上 下
6 / 20

6

しおりを挟む
「確か弱い魔物を討伐する超初心者用ダンジョンだったわね」

 狩りやすい仕様にするにはやはりそこそこ広い空間が必要だし、暗くては倒しにくいだろう。もちろん私はダンジョンを作る事に誇りを持っているわ。

 手を抜いたりはしないし、細やかな気遣いは必要なの。

 長年取り込み続けた瘴気でスキル『ダンジョン作成』の項目が細かく変化している。

 最初の頃こそダンジョン内の人間を直接食べて取り込む事しか出来なかったけれど、今は殺さなくても一割から二割程度の知識や人間の持つ経験を奪う事や複製が出来る。

 今回は魔獣を倒していく度に人間から知識を得る事にするわ。人間にとっては魔物討伐の経験が得られる。私達魔族にとっては人間から知識や経験を得る。

 瘴気も吸収出来て一石二鳥ね。

 ここで知恵のある魔人を育てていけばいい。


「初心者用ダンジョンをひとフロアずつ作り始める。全部で地下五階予定のダンジョン。地下一階部分にはただ広いだけの空間にした。もちろん照明を一定間隔で作り明るく仕上げていく。

 壁は遺跡を思わせるような模様の入った土壁にしたわ。この模様の丁寧さにも気づいて欲しいところね。

 地下一階にいる魔物はスライムにした。これは一番弱い魔物で知恵も知識ない。ただ動いているだけの生き物と言っても過言ではないわ。

 このスライムには種の制約も殆ど無いに等しい。攻撃されれば反撃をするという単純な生命体だからね。 

 そしてここから私の腕の見せどころ。

 ここでも保守、管理用の扉を一つ作っておく。あくまでここは管理用の扉。扉の先には魔人の居住区に続く地下への階段を作っておく。

 初心者用の地下二階は四つに部屋を分けて一角兎や魔鳥の部屋を作っておく。

 ファルスと一緒に見に行った食堂で魔物の肉が調理されていたの。

 人間達からすると角や羽根、肉が小遣い稼ぎになるのかもしれないと思ったのよね。ここも管理の扉を一つ作ってお終いにしたわ。私が力を入れるのは地下三階からよ。

 地下三階にはゴブリンを配置したの。

 ゴブリンは弱いながらも知能があって繁殖力は強い。種から生まれたゴブリンに主人の制約が掛るし、ゴブリン同士から生まれた子供も制約を受けるのでこっちも問題はない。

 一階、二階の遺跡のようなフロアとは違い、ゴブリンの住居に近い形がいいと思うの。

 フロア全体を少し暗めにして蟻の巣を模した部屋を作り、ゴブリンが繁殖しやすいようにしておく。


 ゴブリンは簡単な指示が通るのでスライムの繁殖の手伝いはしてもらう予定なの。冒険者が来ない時間帯なら地下一階、二階の行き来も楽に出来る。

 人間が魔族を倒す時に人間の知識や経験が微々たるものだけれど吸収され、ダンジョンに住む魔族全体、その産みの親である私に還元するようにスキル設定をしておく。

 長生きすればするほど賢くなるのよね。
 ただ、種族により限界がある。

 地上からまき散らされる瘴気を吸収するには人間達が高頻度でダンジョンに入るようにしないとね。
 これで初心者用の地下一階から三階までの区画はよさそうね。

 地下三階の管理者用扉の先は私達魔人の住居を作る予定だ。

 ここで過ごすことにより人間から知識をジワジワと集め、独り立ち出来るまで育てていくのがいいと思っている。

 魔族の居住区は初心者用区画を取り囲むような形で通路を作り、各部屋を作っていく。

 王都で見てきた経験がここで生きてくるのよっ!

 地下三階の魔人居住区は武器や道具などの店舗風な作りにしておく。通路の一番奥に一つ大きな広場を作る。

 ここは地下一階までの吹き抜けを作り、高さがある空間にしたわ。泉が湧いていて各工房が使えるような広い空間になっている。

 そのうちここで魔王専用の武器が作られるほどの手先の器用な魔人が出来ればいいわね。

 そう思いながら初心者用区画に戻る私。

 ここは地上に人が沢山いるから負のエネルギーは溜まり放題。そのエネルギーを使い放題なのが他のダンジョンと違うところよね。

 次に作った地下四階は主に小型の魔猪が生活している空間にしたわ。

 ここは草原のようになっていて小型の魔獣は身を隠しやすくしたの。


 この程度の魔獣なら問題なく倒せるんじゃないかと思っているわ。

 王都から出ればすぐに魔物と遭遇する事もよくあるし、森にはもっと強い魔物もいるからね。そして魔猪の肉は魔鳥同様に人間たちの貴重な食糧らしいので人間が絶えずここにくるはず。

 壁は圧迫感がないように空をイメージして明るく作ったわ。

 我ながら上手に出来ていると思う。

 そして、ここ地下四階の管理扉の先には魔族の住居を構える事にする。

 もちろん人間の住居が参考になったわ。質素だけれど、各自が暮らす部屋、木のベッドを作り、キッチンらしきものも作ってみた。

 魔人は食事しないけれど、一応ね?

 そして区画を広げ、部屋をどんどん作っていく。部屋は十ほど作った。

 どの種族が育ってもいいように後は森のスペースや池のみのスペース、砂漠のスペースを作っておいた。

 私的には森のスペースが一番心地よいけれどね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

読切)夫が私を抱かないので話し合いをしてみた結果

オリハルコン陸
恋愛
夫に抱かれない新婚皇女様がキレました。 私には夫がいる。 顔よし、頭よし、身体よしと三拍子揃った夫が。 けれど彼は私を抱かない。一緒のベッドで眠っているのに、触れようとさえしない。 そんなのが半年も続けば、堪忍袋の緒も切れるというものです! プチエロコメディー

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

〖完結〗愛人が離婚しろと乗り込んで来たのですが、私達はもう離婚していますよ?

藍川みいな
恋愛
「ライナス様と離婚して、とっととこの邸から出て行ってよっ!」 愛人が乗り込んで来たのは、これで何人目でしょう? 私はもう離婚していますし、この邸はお父様のものですから、決してライナス様のものにはなりません。 離婚の理由は、ライナス様が私を一度も抱くことがなかったからなのですが、不能だと思っていたライナス様は愛人を何人も作っていました。 そして親友だと思っていたマリーまで、ライナス様の愛人でした。 愛人を何人も作っていたくせに、やり直したいとか……頭がおかしいのですか? 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全8話で完結になります。

王太子殿下の子を授かりましたが隠していました

しゃーりん
恋愛
夫を亡くしたディアンヌは王太子殿下の閨指導係に選ばれ、関係を持った結果、妊娠した。 しかし、それを隠したまますぐに次の結婚をしたため、再婚夫の子供だと認識されていた。 それから10年、王太子殿下は隣国王女と結婚して娘が一人いた。 その王女殿下の8歳の誕生日パーティーで誰もが驚いた。 ディアンヌの息子が王太子殿下にそっくりだったから。 王女しかいない状況で見つかった王太子殿下の隠し子が後継者に望まれるというお話です。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠 結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!

ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、 1年以内に妊娠そして出産。 跡継ぎを産んで女主人以上の 役割を果たしていたし、 円満だと思っていた。 夫の本音を聞くまでは。 そして息子が他人に思えた。 いてもいなくてもいい存在?萎んだ花? 分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。 * 作り話です * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

嫌われ王妃の一生 ~ 将来の王を導こうとしたが、王太子優秀すぎません? 〜

悠月 星花
恋愛
嫌われ王妃の一生 ~ 後妻として王妃になりましたが、王太子を亡き者にして処刑になるのはごめんです。将来の王を導こうと決心しましたが、王太子優秀すぎませんか? 〜 嫁いだ先の小国の王妃となった私リリアーナ。 陛下と夫を呼ぶが、私には見向きもせず、「処刑せよ」と無慈悲な王の声。 無視をされ続けた心は、逆らう気力もなく項垂れ、首が飛んでいく。 夢を見ていたのか、自身の部屋で姉に起こされ目を覚ます。 怖い夢をみたと姉に甘えてはいたが、現実には先の小国へ嫁ぐことは決まっており……

処理中です...