15 / 16
15
しおりを挟む
私は父の言いつけ通り部屋で過ごす事にした。夕食後、寝るまでの時間をのんびりと過ごしていると、邸に1台の馬車が到着したようだ。父からすぐに執務室へと来るように知らせがあり、マーラと共に執務室へと向かった。
「お呼びでしょうか、お父様」
「あぁ、イーリス。すまんな寝る前に」
「いえ、構いませんわ。婚姻の書類の事で呼ばれたのでしょう?」
執務室には父と母、執事と侯爵家の執事が居た。
本来なら侯爵自ら来る予定だったのだが、ロマーノ公爵が突然侯爵家に訪れたようで、侯爵自ら対応にあたり、侯爵家の執事が裏口からこっそり出て、我が家に書類を届けにやってきたようだ。
やはりロマーノ公爵はリューク様に狙いを定めているらしいわね。
私は早速書類に目を通し、3枚にサインをする。1枚は我が家、2枚目は侯爵家、3枚目は王宮へ提出する書類となっている。既に書類にはリューク様のサインがしてあったわ。
「イーリスお嬢様、リューク様よりお手紙を預かっております」
侯爵家執事から手紙を受け取り目を通す。本当ならこの書類を自分で持って行きたかった事、会えない日々がしばらく続くかと思うと寂しい、結婚式が待ち遠しいと力強い文字で書かれていたわ。
私が思い続けていたリューク様のイメージは少しずつ変わろうとしている気がする。
でもまだ私の中ではリューク様程の熱はないの。
執事は出来れば返事が欲しいと言っていたので私はすぐにマーラに便箋を持ってきて貰うと返事を書くことにしたわ。
簡潔に書いて侯爵家執事に渡すと、執事は『リューク様はイーリス様からの手紙を喜び肌身離さず持ち歩くと思います』と言っていたわ。大げさね。そうして執事は急いで侯爵家へと帰っていった。
「お父様、婚姻も成立しましたわ。後は、式を待つだけですわね」
「あぁ。邪魔が入らなければ良いんだがな」
リシェ様はリューク様と婚姻する私が疎ましい。聖女は心優しいと言われているし、歴代の聖女様達は皆に愛され、親しまれる存在だった。リシェ様とは正反対ね。本当に神託で聖女になったのかしら?
案外、公爵がお金を積んで聖女になったのかも?
まさか、ね。
それからの私は父の言いつけを守り邸から出ないようにしていた。詳しく言うと、出られなかったのだ。ロマーノ公爵がランドル侯爵家に突撃した日、私達の婚姻は成立した。
公爵は何時間も居座り続けていたが、私達の婚姻が成立した書類を見せると観念したのか項垂れて帰っていったらしい。
だが、リシェ様は諦めきれなかったようで我が家に毎日突撃するようになってしまったのよね。
「イーリス!!出てきなさいっ。聖女の私が呼んでいるのよ!」
大声で叫びながら玄関扉を叩いたり、蹴ったりと聖女以前に令嬢らしくもない行動を起こしていたの。その様子を邸の窓から見た時は怖かったわ。
連日我が家の門前で大騒ぎするものだから皆の注目の的だったと思う。リシェ様が暴れる度に我が家はすぐに王家と神殿、公爵家へと連絡を入れ、すぐに引き取りに来てもらったの。
公爵家から権力を盾に兵を差し向けられたら歯向かえないだろうと殿下達の好意で我が家も侯爵家も騎士を付けてくれたわ。
それでも連日突撃してくるリシェ様の行動の異常さに困っていたけれど、こっちにリシェ様が訪れているその間に他の4人の婚姻は全て成立したらしいわ。
カノン様や他の方からお礼状が届いたの。
「お呼びでしょうか、お父様」
「あぁ、イーリス。すまんな寝る前に」
「いえ、構いませんわ。婚姻の書類の事で呼ばれたのでしょう?」
執務室には父と母、執事と侯爵家の執事が居た。
本来なら侯爵自ら来る予定だったのだが、ロマーノ公爵が突然侯爵家に訪れたようで、侯爵自ら対応にあたり、侯爵家の執事が裏口からこっそり出て、我が家に書類を届けにやってきたようだ。
やはりロマーノ公爵はリューク様に狙いを定めているらしいわね。
私は早速書類に目を通し、3枚にサインをする。1枚は我が家、2枚目は侯爵家、3枚目は王宮へ提出する書類となっている。既に書類にはリューク様のサインがしてあったわ。
「イーリスお嬢様、リューク様よりお手紙を預かっております」
侯爵家執事から手紙を受け取り目を通す。本当ならこの書類を自分で持って行きたかった事、会えない日々がしばらく続くかと思うと寂しい、結婚式が待ち遠しいと力強い文字で書かれていたわ。
私が思い続けていたリューク様のイメージは少しずつ変わろうとしている気がする。
でもまだ私の中ではリューク様程の熱はないの。
執事は出来れば返事が欲しいと言っていたので私はすぐにマーラに便箋を持ってきて貰うと返事を書くことにしたわ。
簡潔に書いて侯爵家執事に渡すと、執事は『リューク様はイーリス様からの手紙を喜び肌身離さず持ち歩くと思います』と言っていたわ。大げさね。そうして執事は急いで侯爵家へと帰っていった。
「お父様、婚姻も成立しましたわ。後は、式を待つだけですわね」
「あぁ。邪魔が入らなければ良いんだがな」
リシェ様はリューク様と婚姻する私が疎ましい。聖女は心優しいと言われているし、歴代の聖女様達は皆に愛され、親しまれる存在だった。リシェ様とは正反対ね。本当に神託で聖女になったのかしら?
案外、公爵がお金を積んで聖女になったのかも?
まさか、ね。
それからの私は父の言いつけを守り邸から出ないようにしていた。詳しく言うと、出られなかったのだ。ロマーノ公爵がランドル侯爵家に突撃した日、私達の婚姻は成立した。
公爵は何時間も居座り続けていたが、私達の婚姻が成立した書類を見せると観念したのか項垂れて帰っていったらしい。
だが、リシェ様は諦めきれなかったようで我が家に毎日突撃するようになってしまったのよね。
「イーリス!!出てきなさいっ。聖女の私が呼んでいるのよ!」
大声で叫びながら玄関扉を叩いたり、蹴ったりと聖女以前に令嬢らしくもない行動を起こしていたの。その様子を邸の窓から見た時は怖かったわ。
連日我が家の門前で大騒ぎするものだから皆の注目の的だったと思う。リシェ様が暴れる度に我が家はすぐに王家と神殿、公爵家へと連絡を入れ、すぐに引き取りに来てもらったの。
公爵家から権力を盾に兵を差し向けられたら歯向かえないだろうと殿下達の好意で我が家も侯爵家も騎士を付けてくれたわ。
それでも連日突撃してくるリシェ様の行動の異常さに困っていたけれど、こっちにリシェ様が訪れているその間に他の4人の婚姻は全て成立したらしいわ。
カノン様や他の方からお礼状が届いたの。
99
お気に入りに追加
1,174
あなたにおすすめの小説
四度目の正直 ~ 一度目は追放され凍死、二度目は王太子のDVで撲殺、三度目は自害、今世は?
青の雀
恋愛
一度目の人生は、婚約破棄され断罪、国外追放になり野盗に輪姦され凍死。
二度目の人生は、15歳にループしていて、魅了魔法を解除する魔道具を発明し、王太子と結婚するもDVで撲殺。
三度目の人生は、卒業式の前日に前世の記憶を思い出し、手遅れで婚約破棄断罪で自害。
四度目の人生は、3歳で前世の記憶を思い出し、隣国へ留学して聖女覚醒…、というお話。
不憫なままではいられない、聖女候補になったのでとりあえずがんばります!
吉野屋
恋愛
母が亡くなり、伯父に厄介者扱いされた挙句、従兄弟のせいで池に落ちて死にかけたが、
潜在していた加護の力が目覚め、神殿の池に引き寄せられた。
美貌の大神官に池から救われ、聖女候補として生活する事になる。
母の天然加減を引き継いだ主人公の新しい人生の物語。
(完結済み。皆様、いつも読んでいただいてありがとうございます。とても励みになります)
最初から蚊帳の外でしたのよ。今さら騙されたと言われてもわたくしも困りますわ、殿下。
石河 翠
恋愛
聖女ヒラリーが偽聖女として断罪され、聖女の地位を剥奪された。王太子に色目を使うと同時に、王太子妃の悪評を巷に流したからだという。
だが実際は、王太子こそが聖女に言い寄っていた。一向になびかない聖女に業を煮やした王太子が、彼女を嵌めたのである。
王都から追放されたくなければ自分の妾になれと迫られるが、王太子が聖女に触れようとした瞬間、不思議な光が彼女を包み、美しい青年が突如現れる。
浮気だ、不貞だと騒ぎ立てる王太子に向かって、聖女は不思議そうに首を傾げる。そこで彼女が語ったこととは……。
悲劇のヒロインかと思いきや、愛する恋人のために働いていたヒロインと、ヒロインを溺愛しているヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しています。
表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(作品ID22495556)をお借りしております。
お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました
群青みどり
恋愛
国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。
どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。
そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた!
「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」
こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!
このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。
婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎
「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」
麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる──
※タイトル変更しました
【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。
藍生蕗
恋愛
かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。
そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……
偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。
※ 設定は甘めです
※ 他のサイトにも投稿しています
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
【完結】逆行した聖女
ウミ
恋愛
1度目の生で、取り巻き達の罪まで着せられ処刑された公爵令嬢が、逆行してやり直す。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書いた作品で、色々矛盾があります。どうか寛大な心でお読みいただけるととても嬉しいですm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる