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そうして今後の事を思案していると、一瞬だが魔力の揺らぎが見えた。
第七団長が席を立ち私の方へ歩いてきたと思ったらさっと剣を抜き、斬りかかってきた。
勿論アーロンがその場で応戦する。
「!!」
会議室内は一瞬何が起こったのか分からないという雰囲気に包まれたが、そこは騎士団の団長達。すぐに第七団長を取り押さえた。
「陛下、怪我は御座いませんか?」
「えぇ、みんなが守ってくれたから大丈夫よ」
第七団長は襲撃に失敗して自決をしようとしているようだったので魔法で身体の動きを止めてみた。
「自決しようだなんて甘い考えを捨てなさい?この者を牢へ」
護衛騎士の一人が猿轡と魔法錠を持ってきた。そうして彼は動くことも出来ないまま牢へと送られた。
「クレア陛下!!無事か!?」
入れ替わるように飛び込んで来たのはベイカー。
「えぇ。アーロンが守ってくれたわ」
「結界が破られただろう?心配した」
「ベイカー!心配だからって会議室に飛び込んでくるやつがあるか。陛下ならもう大丈夫だ。……仕方がない。私の隣の席に黙って座っていろ」
筆頭魔導士のフェルトがベイカーにご立腹だ。
まぁ、仕方がない。
ようやく会議室も落ち着きを取り戻した頃、奴隷売買の取引現場を押さえ、全ての者の確保が終わったとフェルトが報告する。
そしてモランからも食堂で行われた襲撃も制圧したと報告を受けた。一同安堵の笑みを浮かべる。
ホッとしたわ。
けれど結界が壊されたのは痛い。ベイカーにまたお願いしなければいけないわ。
――クレア、油断するな。まだ気配を感じる。
グラン様がそう言った後、纏っていた結界がナイフを弾いた。カシャンと音を立てる。
「……まだ居たな」
グラン様は片手を上げると、数百もの小さな氷のナイフが出現し、壁に向かって氷のナイフが飛んでいく。すると壁に突き刺るはずのそれは壁に突き刺さるでもなく赤が滲み出した後、空間が歪み、男が現れた。
「バレていないとでも思っているのか?馬鹿にされたものだな。チュイン、こいつは零師団で尋問しろ。首だけ残っていればいいだろう」
ライのような影の者なのだろう。もし捕獲に失敗していたならこの部屋にいる誰かが疑われたはずだ。冤罪を生ませるように仕向けようとしていたのかもしれない。姑息な。零師団に渡した影の者。首だけ残すというのは処刑することではない。むしろ首より下は死ぬだろうが首より上は生きている状態になるという意味だ。
彼等は平気でやってのけるだろうな。
私を狙ったのだ、嬉々としてやるかもしれない。零師団はなんだかんだと問題児だらけだが、国に忠誠を誓っていて一人一人の信頼も高い。彼等なら上手く影の者に自白させる事ができるだろう。そうしてようやく奴隷取引での件が山場を越えた。
翌日からは通常の業務に加え、襲撃の処理や捕らえた者の尋問、書類の検分、連れてこられた奴隷達の処遇など山のように襲い掛かってくる。第七団の団長も新たに選出しなければならないしね。
三日後にはサンダー侯爵家の捕縛、その翌日にはファルム子爵家の捕縛が完了した。そこから彼等への尋問。
ようやく自白も証拠も揃ったのが一月後だった。
第七団長が席を立ち私の方へ歩いてきたと思ったらさっと剣を抜き、斬りかかってきた。
勿論アーロンがその場で応戦する。
「!!」
会議室内は一瞬何が起こったのか分からないという雰囲気に包まれたが、そこは騎士団の団長達。すぐに第七団長を取り押さえた。
「陛下、怪我は御座いませんか?」
「えぇ、みんなが守ってくれたから大丈夫よ」
第七団長は襲撃に失敗して自決をしようとしているようだったので魔法で身体の動きを止めてみた。
「自決しようだなんて甘い考えを捨てなさい?この者を牢へ」
護衛騎士の一人が猿轡と魔法錠を持ってきた。そうして彼は動くことも出来ないまま牢へと送られた。
「クレア陛下!!無事か!?」
入れ替わるように飛び込んで来たのはベイカー。
「えぇ。アーロンが守ってくれたわ」
「結界が破られただろう?心配した」
「ベイカー!心配だからって会議室に飛び込んでくるやつがあるか。陛下ならもう大丈夫だ。……仕方がない。私の隣の席に黙って座っていろ」
筆頭魔導士のフェルトがベイカーにご立腹だ。
まぁ、仕方がない。
ようやく会議室も落ち着きを取り戻した頃、奴隷売買の取引現場を押さえ、全ての者の確保が終わったとフェルトが報告する。
そしてモランからも食堂で行われた襲撃も制圧したと報告を受けた。一同安堵の笑みを浮かべる。
ホッとしたわ。
けれど結界が壊されたのは痛い。ベイカーにまたお願いしなければいけないわ。
――クレア、油断するな。まだ気配を感じる。
グラン様がそう言った後、纏っていた結界がナイフを弾いた。カシャンと音を立てる。
「……まだ居たな」
グラン様は片手を上げると、数百もの小さな氷のナイフが出現し、壁に向かって氷のナイフが飛んでいく。すると壁に突き刺るはずのそれは壁に突き刺さるでもなく赤が滲み出した後、空間が歪み、男が現れた。
「バレていないとでも思っているのか?馬鹿にされたものだな。チュイン、こいつは零師団で尋問しろ。首だけ残っていればいいだろう」
ライのような影の者なのだろう。もし捕獲に失敗していたならこの部屋にいる誰かが疑われたはずだ。冤罪を生ませるように仕向けようとしていたのかもしれない。姑息な。零師団に渡した影の者。首だけ残すというのは処刑することではない。むしろ首より下は死ぬだろうが首より上は生きている状態になるという意味だ。
彼等は平気でやってのけるだろうな。
私を狙ったのだ、嬉々としてやるかもしれない。零師団はなんだかんだと問題児だらけだが、国に忠誠を誓っていて一人一人の信頼も高い。彼等なら上手く影の者に自白させる事ができるだろう。そうしてようやく奴隷取引での件が山場を越えた。
翌日からは通常の業務に加え、襲撃の処理や捕らえた者の尋問、書類の検分、連れてこられた奴隷達の処遇など山のように襲い掛かってくる。第七団の団長も新たに選出しなければならないしね。
三日後にはサンダー侯爵家の捕縛、その翌日にはファルム子爵家の捕縛が完了した。そこから彼等への尋問。
ようやく自白も証拠も揃ったのが一月後だった。
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