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「皆様、お疲れ様でした」

 食事をしながら回復魔法を掛ける。

「ナーニョ様がいて本当に助かります。きっと俺らだけだったら今日の魔獣で半数は死んでたよな」
「絶対そうだ。俺なんか巡視に行く事が決まった時、かーちゃんにごめんなって謝ったもんな」

「ナーニョ様の魔法のおかげで俺達は怪我一つなくここまでこれたし、夜の見張りも楽になっているんだもんな。本当に感謝しかない」
「みなさんとこの巡視に同行できて本当に嬉しいです」
「ナーニョ様はどうして巡視に同行しようと思ったのですか? 王女様なら王都から出ずとも怪我人を治療することができるのに」

「……理由は色々ありますが、私のこの巡視の最大の目的は私達以外の魔法使いを見つけるため、なんです」
「魔法、使い、ですか?」
「えぇ。みなさんもご存知の通りグリークス神官長は魔法を使える事が判明し、今は王都の人達の治療をしていますよね?
 もし、魔法を使う事ができる人達が大勢いたらこの国はもっと豊かになるし、怪我人も減る。
魔獣に怯えなくていい日もくるかもしれない。そう思うのです」

 気心が知れた騎士達と火を囲みながら話すナーニョ。

 魔法使いが増えればそれだけ魔獣の脅威が減る。

 この世界で暮らしていくにはその方がいい。それに魔法使いが増えれば私達の存在意義も薄まる。

 私とローニャだけという事は私達の負担は常にある。

 それによからぬ人達から狙われる危険もある。魔法使いを産ませるだけの道具とされかねない危険もはらんでいるわ。

 私が巡視に出る事でローニャには負担を強いているのも分かっているけれど、今は陛下やケイルート兄様、グリークス神官長がローニャを守ってくれている。

 動ける間に私が動かないといけないの。

「それに私はローニャと違ってわがままですからこの世界の様々な場所を見てみたいと思ったんです。美味しい物も食べてみたい」

「そうですね! 王都とは違った雰囲気で場所によって食べるものが全然違いますからね。次の街は海がありますから魚料理も食べられると思いますよ」

「本当ですか? 私、川魚しか食べたことがないので楽しみです」

 先ほどまで隊長達と話し合いをしていたエサイアスはナーニョの隣に座った。

「ナーニョ様、今日はありがとう。とても助かったよ」
「エサイアス様も相変わらず凄かったです。魔獣の首を切り落としてしまうんですから」
「あれはナーニョ様の魔法のおかげです。ナーニョ様が巡視に同行してくれて本当に良かったよ」
「そう言って頂けると嬉しいです」
「さぁ、そろそろ食事も終わりにして進もうか。あと少しで街に着く」

 騎士達もエサイアス様の言葉で立ち上がり片づけ始めた。

 ナーニョも馬車に乗り込んで出発を待った。

 それからの道のりは順調でラーシュの街には日が暮れる間際に到着できた。

 ラーシュの街は白い壁で統一されているようで今まで通った街とは全然違っていた。

「ようこそおいで下さいました。私、この地方の領主のマドラン・フォン・セインと申します。ナーニョ様、エサイアス様、第十二騎士団の皆様、疲れたでしょう。今日はもう遅い。ゆっくりと休んで下さい」
「セイン伯爵、滞在の許可をありがとう。明日から宜しく頼む」

 エサイアス様はセイン伯爵に挨拶した後、騎士達に駐屯所に向かうよう指示する。

 今回も私は神殿に滞在する予定だったのだが、セイン伯爵は是非我が家に滞在するように言われ私は伯爵の邸に滞在する事になった。

「エサイアス様もどうか今日の夜は我が家にお越しください」
「分かりました。荷物を降ろした後、向かわせてもらいます」

 私は伯爵と共に邸へと向かった。

「ナーニョ様、滞在中はこちらの客間をお使い下さい」

 セイン伯爵が直々に案内した部屋は貴族の客室と呼ばれるような部屋で壁に海が描かれている絵画が掛けられている以外は質素というべきか。
 華美な装飾で贅を尽くすというより、ゆっくりと疲れを癒すような部屋となっていた。

 伯爵に聞くと、王都から貴族達の保養の地になるように客間が作られたのだとか。

 ただ、魔獣が出没し、最近では王都や自分の領地から余程の事が無い限り出ないので使われる事がないのだと残念そうに語っていた。

 だが、今回の巡視で英雄が多くの魔獣を退治しているため今後は貴族も保養にラーシュの街に来るだろうと言っていた。

 伯爵も言っていたが、カールカールの街からここに来るまでの峠に出没していた魔獣三体が厄介だったのだとか。

 峠を縄張りとしていたようで街に降りてくることは無かったが、道で出くわせばほぼ命は無い。

 そして他の魔獣もあの三体にほぼやられたようであの三体に出会わなければ安全に街に着けるのだとか。

 今回の巡視で私達はあの三体の魔獣を退治出来たのでこれからは安全にラーシュの街とカールカールの街を行き来できる事を伝えるととても喜んでいたわ。
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