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毎日が忙しくてすっかり忘れていた。
貰ったチャームはローニャとケイルート兄様が作ったと言っていた。
魔獣の骨なのか牙なのかも分からないけれど、よく削られていて滑らかになっている。
今後、指輪や装飾品は魔獣の骨に切り替わっていくかもしれない。
私は嬉しくてすぐに尻尾の付け根にチャームを付けたの。
これなら取れることはないわ。
ナーニョは指輪が使えない時があるかもしれないと想定して作ったと言う事は私の身に危険が起こるという事も考えている。
魔獣との戦いなのか、人との争いを考えているのか。
もしかしたら王宮で何か動きがあったのかもしれないのよね。
明日、また連絡してきいてみることにしよう。私は少し早いけれどこの日は眠りについた。
五日目の朝。
今日は休みの日でエサイアス様とお出かけの日。
神殿にエサイアス様が迎えに来た。
「エサイアス様、おはようございます」
「ナーニョ様、おはようございます。その尻尾に付いているのは?」
「これ、昨日、ローニャが私のために送ってくれたのです。誕生日だったから」
「……誕生日。そうだったんですね。すみません、誕生日をお祝いしなくて」
「? 仕方がないですよ。誰にも言っていなかったし、私も忘れていたんですから」
「じゃあ、今日はお誕生日のお祝いで美味しい物を食べにいきませんか?」
「本当ですか? 嬉しい!」
「神官様、行ってまいります」
「楽しんで来てくださいね」
この街は小さいだけあって店を全部回れる。
それでも私達は珍しさもあってゆっくりと見て回った。
「どこの街も雰囲気が違うのですね」
「そうだね。ここはロダンの街とはまた違った雰囲気だね。
今回は魔獣もそれほどの強さではないし、あと三日ほどで次の街に経つ予定だよ。ノダンの街は少し遠いからここで一杯美味しい物を食べておかないとね」
「そうですねっ」
私達は話をしながら食堂の前に立った時、後ろから声が掛かった。
「エサイアス様! 探しましたわ!」
振り向くと居たのは街長の娘二人。
一応彼女達は子爵令嬢でエサイアス様は伯爵位だ。元々持っていたのは王都の準男爵だったようだが、魔獣討伐の成果を出し、陸爵したのだとか。
もちろん騎士爵も持っていると言っていたわ。
エサイアス様は彼女達を無視する形で私をエスコートし、店に入った。
彼女達はこちらに駆け寄ろうとしたけれど、私の護衛に止められて店に入れないようだ。
店の前で騒ぐ声が聞こえてくる。
「あの、彼女達は大丈夫でしょうか?」
「ああいう令嬢は関わらない方がいいんです。後で難癖を付けて近寄ってきます。婚約者になれと脅す令嬢もいますからね」
「……それは怖いですね」
私達は店の奥に案内され席に着いた。
「お姉さん、お勧めはありますか?」
「今の季節でしたらライの実を使った汁物が人気ですね。あと当店自慢のノーカ豚の燻製。ポートポル酒もありますよ」
「ではお勧めを下さい」
「はーい。マスターポートポル二杯! ノーカ二つ! ライ汁二つ!」
「あいよ!」
厨房から元気な声が聞こえてくる。
「楽しみですね」
「ポートポルが飲めるのならこの店も間違いなさそうだ」
しばらくすると他の騎士達もこの店にやってきた。
ワイワイガヤガヤと賑やかに食事が始まっる。今日はお酒も入り、みんな機嫌が良さそう。
外にいた令嬢達は諦めて帰ったようで護衛騎士達も私達と一緒の席に着き食事を楽しむ。
昼間から飲むお酒に機嫌が良くなるナーニョ。
「エサイアス様、今日も美味しい食事が出来て幸せです。ローニャは今頃何しているかしら」
「ローニャ様ならケイルート殿下と一緒に食後のゲームを楽しんでいるかもしれませんね」
「ふふっ、そうだと良いのですが。何となく昨日話をしていて気になっているのです」
「昨日どんな話を?」
「乙女の内緒話ですわ。今日寝る前にまた聞いてみるつもりです。城を発つ前に兄様と神官長にはお願いしてきたので大丈夫だと思うのですが」
「……二人に頼み事をするほどの事ですか。心配になりますね」
「まぁ、何かあれば私達には魔法がありますから」
「それならいいんですが。ナーニョ様の事は俺が絶対に守ってみせます」
「お! 団長! カッコイイ!!」
どこからか揶揄うような声が聞こえてくる。
エサイアス様もエールを持ちながら「おうよ!」と言葉を返し、騎士達も笑っている。
仲間と食事を囲む楽しさ。
今まで感じたことのない幸せを感じる。
「ナーニョ様、あまり飲みすぎないようにして下さいね」
「もちろん、分かっています」
私はちびちびと燻製を口にしながらお酒を飲む。ナッツも野菜も注文し、なんだかんだでお腹いっぱい食べた。
「ではナーニョ様、また明日!」
「皆様、一足先にごきげんよう」
ナーニョはエサイアスと一緒に先に食堂を出て神殿へ向かう。
顔が火照りながらも鼻歌を歌い上機嫌なナーニョ。それを横で楽しそうに聞いているエサイアス。
後ろにいる護衛達もこの雰囲気が続くことを祈っているようだった。
貰ったチャームはローニャとケイルート兄様が作ったと言っていた。
魔獣の骨なのか牙なのかも分からないけれど、よく削られていて滑らかになっている。
今後、指輪や装飾品は魔獣の骨に切り替わっていくかもしれない。
私は嬉しくてすぐに尻尾の付け根にチャームを付けたの。
これなら取れることはないわ。
ナーニョは指輪が使えない時があるかもしれないと想定して作ったと言う事は私の身に危険が起こるという事も考えている。
魔獣との戦いなのか、人との争いを考えているのか。
もしかしたら王宮で何か動きがあったのかもしれないのよね。
明日、また連絡してきいてみることにしよう。私は少し早いけれどこの日は眠りについた。
五日目の朝。
今日は休みの日でエサイアス様とお出かけの日。
神殿にエサイアス様が迎えに来た。
「エサイアス様、おはようございます」
「ナーニョ様、おはようございます。その尻尾に付いているのは?」
「これ、昨日、ローニャが私のために送ってくれたのです。誕生日だったから」
「……誕生日。そうだったんですね。すみません、誕生日をお祝いしなくて」
「? 仕方がないですよ。誰にも言っていなかったし、私も忘れていたんですから」
「じゃあ、今日はお誕生日のお祝いで美味しい物を食べにいきませんか?」
「本当ですか? 嬉しい!」
「神官様、行ってまいります」
「楽しんで来てくださいね」
この街は小さいだけあって店を全部回れる。
それでも私達は珍しさもあってゆっくりと見て回った。
「どこの街も雰囲気が違うのですね」
「そうだね。ここはロダンの街とはまた違った雰囲気だね。
今回は魔獣もそれほどの強さではないし、あと三日ほどで次の街に経つ予定だよ。ノダンの街は少し遠いからここで一杯美味しい物を食べておかないとね」
「そうですねっ」
私達は話をしながら食堂の前に立った時、後ろから声が掛かった。
「エサイアス様! 探しましたわ!」
振り向くと居たのは街長の娘二人。
一応彼女達は子爵令嬢でエサイアス様は伯爵位だ。元々持っていたのは王都の準男爵だったようだが、魔獣討伐の成果を出し、陸爵したのだとか。
もちろん騎士爵も持っていると言っていたわ。
エサイアス様は彼女達を無視する形で私をエスコートし、店に入った。
彼女達はこちらに駆け寄ろうとしたけれど、私の護衛に止められて店に入れないようだ。
店の前で騒ぐ声が聞こえてくる。
「あの、彼女達は大丈夫でしょうか?」
「ああいう令嬢は関わらない方がいいんです。後で難癖を付けて近寄ってきます。婚約者になれと脅す令嬢もいますからね」
「……それは怖いですね」
私達は店の奥に案内され席に着いた。
「お姉さん、お勧めはありますか?」
「今の季節でしたらライの実を使った汁物が人気ですね。あと当店自慢のノーカ豚の燻製。ポートポル酒もありますよ」
「ではお勧めを下さい」
「はーい。マスターポートポル二杯! ノーカ二つ! ライ汁二つ!」
「あいよ!」
厨房から元気な声が聞こえてくる。
「楽しみですね」
「ポートポルが飲めるのならこの店も間違いなさそうだ」
しばらくすると他の騎士達もこの店にやってきた。
ワイワイガヤガヤと賑やかに食事が始まっる。今日はお酒も入り、みんな機嫌が良さそう。
外にいた令嬢達は諦めて帰ったようで護衛騎士達も私達と一緒の席に着き食事を楽しむ。
昼間から飲むお酒に機嫌が良くなるナーニョ。
「エサイアス様、今日も美味しい食事が出来て幸せです。ローニャは今頃何しているかしら」
「ローニャ様ならケイルート殿下と一緒に食後のゲームを楽しんでいるかもしれませんね」
「ふふっ、そうだと良いのですが。何となく昨日話をしていて気になっているのです」
「昨日どんな話を?」
「乙女の内緒話ですわ。今日寝る前にまた聞いてみるつもりです。城を発つ前に兄様と神官長にはお願いしてきたので大丈夫だと思うのですが」
「……二人に頼み事をするほどの事ですか。心配になりますね」
「まぁ、何かあれば私達には魔法がありますから」
「それならいいんですが。ナーニョ様の事は俺が絶対に守ってみせます」
「お! 団長! カッコイイ!!」
どこからか揶揄うような声が聞こえてくる。
エサイアス様もエールを持ちながら「おうよ!」と言葉を返し、騎士達も笑っている。
仲間と食事を囲む楽しさ。
今まで感じたことのない幸せを感じる。
「ナーニョ様、あまり飲みすぎないようにして下さいね」
「もちろん、分かっています」
私はちびちびと燻製を口にしながらお酒を飲む。ナッツも野菜も注文し、なんだかんだでお腹いっぱい食べた。
「ではナーニョ様、また明日!」
「皆様、一足先にごきげんよう」
ナーニョはエサイアスと一緒に先に食堂を出て神殿へ向かう。
顔が火照りながらも鼻歌を歌い上機嫌なナーニョ。それを横で楽しそうに聞いているエサイアス。
後ろにいる護衛達もこの雰囲気が続くことを祈っているようだった。
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