【完結】新米女王の婿選び

まるねこ

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二人ともかっちりと制服を着て緊張している様子。そして私の机の前に立ち礼を執る。

「我が国の太陽であらせられるクレア陛下にお会い出来た事を嬉しく思います」

「か、堅苦しい挨拶はいいわ。ミカル・ハーララ伯爵子息とイクセル・ラルカンジュ子爵子息、宰相から話は聞いているわよねっ?」

「その前に」

ミカル・ハーララ伯爵子息がそう言うと、二人とも私の前に跪き謝罪の言葉を述べる。

「マテウス陛下をお守りできず申し訳ありませんでした」

「もう、起こってしまった事は仕方がないわ。あの場に貴方たちは居なかったのだし、どれだけ悔いても兄は戻ってこないの。その分、私のために、ひいては国のために尽くしてほしいわっ」

「はっ!!命を懸けて」

「私はまだまだ未熟な王です。側近として私を支えて欲しい。これから頼みますっ。ハーララ伯爵子息、ラルカンジュ子爵子息」

「私の事はミカルとお呼びください」

「私の事もイクセルと」

「分かったわ。イクセル、ミカル」

 挨拶も早々に彼等は早速従者達を呼び、私の執務室に机を運び入れる。引継ぎなどの作業は幾つかあるようだが、宰相から話を受けてすぐに引継ぎを行っていたようですぐにでも側近として執務に着けるようにしていたらしい。

なんとも手際の良い二人だ。

 二人は私の側近になる事に躊躇いは無かったのか聞いてみると、兄を守れなかった責任を感じ、側近になる事を拒否しようと思ったけれど、宰相の強い勧めと王を支えるために側近は必要だと周りの推薦もあったようだ。

二人とも戸惑いはしたけれど、同じ轍は踏むまいと心に誓い私の側近になったようだ。兄の側近はとても優秀なので私としても有難い。そして側近としての仕事をしていたためすぐに執務に取り掛かれるのも嬉しい。

これで少しは私の仕事も楽になるわ。

 二人が執務の準備をしている間、私は気にせずいつものように身体強化をして書類を捌いていく。

執事のロダも護衛も従者達もいつもの事と気にしていないが、二人の目には衝撃的な出来事だったようだ。最近ロダも真似て身体強化で仕事をしている。魔力を使って執務を早く終わらせる。

 私の仕事が早く終わればその分、文官達も早く仕事を終わらせるから早く帰宅出来るし、良いこと尽くめ。会議などは難しいけれどね。シュバババッと書類を捌いていく。もちろん二人には身体強化して仕事をしろなんて言わないわよ?まぁ、まだ初日なので書類整理から初めてもらった。

明日はナーヤが来る事ももちろん伝えたわ。

 当分の間、二人にはナーヤの補佐をしながら仕事をしてもらう事になる。二人はナーヤ・メグレ侯爵子息を知っているらしく、どことなく心配しているようだ。

きっと二人ならナーヤとも問題なく仕事をしてくれるだろうと思っている。

「今日の仕事はこれで終わりよっ。明日も宜しくね」

 いつも通り夕食前に執務を終わらせた私。二人とも死んだような目をしている。初日にもかかわらず私の執務についてきてくれた優秀さ、感謝しかないわ。



 翌日、今日の予定は朝から謁見になっている。イクセルが私の後ろに付いて立つ。ミカルはというと、執務室で執務をこなしている。もちろんロダと一緒に。

本日の謁見は騎士団の優秀者を祝うものらしい。

宰相が名前を呼びあげると、返事と共に騎士達は前へ出る。従者が勲章の置かれたトレーを持ち私の横で立っている。「よく頑張りましたね」そう言いながら勲章を着ける。

簡単なお仕事です。

 この中から将来の団長が出るのでしょうね。勲章授与はそれほど時間のかかる事ではないので勲章授与、騎士団長の有難い話で式は終わった。

その後の会議がまた問題だ。

 今日は文官達との打合せ。陳情の内容や大臣達とのやりとりで行われる内容、国に関わる全ての内政についての話し合いなので本当に幅が広い。

これにはイクセルもミカルも私と共に会議に参加する。兄のように側近が五人いれば誰かが執務室に残り、執務をするだろうけれど、まだ二人だし、全ての事をまず把握してもらわなければならないので今回は参加してもらう。会議は前もって作られた議題を沿うように行われた。

私に意見を聞くというより、彼らのお願いの方が多かったようだが。文官も部署によっては窓口に平民が押し寄せるので大変なのだろう。『いつも感謝しています』と感謝を言葉にするのも忘れない。

グラン様から教えられたの。

強いだけでは誰もついてこない。しっかりと認め、褒める事も大事だと。私が感謝の言葉を口にした後、文官達の緊張が少し和らいだような気がするわ。

そこからは和やかな雰囲気で会議も進んでいった。

どうやら上手くいったようだ。

 これからもそうやって口に出していこうと思う。午後からはベイカーの魔導士棟へ行くのね。私は護衛と共に魔導士棟へと向かった。従者には時間になったら呼びに来るように話してある。
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