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「カーナ様、王太子殿下がお見えになりました。」

街は活気に溢れているけれど、今日はいつもに増して人で溢れていたわ。

 殿下達を乗せた馬車は駅を降りた所で大きな歓声に包まれた。
 お父様やセルゲイを始めとした幹部からの挨拶を受けている。アインス殿下は手を挙げ民衆にも答えていると、私と目が合う。

アインス様は私を見つけると大股で歩いてギュッと私を抱きしめてきた。

「アインス様、お久しぶりです」

「カーナ、会いたかった。離れたくない。視察中はずっと側にいてくれるかい?」

「アインス様、子どもみたいですわ。どうされたの?私は視察中は側におりますわ」

 アインス様の左手は私の腰を抱き、右手は私の頬を撫でたり手を握りると何事も無かったように案内係の後を付いて歩き始める。

父やセルゲイは密着している様子に複雑な表情をしているわ。そうよね。

 私は諦めてそのままアインス様や文官達に駅の説明をし始めた。そして領地の特産品を手土産に、と用意した物を手渡していった。

中身は野菜のピクルスやベーコンやソーセージ等。こっそり味玉なんかも作って入れてみた。

マイア様の領地は山を保有しており、鉱物や絹織物が特産品となっているの。

 私の領地では農業がメインとなっているが、今は一部研究と称して牛を育てているの。目指すは和牛。夜は邸でなんちゃって和牛のステーキを振る舞う予定になっているの。少し話がズレてしまったわね。

 駅は使い勝手が良いように街の中心部に建設された為、街の賑わいがすぐに感じ取れるようになっている。
 マイア様の育てた技術者が街に入り、中心部から急ピッチで建物の建設をしている。下水施設は重点的に取り組んでいるので臭いは気にならないはず。

景観も意識して建てるようにしたのよね。反対した者はいなかったのかって?転居させる時に上下水道を完備させた家を用意する約束をすると喜んで転居してくれたわ。駅周辺はやはり多くの店が出店して賑わっている。

王都にも負けない位なのよ?

 今馬車鉄道は王都の外側で完成させているけれど、この物流の流れを見て王都の中まで通すかもしれないわ。因みに馬車鉄道のおかげで物流が一気に良くなり、王都の市場が活性化しているそうな。

馬車鉄道も、繁盛し始めていて公爵家も我が家もホクホクなの。

 街を案内した後、侯爵邸に視察団を受け入れる。
 夕食は食堂でアインス様と文官達と一緒に特産品を使った料理を出した。これは私の前世の知識をフルに活用させて貰ったわ。大好評のようで良かった。

文官達からは料理についても質問が沢山きたわ。なんちゃって和牛については王城の晩餐会でも出せるように手配して欲しいとか。勿論アインス様も美味しいと喜んでいたわ。歓迎会も終わり、文官達は部屋へと戻ってゆく。

アインス様と父は執務室で飲み直す事になったようだ。

「お父様。では私は下がりますわ。アインス様とゆっくりお飲み下さい。」

そう言って私は父の執務室を後にする。湯浴みも終えてマリアナにお茶をお願いする。
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