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16ラナの過去2
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そして私は一人前の魔女となった日、精霊たちに飛ばされたわ。
飛ばされた先は、『忘却の塔』。
そこは最初からその名前では無かったの。
魔法研究塔と呼ばれていた。
その塔は大昔に見張りの塔として使われていたけれど、王都が発展し、大きくなってくると見張りの塔も移転する事になり使われなくなったのだ。
王女の権限を行使してこの塔に魔法研究に必要な書籍や植物を持ち込んでいたの。
魔法を研究する時に塔も実験で色々と内部の部屋を増築したり、階数を増やしたり、魔力の無い者には塔を見つけることが出来ないようにしていた。
私しか出入りしておらず、いつの間にか皆から『忘れられた塔』という名で呼ばれ始め、最終的に『忘却の塔』と呼ばれるようになったようだった。
私は『忘却の塔』に入り浸るような形だったのだけれど、そこは魔女となっても一国の王女。
しっかりと政務はこなしていたし、ブラッドロー・カレンベルク公爵子息と婚約し仲睦まじく過ごしていたつもりだった。
私が魔女となり三年後には魔法使いであるブラッドローとの婚姻も決まっていた。
彼は魔法学校で知り合ったの。
魔法に興味を持ち、将来魔法使いになるためにずっと勉強をしていたわ。
いつも彼は成績一位、私が二位と悔しい思いをしていたの。あまりに悔しかったから彼に文句の一つでも言ってやろうと思って中庭に呼び出したのが運命の出会いだったのかもしれない。
彼はすました顔で笑いながら魔法の勝負をようと言ったの。
魔力量は王女である私の方があったはずなのに彼はあっさりと私との勝負に勝った。
私は悔しくて何度も彼に挑戦したわ。
そうして何度も何度も勝負を挑んでいくうちに仲良くなっていったのは懐かしい思い出。
そして婚姻間近で私はギャランに陥れられた。
首だけになった私は動くことが出来ずにいた。私のために何か月も駆け回り、証拠を集めてくれた彼。
ブラッドローは私の冤罪を訴えて証拠を提出し、冤罪を晴らしてくれたの。
大勢の貴族達の前で証明されたわ。
それと同時にギャランが大罪人となった。
私が『永久の首』となったのに真犯人のギャランは毒杯で済ませようとしていた王妃。
勿論誰も納得がいくはずもなくギャラン王子も『永久の首』の刑に処されたらしい。
……その後の事は分からない。
ブラッドローは冤罪を晴らし、私の身体を探している時に王妃の手の者により暗殺されたと聞いた。
伝えに来たのは父である国王陛下だ。
父は私とブラッドローが政略結婚ではなく愛し合っていた事を知っていた一人。
苦悶の表情をした父は絞り出すように私に告げた。
私の身体は精霊に預けたため今戻ってこない。という事はまだこのままでいなければいけないのだという。
予言では遠い未来に必ず私を救い出す者が現れる。それまでこのまま時を過ごしなさいと。
私は涙を止めることが出来なかったの。
愛する者の死。
罪人として裁かれたままの状態で永遠にも近い時を過ごす恐怖。
いくら神託が降りて、精霊から守られているとはいえあまりに酷い仕打ちだと思った。
何日も何十日も泣き叫び、意識が無くなるまで魔法を使い続け、狂っていたのだと思う。
いつしか考えることも止めた。
首だけでただただ時間が過ぎていく。
一年、五年、十年が経ち。
最初は従者が世話に来ていたけれど、狂ってからは誰も塔に近寄らなくなった。
ある時、鐘がなった。
きっと王族の誰かが亡くなったのだろう。
ボーッとただ外を眺める。
何も変わらない日々。
多分三百年位経った頃だったか城の方で白い煙が上がった。
轟音が響き、地が揺れ、人々の叫ぶ声がしていたと思う。魔獣が王都に攻めてきたのか、国同士で戦争になったのかは分からない。
ただ私は見つめるだけだった。
私はここで深い眠りから目が覚めた。
懐かしい夢。
けれど、あまり思い出したくはない夢ね。
飛ばされた先は、『忘却の塔』。
そこは最初からその名前では無かったの。
魔法研究塔と呼ばれていた。
その塔は大昔に見張りの塔として使われていたけれど、王都が発展し、大きくなってくると見張りの塔も移転する事になり使われなくなったのだ。
王女の権限を行使してこの塔に魔法研究に必要な書籍や植物を持ち込んでいたの。
魔法を研究する時に塔も実験で色々と内部の部屋を増築したり、階数を増やしたり、魔力の無い者には塔を見つけることが出来ないようにしていた。
私しか出入りしておらず、いつの間にか皆から『忘れられた塔』という名で呼ばれ始め、最終的に『忘却の塔』と呼ばれるようになったようだった。
私は『忘却の塔』に入り浸るような形だったのだけれど、そこは魔女となっても一国の王女。
しっかりと政務はこなしていたし、ブラッドロー・カレンベルク公爵子息と婚約し仲睦まじく過ごしていたつもりだった。
私が魔女となり三年後には魔法使いであるブラッドローとの婚姻も決まっていた。
彼は魔法学校で知り合ったの。
魔法に興味を持ち、将来魔法使いになるためにずっと勉強をしていたわ。
いつも彼は成績一位、私が二位と悔しい思いをしていたの。あまりに悔しかったから彼に文句の一つでも言ってやろうと思って中庭に呼び出したのが運命の出会いだったのかもしれない。
彼はすました顔で笑いながら魔法の勝負をようと言ったの。
魔力量は王女である私の方があったはずなのに彼はあっさりと私との勝負に勝った。
私は悔しくて何度も彼に挑戦したわ。
そうして何度も何度も勝負を挑んでいくうちに仲良くなっていったのは懐かしい思い出。
そして婚姻間近で私はギャランに陥れられた。
首だけになった私は動くことが出来ずにいた。私のために何か月も駆け回り、証拠を集めてくれた彼。
ブラッドローは私の冤罪を訴えて証拠を提出し、冤罪を晴らしてくれたの。
大勢の貴族達の前で証明されたわ。
それと同時にギャランが大罪人となった。
私が『永久の首』となったのに真犯人のギャランは毒杯で済ませようとしていた王妃。
勿論誰も納得がいくはずもなくギャラン王子も『永久の首』の刑に処されたらしい。
……その後の事は分からない。
ブラッドローは冤罪を晴らし、私の身体を探している時に王妃の手の者により暗殺されたと聞いた。
伝えに来たのは父である国王陛下だ。
父は私とブラッドローが政略結婚ではなく愛し合っていた事を知っていた一人。
苦悶の表情をした父は絞り出すように私に告げた。
私の身体は精霊に預けたため今戻ってこない。という事はまだこのままでいなければいけないのだという。
予言では遠い未来に必ず私を救い出す者が現れる。それまでこのまま時を過ごしなさいと。
私は涙を止めることが出来なかったの。
愛する者の死。
罪人として裁かれたままの状態で永遠にも近い時を過ごす恐怖。
いくら神託が降りて、精霊から守られているとはいえあまりに酷い仕打ちだと思った。
何日も何十日も泣き叫び、意識が無くなるまで魔法を使い続け、狂っていたのだと思う。
いつしか考えることも止めた。
首だけでただただ時間が過ぎていく。
一年、五年、十年が経ち。
最初は従者が世話に来ていたけれど、狂ってからは誰も塔に近寄らなくなった。
ある時、鐘がなった。
きっと王族の誰かが亡くなったのだろう。
ボーッとただ外を眺める。
何も変わらない日々。
多分三百年位経った頃だったか城の方で白い煙が上がった。
轟音が響き、地が揺れ、人々の叫ぶ声がしていたと思う。魔獣が王都に攻めてきたのか、国同士で戦争になったのかは分からない。
ただ私は見つめるだけだった。
私はここで深い眠りから目が覚めた。
懐かしい夢。
けれど、あまり思い出したくはない夢ね。
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