7 / 13
7 カイトSide4
しおりを挟む
「ふむ。サインしたな。これでグレイスはナーゼル国へ行かなくても済むのだ!さぁ、この婚姻届をグレイスにサインさせた後、教会へ提出してこい。儂は執務室へ戻ってナーゼル国に謝りの手紙を書かねばならんな」
国王陛下は満面の笑みを浮かべるとサインされた婚姻届を従者に渡して立ち上がった。
「あぁ、もしものために既成事実も作っておかねばならんな。そこの騎士、カイトをグレイスの部屋へ連れていけ。途中で逃げぬようにしておけ」
そう言い残し、陛下は去っていった。俺はすぐに後ろ手に縛られた。そして四方取り囲むように護衛騎士を付けられてグレイス王女のいる部屋まで歩かされる。行きたくない。どうすればいいんだ。
立ち止まらないよう後ろから押される。まるで罪人扱いだ。
俺が今ここで暴れても騎士達に歯も立たないだろう。いい案も浮かばないままグレイス王女の部屋へと着いてしまった。騎士達は縄を解き、嫌がる俺を部屋に押し入れた。俺が王女を殺すと思っていないのだろうか?
俺は扉を開けろとドンドンと叩いてみるが反応はない。
「カイト……?来てくれたのねっ!やっぱり!」
そう声が聞こえたかと思うと、後ろから抱きつかれた。全身が強張り、鳥肌が立つ。
「……お放し下さい、グレイス王女殿下」
俺は振り返り、王女を引き剥がそうとするが、王女はギュッと俺に抱きついたまま離れないように抵抗している。その姿にだんだんと苛立ちが募ってきた。周りを見渡すと、部屋は王女の部屋とは思えないほど閑散としていた。
どうやらテーブルの上にはお茶がセットされており、グレイス王女はお茶を飲んでいる途中だったようだ。
「……離れて下さい」
「嫌よ!折角カイトがここに来たのだものっ」
グレイス王女はそう言ったかと思うと、急に手を放した。そしてポケットをゴソゴソと何かをしている。そしてハンカチを取り出したかと思うと、自分の鼻と口に当てもう片方の手から香水の瓶のような物をこちらに吹きかけてきた。
不意な事で避けきれず、俺はその香水のような液体を嗅いでしまう。甘い香りがしたと思った途端、グラリと膝をつく。心臓がバクバクと音を立てて息苦しさを感じる。
「まぁ、こんなに即効性があったのねっ。さすがお父様!」
「グ、グレイス王女、今、俺に掛けたのは……?」
グレイス王女は嬉しそうにクルクルと周りながら上機嫌に応える。
「これは強力な媚薬なんですって。これで既成事実を作ればナーゼル国に行かなくて済むとさっき聞いたのっ。婚姻届にサインをした時にねっ」
……あの時の従者か。
クソッ。
だから縄を解いても大丈夫だと思われていたんだな。頭がどんどん麻痺をしていくようだ。これは不味い。グレイス王女が俺に抱きついてきた。
「ふふっ。嬉しいわっ!ベッドはこっちよ?」
王女が俺の手を引いてベッドに連れていこうとした時、俺は最後の力をふり絞った。
「ラナ!!!うぉぉぉ」
王女の手を振り払い、叫びながら重いテーブルを持ち上げ、窓へと投げつけた。『ガシャーン!!』ガラスの割れる音が響き渡る。意識が朦朧としてくるのを気力で押さえつけ、窓から飛び降りた。
「ラナ、ラナ……」
何とか中庭へ飛び降りたが俺の意識はそこで途絶えてしまった。
国王陛下は満面の笑みを浮かべるとサインされた婚姻届を従者に渡して立ち上がった。
「あぁ、もしものために既成事実も作っておかねばならんな。そこの騎士、カイトをグレイスの部屋へ連れていけ。途中で逃げぬようにしておけ」
そう言い残し、陛下は去っていった。俺はすぐに後ろ手に縛られた。そして四方取り囲むように護衛騎士を付けられてグレイス王女のいる部屋まで歩かされる。行きたくない。どうすればいいんだ。
立ち止まらないよう後ろから押される。まるで罪人扱いだ。
俺が今ここで暴れても騎士達に歯も立たないだろう。いい案も浮かばないままグレイス王女の部屋へと着いてしまった。騎士達は縄を解き、嫌がる俺を部屋に押し入れた。俺が王女を殺すと思っていないのだろうか?
俺は扉を開けろとドンドンと叩いてみるが反応はない。
「カイト……?来てくれたのねっ!やっぱり!」
そう声が聞こえたかと思うと、後ろから抱きつかれた。全身が強張り、鳥肌が立つ。
「……お放し下さい、グレイス王女殿下」
俺は振り返り、王女を引き剥がそうとするが、王女はギュッと俺に抱きついたまま離れないように抵抗している。その姿にだんだんと苛立ちが募ってきた。周りを見渡すと、部屋は王女の部屋とは思えないほど閑散としていた。
どうやらテーブルの上にはお茶がセットされており、グレイス王女はお茶を飲んでいる途中だったようだ。
「……離れて下さい」
「嫌よ!折角カイトがここに来たのだものっ」
グレイス王女はそう言ったかと思うと、急に手を放した。そしてポケットをゴソゴソと何かをしている。そしてハンカチを取り出したかと思うと、自分の鼻と口に当てもう片方の手から香水の瓶のような物をこちらに吹きかけてきた。
不意な事で避けきれず、俺はその香水のような液体を嗅いでしまう。甘い香りがしたと思った途端、グラリと膝をつく。心臓がバクバクと音を立てて息苦しさを感じる。
「まぁ、こんなに即効性があったのねっ。さすがお父様!」
「グ、グレイス王女、今、俺に掛けたのは……?」
グレイス王女は嬉しそうにクルクルと周りながら上機嫌に応える。
「これは強力な媚薬なんですって。これで既成事実を作ればナーゼル国に行かなくて済むとさっき聞いたのっ。婚姻届にサインをした時にねっ」
……あの時の従者か。
クソッ。
だから縄を解いても大丈夫だと思われていたんだな。頭がどんどん麻痺をしていくようだ。これは不味い。グレイス王女が俺に抱きついてきた。
「ふふっ。嬉しいわっ!ベッドはこっちよ?」
王女が俺の手を引いてベッドに連れていこうとした時、俺は最後の力をふり絞った。
「ラナ!!!うぉぉぉ」
王女の手を振り払い、叫びながら重いテーブルを持ち上げ、窓へと投げつけた。『ガシャーン!!』ガラスの割れる音が響き渡る。意識が朦朧としてくるのを気力で押さえつけ、窓から飛び降りた。
「ラナ、ラナ……」
何とか中庭へ飛び降りたが俺の意識はそこで途絶えてしまった。
101
お気に入りに追加
597
あなたにおすすめの小説
どうして別れるのかと聞かれても。お気の毒な旦那さま、まさかとは思いますが、あなたのようなクズが女性に愛されると信じていらっしゃるのですか?
石河 翠
恋愛
主人公のモニカは、既婚者にばかり声をかけるはしたない女性として有名だ。愛人稼業をしているだとか、天然の毒婦だとか、聞こえてくるのは下品な噂ばかり。社交界での評判も地に落ちている。
ある日モニカは、溺愛のあまり茶会や夜会に妻を一切参加させないことで有名な愛妻家の男性に声をかける。おしどり夫婦の愛の巣に押しかけたモニカは、そこで虐げられている女性を発見する。
彼女が愛妻家として評判の男性の奥方だと気がついたモニカは、彼女を毎日お茶に誘うようになり……。
八方塞がりな状況で抵抗する力を失っていた孤独なヒロインと、彼女に手を差し伸べ広い世界に連れ出したしたたかな年下ヒーローのお話。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID24694748)をお借りしています。
婚約者に裏切られた私……でもずっと慕ってくれていた護衛騎士と幸せになります
真優
恋愛
私、ソフィア・ベネットは侯爵家の一人娘。婚約者にサプライズで会いに行ったらまさかの浮気現場に遭遇。失意のどん底に陥った私に手を差し伸べてくれたのは、優しい護衛騎士でした。
【完結】昨日までの愛は虚像でした
鬼ヶ咲あちたん
恋愛
公爵令息レアンドロに体を暴かれてしまった侯爵令嬢ファティマは、純潔でなくなったことを理由に、レアンドロの双子の兄イグナシオとの婚約を解消されてしまう。その結果、元凶のレアンドロと結婚する羽目になったが、そこで知らされた元婚約者イグナシオの真の姿に慄然とする。
【 完 】転移魔法を強要させられた上に婚約破棄されました。だけど私の元に宮廷魔術師が現れたんです
菊池 快晴
恋愛
公爵令嬢レムリは、魔法が使えないことを理由に婚約破棄を言い渡される。
自分を虐げてきた義妹、エリアスの思惑によりレムリは、国民からは残虐な令嬢だと誤解され軽蔑されていた。
生きている価値を見失ったレムリは、人生を終わらせようと展望台から身を投げようとする。
しかし、そんなレムリの命を救ったのは他国の宮廷魔術師アズライトだった。
そんな彼から街の案内を頼まれ、病に困っている国民を助けるアズライトの姿を見ていくうちに真実の愛を知る――。
この話は、行き場を失った公爵令嬢が強欲な宮廷魔術師と出会い、ざまあして幸せになるお話です。
【完結】忌み子と呼ばれた公爵令嬢
美原風香
恋愛
「ティアフレア・ローズ・フィーン嬢に使節団への同行を命じる」
かつて、忌み子と呼ばれた公爵令嬢がいた。
誰からも嫌われ、疎まれ、生まれてきたことすら祝福されなかった1人の令嬢が、王国から追放され帝国に行った。
そこで彼女はある1人の人物と出会う。
彼のおかげで冷え切った心は温められて、彼女は生まれて初めて心の底から笑みを浮かべた。
ーー蜂蜜みたい。
これは金色の瞳に魅せられた令嬢が幸せになる、そんなお話。
家に代々伝わる髪色を受け継いでいないからとずっと虐げられてきていたのですが……。
四季
恋愛
メリア・オフトレスは三姉妹の真ん中。
しかしオフトレス家に代々伝わる緑髪を受け継がず生まれたために母や姉妹らから虐げられていた。
だがある時、トレットという青年が現れて……?
嘘つきな私が貴方に贈らなかった言葉
海林檎
恋愛
※1月4日12時完結
全てが嘘でした。
貴方に嫌われる為に悪役をうって出ました。
婚約破棄できるように。
人ってやろうと思えば残酷になれるのですね。
貴方と仲のいいあの子にわざと肩をぶつけたり、教科書を隠したり、面と向かって文句を言ったり。
貴方とあの子の仲を取り持ったり····
私に出来る事は貴方に新しい伴侶を作る事だけでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる