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 翌日、侍女長に私の先輩となる侍女のカーラさんに付いて仕事をする事になった。とはいえ、私はまだ七歳。毎日少しの時間だけの勤務になったのは言うまでもない。ドレスの管理や装飾品の管理から始まって髪結い、流行のチェック、お茶の淹れ方等覚えることが山のようにあってとっても驚いたわ。

午前中に学院の勉強をして午後は侍女見習いの勉強なの。今までフルム兄様に勉強を教えて貰っていたくらいだったので目まぐるしく日々が過ぎていった。


 侍女の仕事って想像していたより何倍も大変だと言う事を知ったの。

 私の先輩となったカーラさんはとても仕事に熱心で厳しい。立ち位置が違ったり、姿勢が悪かったりするとすぐ怒られてしまうの。

そして驚いたのはダンス。え、そんなのがあるの?って不思議に思ったのは私だけではないはず。

どうやら主人と一緒にドレスを着て舞踏会に参加する事があるのだという。前回も含めて社交の場には一切出ていなかったから知らなかった。場合によってはダンスを申し込まれる事があるらしい。

ダンスが下手だと主人の顔に泥を塗るのだとかどうとか。まぁ、王宮侍女達は基本的に貴族籍なのでダンスは踊れるよう教育は受けているので問題ないと思う。もちろん学院にもダンスの時間がある。

社交をする上で大事なのだと思う。時間がある時は従者と侍女でダンスの練習をするの。私は残念だけれど身長が足りないので一人でステップの練習をひたすらする。

クッ、すぐに大きくなるんだからっ。悲しくなんてないわ。




そうして私が祖母の離宮に住み始めて三年の月日が流れた。


 私もようやく十歳になりました。偶にエリアス国王がお婆様と仕事の話をするついでに私にお菓子を食べさせてから帰っていく。

国王陛下や王妃様が忙しい時にお婆様が仕事の補佐をする事があって偶に視察に出掛けるの。その時はお婆様と一緒に視察へ出る。お婆様の姿を見る度に尊敬するわ。

もっとお婆様と居たいと思ってしまうの。



そうそう、父はすぐにこちらに越してくると思っていたのだけれど、ラオワーダ国から引き止められて中々爵位を返せなかったようだ。

 結局、現地に残る家令に爵位を譲渡する形で父達はサルドア国に渡ってきた。譲渡するのも王家から待ったがかかり大変そうだとお婆様が言っていた。

「モア!会いたかった!大きくなったね。長い間待たせた。ようやく家族一緒に暮らすことが出来る」
「お父様、お母様。もう、大丈夫なのですか?」

「あぁ。何にも問題はない。大丈夫だ」
「そうよ。お母様、モアを預かっていただきありがとうございました」
「私はモアと暮らせてとても楽しかったわ。王妃で居た時は娘達に出来なかった事をモアと出来たの。なんならずっとモアと暮らしてもいいわ」

「お母様ったらっ。でも、偶にはこちらに来ますね。王都からそう遠くないですからね」
「えぇ、勿論よ。それにしてもシーラはこれから忙しくなるでしょう?」
「そうですね。サルドア国の社交が待っていますから」
「本当は伯爵位にしたいのだけれど」
「男爵位のままでいいですわ」

 そう、サルドア国では私達は平民だと思っていたのだけれど、母は爵位を持っていてこれからは女男爵としてここで生活する事になった。

そして名前も変わったの。

 私の名前はモア・コルネイユ男爵令嬢になった。母はもちろん領地を持っていない男爵なのだけれど、貿易で財を成しているので社交場では大忙しのようだ。父は爵位に拘りはないらしく家族皆で幸せに暮らせればそれでいい、と気にしていない様子。

むしろ貴族の繋がりを母に任せて本業の貿易に力を入れる事が出来ると喜んでいる。因みに、ラオワーダ国で一、二位を争うほどの貿易商がサルドア国に移ったのでエリアス国王はホクホクだったらしい。

お婆様もエリアス国王も母の持つ爵位を上げたいが、今は新参者だし数多くいる男爵に埋もれていればラオワーダ国から目を付けられる事も少ないだろうと陞爵をするのを止めている状況のようだ。




「お婆様、また遊びに来ますね。色々とお婆様の元で勉強させていただいて嬉しかったです。学院を卒業したら絶対に戻ってきますからっ」
「モアが居なくなると寂しくなるわ。勉強を頑張るのですよ?いつでも離宮に帰ってきなさいね」
「はい!」

 お婆様に挨拶をした後、私達は王都にあるコルネイユ邸へと向かった。三年も離れていたので私は父と母と一緒に乗る馬車で興奮しっぱなしだったわ。ずっとおしゃべりをしていたもの。

父も母もずっと私の話を聞いてくれて微笑んでいる。ようやく家族皆で安心して暮らせると思うと嬉しくなった。アルフはというと邸で私の帰りを待っている。

そうして私達はサルドア国の王都でコルネイユ男爵として新たなスタートを切った。
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