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「エーゼット、酷いわ! そんなのあんまりじゃない! ラジーノ達だって頑張っているじゃない」
アンバー妃が涙目で訴えかける。まるで悲劇のヒロインになったような感じね。私は呆れた様子で成り行きを見守る。
「そうか、頑張ってその程度だったか。儂も凡庸だったから王族で唯一生き残ることが出来た。
だが、凡庸は凡庸なりに動かねばならん。足を掬われぬようにせねばならん。
今のラジーノやゼノでは敵を作りすぎる。それが分からぬのなら廃嫡も厭わない。
お前たち、そのつもりで明日から学べ。良いな?」
陛下が、普段なら絶対言わないことを言っているわ。
二人の言動を見て多少なりとも思うところがあったのかしら?
だがもうどうでもいい事だ。
「では陛下、私は準備がありますので下がります」
「……あぁ。リヴィア。すまない」
「いえ、別に。いつものことですから」
「……」
私はいつものように礼を執った後、部屋を後にした。部屋に戻ってから一気に脱力する。
「モニカ、やはり私の家族はモニカたちだけね」
「……リヴィア様。今日はゆっくり休みましょう? 料理長がリヴィア様のために特別に入手したシューンエイゼット国のお茶を淹れますね」
「ティポー、いつ私はこの国を発つのかしら?」
「後で聞いて参ります」
私がお茶を飲んでいる間にティポーが戻ってきた。
「リヴィア様、二週間後にはカインディール国へ向かうようです」
「……そう。今更だけれど、ティポーは好きな人はいないの?」
「俺はいないですよ。我が家はリヴィア様に付いていくと決めております」
「迷惑をかけるわね」
「迷惑だなんて。主人がいる者は生涯王都から他の街に旅行に行くことなど無いに等しいのです。給料がない家も多い。
その点俺達家族は給料はしっかり貰えるし、服も支給され、食事も三食きっちりと食べられる。
それがどれだけ恵まれていることか。リヴィア様が嫌だと言うまで俺達はリヴィア様にしがみついてでも付いていきますからね」
「ふふっ。そう言ってくれるのはダリアの家族ぐらいよ。他の使用人達も優しいけれどね」
ティポーの言葉に少し笑顔を見せるけど、今後のことを考えるだけで内心は心が冷え固まり、ずしりと重くて何も考えたくない。
血の繋がった彼らは私を駒の一つでしかないと以前から思っているだろうし、今も思っているだろう。
それでも、心の奥深くで『私は牛と一緒に二束三文で売られたも同然なのか』と思うと辛い。一生懸命努力しても思い通りにはならない。どれだけ苦しくても悲しくても叶わぬことばかり。
辛いと声をあげたら何かが変わったのかしら……。
涙が出てくるのを必死に堪えた。とうとうこの国からも私は捨てられてしまったのだと感じた。
ドルク様の評判はこちらの国にも流れてくる。政略結婚し、王子妃として嫁いだシャーロット様の他に愛妾が数多くいると。
カインディール国に売られたということは私の地位はきっと低い。
側妃とはいえ、数多くいるという愛妾よりも扱いは酷いかもしれない。
王太子には子供もいる。
つまり、私が第二王子の側妃として嫁ぐ意味はない。子を産むために迎えられるのであればまだ自分でも納得できたのかもしれない。
子も望まれない。属国から王女を差し出すことで恭順の意を示すだけのもので送り出されるのだから私の将来は目に見えて暗いもの。
私が生きている意味はあるのかしら。
考える度に重い溜息が出てしまう。
隣国へ発つまでの二週間は部屋から一切出ることなく過ごした。
食欲もない。
何をする気力も無くなっていくのを感じる。
もう、どうでもいい。
辛うじてモニカが持ってきてくれる食事に少し口を付けるだけ。私の様子を心配して夜はダリアが付き添ってくれるようになった。
夜中にうなされて何度も起きてしまうからだ。
その度にダリアが頭を撫でて『大丈夫、大丈夫ですよ』と声をかけてくれていた。私はなんて弱い存在なの。
……無理よ、私がいくら頑張っても何も出来ない。
ずっとそうだった。期待されても応えることが出来ない。無力な存在でしかないの。
みんなが私に期待して失望して去っていくのが分かる。
泣いて騒いでも私のことなど誰も気に止めない。
アンバー妃が涙目で訴えかける。まるで悲劇のヒロインになったような感じね。私は呆れた様子で成り行きを見守る。
「そうか、頑張ってその程度だったか。儂も凡庸だったから王族で唯一生き残ることが出来た。
だが、凡庸は凡庸なりに動かねばならん。足を掬われぬようにせねばならん。
今のラジーノやゼノでは敵を作りすぎる。それが分からぬのなら廃嫡も厭わない。
お前たち、そのつもりで明日から学べ。良いな?」
陛下が、普段なら絶対言わないことを言っているわ。
二人の言動を見て多少なりとも思うところがあったのかしら?
だがもうどうでもいい事だ。
「では陛下、私は準備がありますので下がります」
「……あぁ。リヴィア。すまない」
「いえ、別に。いつものことですから」
「……」
私はいつものように礼を執った後、部屋を後にした。部屋に戻ってから一気に脱力する。
「モニカ、やはり私の家族はモニカたちだけね」
「……リヴィア様。今日はゆっくり休みましょう? 料理長がリヴィア様のために特別に入手したシューンエイゼット国のお茶を淹れますね」
「ティポー、いつ私はこの国を発つのかしら?」
「後で聞いて参ります」
私がお茶を飲んでいる間にティポーが戻ってきた。
「リヴィア様、二週間後にはカインディール国へ向かうようです」
「……そう。今更だけれど、ティポーは好きな人はいないの?」
「俺はいないですよ。我が家はリヴィア様に付いていくと決めております」
「迷惑をかけるわね」
「迷惑だなんて。主人がいる者は生涯王都から他の街に旅行に行くことなど無いに等しいのです。給料がない家も多い。
その点俺達家族は給料はしっかり貰えるし、服も支給され、食事も三食きっちりと食べられる。
それがどれだけ恵まれていることか。リヴィア様が嫌だと言うまで俺達はリヴィア様にしがみついてでも付いていきますからね」
「ふふっ。そう言ってくれるのはダリアの家族ぐらいよ。他の使用人達も優しいけれどね」
ティポーの言葉に少し笑顔を見せるけど、今後のことを考えるだけで内心は心が冷え固まり、ずしりと重くて何も考えたくない。
血の繋がった彼らは私を駒の一つでしかないと以前から思っているだろうし、今も思っているだろう。
それでも、心の奥深くで『私は牛と一緒に二束三文で売られたも同然なのか』と思うと辛い。一生懸命努力しても思い通りにはならない。どれだけ苦しくても悲しくても叶わぬことばかり。
辛いと声をあげたら何かが変わったのかしら……。
涙が出てくるのを必死に堪えた。とうとうこの国からも私は捨てられてしまったのだと感じた。
ドルク様の評判はこちらの国にも流れてくる。政略結婚し、王子妃として嫁いだシャーロット様の他に愛妾が数多くいると。
カインディール国に売られたということは私の地位はきっと低い。
側妃とはいえ、数多くいるという愛妾よりも扱いは酷いかもしれない。
王太子には子供もいる。
つまり、私が第二王子の側妃として嫁ぐ意味はない。子を産むために迎えられるのであればまだ自分でも納得できたのかもしれない。
子も望まれない。属国から王女を差し出すことで恭順の意を示すだけのもので送り出されるのだから私の将来は目に見えて暗いもの。
私が生きている意味はあるのかしら。
考える度に重い溜息が出てしまう。
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食欲もない。
何をする気力も無くなっていくのを感じる。
もう、どうでもいい。
辛うじてモニカが持ってきてくれる食事に少し口を付けるだけ。私の様子を心配して夜はダリアが付き添ってくれるようになった。
夜中にうなされて何度も起きてしまうからだ。
その度にダリアが頭を撫でて『大丈夫、大丈夫ですよ』と声をかけてくれていた。私はなんて弱い存在なの。
……無理よ、私がいくら頑張っても何も出来ない。
ずっとそうだった。期待されても応えることが出来ない。無力な存在でしかないの。
みんなが私に期待して失望して去っていくのが分かる。
泣いて騒いでも私のことなど誰も気に止めない。
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