5 / 16
5話 一歩ずつ
しおりを挟む
一夜明け、いつもの通り毎朝やっていることを始める。
外に出て、薪割の準備を始めつつ、自宅の横に設置してあるテントをちらりと視線を移すが、まだ寝ているようだ。昨日あれだけ移動して、なおかつ素振りをさせていたからまだ疲れが抜けていないんだろうな。暫くは寝かせておいてやろう。
と、言っても転がり込んでいるのは向こうなので気にせずに薪割を開始する。
いつもの様にカコン、カコンと子気味良い音をさせながら薪を割っていく。どうやら数本は焚火をするのに使っていたらしい、使った分は後で割らせてやるとするかな。
そうしてしばらく薪を割っていると、もそもそとテントから出てきたアニスと挨拶を交わしつつ何時も使っている分の薪を割って一息。
「自分がやるべきですよね」
一息ついている所に申し訳なさそうな顔をしてやってくるのを手で制止する。
「人の日課に手出すんじゃないよ、やりたいなら自分でやりな」
そう言いながら予備の斧に指をさしてやるなら止めないという様に。勿論、真面目だというのは分かっているので、予備の斧を手に取ると上下にぶんぶんと振り、具合を確かめてからまだ割っていない丸太に手を伸ばす、所でもう一度止めさせる。
「そのまま付いてきな」
「えっと、このまま」
「斧を忘れるんじゃないよ」
そうして少し山の中に入って、10分程歩いてから一本の木の前に。そこまで大きくも太くも無いのだが、間引いた方が日当たりが良くなるので、間伐しようと思っていた木になる。そうして倒していい方向を見定め、石で目印を付ける。
「今日中にその斧でこれを伐採すること、切ったのは後で家に運んでもらうよ、あと枝も燃料になるから忘れるんじゃないよ」
「結構大きいですね……」
「婆の私にできるんだ、若いお前なら出来るだろうよ」
「ああ、そうそう、魔物も出るかもしれんが、その斧使っていいからな」
「ラビやボアだったら夕飯に使えるから持って帰って来な」
これで根を上げるかどうかってのも今後の課題になるが、多分大丈夫だろう。一応倒すときの注意も言っておいたので、後はどれくらい時間が掛かるかと言う話だ。
して、1人にしてから家でまったりと紅茶を嗜む。
時折遠くの方から木を切る、乾いた音が響くので、頑張っているようだ。
「……昼飯くらいは作ってやるかね」
乾いた音と紅茶を暫く楽しみつつ、日が昇るのをゆったりと体で感じつつ、昼飯を作ってからアニスを呼びに戻る。
「飯にするよ」
「もうそんな時間ですか……」
「はじめてにしちゃ、中々進んでるじゃないか」
もう少し切り込みを入れたら自重で折れるだろうという所までは頑張っている。朝から叩き続けている割には結構進んでいる。と、なるとやはり綺麗な動きで剣を振るえるというのがこの成果になるんだろう。そもそもしっかりとした基本の振りが出来るのだから、此処まで順調に行っているのは真っすぐ斧を入れられている証拠だ。
「大した旨くない飯だが、文句言うんじゃないよ」
「その文句を言う程の元気はないですよ……」
「それは良かった」
ガチガチに硬い黒パンと、昨日購入しておいた野菜で作ったスープを用意して張って外で食事。
「足りなかったら自分で調達しな、下れば川もあるし、深いところに行けば食える魔物もいるからね」
「いきなり無茶苦茶してきますね……」
「何日も飲まず食わずで移動しなきゃならん時もある、魔物や何かしらの問題で手持ちの食材がダメになるかもしれん、そういうのを踏まえてだよ」
「……あの斧はあのまま使っても?」
「好きにしな、お前さんの斧だ、私は何も言わんよ」
そう言うとすぐにパンをスープで流し込み、斧を持ってすぐにまた木を伐りに行くアニスを見送る。
「ちょっとは気合が入ったか」
若いのが頑張っている姿ってのは良いもんだね、私もあんな風に必死こいていた時期があった。スープを入れておいた器を洗い、一通り片付けてから紅茶を啜りつつ少し昔の事を思い出す。あんな風に真面目だったらもう少し良い生活をしていたんだろうけど、そういうのには縁が無かったって事だな。
「言っていてもしょうがないが」
左の義肢を指でなぞりながら自傷気味に軽く笑ってから、また聞こえる乾いた音を楽しむ。
予想以上に早く切り倒せるだろうな、あれは。
外に出て、薪割の準備を始めつつ、自宅の横に設置してあるテントをちらりと視線を移すが、まだ寝ているようだ。昨日あれだけ移動して、なおかつ素振りをさせていたからまだ疲れが抜けていないんだろうな。暫くは寝かせておいてやろう。
と、言っても転がり込んでいるのは向こうなので気にせずに薪割を開始する。
いつもの様にカコン、カコンと子気味良い音をさせながら薪を割っていく。どうやら数本は焚火をするのに使っていたらしい、使った分は後で割らせてやるとするかな。
そうしてしばらく薪を割っていると、もそもそとテントから出てきたアニスと挨拶を交わしつつ何時も使っている分の薪を割って一息。
「自分がやるべきですよね」
一息ついている所に申し訳なさそうな顔をしてやってくるのを手で制止する。
「人の日課に手出すんじゃないよ、やりたいなら自分でやりな」
そう言いながら予備の斧に指をさしてやるなら止めないという様に。勿論、真面目だというのは分かっているので、予備の斧を手に取ると上下にぶんぶんと振り、具合を確かめてからまだ割っていない丸太に手を伸ばす、所でもう一度止めさせる。
「そのまま付いてきな」
「えっと、このまま」
「斧を忘れるんじゃないよ」
そうして少し山の中に入って、10分程歩いてから一本の木の前に。そこまで大きくも太くも無いのだが、間引いた方が日当たりが良くなるので、間伐しようと思っていた木になる。そうして倒していい方向を見定め、石で目印を付ける。
「今日中にその斧でこれを伐採すること、切ったのは後で家に運んでもらうよ、あと枝も燃料になるから忘れるんじゃないよ」
「結構大きいですね……」
「婆の私にできるんだ、若いお前なら出来るだろうよ」
「ああ、そうそう、魔物も出るかもしれんが、その斧使っていいからな」
「ラビやボアだったら夕飯に使えるから持って帰って来な」
これで根を上げるかどうかってのも今後の課題になるが、多分大丈夫だろう。一応倒すときの注意も言っておいたので、後はどれくらい時間が掛かるかと言う話だ。
して、1人にしてから家でまったりと紅茶を嗜む。
時折遠くの方から木を切る、乾いた音が響くので、頑張っているようだ。
「……昼飯くらいは作ってやるかね」
乾いた音と紅茶を暫く楽しみつつ、日が昇るのをゆったりと体で感じつつ、昼飯を作ってからアニスを呼びに戻る。
「飯にするよ」
「もうそんな時間ですか……」
「はじめてにしちゃ、中々進んでるじゃないか」
もう少し切り込みを入れたら自重で折れるだろうという所までは頑張っている。朝から叩き続けている割には結構進んでいる。と、なるとやはり綺麗な動きで剣を振るえるというのがこの成果になるんだろう。そもそもしっかりとした基本の振りが出来るのだから、此処まで順調に行っているのは真っすぐ斧を入れられている証拠だ。
「大した旨くない飯だが、文句言うんじゃないよ」
「その文句を言う程の元気はないですよ……」
「それは良かった」
ガチガチに硬い黒パンと、昨日購入しておいた野菜で作ったスープを用意して張って外で食事。
「足りなかったら自分で調達しな、下れば川もあるし、深いところに行けば食える魔物もいるからね」
「いきなり無茶苦茶してきますね……」
「何日も飲まず食わずで移動しなきゃならん時もある、魔物や何かしらの問題で手持ちの食材がダメになるかもしれん、そういうのを踏まえてだよ」
「……あの斧はあのまま使っても?」
「好きにしな、お前さんの斧だ、私は何も言わんよ」
そう言うとすぐにパンをスープで流し込み、斧を持ってすぐにまた木を伐りに行くアニスを見送る。
「ちょっとは気合が入ったか」
若いのが頑張っている姿ってのは良いもんだね、私もあんな風に必死こいていた時期があった。スープを入れておいた器を洗い、一通り片付けてから紅茶を啜りつつ少し昔の事を思い出す。あんな風に真面目だったらもう少し良い生活をしていたんだろうけど、そういうのには縁が無かったって事だな。
「言っていてもしょうがないが」
左の義肢を指でなぞりながら自傷気味に軽く笑ってから、また聞こえる乾いた音を楽しむ。
予想以上に早く切り倒せるだろうな、あれは。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説


のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
とあるおっさんのVRMMO活動記
椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。
念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。
戦闘は生々しい表現も含みます。
のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。
また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり
一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が
お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。
また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や
無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる