではいない者として扱われ、話しかけてくる数少ない人間である妹には馬鹿にされ、母には早く出て行けと怒鳴られ、学園ではいじめられて生活していた。
長年に渡って酷い仕打ちを受けていたアメリアには、侯爵子息の婚約者がいたが、妹に奪われて婚約破棄をされてしまい、一人ぼっちになってしまっていた。
心が冷え切ったアメリアは、今の生活を受け入れてしまっていた。
そんな彼女には魔法薬師になりたいという目標があり、虐げられながらも勉強を頑張る毎日を送っていた。
そんな彼女のクラスに、一人の侯爵子息が転校してきた。
レオと名乗った男子生徒は、何故かアメリアを気にかけて、アメリアに積極的に話しかけてくるようになった。
毎日のように話しかけられるようになるアメリア。その溺愛っぷりにアメリアは戸惑い、少々困っていたが、段々と自分で気づかないうちに、彼の優しさに惹かれていく。
レオと一緒にいるようになり、次第に打ち解けて心を許すアメリアは、レオと親密な関係になっていくが、アメリアを馬鹿にしている妹と、その友人がそれを許すはずもなく――
これは男爵令嬢であるアメリアが、とある秘密を抱える侯爵子息と幸せになるまでの物語。
※こちらの作品はなろう様にも投稿しております!3/8に女性ホットランキング二位になりました。読んでくださった方々、ありがとうございます!

毒家族から逃亡、のち側妃
チャイムン
恋愛
四歳下の妹ばかり可愛がる両親に「あなたにかけるお金はないから働きなさい」
十二歳で告げられたベルナデットは、自立と家族からの脱却を夢見る。
まずは王立学院に奨学生として入学して、文官を目指す。
夢は自分で叶えなきゃ。
ところが妹への縁談話がきっかけで、バシュロ第一王子が動き出す。

王妃は涙を流さない〜ただあなたを守りたかっただけでした〜
矢野りと
恋愛
理不尽な理由を掲げて大国に攻め入った母国は、数カ月後には敗戦国となった。
王政を廃するか、それとも王妃を人質として差し出すかと大国は選択を迫ってくる。
『…本当にすまない、ジュンリヤ』
『謝らないで、覚悟はできています』
敗戦後、王位を継いだばかりの夫には私を守るだけの力はなかった。
――たった三年間の別れ…。
三年後に帰国した私を待っていたのは国王である夫の変わらない眼差し。……とその隣で微笑む側妃だった。
『王妃様、シャンナアンナと申します』
もう私の居場所はなくなっていた…。
※設定はゆるいです。

喋ることができなくなった行き遅れ令嬢ですが、幸せです。
加藤ラスク
恋愛
セシル = マクラグレンは昔とある事件のせいで喋ることができなくなっていた。今は王室内事務局で働いており、真面目で誠実だと評判だ。しかし後輩のラーラからは、行き遅れ令嬢などと嫌味を言われる日々。
そんなセシルの密かな喜びは、今大人気のイケメン騎士団長クレイグ = エヴェレストに会えること。クレイグはなぜか毎日事務局に顔を出し、要件がある時は必ずセシルを指名していた。そんなある日、重要な書類が紛失する事件が起きて……

【完結】冤罪で殺された王太子の婚約者は100年後に生まれ変わりました。今世では愛し愛される相手を見つけたいと思っています。
金峯蓮華
恋愛
どうやら私は階段から突き落とされ落下する間に前世の記憶を思い出していたらしい。
前世は冤罪を着せられて殺害されたのだった。それにしても酷い。その後あの国はどうなったのだろう?
私の願い通り滅びたのだろうか?
前世で冤罪を着せられ殺害された王太子の婚約者だった令嬢が生まれ変わった今世で愛し愛される相手とめぐりあい幸せになるお話。
緩い世界観の緩いお話しです。
ご都合主義です。
*タイトル変更しました。すみません。

婚約破棄ですか。お好きにどうぞ
神崎葵
恋愛
シェリル・アンダーソンは侯爵家の一人娘として育った。だが十歳のある日、病弱だった母が息を引き取り――その一年後、父親が新しい妻と、そしてシェリルと一歳しか違わない娘を家に連れてきた。
これまで苦労させたから、と継母と妹を甘やかす父。これまで贅沢してきたのでしょう、とシェリルのものを妹に与える継母。あれが欲しいこれが欲しい、と我侭ばかりの妹。
シェリルが十六を迎える頃には、自分の訴えが通らないことに慣れ切ってしまっていた。
そうしたある日、婚約者である公爵令息サイラスが婚約を破棄したいとシェリルに訴えた。
シェリルの頭に浮かんだのは、数日前に見た――二人で歩く妹とサイラスの姿。
またか、と思ったシェリルはサイラスの訴えに応じることにした。
――はずなのに、何故かそれ以来サイラスがよく絡んでくるようになった。

【完結】婚約者も両親も家も全部妹に取られましたが、庭師がざまぁ致します。私はどうやら帝国の王妃になるようです?
鏑木 うりこ
恋愛
父親が一緒だと言う一つ違いの妹は姉の物を何でも欲しがる。とうとう婚約者のアレクシス殿下まで欲しいと言い出た。もうここには居たくない姉のユーティアは指輪を一つだけ持って家を捨てる事を決める。
「なあ、お嬢さん、指輪はあんたを選んだのかい?」
庭師のシューの言葉に頷くと、庭師はにやりと笑ってユーティアの手を取った。
少し前に書いていたものです。ゆるーく見ていただけると助かります(*‘ω‘ *)
HOT&人気入りありがとうございます!(*ノωノ)<ウオオオオオオ嬉しいいいいい!
色々立て込んでいるため、感想への返信が遅くなっております、申し訳ございません。でも全部ありがたく読ませていただいております!元気でます~!('ω')完結まで頑張るぞーおー!
★おかげさまで完結致しました!そしてたくさんいただいた感想にやっとお返事が出来ました!本当に本当にありがとうございます、元気で最後まで書けたのは皆さまのお陰です!嬉し~~~~~!
これからも恋愛ジャンルもポチポチと書いて行きたいと思います。また趣味趣向に合うものがありましたら、お読みいただけるととっても嬉しいです!わーいわーい!
【完結】をつけて、完結表記にさせてもらいました!やり遂げた~(*‘ω‘ *)

え?私、悪役令嬢だったんですか?まったく知りませんでした。
ゆずこしょう
恋愛
貴族院を歩いていると最近、遠くからひそひそ話す声が聞こえる。
ーーー「あの方が、まさか教科書を隠すなんて...」
ーーー「あの方が、ドロシー様のドレスを切り裂いたそうよ。」
ーーー「あの方が、足を引っかけたんですって。」
聞こえてくる声は今日もあの方のお話。
「あの方は今日も暇なのねぇ」そう思いながら今日も勉学、執務をこなすパトリシア・ジェード(16)
自分が噂のネタになっているなんてことは全く気付かず今日もいつも通りの生活をおくる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる