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22章
579話 一流
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顔から焦げた匂いをさせながら倒れている犬野郎を見下ろしつつ、今まで感じてこなかった疲労がどっと流れ、一気に呼吸が荒くなる。振り上げていた腕をだらりと下ろし、呼吸を整えつつぐったりしている犬野郎を眺める。
「……ほんと、強いですね」
「そりゃそうだろ、それに私は『勝つこと』に対して貪欲なんだよ」
そう言いながら最後のマガジンを抜き、持っていた銃に手早くリロードして横たわっている犬野郎にマガジンの中身全部を撃ち込む。流石に撃たれた瞬間に驚いた声をしているが、抵抗らしい抵抗もなく、全弾叩き込んだところでポリゴン状に消えていくのを見てから大きく深呼吸。
「油断して反撃、いい勝負だったってスポーツマンシップを称え合う、はー……しゃらくせえー……」
硝煙の上がる銃を上げ、深呼吸すると共にその硝煙を吸い、吐き出す。
「これぞ、勝利の匂いよ」
でかでかと勝利したプレイヤーの名前が表示されている画面を眺めながらにんまりと笑う。
そうして闘技場の控室に戻ってすっかり元通りになった自分の姿、ついでに犬野郎がいる。まあ一緒に入ったんだからいるのは当たり前なんだけど。
「……普通、止め差します?」
「油断して反撃貰ったら逆転されるような奴って嫌いなのよ」
最後まできっちりと止めを刺す。勝負事の上で勝つにはとても大事なので、これを曲げることはない。私としても甘っちょろい相手ってのは好きじゃないし、最後まできっちりやり切るのは大事。
「そういう徹底している所が好きですよ」
「知ってるって」
そんな事を言いながら手をぐぱぐぱと握って開いてを繰り返しながら具合を確かめる。
「工学スキルからの発展で義体化ですか」
「義体化って訳じゃなくて、兵器化だから」
今まで散々っぱら何にしようかと考えていた三次職とサブ職の二枠目、それをこの戦いに投入したのは間違った選択ではなかった。まあ、いい加減自分の戦闘力が狩場に対して足りなくなってきたから、良い所だったわけだが。
「まだ上手い事、慣れてないわりに、あんたをボコるくらいは強いってのは証明されたじゃん?」
「……本当に末恐ろしい人で」
そんな事を言いながら袖を捲り、自分の腕を改めて見つめてうっとりと。黒鉄色の義肢、滑らかな曲線と鈍く光を返しながら機能美に優れたこの新しい腕と武器が美しく誇らしい。カラーリング変更や中身の仕様を変えたりと自由自在、何だったら手じゃない物に換装すらできる優れもの。
「リベンジマッチは……まあ、考えてやるよ」
そう言いながら袖を戻して、手をプラプラと降ってその場を後にする。
「……末恐ろしい相手ですよ」
「ボコられてたね、兄さん」
「ええ、かなり後手に回りました、奥の手まで出してね」
正直舐めて掛かったわけではなく、自分の出せる火力と耐久、それを加味したうえで確実に倒せるであろう戦略……どちらかと言えば対ガンナー用の戦術を用いたのだが、それを上回ったことをしてきた。直撃さえしなければと思った盾は完全に裏目に、三次職になったからなのか、低めと言われている耐久と防御力も義手に換装することで問題点を克服している。
「インベントリを介さなくて良いアイテム師系のスキルをサブに、三次職は……想像が付かないですね、自分を兵器化してるとは言いましたが……」
実銃を使わずにMP消費で時限的に銃器を出せるというのも大きい。キャノンとガトリングは明らかにそういうタイプのスキルだった。そのうえで他に必要な攻撃に関しては実銃を使い、なおかつ徹甲弾を使って、対装甲持ちの対策。義手を使うことで防御力も相対的に上がっているというのを考えれば、今まで使っていたガンシールド問題も解決済み。このゲームにおける盾は強力ではあるのだが、その分取り回しだったり重さがネックになりがちだ。今まであの展開式の物を使っていたが、あれはギミックのせいで耐久性に問題があったはず。全てにおいて合理的かつ強くなるための選択肢を選び続けている。
「……対モンスターに対しては圧倒的に強かったガンナーですが、あそこまで突き詰めれば強いと言わざるを得ないですね」
「アカメさんだけの気も」
「覚悟が違いますね、ああいうタイプは拘りが強くて、自分で決めたルールを曲げない……だからあそこまでやるんでしょう」
不吉な数字を名前に入れてるスナイパーの様な人。今回戦って改めてよくわかった。
「これから、色々と話題が上がりそうですよ」
こういう勘は良く当たるんだ。
「……ほんと、強いですね」
「そりゃそうだろ、それに私は『勝つこと』に対して貪欲なんだよ」
そう言いながら最後のマガジンを抜き、持っていた銃に手早くリロードして横たわっている犬野郎にマガジンの中身全部を撃ち込む。流石に撃たれた瞬間に驚いた声をしているが、抵抗らしい抵抗もなく、全弾叩き込んだところでポリゴン状に消えていくのを見てから大きく深呼吸。
「油断して反撃、いい勝負だったってスポーツマンシップを称え合う、はー……しゃらくせえー……」
硝煙の上がる銃を上げ、深呼吸すると共にその硝煙を吸い、吐き出す。
「これぞ、勝利の匂いよ」
でかでかと勝利したプレイヤーの名前が表示されている画面を眺めながらにんまりと笑う。
そうして闘技場の控室に戻ってすっかり元通りになった自分の姿、ついでに犬野郎がいる。まあ一緒に入ったんだからいるのは当たり前なんだけど。
「……普通、止め差します?」
「油断して反撃貰ったら逆転されるような奴って嫌いなのよ」
最後まできっちりと止めを刺す。勝負事の上で勝つにはとても大事なので、これを曲げることはない。私としても甘っちょろい相手ってのは好きじゃないし、最後まできっちりやり切るのは大事。
「そういう徹底している所が好きですよ」
「知ってるって」
そんな事を言いながら手をぐぱぐぱと握って開いてを繰り返しながら具合を確かめる。
「工学スキルからの発展で義体化ですか」
「義体化って訳じゃなくて、兵器化だから」
今まで散々っぱら何にしようかと考えていた三次職とサブ職の二枠目、それをこの戦いに投入したのは間違った選択ではなかった。まあ、いい加減自分の戦闘力が狩場に対して足りなくなってきたから、良い所だったわけだが。
「まだ上手い事、慣れてないわりに、あんたをボコるくらいは強いってのは証明されたじゃん?」
「……本当に末恐ろしい人で」
そんな事を言いながら袖を捲り、自分の腕を改めて見つめてうっとりと。黒鉄色の義肢、滑らかな曲線と鈍く光を返しながら機能美に優れたこの新しい腕と武器が美しく誇らしい。カラーリング変更や中身の仕様を変えたりと自由自在、何だったら手じゃない物に換装すらできる優れもの。
「リベンジマッチは……まあ、考えてやるよ」
そう言いながら袖を戻して、手をプラプラと降ってその場を後にする。
「……末恐ろしい相手ですよ」
「ボコられてたね、兄さん」
「ええ、かなり後手に回りました、奥の手まで出してね」
正直舐めて掛かったわけではなく、自分の出せる火力と耐久、それを加味したうえで確実に倒せるであろう戦略……どちらかと言えば対ガンナー用の戦術を用いたのだが、それを上回ったことをしてきた。直撃さえしなければと思った盾は完全に裏目に、三次職になったからなのか、低めと言われている耐久と防御力も義手に換装することで問題点を克服している。
「インベントリを介さなくて良いアイテム師系のスキルをサブに、三次職は……想像が付かないですね、自分を兵器化してるとは言いましたが……」
実銃を使わずにMP消費で時限的に銃器を出せるというのも大きい。キャノンとガトリングは明らかにそういうタイプのスキルだった。そのうえで他に必要な攻撃に関しては実銃を使い、なおかつ徹甲弾を使って、対装甲持ちの対策。義手を使うことで防御力も相対的に上がっているというのを考えれば、今まで使っていたガンシールド問題も解決済み。このゲームにおける盾は強力ではあるのだが、その分取り回しだったり重さがネックになりがちだ。今まであの展開式の物を使っていたが、あれはギミックのせいで耐久性に問題があったはず。全てにおいて合理的かつ強くなるための選択肢を選び続けている。
「……対モンスターに対しては圧倒的に強かったガンナーですが、あそこまで突き詰めれば強いと言わざるを得ないですね」
「アカメさんだけの気も」
「覚悟が違いますね、ああいうタイプは拘りが強くて、自分で決めたルールを曲げない……だからあそこまでやるんでしょう」
不吉な数字を名前に入れてるスナイパーの様な人。今回戦って改めてよくわかった。
「これから、色々と話題が上がりそうですよ」
こういう勘は良く当たるんだ。
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