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私はそのまま第二騎士団へと向かった。正直なところ、王太子殿下の命令で王女がラダン様を呼びつける事を拒否するようにしてくれたらいいのにと思う。なんだかんだで王女には甘いのかもしれない。
「お久しぶりです。シャロア・エレゲンです」
「おぉ! シャロア、久しぶりだな。今日はどうしたんだ? ラダンは今エリアーナ王女殿下の護衛に呼ばれていないが?」
団長が笑顔で迎えてくれたが、少し気まずそうに話をしてくれた。私を呼びつけておいてこれは酷いなと思う。
やはり私に嫌がらせをしたいのだろう。
私は団長に王太子殿下から頂いた紙を出し、今日王宮に来た理由を団長に話す。もちろん招待状を見せながら。
「そうか。ラダンを至急呼び戻せ、んー顔がいい、カインお前! 交代してこい」
「えー俺っすか? あの男娼紛いのような中に入るの嫌なんっすけど。まぁ、仕方がないな。命令だし」
「護衛騎士なのに男娼紛いの事をさせられているのですか?」
私はすぐに聞くとカインさんが答えた。
「あー大丈夫だよ? 王女はまだ十六歳だ。隣国の王子と婚約するという話も出ているし、下品な男遊びは今のところしていないよ。監視も厳しく止めている。
その辺はまだ知識も無く幼いのだろう。ただ自分の気に入った騎士や令息を侍らせているんだ。自分のおもちゃが取られると思ってシャロアに八つ当たりをしているんだろうな」
「こらっ、カイン。シャロアが心配するだろう。さっさと行ってこい」
「はいはーい」
カインさんは手をヒラヒラと振りながらラダン様と交代に向かっていった。
「団長、ラダン様は本当に大丈夫なのでしょうか?」
私は心配になって聞いてみる。
「まぁ、時間の問題だろうがな。今のところは大丈夫だ。ただ、身持ちの悪さが露呈すれば隣国との縁談も消えるだろうな」
いつになく団長が苦い顔をしながらお茶を口にする。エリアーナ王女が成人になったことで公の場に出ることが多くなってきた。これまで隠していたものが隠しきれなくなってきているのかもしれない。
しばらくするとラダン様は疲れた顔で第二騎士団へと戻ってきた。
「団長、至急戻るようにというお話でしたが……。シャロア!」
ラダン様は私に気づき、ギュッと抱きしめてくる。ラダン様からキツイ香水のにおい。
「……ラダン様。王女様と抱き合っていたのですか?」
「すまない。君に不快な思いをさせるつもりはなかった」
「話の途中で悪いが、あとは二人でゆっくり話し合ってくれ」
団長はラダン様に王太子殿下の命令書を見せた。
「ありがとうございます。シャロア、すぐに帰ろう」
ラダン様はそう言うと、私の手を取り、足早に部屋を出ていく。
「ラダン様、そんなに急がなくても」
私がそう言うと、ラダン様は耳元でそっと囁いた。
「王女の邪魔が入る前に逃げるんだ」
……なるほど。
私はラダン様の後を追うようにきびきびと歩き出す。王宮を出たところで誰かがラダン様を呼んでいる声がしたけれど、私達は無視するように走り出し、馬車に飛び乗った。
「リンデル侯爵家へ向かってちょうだい」
御者は『畏まりました』と走り出した。どうやらラダン様を呼んでいたのは王女の従者だったようだ。馬車の窓から息を切らして私達を探している従者を見てホッとする。
「ラダン様、突然仕事を休ませてしまってごめんなさい」
「いや、私もずっと休みが取れていなかったから。心配をかけてすまなかった」
馬車はすぐにリンデル侯爵家へと到着した。伯爵家の馬車で突然帰ってきたラダン様と私に侯爵家の執事は驚いていたが、すぐにサロンへと私を通してくれた。ラダン様は着替えてくると自室に向かった。
「待たせて悪かった」
私服に着替えたラダン様は私の隣に座り、私の手を取った。
「心配をかけてすまない」
「……王女様の命令ですから仕方がありません……」
本当はもっとラダン様を支えなくてはいけない、優しく言葉を掛けるのが良いと思っている。
けれど、王女に嫉妬する自分、もっと会いたい、もっと側に居て欲しいと思う自分とせめぎ合いそれ以上の言葉を口にすることができなかった。
沈黙が流れるサロン。お互いどう言葉を紡げば良いか困っている。
その時、サロンの扉が開いた。
「お久しぶりです。シャロア・エレゲンです」
「おぉ! シャロア、久しぶりだな。今日はどうしたんだ? ラダンは今エリアーナ王女殿下の護衛に呼ばれていないが?」
団長が笑顔で迎えてくれたが、少し気まずそうに話をしてくれた。私を呼びつけておいてこれは酷いなと思う。
やはり私に嫌がらせをしたいのだろう。
私は団長に王太子殿下から頂いた紙を出し、今日王宮に来た理由を団長に話す。もちろん招待状を見せながら。
「そうか。ラダンを至急呼び戻せ、んー顔がいい、カインお前! 交代してこい」
「えー俺っすか? あの男娼紛いのような中に入るの嫌なんっすけど。まぁ、仕方がないな。命令だし」
「護衛騎士なのに男娼紛いの事をさせられているのですか?」
私はすぐに聞くとカインさんが答えた。
「あー大丈夫だよ? 王女はまだ十六歳だ。隣国の王子と婚約するという話も出ているし、下品な男遊びは今のところしていないよ。監視も厳しく止めている。
その辺はまだ知識も無く幼いのだろう。ただ自分の気に入った騎士や令息を侍らせているんだ。自分のおもちゃが取られると思ってシャロアに八つ当たりをしているんだろうな」
「こらっ、カイン。シャロアが心配するだろう。さっさと行ってこい」
「はいはーい」
カインさんは手をヒラヒラと振りながらラダン様と交代に向かっていった。
「団長、ラダン様は本当に大丈夫なのでしょうか?」
私は心配になって聞いてみる。
「まぁ、時間の問題だろうがな。今のところは大丈夫だ。ただ、身持ちの悪さが露呈すれば隣国との縁談も消えるだろうな」
いつになく団長が苦い顔をしながらお茶を口にする。エリアーナ王女が成人になったことで公の場に出ることが多くなってきた。これまで隠していたものが隠しきれなくなってきているのかもしれない。
しばらくするとラダン様は疲れた顔で第二騎士団へと戻ってきた。
「団長、至急戻るようにというお話でしたが……。シャロア!」
ラダン様は私に気づき、ギュッと抱きしめてくる。ラダン様からキツイ香水のにおい。
「……ラダン様。王女様と抱き合っていたのですか?」
「すまない。君に不快な思いをさせるつもりはなかった」
「話の途中で悪いが、あとは二人でゆっくり話し合ってくれ」
団長はラダン様に王太子殿下の命令書を見せた。
「ありがとうございます。シャロア、すぐに帰ろう」
ラダン様はそう言うと、私の手を取り、足早に部屋を出ていく。
「ラダン様、そんなに急がなくても」
私がそう言うと、ラダン様は耳元でそっと囁いた。
「王女の邪魔が入る前に逃げるんだ」
……なるほど。
私はラダン様の後を追うようにきびきびと歩き出す。王宮を出たところで誰かがラダン様を呼んでいる声がしたけれど、私達は無視するように走り出し、馬車に飛び乗った。
「リンデル侯爵家へ向かってちょうだい」
御者は『畏まりました』と走り出した。どうやらラダン様を呼んでいたのは王女の従者だったようだ。馬車の窓から息を切らして私達を探している従者を見てホッとする。
「ラダン様、突然仕事を休ませてしまってごめんなさい」
「いや、私もずっと休みが取れていなかったから。心配をかけてすまなかった」
馬車はすぐにリンデル侯爵家へと到着した。伯爵家の馬車で突然帰ってきたラダン様と私に侯爵家の執事は驚いていたが、すぐにサロンへと私を通してくれた。ラダン様は着替えてくると自室に向かった。
「待たせて悪かった」
私服に着替えたラダン様は私の隣に座り、私の手を取った。
「心配をかけてすまない」
「……王女様の命令ですから仕方がありません……」
本当はもっとラダン様を支えなくてはいけない、優しく言葉を掛けるのが良いと思っている。
けれど、王女に嫉妬する自分、もっと会いたい、もっと側に居て欲しいと思う自分とせめぎ合いそれ以上の言葉を口にすることができなかった。
沈黙が流れるサロン。お互いどう言葉を紡げば良いか困っている。
その時、サロンの扉が開いた。
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