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さん
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毎日が楽しく過ぎていったそんなある日、教室を移動する時に走ってきた男子生徒がドンッとぶつかり、持っていたエリアナ様を描いた紙がひらりと落ちてしまった。
「落とし物だよ」
「有難うございます」
そう言って拾い上げたのはなんと、アインス殿下だった。殿下は描かれたエリアナ様に目が止まったようでじっくりと見入っているわ。
「エリアナ様、素敵ですよね!まさに天使!こっちも見て下さい。レアなエリアナ様なんですよ!」
私は矢継ぎ早にエリアナ愛を口にしながら髪を下ろしたエリアナ様の絵姿を見せた。
「こ、これが普段のエリアナなのかい?」
「そうなんですよ。女神降臨ですよ。滅多にお目にかかれません。いつもは化粧で殿下の婚約者という存在を作っているんですが、公爵家では1人のか弱いご令嬢なんです。そのギャップがまた萌える!殿下の話をすると顔を真っ赤にして恥じらう姿はたまらないんですよね」
「…そうなの、か?」
「一度、公爵家に先触れなく行ってみるのも良いかもしれません。動揺するエリアナ様も可愛いですから!」
「良い考えだ。この絵、貰えるかな?」
「良いですよ!今回は特別です。いつもエリアナ様や側近の婚約者様方が私の絵を買い取ってくれるんです」
「そうなのか?」
「我が家の貴重な収入源なのです!」
殿下の側にいる側近達も不思議そうにしているので見せつける!
もちろん萌えポーズの取り巻き令嬢ズの絵を。実際には萌えポーズはしてないんだけど、そこは想像力をフルに活かして描きました。
… 出した瞬間、すでに紙がない!
側近達が自分の婚約者の絵姿に見入っている様子。アインス殿下も横からその絵を見て驚いている。
「これは、何処かに売る予定なのだろうか?」
「いえ、私の趣味です。誰にもあげる予定はないです」
「譲ってもらえるだろうか」
「…チッ。仕方がないですね。金貨1枚で手を打ちましょう」
「…うむ。買った」
吹っかけてみたが成功したらしい。
そしてまた別のも描いて欲しいと依頼が出た。
こんなにイケメンで自分の婚約者を溺愛するなんて凄い。素敵だわ。この情報を周知徹底して欲しい。
結局、みんな即買いだった。
いやー、これで弟に新しい剣を買ってあげれるわ。それと今日の晩御飯はステーキね!
どうやらこの一件で婚約者同士の会話が潤って更に仲良しになったらしい。
うんうん。良い事だ。
アインス殿下とエリアナ様はと言うと、距離がかなり縮まったみたい。お互い視線を外して顔を真っ赤にする時もある。
ウブね、ウブなのね!
「テト、みんなが幸せそうで良かったわ!」
「あぁ、そうだな。ローサ、卒業まであと少しだ。お前はどうするんだ?」
「私?首席だし、そのまま文官として働きに出ようと思っているわ。貧乏男爵家を継ぐのは弟だし、結婚しようにも私を好いてくれる人はいないもの。テトが私を貰ってくれるの?」
「馬鹿だな。気づいて無かったのか?よく聞けよ、俺はお前をずっと前から好きだった。卒業と同時に子爵夫人だ。いいな」
「テト、大好き」
そうして私は卒業と共にローサ・フォルダ子爵夫人見習いとなった。まだテトのお父様は現役バリバリで働いているからね。
当分私もテトも新婚生活を楽しんで良いみたい。テトは王宮で文官として働きつつ、領地の事を少しずつやってる。
私はというと、たまにアインス王太子殿下達のお茶会に呼ばれて絵を描いているわ。
エリアナ様は時折開く上位貴族のお茶会でアインス殿下の絵姿を自慢したらしく、私も描いて欲しいと他の貴族方から依頼が殺到したのは言うまでもない。
後から聞いた話。
私が描いた絵姿を見た殿下や婚約者達は、婚約者を改めて可愛いと認識したらしく、他の令息達にこんなに可愛い婚約者を見せたくないと嫉妬深くなり、卒業パーティーで婚約破棄どころか即婚姻に持ち込んだらしい。
みんな幸せで良かったわ。
【完】
「落とし物だよ」
「有難うございます」
そう言って拾い上げたのはなんと、アインス殿下だった。殿下は描かれたエリアナ様に目が止まったようでじっくりと見入っているわ。
「エリアナ様、素敵ですよね!まさに天使!こっちも見て下さい。レアなエリアナ様なんですよ!」
私は矢継ぎ早にエリアナ愛を口にしながら髪を下ろしたエリアナ様の絵姿を見せた。
「こ、これが普段のエリアナなのかい?」
「そうなんですよ。女神降臨ですよ。滅多にお目にかかれません。いつもは化粧で殿下の婚約者という存在を作っているんですが、公爵家では1人のか弱いご令嬢なんです。そのギャップがまた萌える!殿下の話をすると顔を真っ赤にして恥じらう姿はたまらないんですよね」
「…そうなの、か?」
「一度、公爵家に先触れなく行ってみるのも良いかもしれません。動揺するエリアナ様も可愛いですから!」
「良い考えだ。この絵、貰えるかな?」
「良いですよ!今回は特別です。いつもエリアナ様や側近の婚約者様方が私の絵を買い取ってくれるんです」
「そうなのか?」
「我が家の貴重な収入源なのです!」
殿下の側にいる側近達も不思議そうにしているので見せつける!
もちろん萌えポーズの取り巻き令嬢ズの絵を。実際には萌えポーズはしてないんだけど、そこは想像力をフルに活かして描きました。
… 出した瞬間、すでに紙がない!
側近達が自分の婚約者の絵姿に見入っている様子。アインス殿下も横からその絵を見て驚いている。
「これは、何処かに売る予定なのだろうか?」
「いえ、私の趣味です。誰にもあげる予定はないです」
「譲ってもらえるだろうか」
「…チッ。仕方がないですね。金貨1枚で手を打ちましょう」
「…うむ。買った」
吹っかけてみたが成功したらしい。
そしてまた別のも描いて欲しいと依頼が出た。
こんなにイケメンで自分の婚約者を溺愛するなんて凄い。素敵だわ。この情報を周知徹底して欲しい。
結局、みんな即買いだった。
いやー、これで弟に新しい剣を買ってあげれるわ。それと今日の晩御飯はステーキね!
どうやらこの一件で婚約者同士の会話が潤って更に仲良しになったらしい。
うんうん。良い事だ。
アインス殿下とエリアナ様はと言うと、距離がかなり縮まったみたい。お互い視線を外して顔を真っ赤にする時もある。
ウブね、ウブなのね!
「テト、みんなが幸せそうで良かったわ!」
「あぁ、そうだな。ローサ、卒業まであと少しだ。お前はどうするんだ?」
「私?首席だし、そのまま文官として働きに出ようと思っているわ。貧乏男爵家を継ぐのは弟だし、結婚しようにも私を好いてくれる人はいないもの。テトが私を貰ってくれるの?」
「馬鹿だな。気づいて無かったのか?よく聞けよ、俺はお前をずっと前から好きだった。卒業と同時に子爵夫人だ。いいな」
「テト、大好き」
そうして私は卒業と共にローサ・フォルダ子爵夫人見習いとなった。まだテトのお父様は現役バリバリで働いているからね。
当分私もテトも新婚生活を楽しんで良いみたい。テトは王宮で文官として働きつつ、領地の事を少しずつやってる。
私はというと、たまにアインス王太子殿下達のお茶会に呼ばれて絵を描いているわ。
エリアナ様は時折開く上位貴族のお茶会でアインス殿下の絵姿を自慢したらしく、私も描いて欲しいと他の貴族方から依頼が殺到したのは言うまでもない。
後から聞いた話。
私が描いた絵姿を見た殿下や婚約者達は、婚約者を改めて可愛いと認識したらしく、他の令息達にこんなに可愛い婚約者を見せたくないと嫉妬深くなり、卒業パーティーで婚約破棄どころか即婚姻に持ち込んだらしい。
みんな幸せで良かったわ。
【完】
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