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「おねえちゃん、有難う!」
「治療して頂き有難う御座います。なんとお礼を言っていいのやら……」
「お礼なんて構いません。病気自体は治っていないのです。ただ痛みを抑えただけですから。数日は安静にして下さい」
「わかりました」
「あの、この街の井戸の場所を教えてもらってもいいですか?」
「お姉ちゃんが魔法で水をキラキラにしてたんだよ!」
「井戸、ですか」
「私は今王宮騎士団の巡視に同行していて井戸の浄化と作物が育つように魔法を掛けているのです」
「そうだったんですね。この街の井戸は全部で六か所あって、家から近いのが中央広場の井戸。残りの五か所は街を取り囲むように井戸が設置されています」
「そうなんですね。では行ってみます」
「お姉ちゃん! 僕が案内するよ!」
「ありがとう」
男の子は付いてきてと勢いよく部屋を出て行く。
私は男の子と話をしながら井戸に向かった。
五か所の井戸は三時間程度で回りきる事が出来た。これも男の子のおかげだろう。
私一人では道がわからず丸一日はかかったと思う。
「疲れたでしょう? 今日はありがとうね」
男の子に魔法を掛けてあげると満面の笑みを浮かべて喜んでいる。
「おねえちゃん、井戸を綺麗にしてくれて有難う!」
男の子は母親が気になるようで走っていった。
私も早く駐屯所に戻らないと皆が心配しているわ。
そう思って駐屯所に戻ってみるとびっくりした。
かなりの人数の騎士達が熱を上げているようだ。薬も全然足りない。
私は急いでローニャに連絡を取った。
『ローニャ! 今の時間、ごめんね』
『どうしたの?』
『私が井戸を浄化して回っている間にみんなが、病気になったみたいなの。薬が全然足りなくて……』
『エサイアス様も? 分かった。すぐにザイオン先生に薬を準備してもらうように言ってくる。少し待っていてね』
『ありがとう』
私は食堂で食べやすいように野菜をすりおろしたスープを作り、各部屋に届けて回る。
どの騎士も熱で辛そうだ。
駐屯所の騎士達が寝泊りする部屋は一部屋に六人のベッドが置かれていてあとは何もない。
ターランの指輪を使い、水を桶に入れ、彼らの身体を水で拭いた後、スープを渡す。
騎士達は体力があるのでまだ重傷者は出ていないようだが、騎士の半分は病に罹ったようだ。感染力はかなり強い。
動ける騎士は食事や配膳の手伝いをしてくれる。
エサイアス様も病に罹ったうちの一人。
私はエサイアス様の部屋に入った。
「エサイアス様、スープを持って来ました」
「ん? あぁ、そこに置いていて欲しい」
辛そうな表情のエサイアス。ナーニョは彼の額に当てている濡れた布を水につけてまた額に乗せる。
そしてヒエロスを唱えた。
「ありがとう、ナーニョ様」
「私に出来るのはこれくらいですから。薬が届いたらまたお持ちしますね」
ナーニョは部屋に戻り、自分の食事を摂った。
一人になると襲ってくる不安。
私の魔法では治せない。
私はやはり何の役にも立たないのではないだろうか。
このまま騎士達が死んでしまったらどうしよう。
不安で仕方がない。溜息ばかりが口を突いて出る。
『お姉ちゃん、お待たせ! 今送るからね』
『ローニャ、有難う!』
そうしていくつもの小包の山が届いた。
その中には騎士達への定期便もあった。
きっと病で不安になっている彼らの支えになってくれるだろうと思う。
そしてローニャから届いた私宛の紙袋。
その中には王都でよく食べていた果物と一つの指輪が入っていた。
『ローニャ、この指輪は? トエモノストロ? 見たことが無いわ』
『聞いて! これはね、私と第一研究室、第二研究室の人達で作ったこの世界で生まれた指輪なの! 魔法の効果は病原菌死滅。範囲魔法なんだよ!!!』
病原菌死滅!?
なんだか恐ろしい言葉が聞こえた。
でも、これは皆を救う事が出来るかもしれない唯一の指輪。
『この魔法はね、とーっても扱いが難しいの。多分おねえちゃんしか扱えない。この指輪を使って皆を治してあげてね』
『ありがとう。ローニャ、かなり無理をしたんじゃない? ローニャもゆっくり休んでね。指輪の効果は明日報告するわ』
『はぁーい』
私はローニャと話を終えると新しい指輪をジッと観察する。
詠唱部分の文字が細かく刻まれているがとても長い。分厚い指輪なのだ。
この日はさすがに夜も遅くなっていたので明日の朝に魔法を掛けることにする。
エサイアス様は大丈夫だろうか。
とても心配で仕方がない。
「治療して頂き有難う御座います。なんとお礼を言っていいのやら……」
「お礼なんて構いません。病気自体は治っていないのです。ただ痛みを抑えただけですから。数日は安静にして下さい」
「わかりました」
「あの、この街の井戸の場所を教えてもらってもいいですか?」
「お姉ちゃんが魔法で水をキラキラにしてたんだよ!」
「井戸、ですか」
「私は今王宮騎士団の巡視に同行していて井戸の浄化と作物が育つように魔法を掛けているのです」
「そうだったんですね。この街の井戸は全部で六か所あって、家から近いのが中央広場の井戸。残りの五か所は街を取り囲むように井戸が設置されています」
「そうなんですね。では行ってみます」
「お姉ちゃん! 僕が案内するよ!」
「ありがとう」
男の子は付いてきてと勢いよく部屋を出て行く。
私は男の子と話をしながら井戸に向かった。
五か所の井戸は三時間程度で回りきる事が出来た。これも男の子のおかげだろう。
私一人では道がわからず丸一日はかかったと思う。
「疲れたでしょう? 今日はありがとうね」
男の子に魔法を掛けてあげると満面の笑みを浮かべて喜んでいる。
「おねえちゃん、井戸を綺麗にしてくれて有難う!」
男の子は母親が気になるようで走っていった。
私も早く駐屯所に戻らないと皆が心配しているわ。
そう思って駐屯所に戻ってみるとびっくりした。
かなりの人数の騎士達が熱を上げているようだ。薬も全然足りない。
私は急いでローニャに連絡を取った。
『ローニャ! 今の時間、ごめんね』
『どうしたの?』
『私が井戸を浄化して回っている間にみんなが、病気になったみたいなの。薬が全然足りなくて……』
『エサイアス様も? 分かった。すぐにザイオン先生に薬を準備してもらうように言ってくる。少し待っていてね』
『ありがとう』
私は食堂で食べやすいように野菜をすりおろしたスープを作り、各部屋に届けて回る。
どの騎士も熱で辛そうだ。
駐屯所の騎士達が寝泊りする部屋は一部屋に六人のベッドが置かれていてあとは何もない。
ターランの指輪を使い、水を桶に入れ、彼らの身体を水で拭いた後、スープを渡す。
騎士達は体力があるのでまだ重傷者は出ていないようだが、騎士の半分は病に罹ったようだ。感染力はかなり強い。
動ける騎士は食事や配膳の手伝いをしてくれる。
エサイアス様も病に罹ったうちの一人。
私はエサイアス様の部屋に入った。
「エサイアス様、スープを持って来ました」
「ん? あぁ、そこに置いていて欲しい」
辛そうな表情のエサイアス。ナーニョは彼の額に当てている濡れた布を水につけてまた額に乗せる。
そしてヒエロスを唱えた。
「ありがとう、ナーニョ様」
「私に出来るのはこれくらいですから。薬が届いたらまたお持ちしますね」
ナーニョは部屋に戻り、自分の食事を摂った。
一人になると襲ってくる不安。
私の魔法では治せない。
私はやはり何の役にも立たないのではないだろうか。
このまま騎士達が死んでしまったらどうしよう。
不安で仕方がない。溜息ばかりが口を突いて出る。
『お姉ちゃん、お待たせ! 今送るからね』
『ローニャ、有難う!』
そうしていくつもの小包の山が届いた。
その中には騎士達への定期便もあった。
きっと病で不安になっている彼らの支えになってくれるだろうと思う。
そしてローニャから届いた私宛の紙袋。
その中には王都でよく食べていた果物と一つの指輪が入っていた。
『ローニャ、この指輪は? トエモノストロ? 見たことが無いわ』
『聞いて! これはね、私と第一研究室、第二研究室の人達で作ったこの世界で生まれた指輪なの! 魔法の効果は病原菌死滅。範囲魔法なんだよ!!!』
病原菌死滅!?
なんだか恐ろしい言葉が聞こえた。
でも、これは皆を救う事が出来るかもしれない唯一の指輪。
『この魔法はね、とーっても扱いが難しいの。多分おねえちゃんしか扱えない。この指輪を使って皆を治してあげてね』
『ありがとう。ローニャ、かなり無理をしたんじゃない? ローニャもゆっくり休んでね。指輪の効果は明日報告するわ』
『はぁーい』
私はローニャと話を終えると新しい指輪をジッと観察する。
詠唱部分の文字が細かく刻まれているがとても長い。分厚い指輪なのだ。
この日はさすがに夜も遅くなっていたので明日の朝に魔法を掛けることにする。
エサイアス様は大丈夫だろうか。
とても心配で仕方がない。
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