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裁判の間で行われる尋問は魔導士によって自白魔法が使用される。
我が国の裁判は貴族同士の争いの調停を行う場であり、犯罪者は国王の独断で裁かれる。ただ、今回のような国に影響を及ぼすような大きな事件は公開尋問という形で開かれる事もある。
裁判の間は傍聴席が二階にあり、容疑者を見下ろす形になっている。二階前方に国王や被害者と裁判を進める宰相や時には裁判官がいて、一階の中央に容疑者が尋問を受けるような形になっている。
カミーロ公爵の尋問を傍聴しようと貴族達が朝から傍聴席に座りガヤガヤと話をしていた。
「カミーロ公爵、入廷」
その言葉に一気に会場は静まり返る。公爵は貴族牢へ入っていたためか疲れたような少し窶れたような表情をしている。首には魔法を使えなくするための首輪がされていた。
「では尋問を始めます。まず、貴方の名はブラス・カミーロですかな?」
宰相がそう言うと、「はい。そうです」と暗い表情で静かに応えた。魔法の効きを確かめるように家族構成や仕事は何をしているのかと簡単な質問をしたが、それを拒否する事無く答えている。そして用意された資料を読み上げる。カミーロ公爵が手を染めた犯罪の記録だ。
「カミーロ公爵、隣国との禁止植物の取引を数度行っている、この件について真実か?」
「真実ではありません。私は嵌められたんだ」
「禁止植物の入手について、隣国の犯罪集団と関りがあることが発覚し、あちらの国と協力し、犯罪集団は全て捕らえる事が出来た。そこの主犯格オリバー・ゴルドンがカミーロ公爵と取引をしていたと自供している」
「私はその男を知らない。私を嵌めようとしているだけだ」
「ではこの魔法書類のサインも公爵ではないと?」
魔法で作成された書類に偽造は出来ない。これは重要な証拠書類ともいえるが、公爵は否定した。
「その魔法書類は私がサインしたものの内容が違った。私は騙されたんだっ!」
「隣国から入手した禁止植物をソフマン子爵に栽培するように圧力を掛けたのではないか?」
「そんなことはしていない。むしろ私が子爵を止めていたほどだ」
「ソフマン子爵は強要されたと供述しているが?」
「言いがかりだ」
「ではソフマン子爵で育てられた禁止薬を安く買い取っている証拠が残っているが?」
「子爵が罪を擦り付けるために用意したのだろう。私は関与していない」
「ソフマン子爵は病気の夫人を公爵家に無理やり連れていかれた、禁止植物の栽培をしなければ夫人の命はないと脅されたと言っているが?」
「私の妻と子爵夫人は仲が良く、病気の療養のために我が家で預かる事になっただけだ」
宰相とカミーロ公爵のやりとりはそうして続いているが、全て公爵は否定し続けている。公爵はどこか余裕があるような態度さえ見せている。その様子を貴族達は興味深そうに口を開くことなく眺めている。
「ソフマン子爵の日記、帳簿に事細かく金銭の授受ややり取りの様子が記されているが?」
「でっち上げだ」
「では、公爵家の別邸にある植物を薬にする設備があった事はどう説明するのだ?禁止植物も違法薬も見つかっている」
「それこそ国のでっち上げだ。我が家は由緒正しい公爵家。そんな悪事には一切手を染めていない」
彼はあり得ないとでも言いたげな表情で否定する。
「もう一つ。別邸で作成された薬を前国王に使用し、殺害した疑いが掛かっている」
「私は知らない、指示もしていないし関わっていない。私は嵌められたんだ。前国王の殺害など大それた事をする訳がない」
「……そうか。カミーロ公爵は全て否定するのだな?では次に移る。魔導士、前へ」
カミーロ公爵の横に自白魔法を使用する魔導士が立ち、宣言をする。そして自白魔法の説明に入る。使用される自白魔法の使用時間は三十分。黙秘はない。長時間の自白魔法は容疑者の精神を壊しかねないために魔法に耐えられる時間が設定されている。
そして魔導士は呪文を唱え、カミーロ公爵へ自白魔法が施された。
我が国の裁判は貴族同士の争いの調停を行う場であり、犯罪者は国王の独断で裁かれる。ただ、今回のような国に影響を及ぼすような大きな事件は公開尋問という形で開かれる事もある。
裁判の間は傍聴席が二階にあり、容疑者を見下ろす形になっている。二階前方に国王や被害者と裁判を進める宰相や時には裁判官がいて、一階の中央に容疑者が尋問を受けるような形になっている。
カミーロ公爵の尋問を傍聴しようと貴族達が朝から傍聴席に座りガヤガヤと話をしていた。
「カミーロ公爵、入廷」
その言葉に一気に会場は静まり返る。公爵は貴族牢へ入っていたためか疲れたような少し窶れたような表情をしている。首には魔法を使えなくするための首輪がされていた。
「では尋問を始めます。まず、貴方の名はブラス・カミーロですかな?」
宰相がそう言うと、「はい。そうです」と暗い表情で静かに応えた。魔法の効きを確かめるように家族構成や仕事は何をしているのかと簡単な質問をしたが、それを拒否する事無く答えている。そして用意された資料を読み上げる。カミーロ公爵が手を染めた犯罪の記録だ。
「カミーロ公爵、隣国との禁止植物の取引を数度行っている、この件について真実か?」
「真実ではありません。私は嵌められたんだ」
「禁止植物の入手について、隣国の犯罪集団と関りがあることが発覚し、あちらの国と協力し、犯罪集団は全て捕らえる事が出来た。そこの主犯格オリバー・ゴルドンがカミーロ公爵と取引をしていたと自供している」
「私はその男を知らない。私を嵌めようとしているだけだ」
「ではこの魔法書類のサインも公爵ではないと?」
魔法で作成された書類に偽造は出来ない。これは重要な証拠書類ともいえるが、公爵は否定した。
「その魔法書類は私がサインしたものの内容が違った。私は騙されたんだっ!」
「隣国から入手した禁止植物をソフマン子爵に栽培するように圧力を掛けたのではないか?」
「そんなことはしていない。むしろ私が子爵を止めていたほどだ」
「ソフマン子爵は強要されたと供述しているが?」
「言いがかりだ」
「ではソフマン子爵で育てられた禁止薬を安く買い取っている証拠が残っているが?」
「子爵が罪を擦り付けるために用意したのだろう。私は関与していない」
「ソフマン子爵は病気の夫人を公爵家に無理やり連れていかれた、禁止植物の栽培をしなければ夫人の命はないと脅されたと言っているが?」
「私の妻と子爵夫人は仲が良く、病気の療養のために我が家で預かる事になっただけだ」
宰相とカミーロ公爵のやりとりはそうして続いているが、全て公爵は否定し続けている。公爵はどこか余裕があるような態度さえ見せている。その様子を貴族達は興味深そうに口を開くことなく眺めている。
「ソフマン子爵の日記、帳簿に事細かく金銭の授受ややり取りの様子が記されているが?」
「でっち上げだ」
「では、公爵家の別邸にある植物を薬にする設備があった事はどう説明するのだ?禁止植物も違法薬も見つかっている」
「それこそ国のでっち上げだ。我が家は由緒正しい公爵家。そんな悪事には一切手を染めていない」
彼はあり得ないとでも言いたげな表情で否定する。
「もう一つ。別邸で作成された薬を前国王に使用し、殺害した疑いが掛かっている」
「私は知らない、指示もしていないし関わっていない。私は嵌められたんだ。前国王の殺害など大それた事をする訳がない」
「……そうか。カミーロ公爵は全て否定するのだな?では次に移る。魔導士、前へ」
カミーロ公爵の横に自白魔法を使用する魔導士が立ち、宣言をする。そして自白魔法の説明に入る。使用される自白魔法の使用時間は三十分。黙秘はない。長時間の自白魔法は容疑者の精神を壊しかねないために魔法に耐えられる時間が設定されている。
そして魔導士は呪文を唱え、カミーロ公爵へ自白魔法が施された。
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