17 / 51
17
しおりを挟む
「陛下、本日は王妃の役目である令嬢達を集めたお茶会となっております」
「えぇ、そうね。気が重いわっ」
執事の仕事が板についてきたロダの言葉。早朝から執務をこなし、朝食後にイヤイヤながら侍女達が私を連れに来た。
「陛下、いってらっしゃーい☆後のことは私達にまっかせてっね♪」
ナーヤは嬉しそうにそう話す。
「くっ。お、お前が行けばいいわっ!そうよ、そうよ!私の代わりに側近が出ればいいのですっ!!」
私はそう言うけれど、イクセルもミカルもフッと笑うばかり。
「だってぇ~変わってあげたいわよぉ?でもぉ、陛下のぉ仕事だしぃ?頑張って?」
「うぅ、ロダ。ナーヤが冷たいわっ」
「こればかりは仕方がありません。今日のお茶会は若い令嬢達を集めたお茶会です。さぁ、油を売っている暇はありません。マヤが待っています」
「いってらっしゃぁぃ♪」
ナーヤが手を振って私を見送った。行きたくないわ。派閥が無いお茶会は派閥同士で荒れる事もあり、主催者の力量が問われるのよね。情報収集のためとはいえやりたくないわ。
私はゲンナリしながら侍女達にお茶会の準備をしてもらう。
――そうそう、クレアよ、公の場では特に女王としての貫禄をつけるためにも言葉遣いを気をつけろ。いつまでも王女ではいられぬからな。
うぅ、そうですね。少しずつ改めていきます。
今日は中庭で行われる予定のお茶会。ドレスを着て化粧をしていざ会場へ。
「クレア陛下が来られましたわ」誰かがそう口にすると、一斉に会話が止まり視線が私へと集まる。令嬢達を見回してみると違和感に気づいた。一人の令嬢がどこか怯えているような、不安そうな顔をしている。
何かあったのかしら。
令嬢達はすぐさま私の前へと列をなし、挨拶をしていく。そうして先ほど怯えていた令嬢が私の前へと順番がきたようだ。
「カランデリオ・ソフマンが娘。マレナと申します。今日のお茶会に出席出来た事を恐悦至極に存じます」
「マレナ嬢、今日は歳の近い令嬢達の集まりです。楽しんで下さいね」
私が微笑むとマレナ嬢はカーテンシーの後、席へと戻っていく。幾分かは顔色が戻ったような気がするけれど、緊張していたわね。こればかりは仕方がない。
子爵位にとって普段は王族と接する機会はないのだもの。
そうして令嬢達とのお茶会が開始となった。私はにこやかに聞き役となりその場にいる令嬢達の話題が円滑に進むように話を振る。令嬢達の話題と言えば、お化粧から始まり、流行のドレス、装飾品や婚約者の話が代わる代わる出てくる。話題は尽きる事はないようだ。
婚約者のいない殿方の話題が出た時は騎士団で活躍する騎士の名が数名出ていた。やはり騎士は人気なのね。
その中でもアスター・コール様は令嬢達の中で人気なのだとか。
騎士団の訓練場に見学に行くといつもアスター様は真剣に訓練に取り組んでいるのだとか。令嬢たちの歓声に照れながら手を挙げて応えてくれる姿がまた良いらしい。令嬢たちの話では昔アスター様は愛する婚約者がいたけれど、アスター様が人気者過ぎて婚約者が嫉妬して大変だったのだとか。
結局、嫉妬深い婚約者はアスター様を捨てて別の方と結婚をした。アスター様が苦笑いをして話をしてくれていた内容と辻褄が合うわ。
まぁ、剣一筋なのは変わらないのでしょうけれど、女にとっては言葉の一つは欲しい所よね。
そうして令嬢達と楽しく話をしていてふと見ると、マレナ嬢の顔が青白い事に気づく。
「マレナ嬢、顔色が優れませんわ。体調が悪いのではなくて?」
私がそう口を開くと、令嬢達の視線が一斉に彼女に集まった。
「す、すみませんっ。今朝から、体調が優れず……」
そう言い終わらないうちに彼女はゆっくりと椅子からバランスを崩すように倒れてしまった。その様子を見た令嬢たちは動揺し、どよめきが起こりはじめていたので私はすぐに騎士を呼び寄せた。
駆け寄ってくる騎士達。
私は従者と令嬢の前へと立った。手をかざし魔法を唱え、小さな魔法陣で倒れた令嬢の容態を探る。
「……毒の形跡はないわ。マレナ嬢の魔力を視ても体調不良のようね。よかったわ。彼女を医務室へと連れて行って頂戴」
私は騎士に指示をすると、後ろで控えていた騎士の一人にマレナ嬢は抱きかかえられ医務室へと向かっていった。
少し場を乱してしまったわ。
「皆様、折角のお茶会を慌ただしくしてしまいましたわ」
私がそう謝罪すると、参加者のうちの一人が席を立った。
「クレア陛下の咄嗟の対応に私は感動致しました。たかが一令嬢に自ら赴かれ、体調を診ていただけるなんて。それにクレア陛下の特別な魔法陣を目にする事が出来て感動しました」
その一言を皮切りに令嬢たちから賛辞を送られた。
「皆様、有難う。けれど、折角のお茶会を騒がせてしまいました。今日はこの辺でお茶会をお開きにします。少しばかりですが、後日お土産を届けさせます」
閉会の挨拶をすると令嬢達は私に挨拶をしてから騎士達にエスコートされて馬車へと乗り込んでいく。しっかりとフォローは忘れない。
「えぇ、そうね。気が重いわっ」
執事の仕事が板についてきたロダの言葉。早朝から執務をこなし、朝食後にイヤイヤながら侍女達が私を連れに来た。
「陛下、いってらっしゃーい☆後のことは私達にまっかせてっね♪」
ナーヤは嬉しそうにそう話す。
「くっ。お、お前が行けばいいわっ!そうよ、そうよ!私の代わりに側近が出ればいいのですっ!!」
私はそう言うけれど、イクセルもミカルもフッと笑うばかり。
「だってぇ~変わってあげたいわよぉ?でもぉ、陛下のぉ仕事だしぃ?頑張って?」
「うぅ、ロダ。ナーヤが冷たいわっ」
「こればかりは仕方がありません。今日のお茶会は若い令嬢達を集めたお茶会です。さぁ、油を売っている暇はありません。マヤが待っています」
「いってらっしゃぁぃ♪」
ナーヤが手を振って私を見送った。行きたくないわ。派閥が無いお茶会は派閥同士で荒れる事もあり、主催者の力量が問われるのよね。情報収集のためとはいえやりたくないわ。
私はゲンナリしながら侍女達にお茶会の準備をしてもらう。
――そうそう、クレアよ、公の場では特に女王としての貫禄をつけるためにも言葉遣いを気をつけろ。いつまでも王女ではいられぬからな。
うぅ、そうですね。少しずつ改めていきます。
今日は中庭で行われる予定のお茶会。ドレスを着て化粧をしていざ会場へ。
「クレア陛下が来られましたわ」誰かがそう口にすると、一斉に会話が止まり視線が私へと集まる。令嬢達を見回してみると違和感に気づいた。一人の令嬢がどこか怯えているような、不安そうな顔をしている。
何かあったのかしら。
令嬢達はすぐさま私の前へと列をなし、挨拶をしていく。そうして先ほど怯えていた令嬢が私の前へと順番がきたようだ。
「カランデリオ・ソフマンが娘。マレナと申します。今日のお茶会に出席出来た事を恐悦至極に存じます」
「マレナ嬢、今日は歳の近い令嬢達の集まりです。楽しんで下さいね」
私が微笑むとマレナ嬢はカーテンシーの後、席へと戻っていく。幾分かは顔色が戻ったような気がするけれど、緊張していたわね。こればかりは仕方がない。
子爵位にとって普段は王族と接する機会はないのだもの。
そうして令嬢達とのお茶会が開始となった。私はにこやかに聞き役となりその場にいる令嬢達の話題が円滑に進むように話を振る。令嬢達の話題と言えば、お化粧から始まり、流行のドレス、装飾品や婚約者の話が代わる代わる出てくる。話題は尽きる事はないようだ。
婚約者のいない殿方の話題が出た時は騎士団で活躍する騎士の名が数名出ていた。やはり騎士は人気なのね。
その中でもアスター・コール様は令嬢達の中で人気なのだとか。
騎士団の訓練場に見学に行くといつもアスター様は真剣に訓練に取り組んでいるのだとか。令嬢たちの歓声に照れながら手を挙げて応えてくれる姿がまた良いらしい。令嬢たちの話では昔アスター様は愛する婚約者がいたけれど、アスター様が人気者過ぎて婚約者が嫉妬して大変だったのだとか。
結局、嫉妬深い婚約者はアスター様を捨てて別の方と結婚をした。アスター様が苦笑いをして話をしてくれていた内容と辻褄が合うわ。
まぁ、剣一筋なのは変わらないのでしょうけれど、女にとっては言葉の一つは欲しい所よね。
そうして令嬢達と楽しく話をしていてふと見ると、マレナ嬢の顔が青白い事に気づく。
「マレナ嬢、顔色が優れませんわ。体調が悪いのではなくて?」
私がそう口を開くと、令嬢達の視線が一斉に彼女に集まった。
「す、すみませんっ。今朝から、体調が優れず……」
そう言い終わらないうちに彼女はゆっくりと椅子からバランスを崩すように倒れてしまった。その様子を見た令嬢たちは動揺し、どよめきが起こりはじめていたので私はすぐに騎士を呼び寄せた。
駆け寄ってくる騎士達。
私は従者と令嬢の前へと立った。手をかざし魔法を唱え、小さな魔法陣で倒れた令嬢の容態を探る。
「……毒の形跡はないわ。マレナ嬢の魔力を視ても体調不良のようね。よかったわ。彼女を医務室へと連れて行って頂戴」
私は騎士に指示をすると、後ろで控えていた騎士の一人にマレナ嬢は抱きかかえられ医務室へと向かっていった。
少し場を乱してしまったわ。
「皆様、折角のお茶会を慌ただしくしてしまいましたわ」
私がそう謝罪すると、参加者のうちの一人が席を立った。
「クレア陛下の咄嗟の対応に私は感動致しました。たかが一令嬢に自ら赴かれ、体調を診ていただけるなんて。それにクレア陛下の特別な魔法陣を目にする事が出来て感動しました」
その一言を皮切りに令嬢たちから賛辞を送られた。
「皆様、有難う。けれど、折角のお茶会を騒がせてしまいました。今日はこの辺でお茶会をお開きにします。少しばかりですが、後日お土産を届けさせます」
閉会の挨拶をすると令嬢達は私に挨拶をしてから騎士達にエスコートされて馬車へと乗り込んでいく。しっかりとフォローは忘れない。
47
お気に入りに追加
375
あなたにおすすめの小説
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
公爵夫人は愛されている事に気が付かない
山葵
恋愛
「あら?侯爵夫人ご覧になって…」
「あれはクライマス公爵…いつ見ても惚れ惚れしてしまいますわねぇ~♡」
「本当に女性が見ても羨ましいくらいの美形ですわねぇ~♡…それなのに…」
「本当にクライマス公爵が可哀想でならないわ…いくら王命だからと言ってもねぇ…」
社交パーティーに参加すれば、いつも聞こえてくる私への陰口…。
貴女達が言わなくても、私が1番、分かっている。
夫の隣に私は相応しくないのだと…。
【完結】婚約者が好きなのです
maruko
恋愛
リリーベルの婚約者は誰にでも優しいオーラン・ドートル侯爵令息様。
でもそんな優しい婚約者がたった一人に対してだけ何故か冷たい。
冷たくされてるのはアリー・メーキリー侯爵令嬢。
彼の幼馴染だ。
そんなある日。偶然アリー様がこらえきれない涙を流すのを見てしまった。見つめる先には婚約者の姿。
私はどうすればいいのだろうか。
全34話(番外編含む)
※他サイトにも投稿しております
※1話〜4話までは文字数多めです
注)感想欄は全話読んでから閲覧ください(汗)
【完結】金の国 銀の国 蛙の国―ガマ王太子に嫁がされた三女は蓮の花に囲まれ愛する旦那様と幸せに暮らす。
remo
恋愛
かつて文明大国の異名をとったボッチャリ国は、今やすっかり衰退し、廃棄物の処理に困る極貧小国になり果てていた。
窮地に陥った王は3人の娘を嫁がせる代わりに援助してくれる国を募る。
それはそれは美しいと評判の皇女たちに各国王子たちから求婚が殺到し、
気高く美しい長女アマリリスは金の国へ、可憐でたおやかな次女アネモネは銀の国へ嫁ぐことになった。
しかし、働き者でたくましいが器量の悪い三女アヤメは貰い手がなく、唯一引き取りを承諾したのは、巨大なガマガエルの妖怪が統べるという辺境にある蛙国。
ばあや一人を付き人に、沼地ばかりのじめじめした蛙国を訪れたアヤメは、
おどろおどろしいガマ獣人たちと暮らすことになるが、肝心のガマ王太子は決してアヤメに真の姿を見せようとはしないのだった。
【完結】ありがとうございました。
そう言うと思ってた
mios
恋愛
公爵令息のアランは馬鹿ではない。ちゃんとわかっていた。自分が夢中になっているアナスタシアが自分をそれほど好きでないことも、自分の婚約者であるカリナが自分を愛していることも。
※いつものように視点がバラバラします。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~
卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」
絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。
だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。
ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。
なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!?
「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」
書き溜めがある内は、1日1~話更新します
それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります
*仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。
*ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。
*コメディ強めです。
*hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる