【完結】悪役令嬢の妹ですが幸せは来るのでしょうか?

まるねこ

文字の大きさ
上 下
7 / 52

7

しおりを挟む
 午前中で返ってきたテスト結果は今までで一番良い成績だった。毎日勉強に時間を当てられたのは大きいと思う。ふふっ。ついつい自然と笑顔になってしまうわ。気をつけないとね。お昼休みは友人達と成績順位を確認しに職員室へと向かう。

 成績発表されている掲示板にはやはり人集りが出来ていた。私は人混みをかき分けて何とか成績を確認する事が出来たわ。成績は… 1位。嬉しい。友人達も私の成績を誉めてくれたの。この調子で勉強を続けていくわ。

 寮に入ってからの私は勉強三昧だったけれど、最近は将来の事も考えるようになってきた。調べると王宮の薬師は貴族しかなれないという事は無いらしいが、王宮薬師として就職出来るのはほんの一握りの人。私は今から薬師に向かって頑張っていこうと改めて考えていると、

「トレニア、成績1位おめでとう」

不意に声を掛けられ、その声の方向に視線を向けると、そこにはかつての婚約者ルーカス様が立っていた。成績を見に来ていた人達の視線が一気にトレニアに集まった。こんな所で声を掛けなくてもいいじゃない。内心、愚痴を盛大に溢す。

「ルーカス様、有難う御座います。では、私はこれで失礼します」

軽く会釈し、友人と共にルーカス様の横を通り抜け、その場を去ろうとしたがルーカス様に腕を掴まれた。

「トレニア、話があるんだ。まだお昼を食べていないだろう?いつものテラス席で食べよう」

そう、私達はいつもテラス席で2人仲良く昼食を摂っていたの。婚約者を姉と交代するまでは。

ジワリと苦い思い出が溢れ出し私の心を削る。

「分かりましたわ」

ここで話すには人が多過ぎる。もちろん私は話す事なんて無いのだけれど。私は友人達にごめんねと断りを入れてルーカス様と食堂へと向かった。

 食堂のカウンターでランチを受け取り、日当たりの良いテラス席に向かい合わせで座った。穏やかな天気とは裏腹に私の心は大荒れ。でもそこは淑女。気を引き締めてしっかりと仮面を付けています。

「ルーカス様、お話とは何でしょうか?」

「…あぁ、この間はすまなかった。君の事も考えず。それに屋敷から君を追い出す形となってしまった」

早くこの場から立ち去りたい、その思いで私はモグモグと淑女らしからぬスピードでお昼を食べている。

「謝罪なら結構ですわ。お義兄様。どうぞ私の事など構わずに」

ルーカス様は私の言葉に眉を下げている様子。

「トレニアは今週末からの長期休みは邸に帰ってくるのか?」

「いえ、私は帰りませんわ」

「お義父上にはその事を伝えたのかい?」

「いえ、特に帰ってこいとも言われておりませんわ。ルーカス様、週末は我が家に行くのでしょう?ついでに伝えておいて下さい。一応父には手紙を書きますが、それで充分だと思っています」

私は食べ終わるとスッと席を立つ。

「ルーカスお義兄様、今まで私の事で心を砕いて頂き有難う御座いました。私は大丈夫ですわ。これからは私の事は気にせず、姉と二人で侯爵家を盛り立て下さいませ」

礼をしてその場を後にする。ルーカス様からは待ってと声が聞こえたが、聞こえないフリをしてその場を去った。

逃げなのだと分かっている。

まだ自分の中の黒く濁った思いと乾ききらない傷に触れられるのが嫌なの。許したく無い。触らないで。気を抜くと溢れ出しそうな仄暗い感情に必死で蓋をする。



 午後からは授業もないので寮へ帰り、父に手紙を書いて寮母さんに送ってもらうように手紙を渡した。さて旅行の用意をしなくてはね。

私は一人で荷物を纏めていく。足りない物は街に降りて買えば良いかしら。それにしてもジョシュア様って優しいのね。私を誘って下さるなんて。そのままプロポーズされちゃったりなんかして!?ふふっ。…残念ながらそんな事は無いわね。

今ではよく話をする仲だけど、一緒に食事やら何かをするなんて事は無かったんだもの。それに私は残念レッテルを貼られた令嬢だし、きっとこのお誘いも珍獣を観察する位の気持ちなんだわ。

 私はさっきの仄暗く重い思考を床に投げ捨て旅行に向けウキウキ気分で1人パンを齧りながら準備をするのだった。
しおりを挟む
感想 542

あなたにおすすめの小説

【完結済】どうして無能な私を愛してくれるの?~双子の妹に全て劣り、婚約者を奪われた男爵令嬢は、侯爵子息様に溺愛される~

ゆうき
恋愛
優秀な双子の妹の足元にも及ばない男爵令嬢のアメリアは、屋敷ではいない者として扱われ、話しかけてくる数少ない人間である妹には馬鹿にされ、母には早く出て行けと怒鳴られ、学園ではいじめられて生活していた。 長年に渡って酷い仕打ちを受けていたアメリアには、侯爵子息の婚約者がいたが、妹に奪われて婚約破棄をされてしまい、一人ぼっちになってしまっていた。 心が冷え切ったアメリアは、今の生活を受け入れてしまっていた。 そんな彼女には魔法薬師になりたいという目標があり、虐げられながらも勉強を頑張る毎日を送っていた。 そんな彼女のクラスに、一人の侯爵子息が転校してきた。 レオと名乗った男子生徒は、何故かアメリアを気にかけて、アメリアに積極的に話しかけてくるようになった。 毎日のように話しかけられるようになるアメリア。その溺愛っぷりにアメリアは戸惑い、少々困っていたが、段々と自分で気づかないうちに、彼の優しさに惹かれていく。 レオと一緒にいるようになり、次第に打ち解けて心を許すアメリアは、レオと親密な関係になっていくが、アメリアを馬鹿にしている妹と、その友人がそれを許すはずもなく―― これは男爵令嬢であるアメリアが、とある秘密を抱える侯爵子息と幸せになるまでの物語。 ※こちらの作品はなろう様にも投稿しております!3/8に女性ホットランキング二位になりました。読んでくださった方々、ありがとうございます!

毒家族から逃亡、のち側妃

チャイムン
恋愛
四歳下の妹ばかり可愛がる両親に「あなたにかけるお金はないから働きなさい」 十二歳で告げられたベルナデットは、自立と家族からの脱却を夢見る。 まずは王立学院に奨学生として入学して、文官を目指す。 夢は自分で叶えなきゃ。 ところが妹への縁談話がきっかけで、バシュロ第一王子が動き出す。

王妃は涙を流さない〜ただあなたを守りたかっただけでした〜

矢野りと
恋愛
理不尽な理由を掲げて大国に攻め入った母国は、数カ月後には敗戦国となった。 王政を廃するか、それとも王妃を人質として差し出すかと大国は選択を迫ってくる。 『…本当にすまない、ジュンリヤ』 『謝らないで、覚悟はできています』 敗戦後、王位を継いだばかりの夫には私を守るだけの力はなかった。 ――たった三年間の別れ…。 三年後に帰国した私を待っていたのは国王である夫の変わらない眼差し。……とその隣で微笑む側妃だった。 『王妃様、シャンナアンナと申します』 もう私の居場所はなくなっていた…。 ※設定はゆるいです。

喋ることができなくなった行き遅れ令嬢ですが、幸せです。

加藤ラスク
恋愛
セシル = マクラグレンは昔とある事件のせいで喋ることができなくなっていた。今は王室内事務局で働いており、真面目で誠実だと評判だ。しかし後輩のラーラからは、行き遅れ令嬢などと嫌味を言われる日々。 そんなセシルの密かな喜びは、今大人気のイケメン騎士団長クレイグ = エヴェレストに会えること。クレイグはなぜか毎日事務局に顔を出し、要件がある時は必ずセシルを指名していた。そんなある日、重要な書類が紛失する事件が起きて……

【完結】冤罪で殺された王太子の婚約者は100年後に生まれ変わりました。今世では愛し愛される相手を見つけたいと思っています。

金峯蓮華
恋愛
どうやら私は階段から突き落とされ落下する間に前世の記憶を思い出していたらしい。 前世は冤罪を着せられて殺害されたのだった。それにしても酷い。その後あの国はどうなったのだろう? 私の願い通り滅びたのだろうか? 前世で冤罪を着せられ殺害された王太子の婚約者だった令嬢が生まれ変わった今世で愛し愛される相手とめぐりあい幸せになるお話。 緩い世界観の緩いお話しです。 ご都合主義です。 *タイトル変更しました。すみません。

婚約破棄ですか。お好きにどうぞ

神崎葵
恋愛
シェリル・アンダーソンは侯爵家の一人娘として育った。だが十歳のある日、病弱だった母が息を引き取り――その一年後、父親が新しい妻と、そしてシェリルと一歳しか違わない娘を家に連れてきた。 これまで苦労させたから、と継母と妹を甘やかす父。これまで贅沢してきたのでしょう、とシェリルのものを妹に与える継母。あれが欲しいこれが欲しい、と我侭ばかりの妹。 シェリルが十六を迎える頃には、自分の訴えが通らないことに慣れ切ってしまっていた。 そうしたある日、婚約者である公爵令息サイラスが婚約を破棄したいとシェリルに訴えた。 シェリルの頭に浮かんだのは、数日前に見た――二人で歩く妹とサイラスの姿。 またか、と思ったシェリルはサイラスの訴えに応じることにした。 ――はずなのに、何故かそれ以来サイラスがよく絡んでくるようになった。

【完結】婚約者も両親も家も全部妹に取られましたが、庭師がざまぁ致します。私はどうやら帝国の王妃になるようです?

鏑木 うりこ
恋愛
 父親が一緒だと言う一つ違いの妹は姉の物を何でも欲しがる。とうとう婚約者のアレクシス殿下まで欲しいと言い出た。もうここには居たくない姉のユーティアは指輪を一つだけ持って家を捨てる事を決める。 「なあ、お嬢さん、指輪はあんたを選んだのかい?」  庭師のシューの言葉に頷くと、庭師はにやりと笑ってユーティアの手を取った。  少し前に書いていたものです。ゆるーく見ていただけると助かります(*‘ω‘ *) HOT&人気入りありがとうございます!(*ノωノ)<ウオオオオオオ嬉しいいいいい! 色々立て込んでいるため、感想への返信が遅くなっております、申し訳ございません。でも全部ありがたく読ませていただいております!元気でます~!('ω')完結まで頑張るぞーおー! ★おかげさまで完結致しました!そしてたくさんいただいた感想にやっとお返事が出来ました!本当に本当にありがとうございます、元気で最後まで書けたのは皆さまのお陰です!嬉し~~~~~!  これからも恋愛ジャンルもポチポチと書いて行きたいと思います。また趣味趣向に合うものがありましたら、お読みいただけるととっても嬉しいです!わーいわーい! 【完結】をつけて、完結表記にさせてもらいました!やり遂げた~(*‘ω‘ *)

え?私、悪役令嬢だったんですか?まったく知りませんでした。

ゆずこしょう
恋愛
貴族院を歩いていると最近、遠くからひそひそ話す声が聞こえる。 ーーー「あの方が、まさか教科書を隠すなんて...」 ーーー「あの方が、ドロシー様のドレスを切り裂いたそうよ。」 ーーー「あの方が、足を引っかけたんですって。」 聞こえてくる声は今日もあの方のお話。 「あの方は今日も暇なのねぇ」そう思いながら今日も勉学、執務をこなすパトリシア・ジェード(16) 自分が噂のネタになっているなんてことは全く気付かず今日もいつも通りの生活をおくる。

処理中です...