12 / 16
12 リュークSide3
しおりを挟む
迎えた当日、俺は朝から落ち着きない状態で侯爵家からイーリスを迎えに行った。
着飾ったイーリスはなんて可愛いのだろう。庇護欲をそそられる。あまり見つめると変に思われてしまうだろう。俺はあまり見ないように馬車では視線を外に向けていた。
会場へ入り陛下達へ挨拶を行う。イーリスをエスコートするのに緊張した。
今までに感じたことのない心地よい緊張感。
初めてイーリスとのダンス。俺の心は未だかつてないほど浮き足立っている。
これからイーリスと仲良くやっていこうとした矢先、リシェは現れた。そして聖女という称号で無理やり俺たちのファーストダンスを奪った。
「ふふっ、リューク。今日の私は誰よりも素敵でしょう?ほらっ、あそこにディルクも居るわ。
今日は珍しくディルクも婚約者と来たのですって。私だけがエスコート無しだなんてありえないわよね。ライもソルもギャルも今日は居ないから3人で楽しみましょう?」
「リシェは聖女だろう?周りを見て見ろよ。俺たちは顰蹙ものだぞ。ダンスが終わったら陛下や貴族へ挨拶しないといけないだろう」
流石の俺だって周りからの痛い視線には気づく。あえてリシェはやっているのだろう。
男を侍らす聖女、か。最悪だな。
聖女の称号と公爵位だから黙って従っているが、これが庶民や男爵位なら俺はリシェを剣で切っていたかもな。
俺はリシェが離れた隙にイーリスを迎えに行った。
大事な婚約者をこれ以上放置できない。だがイーリスはどこかへ移動したようで色々と捜し歩いた。
ようやくバルコニーで見つけたと思ったのにあの女がまた俺を邪魔しに来た。ディルクも付き合い切れないと言いたげだ。そして俺はフラれてしまう。婚約者とダンスも踊れず先に帰らせるなんて。ディルクも横で憔悴しきっている。それはそうだろう。
反対にリシェは嬉しそうだ。悪魔のような女だ。
俺たちはリシェを王太子殿下の所まで連れていく。その間も突き刺さるような貴族たちの視線。心が折れそうだ。
「お呼びでしょうか?カルロス殿下」
リシェは呼ばれた事を不服としているかのような態度をしている。リシェは促されるままカルロス殿下の向かい側のソファに座り、俺たちは後ろに控えるように立っている。
カルロス殿下の執事がそっとリシェにお茶を出すが、リシェは口を付ける様子はない。カルロス殿下は俺たちに視線を一瞬向けたかと思うと微笑みながら口を開いた。
「リシェよ、婚約者から男を取り上げて楽しいか?男を侍らす聖女とはなんと罪深い。今日の出来事をきっかけにお前を側妃にするには貴族たちから反発を招くだろうな」
「あら、彼等は私と過ごす事を楽しみにしておりますのよ?私は愛されておりますの。殿下の側妃にならずとも皆、私を奪い合っていますのよ?
昔から彼等は私だけを見てくれていますから。貴族達の反発など無視すれば良いのです」
は?俺は耳を疑った。
ディルクに視線だけを向けると彼も俺を見ている。
今の俺たちは違うと即反論したいが口を噤むことしか出来ない。爵位が恨めしい。
「ほう」
カルロス殿下は面白そうに聞いている。俺は早く帰りたい。
「リューク君、君に聞きたい。リシェはそう言っているが、どうなのかね?正直に言いたまえ」
不敬にならないだろうか。不安になるが、これ以上リシェとも関わりたくない。俺は一歩前に出て騎士が報告するように礼を取り話し始める。
「私リューク・ランドルは幼少の頃よりロマーノ公爵からリシェ様が苛めに合っているので庇うようにと仰せつかっておりました。
それは学院でも同じ。聖女が危害を加えられるといけないから傍で見守れと。聖女様の側にいる理由はそれだけであります」
「ほう、君の婚約者の話が私にまで聞こえてくるのだが、それはリシェが好きだからだろう?」
「・・・不敬を承知で申し上げます。好きではありません。婚約者に物を送るな、声を掛けるなと聖女様が仰った事を忠実に守っただけであります」
言ってしまった。もう後には引き返せない。俺は内心ヒヤヒヤしている。
「ふむ、ディルク。君はどうだ?」
そう言うとディルクも同じように礼を取り口を開く。
「私ディルク・エイントホーフェンはリューク・ランドルと同じく公爵より仰せつかり聖女様をお守りするためだけに傍におりました」
「リシェと婚約者、どちらが大事か?」
「・・・不敬を承知で申し上げます。婚約者の方が大事です」
「だ、そうだぞ?リシェ」
カルロス殿下は面白い事が聞けたとばかりにニヤニヤしている。
着飾ったイーリスはなんて可愛いのだろう。庇護欲をそそられる。あまり見つめると変に思われてしまうだろう。俺はあまり見ないように馬車では視線を外に向けていた。
会場へ入り陛下達へ挨拶を行う。イーリスをエスコートするのに緊張した。
今までに感じたことのない心地よい緊張感。
初めてイーリスとのダンス。俺の心は未だかつてないほど浮き足立っている。
これからイーリスと仲良くやっていこうとした矢先、リシェは現れた。そして聖女という称号で無理やり俺たちのファーストダンスを奪った。
「ふふっ、リューク。今日の私は誰よりも素敵でしょう?ほらっ、あそこにディルクも居るわ。
今日は珍しくディルクも婚約者と来たのですって。私だけがエスコート無しだなんてありえないわよね。ライもソルもギャルも今日は居ないから3人で楽しみましょう?」
「リシェは聖女だろう?周りを見て見ろよ。俺たちは顰蹙ものだぞ。ダンスが終わったら陛下や貴族へ挨拶しないといけないだろう」
流石の俺だって周りからの痛い視線には気づく。あえてリシェはやっているのだろう。
男を侍らす聖女、か。最悪だな。
聖女の称号と公爵位だから黙って従っているが、これが庶民や男爵位なら俺はリシェを剣で切っていたかもな。
俺はリシェが離れた隙にイーリスを迎えに行った。
大事な婚約者をこれ以上放置できない。だがイーリスはどこかへ移動したようで色々と捜し歩いた。
ようやくバルコニーで見つけたと思ったのにあの女がまた俺を邪魔しに来た。ディルクも付き合い切れないと言いたげだ。そして俺はフラれてしまう。婚約者とダンスも踊れず先に帰らせるなんて。ディルクも横で憔悴しきっている。それはそうだろう。
反対にリシェは嬉しそうだ。悪魔のような女だ。
俺たちはリシェを王太子殿下の所まで連れていく。その間も突き刺さるような貴族たちの視線。心が折れそうだ。
「お呼びでしょうか?カルロス殿下」
リシェは呼ばれた事を不服としているかのような態度をしている。リシェは促されるままカルロス殿下の向かい側のソファに座り、俺たちは後ろに控えるように立っている。
カルロス殿下の執事がそっとリシェにお茶を出すが、リシェは口を付ける様子はない。カルロス殿下は俺たちに視線を一瞬向けたかと思うと微笑みながら口を開いた。
「リシェよ、婚約者から男を取り上げて楽しいか?男を侍らす聖女とはなんと罪深い。今日の出来事をきっかけにお前を側妃にするには貴族たちから反発を招くだろうな」
「あら、彼等は私と過ごす事を楽しみにしておりますのよ?私は愛されておりますの。殿下の側妃にならずとも皆、私を奪い合っていますのよ?
昔から彼等は私だけを見てくれていますから。貴族達の反発など無視すれば良いのです」
は?俺は耳を疑った。
ディルクに視線だけを向けると彼も俺を見ている。
今の俺たちは違うと即反論したいが口を噤むことしか出来ない。爵位が恨めしい。
「ほう」
カルロス殿下は面白そうに聞いている。俺は早く帰りたい。
「リューク君、君に聞きたい。リシェはそう言っているが、どうなのかね?正直に言いたまえ」
不敬にならないだろうか。不安になるが、これ以上リシェとも関わりたくない。俺は一歩前に出て騎士が報告するように礼を取り話し始める。
「私リューク・ランドルは幼少の頃よりロマーノ公爵からリシェ様が苛めに合っているので庇うようにと仰せつかっておりました。
それは学院でも同じ。聖女が危害を加えられるといけないから傍で見守れと。聖女様の側にいる理由はそれだけであります」
「ほう、君の婚約者の話が私にまで聞こえてくるのだが、それはリシェが好きだからだろう?」
「・・・不敬を承知で申し上げます。好きではありません。婚約者に物を送るな、声を掛けるなと聖女様が仰った事を忠実に守っただけであります」
言ってしまった。もう後には引き返せない。俺は内心ヒヤヒヤしている。
「ふむ、ディルク。君はどうだ?」
そう言うとディルクも同じように礼を取り口を開く。
「私ディルク・エイントホーフェンはリューク・ランドルと同じく公爵より仰せつかり聖女様をお守りするためだけに傍におりました」
「リシェと婚約者、どちらが大事か?」
「・・・不敬を承知で申し上げます。婚約者の方が大事です」
「だ、そうだぞ?リシェ」
カルロス殿下は面白い事が聞けたとばかりにニヤニヤしている。
105
お気に入りに追加
1,174
あなたにおすすめの小説
聖女に巻き込まれた、愛されなかった彼女の話
下菊みこと
恋愛
転生聖女に嵌められた現地主人公が幸せになるだけ。
主人公は誰にも愛されなかった。そんな彼女が幸せになるためには過去彼女を愛さなかった人々への制裁が必要なのである。
小説家になろう様でも投稿しています。
姉妹同然に育った幼馴染に裏切られて悪役令嬢にされた私、地方領主の嫁からやり直します
しろいるか
恋愛
第一王子との婚約が決まり、王室で暮らしていた私。でも、幼馴染で姉妹同然に育ってきた使用人に裏切られ、私は王子から婚約解消を叩きつけられ、王室からも追い出されてしまった。
失意のうち、私は遠い縁戚の地方領主に引き取られる。
そこで知らされたのは、裏切った使用人についての真実だった……!
悪役令嬢にされた少女が挑む、やり直しストーリー。
【完結】逆行した聖女
ウミ
恋愛
1度目の生で、取り巻き達の罪まで着せられ処刑された公爵令嬢が、逆行してやり直す。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書いた作品で、色々矛盾があります。どうか寛大な心でお読みいただけるととても嬉しいですm(_ _)m
私は王子の婚約者にはなりたくありません。
黒蜜きな粉
恋愛
公爵令嬢との婚約を破棄し、異世界からやってきた聖女と結ばれた王子。
愛を誓い合い仲睦まじく過ごす二人。しかし、そのままハッピーエンドとはならなかった。
いつからか二人はすれ違い、愛はすっかり冷めてしまった。
そんな中、主人公のメリッサは留学先の学校の長期休暇で帰国。
父と共に招かれた夜会に顔を出すと、そこでなぜか王子に見染められてしまった。
しかも、公衆の面前で王子にキスをされ逃げられない状況になってしまう。
なんとしてもメリッサを新たな婚約者にしたい王子。
さっさと留学先に戻りたいメリッサ。
そこへ聖女があらわれて――
婚約破棄のその後に起きる物語
何でも欲しがる妹を持つ姉が3人寄れば文殊の知恵~姉を辞めます。侯爵令嬢3大美女が国を捨て聖女になり、幸せを掴む
青の雀
恋愛
婚約破棄から玉の輿39話、40話、71話スピンオフ
王宮でのパーティがあった時のこと、今宵もあちらこちらで婚約破棄宣言が行われているが、同じ日に同じような状況で、何でも欲しがる妹が原因で婚約破棄にあった令嬢が3人いたのである。その3人は国内三大美女と呼ばわれる令嬢だったことから、物語は始まる。
逆行令嬢は聖女を辞退します
仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。
死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって?
聖女なんてお断りです!
神託を聞けた姉が聖女に選ばれました。私、女神様自体を見ることが出来るんですけど… (21話完結 作成済み)
京月
恋愛
両親がいない私達姉妹。
生きていくために身を粉にして働く妹マリン。
家事を全て妹の私に押し付けて、村の男の子たちと遊ぶ姉シーナ。
ある日、ゼラス教の大司祭様が我が家を訪ねてきて神託が聞けるかと質問してきた。
姉「あ、私聞けた!これから雨が降るって!!」
司祭「雨が降ってきた……!間違いない!彼女こそが聖女だ!!」
妹「…(このふわふわ浮いている女性誰だろう?)」
※本日を持ちまして完結とさせていただきます。
更新が出来ない日があったり、時間が不定期など様々なご迷惑をおかけいたしましたが、この作品を読んでくださった皆様には感謝しかございません。
ありがとうございました。
四度目の正直 ~ 一度目は追放され凍死、二度目は王太子のDVで撲殺、三度目は自害、今世は?
青の雀
恋愛
一度目の人生は、婚約破棄され断罪、国外追放になり野盗に輪姦され凍死。
二度目の人生は、15歳にループしていて、魅了魔法を解除する魔道具を発明し、王太子と結婚するもDVで撲殺。
三度目の人生は、卒業式の前日に前世の記憶を思い出し、手遅れで婚約破棄断罪で自害。
四度目の人生は、3歳で前世の記憶を思い出し、隣国へ留学して聖女覚醒…、というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる