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22章

581話 火力とは思い切りの良さ

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「それでボス、いい加減に切り上げてくれないかな!」
「折角具合がよくわかってきたってのになあ」

 そんな事を言いながらボスが右手首を軽く捻ると薬莢が飛ぶ。それを見て、銃を構え直して突撃しながら接近戦を仕掛けるが、義体に換装し始めてるボス相手にやるのは結構大変。そもそもあのバトルジャンキーのマイカ、刀狂いのバイオレット相手に近接戦して引けを取らないくらいに強くなってる時点でげんなりする。

「あー、もうー、完全無欠になってどーすんの!」
「強すぎると面白くないってのは、縛りプレイでもしてろって話よ」

 懐に潜り込んでガンカタでの近接戦闘、どこか1発当たるだけでも固定ダメージと通常ダメージの入る一撃必殺とは言わないけど、強い通常攻撃を押し付けて攻める……のだが、そもそも向こうもガンカタを使うようになっているし、しこたま戦って見てるので、対策やら対応はお手のもの。銃口を相手に向けるため、フェイントを入れたり、銃本体を打撃武器扱いで相手の攻撃に合わせて出したり、引っ込めたりしつつ手を緩めないのだが。

「流石にずっと見てるだけあって、見切ってきた」
「そりゃそうでしょうとも!」

 何度かガチャガチャと銃同士をぶつけ合ったのち、めちゃめちゃシンプルな喧嘩キックが飛んでくるので、バックステップで飛び退きながらバシバシと連射。蹴りを出した瞬間の硬直を狙ってるので、2、3発は当たったのだが、それ以上は身を屈め、義手で防御体勢を取られると、金属音が響いて弾かれる。

「ふーふー……やっぱそれ、ずっるう!」

 息を整えつつ、撃ち切ったマガジンをこめ直しながら、ボスをしっかりと見据える。当たったところはしっかりドレスに穴が空いて、周りを黒く焦がしている。今の所直撃したのが胴体のみ、頭はしっかり防御しているし、足と腕もいじり終わってるから本当に生身の所に当てないとダメージまともに通らなさそう。

「お前も機械の体にしないか?」
「その誘い文句はやばいでしょ!」

 防御姿勢の状態を維持させるために、そのまま連射をしながら回り込んで、背面から一撃。の所、脇に回していたボスの掌から光線が飛んでくるので、上体を反らしながら滑りこみ、接近して更に連射。流石にこんなに撃ってれば防御一辺倒になるので、そこを細かく突き上げて攻めるに限る。

「そのうち空飛びそうじゃん!」
「流石にそこまでの超化学はないやろ」

 一度防御に回ると中々攻めに転じにくいのがガンナーの悪い所、そして弱点をねちねちつくのはゲーマーとしての良い所。不意打ちやらなんやらはボスのお得意芸だけど、こっちもこっちで色々使ってるというか、新しいスキルをさっき取ったりしたから最初よりもかなり肉薄できている。具体的に言えば、スローモーでじっくり動きを見てぎりぎりで避けて反撃ってだけだけど、これ凄い有能。

「スーパーでホットになれるスキルって良いね!」

 首を傾げて何を言ってるんだという顔をしているボス、流石に義手で防御を固めているとはいえ、流石にきつくなってきたのか、何処からか出したショットガンを向けてくるので、スロー状態で銃口を見てから避けるの余裕で回避。するのも結構大変だったりするけど、それくらいないとしんどい。

「さっきの休憩中になんか変なもん取ったろ、お前」
「どこぞの義体野郎がよくやる手ですぅー!」

 こっちのリロードタイミングに合わせて向こうが距離を取るのはやっぱり上手。幾らスローモーだからって使ってる本人が加速しているわけじゃないから追いかけられない時は追いかけられない。

「やっぱり知らんスキルを使ってる奴と戦いのは楽しいから、こっちも新しい物を出さんとな」

 そう言いつつ、射撃をこっちにかましながらしっかり距離を取ってじっと見つめ合う。と、思っていたら急に両手を前に出し、手首を合わせると銃口の様な形に手を縦に広げる。

「大艦巨砲主義ってのも悪くないよなあ?」

 機械音が響き、義手の展開が始まる。バキバキと嫌な音、何かしらのチャージ音、こういう時にやばいのはよくわかってるし、あの手の攻撃は攻撃までが遅い。だから発射の瞬間を狙いスローモーを使い、避けたら接近して叩きこんだら倒せるはず。大丈夫、反応は悪くない。こっちも死ぬ程Agiを上げてきたし、足回りのスキルもある。だから……掛かって来い。

「そういう、やるぞって顔、嫌いじゃないな」

 にんまりとギザ歯を見せて笑う。ああいう時のボスは危険すぎる。いつもこっちを驚かせる何かを持って、確実なものを使ってくる。
 
「そのやばいのは止めさせてもらいますけどね!」

 ああいうチャージ系の攻撃は大体発射までに時間が掛かるのが相場。しかもFWSもやたらと時間が掛かって実用性がないって言われてたし、急に土壇場で使おうってのは……あれ?

「そういうのは、もっと早く手を入れないとダメだぞ」

 瞬間、閃光が迸るのでスローモーを発動して咄嗟に避けようとするが、弾速が高すぎて避け切れない。バカでかい光線が飛んでくると思っていたのだが、発射した瞬間の閃光だけでかいだけで物自体はかなり細い。スローモーの状態で防ごうとあまり使わないガンシールドを構えつつ腕で防御しようとすると、あっという間に貫通して自分の胸を貫いていく。

「使い勝手、良し」

 倒れながら、そんな事を言っているボスの方を見れば、横に広げた手、そして義手から煙が上がり、バラバラになっているのが見える。コスパの悪いスキルばっかり使ってるよ、マジで。
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