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14話 二度確認
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駆出しや、少し実力を付けてきた奴がちょっとしたパーティを組んで壊滅、なんて話は結構聞く。特に目の前にいるベアはそれが顕著に表れる相手で、実力があるのに油断して返り討ち、死屍累々からの人を食ったおかげで人食いに昇華し被害が甚大に出る悪循環となる場合が多い。
何故かはわからないが、人を食うと凶暴性や執着性というのが増して危険度がかなり上がるので、低位の尻拭いを高位の冒険者がやる羽目になる。
だからこそ気合というか、絶対に負けてはいけないし、此処で仕留めるという気概や実力が無いとギルドもやらせないし、やらない様に高位の冒険者が注意するまでもある。
「全然倒せないんですけど、どういう事ですかね!」
「浅いんだよ、ずっとな」
立ち上がったままでぶんっと風切り音をさせながら振り下ろしてくる爪の攻撃を盾で受け、強めに堪える声が漏れているのを聞きつつ、足元の石を拾い、ベアの顔に投げ付けて注意を反らしてやる。勿論ダメージは無いが意識がこっちに向いてくるのでアニスに斬らせるように指示を出す。
その間にも顔だけこっちに向けてぐるぐると唸っているベアに、もう数個石を顔に投げ付けて敵意を此方に向けさせ続ける。
「そうだ、こっちだこっち」
ダメージがあるという訳じゃないが、やはりイライラはするだろう、アニスに向かっていたのから此方に向けてぶんぶんと爪で殴りかかってくるので、届きそうで届かない辺りの距離を取りつつ、石を投げつけ、アニスの体勢が整うまで時間を稼ぐ。
「婆に仕事を任せんじゃないよ、そろそろ当てる所も分かるだろう」
「駆出しにこんな事をさせる方がおかしいんですよ!」
私が注意を引いている間に、アニスが額から流れる汗と手の汗を拭うと、レイピアを持ち直して一撃を狙い始める。うんうん、いい傾向だ。
「しっかり決めないとな」
先程よりも大きめに距離を取ると、こっちに向かって4足歩行になって走り始める。勿論その状態で此方に突っ込んでくるので、鼻先に向けて杖の先端を向けて一発突き込む。
向こうの加速と此方の攻撃というのもあり、声にならないような鳴き声を発すると悶えて、足が止まる。流石にこの状態でいきなり動いてくるというのは無く、痛みを堪える様に怯んだ所でアニスが横から目を狙い突き込む。いくら皮が厚く、皮膚が硬いとはいえ、目の周りや目自体はそこまで厚くも硬くも無い。斬撃音が響くわけでもなく、レイピアをそのままねじ入れ、突き入れる。
いきなり飛んできた攻撃に対処する事も出来ず、目から脳に異物が突き刺さるというのは、なんとも絵面的にも痛いな。
「やればできるじゃないか」
「命掛かってるんですから、そうですよ!」
と言ってもいきなり絶命するわけではないので、深くレイピアが刺さったままで暴れ始めるので、杖の持ち手をアニスに引っ掛け、引き下げさせてから暴れているのをじっと見つめる。
そこら中にとにかく爪を振り回して暴れまわるのだが、それを終えるまで、絶命するまでは距離を置いたまま、杖に手を掛けて構えたまま相手を見据える。
そうして暫くするとだらんと腕を垂らし、前のめりに倒れこみ、目に刺さったレイピアが地面に押されて頭蓋を貫通し、先端が突き出てくる。
「や、やりましたかね」
「死んだってのをしっかり確かめてから確認するんだよ、死ぬまでも絶対に油断しない事」
「……わかりました」
また足元に転がっていた石を倒れたベアに向けて投げ付けるが特に反応はない。
死んだふりだったり、一時的な仮死状態って言う可能性もあるのでそういうのを加味しての様子見になる。
「大丈夫そうですが……ちなみにどうやって持って帰るんですか、これ」
「そういえばそれを忘れていたね」
「ええー……結構街まで遠いですよ」
「とりあえず血抜きはするか」
石を何個か投げ、近づいてからもう死んでいるのかを確認し、一息。
「大丈夫そうかい?」
「やっぱ荷が重いですよ、こんな相手は」
そう言いながらどうにか突き刺したレイピアを取ろうと死体を転がそうとした時、びくんと大きく跳ねると共にベアが起き上がり、アニスに向かって爪を向けて攻撃している。
「う、うわあ……!あ、あれ……?」
明らかに身構えていない時に貰った攻撃に死ぬのを覚悟していたのか手を前に向けて思い切り目を瞑っているアニスだが、私がいる所、しかも面倒を見ている相手を死なせるわけがないだろうに。
「これだから魔物ってのは油断ならないんだよ」
ぴっと仕込みの刃を振り、付いた血を飛ばしてから布で血を拭ってまた一息。
立ち上がったままピクリともしなくなったベアを見てぺたんと尻もちをついたアニスがぽつっと言葉を漏らす。
「は、はっ……死ぬかと、思いました」
「こういう事もあるから、気を付けるんだよ」
「わ、わかりました……」
かちんと音を鳴らして杖を仕舞ってから、腹の辺りを杖の先でとんっと押してやるとそのまま仰向けに音を立てて倒れるので、これで死んだだろう。
「さてと……ばらしてお前のアイテムボックスに突っ込んで持って帰るかね」
「そ、そういえば、ありましたね」
どう収納されているかは分からないが、便利技能だな、本当に。
何故かはわからないが、人を食うと凶暴性や執着性というのが増して危険度がかなり上がるので、低位の尻拭いを高位の冒険者がやる羽目になる。
だからこそ気合というか、絶対に負けてはいけないし、此処で仕留めるという気概や実力が無いとギルドもやらせないし、やらない様に高位の冒険者が注意するまでもある。
「全然倒せないんですけど、どういう事ですかね!」
「浅いんだよ、ずっとな」
立ち上がったままでぶんっと風切り音をさせながら振り下ろしてくる爪の攻撃を盾で受け、強めに堪える声が漏れているのを聞きつつ、足元の石を拾い、ベアの顔に投げ付けて注意を反らしてやる。勿論ダメージは無いが意識がこっちに向いてくるのでアニスに斬らせるように指示を出す。
その間にも顔だけこっちに向けてぐるぐると唸っているベアに、もう数個石を顔に投げ付けて敵意を此方に向けさせ続ける。
「そうだ、こっちだこっち」
ダメージがあるという訳じゃないが、やはりイライラはするだろう、アニスに向かっていたのから此方に向けてぶんぶんと爪で殴りかかってくるので、届きそうで届かない辺りの距離を取りつつ、石を投げつけ、アニスの体勢が整うまで時間を稼ぐ。
「婆に仕事を任せんじゃないよ、そろそろ当てる所も分かるだろう」
「駆出しにこんな事をさせる方がおかしいんですよ!」
私が注意を引いている間に、アニスが額から流れる汗と手の汗を拭うと、レイピアを持ち直して一撃を狙い始める。うんうん、いい傾向だ。
「しっかり決めないとな」
先程よりも大きめに距離を取ると、こっちに向かって4足歩行になって走り始める。勿論その状態で此方に突っ込んでくるので、鼻先に向けて杖の先端を向けて一発突き込む。
向こうの加速と此方の攻撃というのもあり、声にならないような鳴き声を発すると悶えて、足が止まる。流石にこの状態でいきなり動いてくるというのは無く、痛みを堪える様に怯んだ所でアニスが横から目を狙い突き込む。いくら皮が厚く、皮膚が硬いとはいえ、目の周りや目自体はそこまで厚くも硬くも無い。斬撃音が響くわけでもなく、レイピアをそのままねじ入れ、突き入れる。
いきなり飛んできた攻撃に対処する事も出来ず、目から脳に異物が突き刺さるというのは、なんとも絵面的にも痛いな。
「やればできるじゃないか」
「命掛かってるんですから、そうですよ!」
と言ってもいきなり絶命するわけではないので、深くレイピアが刺さったままで暴れ始めるので、杖の持ち手をアニスに引っ掛け、引き下げさせてから暴れているのをじっと見つめる。
そこら中にとにかく爪を振り回して暴れまわるのだが、それを終えるまで、絶命するまでは距離を置いたまま、杖に手を掛けて構えたまま相手を見据える。
そうして暫くするとだらんと腕を垂らし、前のめりに倒れこみ、目に刺さったレイピアが地面に押されて頭蓋を貫通し、先端が突き出てくる。
「や、やりましたかね」
「死んだってのをしっかり確かめてから確認するんだよ、死ぬまでも絶対に油断しない事」
「……わかりました」
また足元に転がっていた石を倒れたベアに向けて投げ付けるが特に反応はない。
死んだふりだったり、一時的な仮死状態って言う可能性もあるのでそういうのを加味しての様子見になる。
「大丈夫そうですが……ちなみにどうやって持って帰るんですか、これ」
「そういえばそれを忘れていたね」
「ええー……結構街まで遠いですよ」
「とりあえず血抜きはするか」
石を何個か投げ、近づいてからもう死んでいるのかを確認し、一息。
「大丈夫そうかい?」
「やっぱ荷が重いですよ、こんな相手は」
そう言いながらどうにか突き刺したレイピアを取ろうと死体を転がそうとした時、びくんと大きく跳ねると共にベアが起き上がり、アニスに向かって爪を向けて攻撃している。
「う、うわあ……!あ、あれ……?」
明らかに身構えていない時に貰った攻撃に死ぬのを覚悟していたのか手を前に向けて思い切り目を瞑っているアニスだが、私がいる所、しかも面倒を見ている相手を死なせるわけがないだろうに。
「これだから魔物ってのは油断ならないんだよ」
ぴっと仕込みの刃を振り、付いた血を飛ばしてから布で血を拭ってまた一息。
立ち上がったままピクリともしなくなったベアを見てぺたんと尻もちをついたアニスがぽつっと言葉を漏らす。
「は、はっ……死ぬかと、思いました」
「こういう事もあるから、気を付けるんだよ」
「わ、わかりました……」
かちんと音を鳴らして杖を仕舞ってから、腹の辺りを杖の先でとんっと押してやるとそのまま仰向けに音を立てて倒れるので、これで死んだだろう。
「さてと……ばらしてお前のアイテムボックスに突っ込んで持って帰るかね」
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