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ここはラグノア国。私の名はクレア・ラグノア。歳は17歳。政務の合間の少しでも時間が取れると王宮の図書館へ入り、読書に勤しむ生活をしていた。友達は本と言っても過言では無い。
一応、王国一の才女として名高い王女。私、クレアはとてつも無く人見知りである。
そしてこの世界には魔法という物が存在している。民は生活をする上で少しばかり使える程度、貴族は平民より多く魔法を使う事が出来るのだが、生活の上で魔法を使用する事がないためステータスのための魔法と化しているのが現状といったところだ。
私を含む王族はみな多くの魔力を保持している。私は歴代一と言っても良いほどの魔力量を保持しているけれど、一般的な貴族の持つ魔力量と公表している。
理由はというと、私が女である事だ。
兄であれば優秀な王として公表されるが、女である私が魔力を公表すると魔力を欲する貴族達の利権争いに関り、最悪な結果をもたらしかねないと両親は私の将来を考えた末、秘匿する事を決めたのだ。
将来は優しい兄が王となって私が女宰相か文官トップとして兄を支えていくはずだった。
1年ほど前に父と母が亡くなり、先日兄も亡くなった。父と母は事故死。兄は病死となっている。一応。私は家族達の無念の死を嘆く事も許されず、兄の葬儀もそこそこに女王となった。
優しい家族はもう居ない。
貴族達は私の悲しみを他所に私を女王として担ぎ出し、すぐさま王配を決めるように迫ってきた。
今、まさに私の目の前にいる王配候補者。彼等は貴族院や大臣達が選定してきた者達。貴族達の透けて見える思惑。何とかしなければ。けれど、私は公の場には最低限の行事のみでほぼ出た事が無かった。
そのせいで候補者達の事がよく分からない。
……困ったものだな。
謁見の間は王の威厳を見せつけるような荘厳な作りになっている。敷き詰められた赤の絨毯は来訪者達が襟を正してしまう程の非日常を与えている。
本日の謁見の間はいつもと雰囲気が違い、面倒事は御免だとでも言いたげな重い空気を私に纏わせる。私は金細工の施された豪華な椅子にドスンと座り、足を組み、視線を前に向ける。その理由はと言うと、この婿選びである。
「クレア陛下、この者達が王配候補者五名となります。貴族院や大臣達から推薦された者達です」
謁見の間で和かな顔をした宰相とその後ろに控える若い男達。どの候補者も背が高く見目麗しい。しかし、私を見て微笑む者、興味の無い者、態度は三者三様だった。
「では自己紹介を」
宰相が促すと、一番右の男が一歩前へ出て礼をし、自己紹介を始める。
「私、サンダー侯爵家三男、カイン・サンダーと申します。私が王配となった暁には国を活性化させ、さらに発展に導いて行く事をお約束します。是非、私を王配にお選び下さい」
翠眼で私を射抜くような強い視線。私ににこりと笑いながらもその眼の奥に潜む何かが不安を掻き立てる。
――胡散臭いな。
そうですね。私もこの方は不安な感じがしますっ。
「テーラー侯爵家三男のアーサー・テーラーです。クレア陛下、ようやくお目通りが叶いました。クレア陛下は噂に違わず美しい。世界中の花々はどれも美しく、素晴らしいが陛下の前では野に咲くあだ花。美しい姫君、是非我が伴侶とおなり下さい」
赤毛で長身の彼は先程のカインと違い、雰囲気も言葉の使い方も柔らかい。流れるように出てくる吟遊詩人のような言葉は大勢の女性と関わってきたのだろうか。
「ローガン・ベイリーです。現在、宰相補佐官を務めています。三大臣から推薦されこの場に立っております。現在、貴族達は王家の不幸が続き動揺が見られます。私を王配となった暁には貴族達を纏め安定した世を作っていきたいと思っております」
眼鏡を掛けた彼はこの中で1番優秀に見える。けれど、どこか硬い感じがする。
彼にとっての私は国を動かすための一つの駒なのかしら?
「俺はベイカー・フォレスト。現在王宮魔導士をしています。趣味は魔法研究。政治についてはからきしですが、他とは群を抜いた魔力量。王配となったらクレア陛下に尽くし、王家復興のため頑張ります」
彼はこの中で1番信頼できる。用事があるって言っていたのはこの事だったのね。何故入っているのかは謎だ。彼は自他ともに認める程の魔法オタク。
魔法にしか興味を持っていない。私との接点はもちろん魔法。魔力の多い私に訓練の手伝いをしてもらっていたし、たまに今でも魔法談義に花が咲く事がある。
――面白いな。自ら種馬になると言っておるぞ?
た、種馬っ。
――良いではないか。政治はクレアが行い、ベイカーは補佐に回る。案外良いかもしれんな。
「私、第三騎士団副官のアスター・コールです。クレア陛下の王配候補に選んでいただき有り難き幸せ。命をかけてクレア陛下に尽くす所存です」
凄く真面目に見える。護衛の延長だと思っているのか?第一騎士団は花形でもあるから令嬢達は放っておかないだろう事は予想する。
「短い期間ではあるが候補者達としっかりと交流を持とうと考えておる。公務の合間に時間を設ける。詳しくは宰相から説明があるだろう」
そう言い残し席を立った。この後、宰相から詳しく説明があるだろう。
一応、王国一の才女として名高い王女。私、クレアはとてつも無く人見知りである。
そしてこの世界には魔法という物が存在している。民は生活をする上で少しばかり使える程度、貴族は平民より多く魔法を使う事が出来るのだが、生活の上で魔法を使用する事がないためステータスのための魔法と化しているのが現状といったところだ。
私を含む王族はみな多くの魔力を保持している。私は歴代一と言っても良いほどの魔力量を保持しているけれど、一般的な貴族の持つ魔力量と公表している。
理由はというと、私が女である事だ。
兄であれば優秀な王として公表されるが、女である私が魔力を公表すると魔力を欲する貴族達の利権争いに関り、最悪な結果をもたらしかねないと両親は私の将来を考えた末、秘匿する事を決めたのだ。
将来は優しい兄が王となって私が女宰相か文官トップとして兄を支えていくはずだった。
1年ほど前に父と母が亡くなり、先日兄も亡くなった。父と母は事故死。兄は病死となっている。一応。私は家族達の無念の死を嘆く事も許されず、兄の葬儀もそこそこに女王となった。
優しい家族はもう居ない。
貴族達は私の悲しみを他所に私を女王として担ぎ出し、すぐさま王配を決めるように迫ってきた。
今、まさに私の目の前にいる王配候補者。彼等は貴族院や大臣達が選定してきた者達。貴族達の透けて見える思惑。何とかしなければ。けれど、私は公の場には最低限の行事のみでほぼ出た事が無かった。
そのせいで候補者達の事がよく分からない。
……困ったものだな。
謁見の間は王の威厳を見せつけるような荘厳な作りになっている。敷き詰められた赤の絨毯は来訪者達が襟を正してしまう程の非日常を与えている。
本日の謁見の間はいつもと雰囲気が違い、面倒事は御免だとでも言いたげな重い空気を私に纏わせる。私は金細工の施された豪華な椅子にドスンと座り、足を組み、視線を前に向ける。その理由はと言うと、この婿選びである。
「クレア陛下、この者達が王配候補者五名となります。貴族院や大臣達から推薦された者達です」
謁見の間で和かな顔をした宰相とその後ろに控える若い男達。どの候補者も背が高く見目麗しい。しかし、私を見て微笑む者、興味の無い者、態度は三者三様だった。
「では自己紹介を」
宰相が促すと、一番右の男が一歩前へ出て礼をし、自己紹介を始める。
「私、サンダー侯爵家三男、カイン・サンダーと申します。私が王配となった暁には国を活性化させ、さらに発展に導いて行く事をお約束します。是非、私を王配にお選び下さい」
翠眼で私を射抜くような強い視線。私ににこりと笑いながらもその眼の奥に潜む何かが不安を掻き立てる。
――胡散臭いな。
そうですね。私もこの方は不安な感じがしますっ。
「テーラー侯爵家三男のアーサー・テーラーです。クレア陛下、ようやくお目通りが叶いました。クレア陛下は噂に違わず美しい。世界中の花々はどれも美しく、素晴らしいが陛下の前では野に咲くあだ花。美しい姫君、是非我が伴侶とおなり下さい」
赤毛で長身の彼は先程のカインと違い、雰囲気も言葉の使い方も柔らかい。流れるように出てくる吟遊詩人のような言葉は大勢の女性と関わってきたのだろうか。
「ローガン・ベイリーです。現在、宰相補佐官を務めています。三大臣から推薦されこの場に立っております。現在、貴族達は王家の不幸が続き動揺が見られます。私を王配となった暁には貴族達を纏め安定した世を作っていきたいと思っております」
眼鏡を掛けた彼はこの中で1番優秀に見える。けれど、どこか硬い感じがする。
彼にとっての私は国を動かすための一つの駒なのかしら?
「俺はベイカー・フォレスト。現在王宮魔導士をしています。趣味は魔法研究。政治についてはからきしですが、他とは群を抜いた魔力量。王配となったらクレア陛下に尽くし、王家復興のため頑張ります」
彼はこの中で1番信頼できる。用事があるって言っていたのはこの事だったのね。何故入っているのかは謎だ。彼は自他ともに認める程の魔法オタク。
魔法にしか興味を持っていない。私との接点はもちろん魔法。魔力の多い私に訓練の手伝いをしてもらっていたし、たまに今でも魔法談義に花が咲く事がある。
――面白いな。自ら種馬になると言っておるぞ?
た、種馬っ。
――良いではないか。政治はクレアが行い、ベイカーは補佐に回る。案外良いかもしれんな。
「私、第三騎士団副官のアスター・コールです。クレア陛下の王配候補に選んでいただき有り難き幸せ。命をかけてクレア陛下に尽くす所存です」
凄く真面目に見える。護衛の延長だと思っているのか?第一騎士団は花形でもあるから令嬢達は放っておかないだろう事は予想する。
「短い期間ではあるが候補者達としっかりと交流を持とうと考えておる。公務の合間に時間を設ける。詳しくは宰相から説明があるだろう」
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