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サイドストーリー
ローニャを取り巻く環境その1
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―― とある一室での事。
「あの獣はいつ手に入るのだ?」
「申し訳御座いません。王宮の警護がとても厳しく、中々手が出せないのです」
「全く……。私を失望させてくれるな」
「申し訳ありません」
「ナーヴァルの方はどうだ?」
「彼の方はグレイスが抑えているため問題ないですが、ケイルート殿下がこちらを警戒しているため大きくは動けない状況です」
「もういい、下がれ」
男はふぅと葉巻を燻らせながら顎で指示をする。従者は脂汗を搔いている男を部屋から連れ出した。
――
「ローニャ、ナーニョが居なくなって寂しいのか?」
「ケイルート兄様。少し、ね。でも、お姉ちゃんが頑張っているんだもん。私も頑張るって決めたの」
「そうか。あまり無理はするな。今日は勉強はないのか?」
「うん。今日は王宮の畑を見に行って魔法を掛けてくるの」
「そうか。魔法を掛けた植物達は育ちも早いし、味が濃いと聞いている。楽しみにしている」
「うん!任せて!」
ローニャは働く年齢ではないけれど、この世界で魔法を使える貴重な獣人。ローニャを待っている人も多い。
ローニャ自身も皆の期待に応えるように日々の勉強と魔法について労力を惜しまない。
ある日、いつものようにローニャは研究所で研究員達と魔法の研究をしていた。そこに現れたのはグレイス妃の従者。
「ローニャ様、午後のお茶会に招待されております。どうかお急ぎ下さい」
突然の事に驚き再度確認したが、従者は急げの一点張りだ。
「私は聞いていないんだけど? 参加しなきゃだめなの?」
「グレイス妃から必ず連れてくるようにと言われております」
……はぁ、めんどくさい。
そう思ったのは仕方がない。マイアさんから聞いた話では貴族の令嬢はよくお茶会を開いて様々な情報のやりとりをしているらしい。
貴族の派閥や力関係も考慮して話しかけたりしないといけないのだとか。
「マートス長官、呼ばれたので少し行ってきます」
「そこの従者、突然の呼び出しは相手に大変失礼だ。それを分かってやっているのか? ローニャ様、出席しなくても良さそうですが。
まぁ、途中で戻ってきても問題ないでしょう。私のせいにしてすぐに戻ってきて下さい」
「わかりました。では行ってきます!」
私はドレスに着替える時間も貰えないまま中庭に向かう事になった。
白衣に若かりし頃のケイルート兄様の騎士服を着ている私はお茶会には相応しくない服装だ。
指摘して笑いを取るためにわざと呼んだに違いない。養女になってからマナーの勉強もきっちりとしてきたわ。
今もこうしている間、お姉ちゃんが魔獣と戦っている。
私はお姉ちゃんの足者にも及ばないけれど、令嬢達と戦うわ。
私は専属侍女のエリスと護衛騎士のフェルナンドさん他二名に守られながら中庭に到着した。
中庭では既にお茶会が始まっている様子。長机が四台出されてあり、綺麗なドレスを着た令嬢が十人ほどお茶を楽しんでいた。
「遅くなって申し訳ありません」
そう声を掛けると、令嬢たちは一斉にこちらを見て失笑している。あー感じ悪いっ。
「あら、その格好。どうしたのかしら? お茶会に騎士服だなんて無粋ね」
グレイス妃が軽蔑するように話すとそれに合わせて他の令嬢達も『全くだわ』『所詮獣ですもの』なんて人を嘲笑するような事を言っている。
これが貴族なのね。侍女のエリスは青い顔をしている。何か知っているのだろうか。
「申し訳ありません。先ほどまで研究所で魔法の研究をしておりました。
突然の呼び出しにこちらも驚いてしまいましたわ。
私は陛下からお茶会に出なくても良いと言われておりますが、一度は参加してみたいと思いましたの。
これなら次回からは参加する必要は御座いませんね」
「まぁまぁ、知らされていなかったのなら仕方がないわ。とりあえずそこの席に座ってちょうだい」
そう言われ指示されたのはグレイス妃から一番遠い末席。
王女の私が座る場所ではない事は確かだ。
馬鹿にして笑いたいのだろう。
私はカチンと頭にきながらも黙って席に座ろうとした時、椅子が壊れ、そのまま地面に尻もちをついた。
それを見た令嬢達は大笑いを始める。
「いたっ」
「あら、ローニャはおデブさんなのね。だから椅子が壊れてしまったんだわ。良かったわね、ズボンで。もしかしていつも椅子が壊れるから騎士服を着ているのかしら?」
「あら、可哀想に」
「ほんとよねぇ。やはり獣は獣なのかしら?地面に這いつくばる方が得意なのでしょう?」
口々に令嬢たちは私を罵ってきた。
あったまにきた!!
売られた喧嘩は買ってやろう!
ーーーーーーーーーーーー
サイドストーリー解放しました!
この話をネットに上げるために格闘していたら本編の更新が遅れてしまいました。
。゚(゚´Д`゚)゚。
流石に本編と『美しすぎてごめんなさい』の更新3つをあげようとすると混乱が…。
頑張っていきますので温かく見守って頂ければ幸いです。_:(´ཀ`」 ∠):
「あの獣はいつ手に入るのだ?」
「申し訳御座いません。王宮の警護がとても厳しく、中々手が出せないのです」
「全く……。私を失望させてくれるな」
「申し訳ありません」
「ナーヴァルの方はどうだ?」
「彼の方はグレイスが抑えているため問題ないですが、ケイルート殿下がこちらを警戒しているため大きくは動けない状況です」
「もういい、下がれ」
男はふぅと葉巻を燻らせながら顎で指示をする。従者は脂汗を搔いている男を部屋から連れ出した。
――
「ローニャ、ナーニョが居なくなって寂しいのか?」
「ケイルート兄様。少し、ね。でも、お姉ちゃんが頑張っているんだもん。私も頑張るって決めたの」
「そうか。あまり無理はするな。今日は勉強はないのか?」
「うん。今日は王宮の畑を見に行って魔法を掛けてくるの」
「そうか。魔法を掛けた植物達は育ちも早いし、味が濃いと聞いている。楽しみにしている」
「うん!任せて!」
ローニャは働く年齢ではないけれど、この世界で魔法を使える貴重な獣人。ローニャを待っている人も多い。
ローニャ自身も皆の期待に応えるように日々の勉強と魔法について労力を惜しまない。
ある日、いつものようにローニャは研究所で研究員達と魔法の研究をしていた。そこに現れたのはグレイス妃の従者。
「ローニャ様、午後のお茶会に招待されております。どうかお急ぎ下さい」
突然の事に驚き再度確認したが、従者は急げの一点張りだ。
「私は聞いていないんだけど? 参加しなきゃだめなの?」
「グレイス妃から必ず連れてくるようにと言われております」
……はぁ、めんどくさい。
そう思ったのは仕方がない。マイアさんから聞いた話では貴族の令嬢はよくお茶会を開いて様々な情報のやりとりをしているらしい。
貴族の派閥や力関係も考慮して話しかけたりしないといけないのだとか。
「マートス長官、呼ばれたので少し行ってきます」
「そこの従者、突然の呼び出しは相手に大変失礼だ。それを分かってやっているのか? ローニャ様、出席しなくても良さそうですが。
まぁ、途中で戻ってきても問題ないでしょう。私のせいにしてすぐに戻ってきて下さい」
「わかりました。では行ってきます!」
私はドレスに着替える時間も貰えないまま中庭に向かう事になった。
白衣に若かりし頃のケイルート兄様の騎士服を着ている私はお茶会には相応しくない服装だ。
指摘して笑いを取るためにわざと呼んだに違いない。養女になってからマナーの勉強もきっちりとしてきたわ。
今もこうしている間、お姉ちゃんが魔獣と戦っている。
私はお姉ちゃんの足者にも及ばないけれど、令嬢達と戦うわ。
私は専属侍女のエリスと護衛騎士のフェルナンドさん他二名に守られながら中庭に到着した。
中庭では既にお茶会が始まっている様子。長机が四台出されてあり、綺麗なドレスを着た令嬢が十人ほどお茶を楽しんでいた。
「遅くなって申し訳ありません」
そう声を掛けると、令嬢たちは一斉にこちらを見て失笑している。あー感じ悪いっ。
「あら、その格好。どうしたのかしら? お茶会に騎士服だなんて無粋ね」
グレイス妃が軽蔑するように話すとそれに合わせて他の令嬢達も『全くだわ』『所詮獣ですもの』なんて人を嘲笑するような事を言っている。
これが貴族なのね。侍女のエリスは青い顔をしている。何か知っているのだろうか。
「申し訳ありません。先ほどまで研究所で魔法の研究をしておりました。
突然の呼び出しにこちらも驚いてしまいましたわ。
私は陛下からお茶会に出なくても良いと言われておりますが、一度は参加してみたいと思いましたの。
これなら次回からは参加する必要は御座いませんね」
「まぁまぁ、知らされていなかったのなら仕方がないわ。とりあえずそこの席に座ってちょうだい」
そう言われ指示されたのはグレイス妃から一番遠い末席。
王女の私が座る場所ではない事は確かだ。
馬鹿にして笑いたいのだろう。
私はカチンと頭にきながらも黙って席に座ろうとした時、椅子が壊れ、そのまま地面に尻もちをついた。
それを見た令嬢達は大笑いを始める。
「いたっ」
「あら、ローニャはおデブさんなのね。だから椅子が壊れてしまったんだわ。良かったわね、ズボンで。もしかしていつも椅子が壊れるから騎士服を着ているのかしら?」
「あら、可哀想に」
「ほんとよねぇ。やはり獣は獣なのかしら?地面に這いつくばる方が得意なのでしょう?」
口々に令嬢たちは私を罵ってきた。
あったまにきた!!
売られた喧嘩は買ってやろう!
ーーーーーーーーーーーー
サイドストーリー解放しました!
この話をネットに上げるために格闘していたら本編の更新が遅れてしまいました。
。゚(゚´Д`゚)゚。
流石に本編と『美しすぎてごめんなさい』の更新3つをあげようとすると混乱が…。
頑張っていきますので温かく見守って頂ければ幸いです。_:(´ཀ`」 ∠):
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