上 下
621 / 622
22章

585話 楽しみ方

しおりを挟む
「このゲーム、まともにやってたら一番何にもできないんだよね」

 ピンクの髪を揺らしつつ、配信画面の向こう側に説教くさく話を始める。アカメの元を離れ、自分のクランを立ち上げつつの配信作業、コメントを見てからの反応でもある。

「まともなゲームプレイが悪いってわけじゃーないけど、それだと無難なプレイしか出来ないよ」

 何で?
 普通のゲームプレイで十分楽しいのに
 なんか前にも言ってなかったか

「ボスも言ってたけど、普通にやるだけじゃこのゲームは遊んだって言えないかなーって……私もそうだけど、本流から外れた動きをしている方がこのゲームを真に楽しんでるはず」

 真面目にやってるプレイヤーに喧嘩売ってんの?
 そもそも本流ってなんぞ
 不真面目にやれって事じゃないんだよなあ

「やばいのは誰も使った事ないような武器だったり、スキル、装備をしている人なんだよね」

 ももえがそんな事を言いつつ、配信画面の奥の方を見てぽつりとつぶやく。

「……ほんと、あんなのごろごろしてるって思ったら、言いたくもなるよ」

 銃撃音、金属音、怒号に叫び声、いつにもまして激しい音と戦闘をしている憧れの人。このゲームの真髄を体現していた人。その背中を見つめつつ握り拳を作ってるのに気が付く。

「入れ込み激しいわ、私」

 何言ってんだこのポンコツ
 ポンコツだからしょーがない
 ポンコツか……

「未だにポンコツって言われるの不服だわー」

 配信コメントに反応しつつ、また目線を戻す。
 諦めるって事を知らない、あの人の背中はいつも眩しい。




「だあ!めんどくせえ!」

 飛んでくるカードを義手で受け、弾き落としてから銃を構えて反撃。
 撃ち込んだ銃弾をこれまたカードで防がれるので手早くリロード。こんな事ならもうちょっと攻勢に出れる義手を持ってくればよかった。ってのは結果論。最初からそういう運用を想定して持ってきてるだろうが。

「いやいや、そちらも何発仕込んでるので?」

 二人の間には穴の開いたカードや、切れた銃弾、数多の薬莢に、切れた衣類。もしこれの清掃をしてくれってなったら大変だろうな。

「此処まできたらどっちかの心が折れるかの勝負だろうな」
「おや、奇遇ですね、此方もそう思っていたところです」

 ウインク一つ飛ばしてくるので、お返しの銃弾1発。軽く弾いてくるので、舌打ちもおまけに一つ。

「そんなに強いのに表に出てこないってどういう了見だ」
「ふふ、狭い界隈しか知らないようで」
「いや、世界が広いって事にしておくよ」

 真面目に撃ち込んでる最中に自分の手持ちのカードを思い出す。正面から馬鹿みたいに撃ち合いを続けていてもしょうがない。だったらこの拮抗を潰せる手は。

「あんまり得意じゃないんだけど、なっ!」

 撃ち込む際に、手首を捻り弾道を曲げる。直線的に飛んでくる弾道から曲がりの入った弾道がカードの間をすり抜け、カード使いの肩口を貫く。それに合わせて呻ぎ声が二つ。

「考えてることまで同じかい」

 まだ義体化していない体、横っ腹にカードが突き刺さっている。1枚投げると見せかけて2枚投げてたか?攻撃を攻撃で隠すって中々な事をしてくる。

「うん、うん、やっぱり貴女は良い相手です」
「そのセリフをそっくりそのまま返すわ」

 突き刺さったカードに何かしら効果が付いている……訳ではなさそうなので、片手でカードを引き抜いて、もう片手でリロードを済ませる。両手を使わないと基本的にリロード出来ないってのを考えると、こういう事になった時にはかなりいい具合。

「……って言うか義手の組み合わせ1パターンしか考えてなかった」

 左右で同じ義手にする必要は全くないな、そっちの方が幅は出るはず。とりあえず思いついたことはやってみるのが良い……のだが、戦闘中に装備は弄れないからまずは目の前の奴をどうするかが問題。これ毎回戦闘中に思いついてるな。

「負けてさっさと変えて次の……って選択肢はないか」

 何度目かの射撃とリロードを挟んで一旦距離を取って一息。
 向こうも接近戦で長時間戦うのはしんどいのか、肩で息をしながら一呼吸おいている。散々やってた感じ、あのカード投げは残弾がないっぽい。手品のように何もない所から出しては投げてを繰り返しているから私と似たような系列のサブ職を使ってる可能性もあるけど、それはなさそう。

「そろそろ倒れてほしいんだが」
「負けるのは死ぬ程嫌いなので」

 ふふっと笑ってきてから、カードが一枚しゅぱっと投げられるので、それをキャッチしてどんなものかをまじまじと。

「……招待状?」
「ええ、クランでカジノをやっていまして、そこで賭け試合を」
「テストみたいに思われるのは何かむかつく」

 ディーラーっぽいと思ったらまんまだった。

「ガンナーとして高名な貴女の実力を測るにはちょうど良かったので」

 すっとお辞儀をするので、視線を外した瞬間に構えて一発撃ってみる、が……しっかり叩き斬ってくる。

「そういう所が良いんですよ」

 こっちの手の内を見抜いているような気がする。
 
「分かった分かった……お前が勝ったら出てやる」
「なるほど……」
「私が勝ったら、その賭け試合、無茶苦茶にしてやるよ」

 ギザ歯を見せにぃーっと笑い、じゃきっと提げていたハンドガンを2丁抜いて構え直す。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

どたぬき
ファンタジー
 ある日乗っていた飛行機が事故にあり、死んだはずの井原は名もない世界に神によって召喚された。現代を生きていた井原は、そこで神に”ダンジョンマスター”になって欲しいと懇願された。自身も建物を建てたい思いもあり、二つ返事で頷いた…。そんなダンジョンマスターの”はじまお”本編とは全くテイストの違う”普通のダンジョンマスター物”です。タグは書いていくうちに足していきます。  なろうさんに、これの本編である”はじまりのまおう”があります。そちらも一緒にご覧ください。こちらもあちらも、一日一話を目標に書いています。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

僕の召喚獣がおかしい ~呼び出したのは超上級召喚獣? 異端の召喚師ルークの困惑

つちねこ
ファンタジー
この世界では、十四歳になると自らが呼び出した召喚獣の影響で魔法が使えるようになる。 とはいっても、誰でも使えるわけではない。魔法学園に入学して学園で管理された魔方陣を使わなければならないからだ。 そして、それなりに裕福な生まれの者でなければ魔法学園に通うことすらできない。 魔法は契約した召喚獣を通じて使用できるようになるため、強い召喚獣を呼び出し、無事に契約を結んだ者こそが、エリートであり優秀者と呼ばれる。 もちろん、下級召喚獣と契約したからといって強くなれないわけではない。 召喚主と召喚獣の信頼関係、経験値の積み重ねによりレベルを上げていき、上位の召喚獣へと進化させることも可能だからだ。 しかしながら、この物語は弱い召喚獣を強くしていく成り上がりストーリーではない。 一般よりも少し裕福な商人の次男坊ルーク・エルフェンが、何故かヤバい召喚獣を呼び出してしまったことによるドタバタコメディーであり、また仲間と共に成長していくストーリーでもある。

豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜

自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成! 理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」 これが翔の望んだ力だった。 スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!? ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。

VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

処理中です...