4 / 16
4
しおりを挟む
「イーリス、・・・久しぶりだな。君と会ったのは・・・」
「6年ぶりですわね、リューク様。父の仕事の為一緒に侯爵領を訪れた時ぶりですわ。まぁ、学院でリューク様をお見かけする事は何度かございましたが。帰って来たと思ったら突然部屋に入って来るとは失礼ではありませんか?」
「あぁ、すまん。急ぎの話だった」
「・・・それでご用件は?」
「来週の王宮の舞踏会に君を連れて参加する事になった。すぐに用意してほしい」
・・・王宮の舞踏会?
来週?
あまりの突然の出来事に驚きを隠せないでいる。
「無理ですわ。ドレスがありませんもの」
「何か騒ぎが聞こえたのだけれど、どうしたのかしら?」
「お義母様」
「母上!」
きっと執事が彼の帰宅を知らせてくれたのだろう。
「来週の王宮で開かれる舞踏会に参加するためにイーリスに伝えに来たんだ。王都の伯爵家に行ったが、イーリスがうちの領地にいると聞いて急いできた」
お義母様は頭を抑えている。
「リューク。貴方、非常識にも程があるわ。王宮の舞踏会なら半年前から分かっていることよね?それにドレスも今日、明日で出来る物ではないと知っているでしょう?」
「知っているさ。今回の舞踏会は婚約者同伴だったから不参加にしていたんだが、殿下から婚約者を連れて参加するように言われたんだよ」
なんという迷惑な話でしょうか。きっと殿下が直々に言うくらいなのだからリシェ様絡みの事に違いないわ。私は本をそっと本棚にしまい、ドレスの事を考える。
「イーリスさん、この間商会が来た時に一緒に注文したドレスならもう出来上がっていると思うわ。すぐに商会へ連絡しましょう。リューク、貴方いい加減にしなさいね。もう式も近いの、いつまでも聖女様に熱を上げていられないのよ」
「・・・言われなくても分かっている。それにリシェになんて熱を上げるわけがない」
リューク様は苦虫を噛み潰したような表情をして答えていた。
「ともかく、来週の王宮の舞踏会に参加するから。当日は伯爵家に迎えに行く」
「・・・分かりましたわ。伯爵家へ伝えておきます」
「イーリス、中庭でお茶でもどうか」
「お茶、ですか?」
リューク様からのお茶の誘い。今日は部屋でゆっくりしていたかったのだけれど。
「外は少し肌寒くなってきたのでこのままお部屋で頂きませんか?」
「・・・ああ、そうだった。確かに外は令嬢にとっては肌寒いかもしれない。気づかなかった」
リューク様は少しばつが悪そうにしている。
だが、ソファへ座ると私の淹れたお茶を美味しそうに飲んでいる。お茶を気に入ってもらえたようで良かったわ。
けれどその側でお義母様は物凄く私の為に怒ってくれているわ。もっと婚約者を大切にしなさいとか、家に帰ってきなさいとか、それはもう、色々と。
リューク様はお義母様の小言に居づらさを感じたのかしら早々王都へと戻っていった。
本当に困ったわ。
私はマーラにお願いして伯爵家へと連絡を取った。突然の舞踏会の為に帰ってくる娘に何も言わず準備しておくと返事が返ってきた。夫人はリューク様の勝手な事にまた小言を溢しながらすぐに商会へと連絡してくれてドレスを準備してくれたわ。
どうやらすぐに持ってきてくれるそうだ。
間に合って良かった。
それにしてもリューク様は何を考えているのでしょうか?
今は騎士として王宮で仕事をしているようですが王都にはタウンハウスは無いので寮に住んでいるのかしら。侯爵も夫人も私には極力彼の動向が目につかないように配慮されているようなのであまり気にしても意味はないですね。
「6年ぶりですわね、リューク様。父の仕事の為一緒に侯爵領を訪れた時ぶりですわ。まぁ、学院でリューク様をお見かけする事は何度かございましたが。帰って来たと思ったら突然部屋に入って来るとは失礼ではありませんか?」
「あぁ、すまん。急ぎの話だった」
「・・・それでご用件は?」
「来週の王宮の舞踏会に君を連れて参加する事になった。すぐに用意してほしい」
・・・王宮の舞踏会?
来週?
あまりの突然の出来事に驚きを隠せないでいる。
「無理ですわ。ドレスがありませんもの」
「何か騒ぎが聞こえたのだけれど、どうしたのかしら?」
「お義母様」
「母上!」
きっと執事が彼の帰宅を知らせてくれたのだろう。
「来週の王宮で開かれる舞踏会に参加するためにイーリスに伝えに来たんだ。王都の伯爵家に行ったが、イーリスがうちの領地にいると聞いて急いできた」
お義母様は頭を抑えている。
「リューク。貴方、非常識にも程があるわ。王宮の舞踏会なら半年前から分かっていることよね?それにドレスも今日、明日で出来る物ではないと知っているでしょう?」
「知っているさ。今回の舞踏会は婚約者同伴だったから不参加にしていたんだが、殿下から婚約者を連れて参加するように言われたんだよ」
なんという迷惑な話でしょうか。きっと殿下が直々に言うくらいなのだからリシェ様絡みの事に違いないわ。私は本をそっと本棚にしまい、ドレスの事を考える。
「イーリスさん、この間商会が来た時に一緒に注文したドレスならもう出来上がっていると思うわ。すぐに商会へ連絡しましょう。リューク、貴方いい加減にしなさいね。もう式も近いの、いつまでも聖女様に熱を上げていられないのよ」
「・・・言われなくても分かっている。それにリシェになんて熱を上げるわけがない」
リューク様は苦虫を噛み潰したような表情をして答えていた。
「ともかく、来週の王宮の舞踏会に参加するから。当日は伯爵家に迎えに行く」
「・・・分かりましたわ。伯爵家へ伝えておきます」
「イーリス、中庭でお茶でもどうか」
「お茶、ですか?」
リューク様からのお茶の誘い。今日は部屋でゆっくりしていたかったのだけれど。
「外は少し肌寒くなってきたのでこのままお部屋で頂きませんか?」
「・・・ああ、そうだった。確かに外は令嬢にとっては肌寒いかもしれない。気づかなかった」
リューク様は少しばつが悪そうにしている。
だが、ソファへ座ると私の淹れたお茶を美味しそうに飲んでいる。お茶を気に入ってもらえたようで良かったわ。
けれどその側でお義母様は物凄く私の為に怒ってくれているわ。もっと婚約者を大切にしなさいとか、家に帰ってきなさいとか、それはもう、色々と。
リューク様はお義母様の小言に居づらさを感じたのかしら早々王都へと戻っていった。
本当に困ったわ。
私はマーラにお願いして伯爵家へと連絡を取った。突然の舞踏会の為に帰ってくる娘に何も言わず準備しておくと返事が返ってきた。夫人はリューク様の勝手な事にまた小言を溢しながらすぐに商会へと連絡してくれてドレスを準備してくれたわ。
どうやらすぐに持ってきてくれるそうだ。
間に合って良かった。
それにしてもリューク様は何を考えているのでしょうか?
今は騎士として王宮で仕事をしているようですが王都にはタウンハウスは無いので寮に住んでいるのかしら。侯爵も夫人も私には極力彼の動向が目につかないように配慮されているようなのであまり気にしても意味はないですね。
96
お気に入りに追加
1,174
あなたにおすすめの小説
四度目の正直 ~ 一度目は追放され凍死、二度目は王太子のDVで撲殺、三度目は自害、今世は?
青の雀
恋愛
一度目の人生は、婚約破棄され断罪、国外追放になり野盗に輪姦され凍死。
二度目の人生は、15歳にループしていて、魅了魔法を解除する魔道具を発明し、王太子と結婚するもDVで撲殺。
三度目の人生は、卒業式の前日に前世の記憶を思い出し、手遅れで婚約破棄断罪で自害。
四度目の人生は、3歳で前世の記憶を思い出し、隣国へ留学して聖女覚醒…、というお話。
不憫なままではいられない、聖女候補になったのでとりあえずがんばります!
吉野屋
恋愛
母が亡くなり、伯父に厄介者扱いされた挙句、従兄弟のせいで池に落ちて死にかけたが、
潜在していた加護の力が目覚め、神殿の池に引き寄せられた。
美貌の大神官に池から救われ、聖女候補として生活する事になる。
母の天然加減を引き継いだ主人公の新しい人生の物語。
(完結済み。皆様、いつも読んでいただいてありがとうございます。とても励みになります)
最初から蚊帳の外でしたのよ。今さら騙されたと言われてもわたくしも困りますわ、殿下。
石河 翠
恋愛
聖女ヒラリーが偽聖女として断罪され、聖女の地位を剥奪された。王太子に色目を使うと同時に、王太子妃の悪評を巷に流したからだという。
だが実際は、王太子こそが聖女に言い寄っていた。一向になびかない聖女に業を煮やした王太子が、彼女を嵌めたのである。
王都から追放されたくなければ自分の妾になれと迫られるが、王太子が聖女に触れようとした瞬間、不思議な光が彼女を包み、美しい青年が突如現れる。
浮気だ、不貞だと騒ぎ立てる王太子に向かって、聖女は不思議そうに首を傾げる。そこで彼女が語ったこととは……。
悲劇のヒロインかと思いきや、愛する恋人のために働いていたヒロインと、ヒロインを溺愛しているヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しています。
表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(作品ID22495556)をお借りしております。
お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました
群青みどり
恋愛
国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。
どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。
そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた!
「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」
こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!
このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。
婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎
「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」
麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる──
※タイトル変更しました
【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。
藍生蕗
恋愛
かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。
そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……
偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。
※ 設定は甘めです
※ 他のサイトにも投稿しています
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
【完結】逆行した聖女
ウミ
恋愛
1度目の生で、取り巻き達の罪まで着せられ処刑された公爵令嬢が、逆行してやり直す。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書いた作品で、色々矛盾があります。どうか寛大な心でお読みいただけるととても嬉しいですm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる