最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

文字の大きさ
上 下
621 / 623
22章

585話 楽しみ方

しおりを挟む
「このゲーム、まともにやってたら一番何にもできないんだよね」

 ピンクの髪を揺らしつつ、配信画面の向こう側に説教くさく話を始める。アカメの元を離れ、自分のクランを立ち上げつつの配信作業、コメントを見てからの反応でもある。

「まともなゲームプレイが悪いってわけじゃーないけど、それだと無難なプレイしか出来ないよ」

 何で?
 普通のゲームプレイで十分楽しいのに
 なんか前にも言ってなかったか

「ボスも言ってたけど、普通にやるだけじゃこのゲームは遊んだって言えないかなーって……私もそうだけど、本流から外れた動きをしている方がこのゲームを真に楽しんでるはず」

 真面目にやってるプレイヤーに喧嘩売ってんの?
 そもそも本流ってなんぞ
 不真面目にやれって事じゃないんだよなあ

「やばいのは誰も使った事ないような武器だったり、スキル、装備をしている人なんだよね」

 ももえがそんな事を言いつつ、配信画面の奥の方を見てぽつりとつぶやく。

「……ほんと、あんなのごろごろしてるって思ったら、言いたくもなるよ」

 銃撃音、金属音、怒号に叫び声、いつにもまして激しい音と戦闘をしている憧れの人。このゲームの真髄を体現していた人。その背中を見つめつつ握り拳を作ってるのに気が付く。

「入れ込み激しいわ、私」

 何言ってんだこのポンコツ
 ポンコツだからしょーがない
 ポンコツか……

「未だにポンコツって言われるの不服だわー」

 配信コメントに反応しつつ、また目線を戻す。
 諦めるって事を知らない、あの人の背中はいつも眩しい。




「だあ!めんどくせえ!」

 飛んでくるカードを義手で受け、弾き落としてから銃を構えて反撃。
 撃ち込んだ銃弾をこれまたカードで防がれるので手早くリロード。こんな事ならもうちょっと攻勢に出れる義手を持ってくればよかった。ってのは結果論。最初からそういう運用を想定して持ってきてるだろうが。

「いやいや、そちらも何発仕込んでるので?」

 二人の間には穴の開いたカードや、切れた銃弾、数多の薬莢に、切れた衣類。もしこれの清掃をしてくれってなったら大変だろうな。

「此処まできたらどっちかの心が折れるかの勝負だろうな」
「おや、奇遇ですね、此方もそう思っていたところです」

 ウインク一つ飛ばしてくるので、お返しの銃弾1発。軽く弾いてくるので、舌打ちもおまけに一つ。

「そんなに強いのに表に出てこないってどういう了見だ」
「ふふ、狭い界隈しか知らないようで」
「いや、世界が広いって事にしておくよ」

 真面目に撃ち込んでる最中に自分の手持ちのカードを思い出す。正面から馬鹿みたいに撃ち合いを続けていてもしょうがない。だったらこの拮抗を潰せる手は。

「あんまり得意じゃないんだけど、なっ!」

 撃ち込む際に、手首を捻り弾道を曲げる。直線的に飛んでくる弾道から曲がりの入った弾道がカードの間をすり抜け、カード使いの肩口を貫く。それに合わせて呻ぎ声が二つ。

「考えてることまで同じかい」

 まだ義体化していない体、横っ腹にカードが突き刺さっている。1枚投げると見せかけて2枚投げてたか?攻撃を攻撃で隠すって中々な事をしてくる。

「うん、うん、やっぱり貴女は良い相手です」
「そのセリフをそっくりそのまま返すわ」

 突き刺さったカードに何かしら効果が付いている……訳ではなさそうなので、片手でカードを引き抜いて、もう片手でリロードを済ませる。両手を使わないと基本的にリロード出来ないってのを考えると、こういう事になった時にはかなりいい具合。

「……って言うか義手の組み合わせ1パターンしか考えてなかった」

 左右で同じ義手にする必要は全くないな、そっちの方が幅は出るはず。とりあえず思いついたことはやってみるのが良い……のだが、戦闘中に装備は弄れないからまずは目の前の奴をどうするかが問題。これ毎回戦闘中に思いついてるな。

「負けてさっさと変えて次の……って選択肢はないか」

 何度目かの射撃とリロードを挟んで一旦距離を取って一息。
 向こうも接近戦で長時間戦うのはしんどいのか、肩で息をしながら一呼吸おいている。散々やってた感じ、あのカード投げは残弾がないっぽい。手品のように何もない所から出しては投げてを繰り返しているから私と似たような系列のサブ職を使ってる可能性もあるけど、それはなさそう。

「そろそろ倒れてほしいんだが」
「負けるのは死ぬ程嫌いなので」

 ふふっと笑ってきてから、カードが一枚しゅぱっと投げられるので、それをキャッチしてどんなものかをまじまじと。

「……招待状?」
「ええ、クランでカジノをやっていまして、そこで賭け試合を」
「テストみたいに思われるのは何かむかつく」

 ディーラーっぽいと思ったらまんまだった。

「ガンナーとして高名な貴女の実力を測るにはちょうど良かったので」

 すっとお辞儀をするので、視線を外した瞬間に構えて一発撃ってみる、が……しっかり叩き斬ってくる。

「そういう所が良いんですよ」

 こっちの手の内を見抜いているような気がする。
 
「分かった分かった……お前が勝ったら出てやる」
「なるほど……」
「私が勝ったら、その賭け試合、無茶苦茶にしてやるよ」

 ギザ歯を見せにぃーっと笑い、じゃきっと提げていたハンドガンを2丁抜いて構え直す。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...