4 / 51
4
しおりを挟む
「第五騎士団団長をつまみ出せ。話はそれからだ」
執務室の外にいた護衛騎士は2人がかりで嫌がる団長を引きずるように部屋を出て行った。
「く、クレア様。お鎮り下さい。私達が呼ばれた理由は何なのでしょうか」
青い顔をした第一騎士団団長が緊張した面持ちで口を開く。グラン様はようやく覇気と魔力を抑えて話をする。先ほどとは打って変わり、団長達は騎士の礼を執り、微動だにしない。
「よく集まってくれた。1人欠けたが、其方達の忠誠心を嬉しく思う。皆も知っている通り、父も母も兄も皆殺された。騎士団の者達は守りきれず悔しい思いをさせたな。現在、国王の影響力低下により、貴族達の良からぬ動きが表面化しつつある。
これより国の安定へ向けて私は舵を切る。その為には皆の忠誠心が必要なのだ。今回、零師団以外の団長達を召集した理由なのだが、数時間前に張った結界の事である。私に害をなす者の排除だ。
この結界により、身体の重い者は私の命を狙う者だ。先程の第五騎士団団長のように身体が重くなる者は私を殺そうとする者。至急王城内で動けずにいる者を捕らえ、背後を洗え。手を抜けば我が国は他国に攻め入られる隙を作ることになるだろう。手を抜くな」
団長達は私の話を聞くと驚いていたようだが、各自思う所があったようでさっきまでの青かった顔は嘘のように引き締まった表情をしている。そこから団長達は会議室で城内警備や報告について話し合ってから各騎士団へと戻っていった。
私も執務室へ移動し、ようやく静かになったかと思っていたが、今度は宰相が部屋へと入ってきた。
「クレア様、新たな書類をお持ちしました」
ふと宰相を見るといつもと変わらない様子。
「さ、宰相。身体は、お、重くないの?」
「いえ?わざわざ私の体調を心配して下さるとは嬉しい限りです。むしろ軽い位ですよ」
宰相はニコニコと話をしている。宰相は私を害するというより利用しようとしているのかしら?
「宰相っ、明日の午後は誰と会うのかしらっ?」
「陛下、明日は午後からカイン・サンダーと会う事になっております。場所は中庭で宜しいでしょうか?」
「分かったわ。中庭で準備をお願い。あ、あとっ、侍女長を呼んでちょうだいっ。じ、侍女をクビにしたのっ」
「承知致しました。陛下、ここへ来る途中、蹲る者や体調不良を起こしている者を見かけました。何か城で流行病でも発生しはじめているのですかな?」
宰相は困惑した表情で聞いてきた。
「あぁ、その件は大丈夫よっ。さ、宰相には話しておくわ。城内で動けなくなった者は私の命を狙う者達なの。今頃城内で動けなくなった貴族達は大慌てねっ」
「ということは陛下に付いていた侍女は陛下を殺そうとしたのですか!?」
「えぇ。今、騎士団で取り調べをしてもらっているわっ」
「左様ですか。陛下の命を狙う者はまだまだ多い。……承知しました。すぐに侍女長を呼んで参りましょう。これから騎士団長の話を聞かねばなりません。城の警備と大臣達との話し合いも早急に行います」
「えぇ、お願いねっ」
宰相の行動の速さに少しあっけに取られたけれど、警備の見直しを早急にしなければいけないのは確かだ。ただ、宰相も何か腹の中に飼っていそうなので引き続き注意をしなければならない。
暫くして侍女長が執務室へと入ってきた。私は新たな侍女を手配する事を頼むと侍女長はすぐに連れてくると言っていたわ。これで侍女問題は一安心ね。侍女長は私を心配しながら後進育成に務めている。
詳しく言うと、私の乳母だった人の姉でもあるの。元貴族令嬢だった二人は没落寸前で売られる前だったらしい。母が二人を王妃付きの侍女として召し抱え、それ以来王家に尽くしてくれている。
私の乳母は三年ほど前に病気で亡くなってしまったけれど、姉は侍女長になっても変わらず王家に仕えている。
その後、執務を少しこなした後、部屋へと戻った。夜も随分遅くなってしまったわ。
「侍女長からの指示で今日から陛下付き筆頭侍女になりましたマヤです。宜しくお願い致します」
「マヤ、宜しく」
部屋の前で新しい侍女が私を待ってくれていたようだ。王女や王太子には侍女や侍従が一人付くけれど、陛下になれば侍女や侍従は五人程となるらしい。交代で仕事をするのだとか。
これは護衛騎士のアーロンも同じ。近衛騎士から選ばれた超エリート。マヤはテキパキと寝る準備をしてくれる。今度の侍女達はしっかりとしているし、大丈夫かもしれないわ。
――あぁ、だが油断してはならんぞ?
そうですね。
グラン様の言う通りだわ。もっと気を引き締めていかないといけないわね。私は少し反省しながらベッドへと入った。
翌日も早朝から食事を執務室で取りながら一人執務に励む。昼前だっただろうか、扉をノックする音が聞こえた。
「入って」
私は許可を出すと、宰相と第一騎士団団長が部屋へと入ってきて礼をする。私は片手を上げて答える。
「クレア陛下、昨日の城内で動けなくなった者達の報告に来ました」
「そ、そう。それで?」
団長が報告する。
「結界は直接害を与える者の身体が動けなくなる程の重さを感じ、害を与えずともそれに関与する者も身体が重く感じるようになっておりました。城内で動けなかった者は五名。身体が重くなった者は八名となっております。
現在動けなくなった者は治療と称して隔離しており、身体が重くなった者は体調不良と言う事で休ませております。どうされますか?」
私は報告を受けながら宰相から一枚の資料を手渡される。そこには動けなくなった者の名前、所属、家名などが細かく記載されてあった。
――ふむ。どうみる?
そうですね、一見所属はバラバラな感じですが、派閥が偏っています。侍女と近衛騎士二人と接する機会のある者達が身体の重い者が多い。やはり派閥の大元であるカミーロ公爵の息の掛った者なのでしょう。
けれど不思議な事に派閥の者が大勢いる中でカミーロ公爵家の者は一人もいない。トカゲのしっぽ切りをするつもりなのだと思いますわ。
――そうだな。姑息な事をしておる。
「さ、宰相。ではこのリストにある者達の配置換えを。まだ犯罪を起こしていないのだから罪には問えないわっ。そして当面監視をして頂戴。誰かと連絡を取るようなら要注意ねっ。それと団長、城の警備はどう変わったのかしら?」
「城の警備は近衛騎士を中心に配置換えを行いました。前陛下が亡くなられて以降特に厳しく人の出入りを制限しておりましたが、今回の件でより信頼の置けるものを配置するようにしております」
「そう、大変だったわね。城内だけでもこれで落ち着くといいわ」
そこから配備の説明を聞いた後、私はまた執務を行う。猫の手も借りたいほど忙しい。
「クレア陛下、婚約者候補者との時間です」
従者がそう伝えてくれるまで時間を忘れて執務をしていた。中庭だっけ。
私は急いで中庭に向かった。
執務室の外にいた護衛騎士は2人がかりで嫌がる団長を引きずるように部屋を出て行った。
「く、クレア様。お鎮り下さい。私達が呼ばれた理由は何なのでしょうか」
青い顔をした第一騎士団団長が緊張した面持ちで口を開く。グラン様はようやく覇気と魔力を抑えて話をする。先ほどとは打って変わり、団長達は騎士の礼を執り、微動だにしない。
「よく集まってくれた。1人欠けたが、其方達の忠誠心を嬉しく思う。皆も知っている通り、父も母も兄も皆殺された。騎士団の者達は守りきれず悔しい思いをさせたな。現在、国王の影響力低下により、貴族達の良からぬ動きが表面化しつつある。
これより国の安定へ向けて私は舵を切る。その為には皆の忠誠心が必要なのだ。今回、零師団以外の団長達を召集した理由なのだが、数時間前に張った結界の事である。私に害をなす者の排除だ。
この結界により、身体の重い者は私の命を狙う者だ。先程の第五騎士団団長のように身体が重くなる者は私を殺そうとする者。至急王城内で動けずにいる者を捕らえ、背後を洗え。手を抜けば我が国は他国に攻め入られる隙を作ることになるだろう。手を抜くな」
団長達は私の話を聞くと驚いていたようだが、各自思う所があったようでさっきまでの青かった顔は嘘のように引き締まった表情をしている。そこから団長達は会議室で城内警備や報告について話し合ってから各騎士団へと戻っていった。
私も執務室へ移動し、ようやく静かになったかと思っていたが、今度は宰相が部屋へと入ってきた。
「クレア様、新たな書類をお持ちしました」
ふと宰相を見るといつもと変わらない様子。
「さ、宰相。身体は、お、重くないの?」
「いえ?わざわざ私の体調を心配して下さるとは嬉しい限りです。むしろ軽い位ですよ」
宰相はニコニコと話をしている。宰相は私を害するというより利用しようとしているのかしら?
「宰相っ、明日の午後は誰と会うのかしらっ?」
「陛下、明日は午後からカイン・サンダーと会う事になっております。場所は中庭で宜しいでしょうか?」
「分かったわ。中庭で準備をお願い。あ、あとっ、侍女長を呼んでちょうだいっ。じ、侍女をクビにしたのっ」
「承知致しました。陛下、ここへ来る途中、蹲る者や体調不良を起こしている者を見かけました。何か城で流行病でも発生しはじめているのですかな?」
宰相は困惑した表情で聞いてきた。
「あぁ、その件は大丈夫よっ。さ、宰相には話しておくわ。城内で動けなくなった者は私の命を狙う者達なの。今頃城内で動けなくなった貴族達は大慌てねっ」
「ということは陛下に付いていた侍女は陛下を殺そうとしたのですか!?」
「えぇ。今、騎士団で取り調べをしてもらっているわっ」
「左様ですか。陛下の命を狙う者はまだまだ多い。……承知しました。すぐに侍女長を呼んで参りましょう。これから騎士団長の話を聞かねばなりません。城の警備と大臣達との話し合いも早急に行います」
「えぇ、お願いねっ」
宰相の行動の速さに少しあっけに取られたけれど、警備の見直しを早急にしなければいけないのは確かだ。ただ、宰相も何か腹の中に飼っていそうなので引き続き注意をしなければならない。
暫くして侍女長が執務室へと入ってきた。私は新たな侍女を手配する事を頼むと侍女長はすぐに連れてくると言っていたわ。これで侍女問題は一安心ね。侍女長は私を心配しながら後進育成に務めている。
詳しく言うと、私の乳母だった人の姉でもあるの。元貴族令嬢だった二人は没落寸前で売られる前だったらしい。母が二人を王妃付きの侍女として召し抱え、それ以来王家に尽くしてくれている。
私の乳母は三年ほど前に病気で亡くなってしまったけれど、姉は侍女長になっても変わらず王家に仕えている。
その後、執務を少しこなした後、部屋へと戻った。夜も随分遅くなってしまったわ。
「侍女長からの指示で今日から陛下付き筆頭侍女になりましたマヤです。宜しくお願い致します」
「マヤ、宜しく」
部屋の前で新しい侍女が私を待ってくれていたようだ。王女や王太子には侍女や侍従が一人付くけれど、陛下になれば侍女や侍従は五人程となるらしい。交代で仕事をするのだとか。
これは護衛騎士のアーロンも同じ。近衛騎士から選ばれた超エリート。マヤはテキパキと寝る準備をしてくれる。今度の侍女達はしっかりとしているし、大丈夫かもしれないわ。
――あぁ、だが油断してはならんぞ?
そうですね。
グラン様の言う通りだわ。もっと気を引き締めていかないといけないわね。私は少し反省しながらベッドへと入った。
翌日も早朝から食事を執務室で取りながら一人執務に励む。昼前だっただろうか、扉をノックする音が聞こえた。
「入って」
私は許可を出すと、宰相と第一騎士団団長が部屋へと入ってきて礼をする。私は片手を上げて答える。
「クレア陛下、昨日の城内で動けなくなった者達の報告に来ました」
「そ、そう。それで?」
団長が報告する。
「結界は直接害を与える者の身体が動けなくなる程の重さを感じ、害を与えずともそれに関与する者も身体が重く感じるようになっておりました。城内で動けなかった者は五名。身体が重くなった者は八名となっております。
現在動けなくなった者は治療と称して隔離しており、身体が重くなった者は体調不良と言う事で休ませております。どうされますか?」
私は報告を受けながら宰相から一枚の資料を手渡される。そこには動けなくなった者の名前、所属、家名などが細かく記載されてあった。
――ふむ。どうみる?
そうですね、一見所属はバラバラな感じですが、派閥が偏っています。侍女と近衛騎士二人と接する機会のある者達が身体の重い者が多い。やはり派閥の大元であるカミーロ公爵の息の掛った者なのでしょう。
けれど不思議な事に派閥の者が大勢いる中でカミーロ公爵家の者は一人もいない。トカゲのしっぽ切りをするつもりなのだと思いますわ。
――そうだな。姑息な事をしておる。
「さ、宰相。ではこのリストにある者達の配置換えを。まだ犯罪を起こしていないのだから罪には問えないわっ。そして当面監視をして頂戴。誰かと連絡を取るようなら要注意ねっ。それと団長、城の警備はどう変わったのかしら?」
「城の警備は近衛騎士を中心に配置換えを行いました。前陛下が亡くなられて以降特に厳しく人の出入りを制限しておりましたが、今回の件でより信頼の置けるものを配置するようにしております」
「そう、大変だったわね。城内だけでもこれで落ち着くといいわ」
そこから配備の説明を聞いた後、私はまた執務を行う。猫の手も借りたいほど忙しい。
「クレア陛下、婚約者候補者との時間です」
従者がそう伝えてくれるまで時間を忘れて執務をしていた。中庭だっけ。
私は急いで中庭に向かった。
50
お気に入りに追加
374
あなたにおすすめの小説
【完結】黒の魔人と白の魔人
まるねこ
恋愛
瘴気が溢れる毒の沼で生まれた黒の彼と白の私。
瘴気を餌に成長していく二人。
成長した彼は魔王となった。
私は地下に潜り、ダンジョンを造る日々。
突然、私の前に現れた彼は私にある頼み事をした。
人間の街にダンジョンを作ってほしい、と。
最後の方に多少大人な雰囲気を出しております。ご注意下さい。
Copyright©︎2024-まるねこ
王太子エンドを迎えたはずのヒロインが今更私の婚約者を攻略しようとしているけどさせません
黒木メイ
恋愛
日本人だった頃の記憶があるクロエ。
でも、この世界が乙女ゲームに似た世界だとは知らなかった。
知ったのはヒロインらしき人物が落とした『攻略ノート』のおかげ。
学園も卒業して、ヒロインは王太子エンドを無事に迎えたはずなんだけど……何故か今になってヒロインが私の婚約者に近づいてきた。
いったい、何を考えているの?!
仕方ない。現実を見せてあげましょう。
と、いうわけでクロエは婚約者であるダニエルに告げた。
「しばらくの間、実家に帰らせていただきます」
突然告げられたクロエ至上主義なダニエルは顔面蒼白。
普段使わない頭を使ってクロエに戻ってきてもらう為に奮闘する。
※わりと見切り発車です。すみません。
※小説家になろう様にも掲載。(7/21異世界転生恋愛日間1位)
愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
あなたに忘れられない人がいても――公爵家のご令息と契約結婚する運びとなりました!――
おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
※1/1アメリアとシャーロックの長女ルイーズの恋物語「【R18】犬猿の仲の幼馴染は嘘の婚約者」が完結しましたので、ルイーズ誕生のエピソードを追加しています。
※R18版はムーンライトノベルス様にございます。本作品は、同名作品からR18箇所をR15表現に抑え、加筆修正したものになります。R15に※、ムーンライト様にはR18後日談2話あり。
元は令嬢だったが、現在はお針子として働くアメリア。彼女はある日突然、公爵家の三男シャーロックに求婚される。ナイトの称号を持つ元軍人の彼は、社交界で浮名を流す有名な人物だ。
破産寸前だった父は、彼の申し出を二つ返事で受け入れてしまい、アメリアはシャーロックと婚約することに。
だが、シャーロック本人からは、愛があって求婚したわけではないと言われてしまう。とは言え、なんだかんだで優しくて溺愛してくる彼に、だんだんと心惹かれていくアメリア。
初夜以外では手をつけられずに悩んでいたある時、自分とよく似た女性マーガレットとシャーロックが仲睦まじく映る写真を見つけてしまい――?
「私は彼女の代わりなの――? それとも――」
昔失くした恋人を忘れられない青年と、元気と健康が取り柄の元令嬢が、契約結婚を通して愛を育んでいく物語。
※全13話(1話を2〜4分割して投稿)
麗しの王子殿下は今日も私を睨みつける。
スズキアカネ
恋愛
「王子殿下の運命の相手を占いで決めるそうだから、レオーネ、あなたが選ばれるかもしれないわよ」
伯母の一声で連れて行かれた王宮広場にはたくさんの若い女の子たちで溢れかえっていた。
そしてバルコニーに立つのは麗しい王子様。
──あの、王子様……何故睨むんですか?
人違いに決まってるからそんなに怒らないでよぉ!
◇◆◇
無断転載・転用禁止。
Do not repost.
殿下には既に奥様がいらっしゃる様なので私は消える事にします
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のアナスタシアは、毒を盛られて3年間眠り続けていた。そして3年後目を覚ますと、婚約者で王太子のルイスは親友のマルモットと結婚していた。さらに自分を毒殺した犯人は、家族以上に信頼していた、専属メイドのリーナだと聞かされる。
真実を知ったアナスタシアは、深いショックを受ける。追い打ちをかける様に、家族からは役立たずと罵られ、ルイスからは側室として迎える準備をしていると告げられた。
そして輿入れ前日、マルモットから恐ろしい真実を聞かされたアナスタシアは、生きる希望を失い、着の身着のまま屋敷から逃げ出したのだが…
7万文字くらいのお話です。
よろしくお願いいたしますm(__)m
永遠の誓いを立てましょう、あなたへの想いを思い出すことは決してないと……
矢野りと
恋愛
ある日突然、私はすべてを失った。
『もう君はいりません、アリスミ・カロック』
恋人は表情を変えることなく、別れの言葉を告げてきた。彼の隣にいた私の親友は、申し訳なさそうな顔を作ることすらせず笑っていた。
恋人も親友も一度に失った私に待っていたのは、さらなる残酷な仕打ちだった。
『八等級魔術師アリスミ・カロック。異動を命じる』
『えっ……』
任期途中での異動辞令は前例がない。最上位の魔術師である元恋人が裏で動いた結果なのは容易に察せられた。
私にそれを拒絶する力は勿論なく、一生懸命に築いてきた居場所さえも呆気なく奪われた。
それから二年が経った頃、立ち直った私の前に再び彼が現れる。
――二度と交わらないはずだった運命の歯車が、また動き出した……。
※このお話の設定は架空のものです。
※お話があわない時はブラウザバックでお願いします(_ _)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる