2 / 15
1
しおりを挟む
気が付くと私は自分のベッドに運ばれていましたわ。どれくらい気を失っていたのかしら。辺りはすっかり暗くなっているわ。私が起きると、部屋で待機していた侍女のテラが心配そうに手を握りしめてくれます。
「お嬢様、気が付かれましたか。大変でしたね。今、お飲み物をお持ちしますね。」
テラが立ち上がり、飲み物を用意しているとノックがある。
「ルナ、気が付いたかい?」
「アーロお兄様。」
お兄様がそっとベッドに腰をかけ、優しく私の頬を撫でる。
「折角のルナの誕生日が台無しになってしまったね。」
「アーロお兄様。あっ、あの後、パーティーはどうなってしまったのでしょうか?」
「ウィルとあの女はモリス伯爵が引き摺るように連れて帰ったよ。パーティーはお開きとなった。良い土産話が出来たのかもね。でも出席者の殆どは倒れたルナの事を心配してくれていたよ。
あの二人のお陰でパーティーがお開きとなってしまったし、きっちり落とし前は付けてもらわないとね。ああ、ルナは何も心配しなくていいからね。」
お兄様の話を聞いている間に先程の出来事を思いだし、いつの間にか涙が頬を伝っていた。
何故、彼はあの場を選んだの。
彼は私の事を踏みつけても良いと思っていたの?
曲がりなりにも一緒に過ごした年月は何だったのでしょう。
親同士が決めた婚約とはいえ、一緒にお茶をしたり、街へ出かけたりして恋人のように感じていたのは私だけだったと思うと辛く、苦しいです。
幸せだと感じていた日々と男爵令嬢と肩を抱き、見つめ合う姿が交互に押し寄せるように思い出され、苦い思いに心が潰されそう。
「お兄様。私、少し疲れたみたいですわ。お休みしてもよろしいですか?」
「ああ、ごめんね。ルナ、顔色が悪い大丈夫かい。疲れただろう。少しお休み。父さん達には話をしておくよ。」
お兄様は私の涙を優しく拭うと、微笑んで部屋を後にした。
辛い。
苦しい。
全てを忘れてしまいたい。
嘘だと思いたい。
それから思い出す度な涙が止まらず、嗚咽を上げて泣き、涙も止まった時には疲れ果て何も考えられずにベッドに佇み、気づけば丸2日は経っていた。
何とも形容し難い徒労感に苛まれる。
お医者様が呼ばれ、家族は心配そうに私を見つめていました。
「過度の心労があったようですな。今は栄養のある物を食べ、ゆっくり養生するように。」
お医者様はそう告げると、薬を侍女に渡して帰って行った。
「お父様、ウィル様との婚約はどうなりましたか?」
「ウィル・モリス伯爵子息との婚約は白紙になった。破棄でもよかったんだが、それではルナに傷がついてしまうからな。ルナが心配する事はないぞ?大丈夫だ。当分はゆっくりするといい。」
そう言って父は部屋を出て行く。
あまりの衝撃の大きさに心が麻痺してしまったよう。悲しいと感じないのに一人になると気づけばまた涙が出ている。
そんな日が続き、家族が心配して何処へ行くにも付き添ってくれています。みんなに心配ばかり。ずっと心配かけてばかりもいられないですね。
前向きにならねばなりませんね。来月から始まる学校の準備を始めようかしら。テラに手伝ってもらいながら制服を一人で着る練習をしたり、学校へ入って困らないように予習したりと、この2ヵ月を過ごしましたわ。
家族や使用人達の支えもあり、自分でも気持ちの整理が日を追うごとに出来たのか、忙しくしていたおかげか気持ちも幾分、上向きとなりました。
「お嬢様、気が付かれましたか。大変でしたね。今、お飲み物をお持ちしますね。」
テラが立ち上がり、飲み物を用意しているとノックがある。
「ルナ、気が付いたかい?」
「アーロお兄様。」
お兄様がそっとベッドに腰をかけ、優しく私の頬を撫でる。
「折角のルナの誕生日が台無しになってしまったね。」
「アーロお兄様。あっ、あの後、パーティーはどうなってしまったのでしょうか?」
「ウィルとあの女はモリス伯爵が引き摺るように連れて帰ったよ。パーティーはお開きとなった。良い土産話が出来たのかもね。でも出席者の殆どは倒れたルナの事を心配してくれていたよ。
あの二人のお陰でパーティーがお開きとなってしまったし、きっちり落とし前は付けてもらわないとね。ああ、ルナは何も心配しなくていいからね。」
お兄様の話を聞いている間に先程の出来事を思いだし、いつの間にか涙が頬を伝っていた。
何故、彼はあの場を選んだの。
彼は私の事を踏みつけても良いと思っていたの?
曲がりなりにも一緒に過ごした年月は何だったのでしょう。
親同士が決めた婚約とはいえ、一緒にお茶をしたり、街へ出かけたりして恋人のように感じていたのは私だけだったと思うと辛く、苦しいです。
幸せだと感じていた日々と男爵令嬢と肩を抱き、見つめ合う姿が交互に押し寄せるように思い出され、苦い思いに心が潰されそう。
「お兄様。私、少し疲れたみたいですわ。お休みしてもよろしいですか?」
「ああ、ごめんね。ルナ、顔色が悪い大丈夫かい。疲れただろう。少しお休み。父さん達には話をしておくよ。」
お兄様は私の涙を優しく拭うと、微笑んで部屋を後にした。
辛い。
苦しい。
全てを忘れてしまいたい。
嘘だと思いたい。
それから思い出す度な涙が止まらず、嗚咽を上げて泣き、涙も止まった時には疲れ果て何も考えられずにベッドに佇み、気づけば丸2日は経っていた。
何とも形容し難い徒労感に苛まれる。
お医者様が呼ばれ、家族は心配そうに私を見つめていました。
「過度の心労があったようですな。今は栄養のある物を食べ、ゆっくり養生するように。」
お医者様はそう告げると、薬を侍女に渡して帰って行った。
「お父様、ウィル様との婚約はどうなりましたか?」
「ウィル・モリス伯爵子息との婚約は白紙になった。破棄でもよかったんだが、それではルナに傷がついてしまうからな。ルナが心配する事はないぞ?大丈夫だ。当分はゆっくりするといい。」
そう言って父は部屋を出て行く。
あまりの衝撃の大きさに心が麻痺してしまったよう。悲しいと感じないのに一人になると気づけばまた涙が出ている。
そんな日が続き、家族が心配して何処へ行くにも付き添ってくれています。みんなに心配ばかり。ずっと心配かけてばかりもいられないですね。
前向きにならねばなりませんね。来月から始まる学校の準備を始めようかしら。テラに手伝ってもらいながら制服を一人で着る練習をしたり、学校へ入って困らないように予習したりと、この2ヵ月を過ごしましたわ。
家族や使用人達の支えもあり、自分でも気持ちの整理が日を追うごとに出来たのか、忙しくしていたおかげか気持ちも幾分、上向きとなりました。
応援ありがとうございます!
33
お気に入りに追加
840
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる