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3部 感謝の宴

ゴルドラ渓谷

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「さて、今日はゴルドラ渓谷へ向かうわ。ガロンも一緒に行くかしら?」

ガロンは執事の姿でジェットの勉強をみている。

「エイシャ様、ドワーフの所ですかな?良いですな。偶には行ってみますかな」

私達は久しぶりにドワーフの国に向かう事にした。

 ゴルドラ渓谷は深い森の中に存在している。川を挟んだ両側に崖のような反りたつ岩盤が特徴なのだが、その岩盤をくり抜いて住処としているドワーフ達。森は魔獣も多く、川も急流のため人々はドワーフの存在すら知らないと思われる。

 私はジェットを抱いて崖上からふわりと飛び降りる。その後をガロンもパタパタと付いてきている。木の枝に上手く隠された入り口を見つけるとピタリと止まり、中に入る。

入り口からは考えられないような空間が広がり、地底都市のようになっている。私達は歩いて階段を降りていくと、

「エイシャ様、お久しぶりです」

「エイシャ様!ガンドロフの所へ?アイツ、首を長くして待っていますよ!」

ドワーフ達は私を見つけると次々に挨拶してくる。私は1人1人に返事をしながら最奥にある一つの工房へと入った。

「ガンドロフ、いるかしら?」

鉄を打つ音が止み1人の男がこちらを向いて目を見開く。

「エイシャ様!待っておりましたぞぉ。ワシの打った剣はどうでしたかな?」

「ガンドロフ、とてもいい仕事だったわ。素晴らしい出来栄えだったわ。剣の使用者と剣を持って一緒に来たかったのだけれど、まだ修行中なのよね。修行が終わり次第連れて来るわ。あと、今日来た理由はね、短刀を一口欲しいの。それと、この子を見てどう思う?」

私は抱いていたジェットをガンドロフに見せると、ガンドロフは顎髭に手を当ててジェットを覗き込んだ。

「エイシャ様、こりゃ地底の魔物だのぉ。それも相当な物に成長するヤツ。輝石で魔獣化している不思議な感じだのぉ。細工をしたのはエキドナ様辺りだのぉ?」

「やはりガンドロフね。この子の武器をそろそろ考えたいのよ。何か良い物はないかしら?」

ガンドロフはうーんと考え込んでいる。

「エイシャ様、まだコイツは幼いから型は決まっていないのぉ。案外エルフの方かも知れんからもう少し待つといいのぉ。短刀は任せておくれ。出来たら魔法小包便で送るかのぉ。報酬は剣の持ち主と共に来る時にでも頼むぞぉ。」

「ガンドロフ有難う。やっぱりガンドロフの目を持ってしてもジェットの成長はまだ分からないのね。こればかりは仕方がないわ。ガンドロフ、短刀を楽しみに待っているわね」

私はガンドロフに手を振り工房を後にする。すると、工房から離れていたガロンが声を掛けてきた。

「エイシャ様、先程薬屋を覗いたらライの根やナンの実がありましたぞ。覗いてみるのも良いかも知れませんぞ」

ライの根は欲しいわ。

ドワーフ王国は特有の薬や素材が売られている。私はジェットを抱えたまま薬屋へと足を運んだ。

「いらっしゃいませ。エイシャ様!ようこそお越し下さいました。今の時期はライの根が出ていますよ。他にもナンの実やコナンの葉、サルサスの実もありますよ」

私は棚にある素材を眺めていると、ジェットは急に腕から抜け出し、部屋の片隅に置いてある木を齧り始めた。

「こらっ、ジェット。勝手に食べてはいけないわ。レンナル、この齧ってしまった木はなぁに?」

「エイシャ様、お目が高い。それは最高級のガランの香木です。その黒い魔獣には良さが分かるのでしょうね」

「…仕方がないわ。レンナル、この香木とそこからそこまでの棚の素材全て貰うわ。」

レンナルの店の品物は珍しい物や一級品が多く、いつも助かっているのよね。

「エイシャ様、何か珍しい素材は入っていないですか?」

私がドワーフの素材を買うようにレンナルもまたドワーフ王国の外からの素材を持ち込む私に期待していつも聞かれるのよね。

「そうね。大鮫魚はどうかしら?虹色の鱗数枚は使ったけれど他は残してあるわ。あとは、妖精の粉や地底魔物の素材。ユニコーンの角も少しなら分けれるわ」

「是非、交換を!あと、いつものようにエイシャ様のポーションも30本程お願いしますね。いつ使ってもエイシャ様の作るポーションは素晴らしい。すぐに売り切れてしまうんですよ」

 私が空間から出した素材を満面の笑みを浮かべてレンナルは品物を購入していく。まぁ、私の買う物も高いからほぼ物々交換みたいなものだけれど。

「レンナル、有難う。またくるわね」

「エイシャ様、お待ちしております」

私達は目的も済ませたので家までさっと転移した。

「エイシャ様、良い物が手に入りましたな!」

「ガロン見つけてくれて有難う。でも驚いたわ。ジェットがまさか香木を齧るなんてね。」

まだカリカリと香りと共に良い音を立ててジェットは香木を齧っている。

「そうですな。もしかしたら輝石の元の聖獣の影響かも知れませんな。どう変化していくのやら」

「そうね。もう少し様子を見るしかないわね」


そうして香木を齧るジェットを2人で眺めていた。
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