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13話 地道に見つけて地味にやる
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「……体力勝負って言われてましたけど、こんなにとは」
「もうへばったのかい?」
「いえ、そういう事じゃないんですが、依頼含めてとにかく体力がいると思って」
「本当ならもっと長く体力作らせたいんだけど、まあ現状の実力を知るってのも大事なんだよ」
がさがさと茂みをかき分けながら、アニスを後ろ3歩程後ろの辺りに付いてこさせながら目的の魔物を捜索する。とは言え春先に出てくる奴なので、解体しても美味しい肉と言う訳ではないのを考えると単純に在庫を増やすための依頼なんだろう。
「魔物の生態を知っておくってのも冒険者として重要な事だから、しっかり覚えておきな」
「えっと、ベアは所謂オーソドックスな熊型の魔物ですよね、春に活動開始、夏に発情期、秋に食いだめ、冬には冬眠……が基本的な生態かと」
「そう、だから春から夏にかけては少し凶暴になるから、油断してると死ぬよ」
そう言うと少しだけ顔を引き締めて返事をしてくる。
「何、しくじった所で手前が死ぬだけだからな」
「まだ死にたくないですよ!」
「私はいつ死んでも良いくらいに生きたからね」
「それを押し付けないでください」
そんな事を言いながらけもの道を歩きつつ、足元や木々を確認していく。
大きい体格と重量の魔物なので、何かを踏み抜けばしっかり足跡は付くし、木々が擦れていれば何かしら痕跡がある。だが、そういうのを私が見つけていくと成長ってのは難しいか。とりあえず後ろにいるアニスを前にして、よく観察しろと言って先に行かせる。
街から少し離れたこの森だが、熊もでるがその他別の動物系の魔物も出てくるのでその辺を見極めて追跡できるかどうかがポイントになる。
勿論今回の依頼に合わせて装備や道具も状況に合わせてしっかり教えたうえで、準備したので大丈夫だとは思うんだが、どう動くかな。
「冒険者ってもっと華やかな仕事だと思いました」
「冒険譚の様な物を期待しているならあと60年は生まれるのが遅いね」
「自分の親の歳まで遡らないといけないのはちょっと」
まあ、それもそうだな。
どっちにしろ今の平和な世の中じゃ斬った張ったの冒険譚や、ドラゴンや魔王を討伐する……なんてことはない。せいぜい凶暴な魔物が出てくる、大量に湧いてきて生態系に影響が出る、こういった感じの物はあるが、世界が大変だったり問題が起きるようなものはない。
「平和な世の中ってのをしっかり感謝しな、金も稼げて食い物もあるんだから」
「……そう、ですね」
少しだけ真面目な顔をして話を聞いていたのか、返事をしてからさらに探索を続ける。
暫く森の中を歩き、一応生息地と言われる場所の所まで来てから不意にアニスが立ち止まる。
「大きい足跡があります、まだ新しい感じです」
「……とりあえずゆっくり周りの気配を探りな、急に動くんじゃないよ」
「いるんですか」
「分からんからだよ」
しゃがんで周りの音や気配を感じつつ、アニスがゆっくりと腰に差していた剣に手を掛けつつ、少し後ろにいる私も杖の握りを変えておく。
「……いない、ですかね」
「そうだね」
ふいーっと大きめに息を吐き出すアニスを眺めながらまだ周りに意識を向け、害のある魔物がいないことを確認してから握りを変える。
「いいかい、こうして追跡している時も相手がいるかもしれないから絶対に動ける状態で確認するんだよ」
「分かりました」
すっと立ち上がり、同じように周りを見渡してから、歩き始めるのでついていく。
勿論先程よりも警戒しているため、移動速度は遅くなっているが、それはそれでいい。がんがん前出て開拓する、冒険するってのも構わないのだが、それは無意味に危険度を上げているだけであって、そういう命を担保にしてるのは死にたがりだけで十分だ。
「冒険者って言っても地味ですね」
「魔法や魔力を行使して強くなることは出来るけど、それは戦う力が多いだろう?」
何となく気配を感じたので少しだけさっきよりも警戒し。
「こういった地道な事は、覚えていれば子供でも出来る事なんだよ」
「子供でも、ですか」
「正しい知識と使い方さえ分かればね、それでどうしても駄目な時には結局戦わないといけないがな」
「そうですね、それが冒険者、って事ですか」
「そういう事だよ……いたよ、あいつだ」
茂みの向こう側、がさがさと蠢いている巨体が木のみをぼりぼりと食べながらうろついている。
「肉食じゃないんですね……」
「あいつらは雑食だよ、人を食ったら人しか食わなくなるけどね」
風向きを一応確認し、ゆっくりと気配を悟られないように風下の方へと回っていくのを促す。この辺は害のない魔物であっても基本の動きになる。あまり匂いに敏感でもない相手であっても、基本通りに動くというのは決して悪い動きではない。
「番って可能性もあるからね、十分気を付けるんだよ」
「はい……えっと、倒し方は?」
「不意打ちが一番いいね、延髄を狙って一気に、ダメだったら泥試合をするか魔法……弱点は皮に覆われていない所だから、目、耳、口、心臓は人間と同じ胸の真ん中から少し右、そこだね」
「だからこれですか……」
一応冒険者用の装備ってのは魔物に対して有効打を与えられるくらいには仕上がっているのでしっかり狙って突き込めば倒せる可能性は高い。
だからこそ持たせた武器があり、元々持っていた剣と同じもの、それと合わせて刺殺用の太めのレイピアになる。
「だらだら戦闘している奴なんて2流だからね、やるなら一発で、分かったかい?」
「はい、わかりました」
ぎゅっとレイピアを握って深めに息を吐き出しているのをみつつ、不意打ちできる位置に。体格としては立ち上がって3mないくらい、4足歩行で動く場合は地上から40㎝って所だ。
2足歩行で歩いてくる事は歩いてくるが、素直に距離を取れば問題ないのでダメだった時は突っ込んでくるときのカウンター狙いになるが……上手くいけばいいが。
「ま、なるようになるか……やるよ」
「はい……!」
「もうへばったのかい?」
「いえ、そういう事じゃないんですが、依頼含めてとにかく体力がいると思って」
「本当ならもっと長く体力作らせたいんだけど、まあ現状の実力を知るってのも大事なんだよ」
がさがさと茂みをかき分けながら、アニスを後ろ3歩程後ろの辺りに付いてこさせながら目的の魔物を捜索する。とは言え春先に出てくる奴なので、解体しても美味しい肉と言う訳ではないのを考えると単純に在庫を増やすための依頼なんだろう。
「魔物の生態を知っておくってのも冒険者として重要な事だから、しっかり覚えておきな」
「えっと、ベアは所謂オーソドックスな熊型の魔物ですよね、春に活動開始、夏に発情期、秋に食いだめ、冬には冬眠……が基本的な生態かと」
「そう、だから春から夏にかけては少し凶暴になるから、油断してると死ぬよ」
そう言うと少しだけ顔を引き締めて返事をしてくる。
「何、しくじった所で手前が死ぬだけだからな」
「まだ死にたくないですよ!」
「私はいつ死んでも良いくらいに生きたからね」
「それを押し付けないでください」
そんな事を言いながらけもの道を歩きつつ、足元や木々を確認していく。
大きい体格と重量の魔物なので、何かを踏み抜けばしっかり足跡は付くし、木々が擦れていれば何かしら痕跡がある。だが、そういうのを私が見つけていくと成長ってのは難しいか。とりあえず後ろにいるアニスを前にして、よく観察しろと言って先に行かせる。
街から少し離れたこの森だが、熊もでるがその他別の動物系の魔物も出てくるのでその辺を見極めて追跡できるかどうかがポイントになる。
勿論今回の依頼に合わせて装備や道具も状況に合わせてしっかり教えたうえで、準備したので大丈夫だとは思うんだが、どう動くかな。
「冒険者ってもっと華やかな仕事だと思いました」
「冒険譚の様な物を期待しているならあと60年は生まれるのが遅いね」
「自分の親の歳まで遡らないといけないのはちょっと」
まあ、それもそうだな。
どっちにしろ今の平和な世の中じゃ斬った張ったの冒険譚や、ドラゴンや魔王を討伐する……なんてことはない。せいぜい凶暴な魔物が出てくる、大量に湧いてきて生態系に影響が出る、こういった感じの物はあるが、世界が大変だったり問題が起きるようなものはない。
「平和な世の中ってのをしっかり感謝しな、金も稼げて食い物もあるんだから」
「……そう、ですね」
少しだけ真面目な顔をして話を聞いていたのか、返事をしてからさらに探索を続ける。
暫く森の中を歩き、一応生息地と言われる場所の所まで来てから不意にアニスが立ち止まる。
「大きい足跡があります、まだ新しい感じです」
「……とりあえずゆっくり周りの気配を探りな、急に動くんじゃないよ」
「いるんですか」
「分からんからだよ」
しゃがんで周りの音や気配を感じつつ、アニスがゆっくりと腰に差していた剣に手を掛けつつ、少し後ろにいる私も杖の握りを変えておく。
「……いない、ですかね」
「そうだね」
ふいーっと大きめに息を吐き出すアニスを眺めながらまだ周りに意識を向け、害のある魔物がいないことを確認してから握りを変える。
「いいかい、こうして追跡している時も相手がいるかもしれないから絶対に動ける状態で確認するんだよ」
「分かりました」
すっと立ち上がり、同じように周りを見渡してから、歩き始めるのでついていく。
勿論先程よりも警戒しているため、移動速度は遅くなっているが、それはそれでいい。がんがん前出て開拓する、冒険するってのも構わないのだが、それは無意味に危険度を上げているだけであって、そういう命を担保にしてるのは死にたがりだけで十分だ。
「冒険者って言っても地味ですね」
「魔法や魔力を行使して強くなることは出来るけど、それは戦う力が多いだろう?」
何となく気配を感じたので少しだけさっきよりも警戒し。
「こういった地道な事は、覚えていれば子供でも出来る事なんだよ」
「子供でも、ですか」
「正しい知識と使い方さえ分かればね、それでどうしても駄目な時には結局戦わないといけないがな」
「そうですね、それが冒険者、って事ですか」
「そういう事だよ……いたよ、あいつだ」
茂みの向こう側、がさがさと蠢いている巨体が木のみをぼりぼりと食べながらうろついている。
「肉食じゃないんですね……」
「あいつらは雑食だよ、人を食ったら人しか食わなくなるけどね」
風向きを一応確認し、ゆっくりと気配を悟られないように風下の方へと回っていくのを促す。この辺は害のない魔物であっても基本の動きになる。あまり匂いに敏感でもない相手であっても、基本通りに動くというのは決して悪い動きではない。
「番って可能性もあるからね、十分気を付けるんだよ」
「はい……えっと、倒し方は?」
「不意打ちが一番いいね、延髄を狙って一気に、ダメだったら泥試合をするか魔法……弱点は皮に覆われていない所だから、目、耳、口、心臓は人間と同じ胸の真ん中から少し右、そこだね」
「だからこれですか……」
一応冒険者用の装備ってのは魔物に対して有効打を与えられるくらいには仕上がっているのでしっかり狙って突き込めば倒せる可能性は高い。
だからこそ持たせた武器があり、元々持っていた剣と同じもの、それと合わせて刺殺用の太めのレイピアになる。
「だらだら戦闘している奴なんて2流だからね、やるなら一発で、分かったかい?」
「はい、わかりました」
ぎゅっとレイピアを握って深めに息を吐き出しているのをみつつ、不意打ちできる位置に。体格としては立ち上がって3mないくらい、4足歩行で動く場合は地上から40㎝って所だ。
2足歩行で歩いてくる事は歩いてくるが、素直に距離を取れば問題ないのでダメだった時は突っ込んでくるときのカウンター狙いになるが……上手くいけばいいが。
「ま、なるようになるか……やるよ」
「はい……!」
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