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21章

574話 動き出す

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「急に呼び出して、なおかつ上の奴もつれてこいってなかなかの話じゃない?」
「いやいや、ももえさんの価値が分かっただけですよ!」
「ボスはそんな事しないと思うけど、また変な事思いついたんじゃないかなあ」

 ピンク髪のガンナーが、お供を連れて通りを歩きながらそんな会話をする。ピンク髪の方はうーんと指を立てて唇を触りつつ、自分のクラン員の言葉を改めて考える。そもそも価値を見出しているなら最初から声を掛けるし、自分の物にする……はず?なんて事を考える。そんな感じにあれこれ会話しつつ考え事をしていれば、呼び出された場所へと転移し、視界が開けてから感嘆の声を漏らす。

「それにしても、凄いマイルームですね……向こうは一面畑みたいですけど」
「あれ、全部硝石畑だよ、よくもまあ、あれだけの広さを維持してるもんだわ」

 事前に中は秘密とのお触れがあったので配信も禁止、口の堅いのをサブマスにしてあるからその辺も完璧。ファンだけど、しっかり線引きできるのだから情報漏れも無い。

「……確かももえさんの師匠ですよね、一体どういう人何ですか」
「散々言ってる気がするけど、意地と負けん気だけでガンナーしてる人、他の職でも同じことしてるかな」

 まだまだ分かってない顔を浮かべている所、呼ばれたマイルームの入り口に。目の前にいるメイドロボが一礼すると扉を開けて招き入れる。

「暫くアカメ様は到着致しません、あと15分程、家の中でお待ちください」

 そういわれて中に。地上3階、地下5階まである大型マイルームに知らん間になっていて、とりあえず中を見て回る。

「1Fはリビングみたいですね、それにしてもこんなに改築してる人見たことないですよ」
「あんまり需要が無いし、ハウジング好きじゃないと金掛かるから……それにしても金掛け過ぎだけど」

 2Fに上がり、何個かある部屋を見る。今まで使ってきた銃なのか、上から下まで左から右まで銃器が並びに並んでいる部屋、マネキンに衣装を着せた部屋、雑多にあれこれ積んでる部屋。何ともまあ趣味が丸出しの部屋。そのまま3Fを眺めれば、ゆったりとした寛ぐ目的であろう広めの部屋がぽつんとあるだけ。

「実用的なのか趣味的なのかわかないね」
「ガンナーって使う銃を絞るんじゃないんですか?」
「それはまあ、人によるね」

 上をぐるりと回り、1Fに戻って地下に行こうとしたところで玄関の扉が開いてまた二人ほどやってくる。身長高めのトカゲ頭の男性と、かなり美形なエルフの女性が入ってきて、先客の二人にばったりと出会う。

「先客がいるな」
「……ええ、そうね」

 ちらっと顔合わせして、ピンク髪とトカゲ頭が久しぶりといった感じに軽い挨拶を交わしてから、どうして呼ばれていたかをお互いに言い始める。

「ボスに?」
「ああ、用があるって言うんだけど……何をするかは知らん」
「んー……なんだろうねえ」
「まあ、いつものあれだ、思い付きさ」

 トカゲ頭がそんな事を言いながらけらけら笑っていると後ろのエルフに突かれ、そちらと会話を始める。

「ん、ああ、見てきていいぞ、地下の方が面白いはずだから」

 そう言うとエルフが頷き、勝手に地下に行き見学をし始める。それに合わせてピンク髪の方も一緒に回り始める。

「俺は上で待ってるわ」
「はーい」

 そのまま各々と言うわけではないが下に3人揃って1Fずつ見て回り始める。
 アルコールの醸造所から始まり、下手なクランよりも設備が揃っている錬金術台、あれこれと置いてある機械製品を作るであろう物、とにかく目的のために用意したものがずらっと用意しているといった感じの地下室。広さもそれなりに、無限弾で試射場も備え付きのガンナー御用達と言ったのが見て取れる。

「設備投資にどんだけ金掛けてるんでしょうか」
「ゲームで資金を貯める理由はアホのやる事、らしいから」
「……真理、ね」

 そのままぐるりとルームツアーを堪能し、上に戻ってくると青髪のアカメに似た人物が一人。物珍しいのか、それとも急な呼び出しでビビってるのか、動きが硬く、ぎくしゃくと動ている。

「あ、ボスの偽物」
「それはもう散々言われたんで……えっと、上で良いんですか?」
「はい、皆様ご到着のようなので3Fへどうぞ」

 青髪の後ろ、メイドロボが案内をし始める。
 そうして呼び出されたのが一堂に会し、3Fの広い部屋に案内され、指定されたところに座って少し、部屋の扉が開かれ、いつもよりもピシッとしたスーツの上、オールバックにしたアカメが入り口近くの椅子に座り、その後ろをメイドロボが控える。

「やあやあ、諸君、集まってくれて感謝するよ」

 手を広げてにこやかに迎え入れる。その様子にあまりにも異常だと感じた3人が苦虫を嚙み潰したような顔をしながらそれを見る。

「ももえさん、あれがボス、ですか」
「あんなにこやかな笑顔初めて見たよ……」

「バイパー、あれ……」
「また良くない事企んでる顔だな」

「……帰りたい……」

 三者三葉、あれこれどういう事を求められるのか頭痛が起きそうながらも黙って話を聞く。

「それで、お前らを呼んだ理由なんだが……ま、単刀直入に言えば、私の下に付かないか?って話さ」

 アカメから発せられたその言葉でももえとアオメの顔が驚いた後にきつくなる。以外と言うか今更の話だからだ。

「その理由は?何にもなしにただ自分の物になれって?」
「僕も同意見です、正当な理由が欲しいです」
「そーねえ……私がガンナーし始めて、大分経つけど……あんまり評価されてないと思うのよね」

 肘掛にもたれつつふいーっと一息吐きながらぽつぽつと。

「他の職が手軽に強いってのもあるんだろうけど、なんか気に入らなくなったのよね」

 そう言いながらメニューを開き、メモ帳を見ながら続けていく。

「折角こんなに強くて現代的なのに、いまいち評価が高くないし、強いって言われるプレイヤーもあんまりいないじゃない?」

 強いのはあんただけだという感じに全員がアカメの方を見つめる。が、そんな事は気にせずに。

「だから、産業革命の一つくらい起こして、改めて不遇職じゃないって事を証明してやろうって思ってさ?」
「……具体的にどうするので」

 エルフがそう尋ねると、ふふんと楽しそうにアカメが懐から何かしらのトリガーが付いたリモコンを取り出す。

「私らガンナーの特権は現代兵器……いや、未来な武器まで行けちゃうと思ってるんだよね」

 椅子から立ち上がり窓際の方へと行き、楽しそうに続けていく。

「だから……中世ファンタジーだと思ってる連中の鼻っ面をぶん殴ってやろうと思った時に、技術力の差を見せつけて、お前らがばかにしてたガンナーを見せつけて、自慢してやりたくなったんだよねー♪」

 手元で遊ばせていたリモコンを見せてからにんまりと。

「魔法で爆発させるより、私らはこっちじゃん?」

 そう言うとカチカチと2回トリガーを引くと窓の外で爆炎が上がる。そんな光景を見て全員が驚き、慌てふためいているのを楽しそうに眺めつつ。

「だから、イベントでも、闘技場でも、普通の戦闘でも……此処までやれるんだぞ、って見せつけたいから、お前らが欲しい」

 結局のところ、自分が楽しみたいからお前らを使う、と言う事になるのだが、それでもいいという感じにはなっている。

「俺はボスに付いていくさ、好きにさせて貰えた恩もあるしな」
「……施設、使わせてほしいわね」

 ガンスミスの連中はそもそも技術提供もあったのもあり、賛成側。

「ボスの所には行きたいけど……うちは色々いるからちょっと合わない感じもあるんだよねえ」
「まあ、そもそもが、ももえさんのファンですから」
「……ボスのファンでもあるけど、持ち帰って相談」

 ももえの所は要相談。

「……僕の所は、ガンナーを抱えていますが……難しいと思います、申し訳ないですが、アカメさんの方が後だと思ってる人が多いので」

 アオメの所はアオメの所で問題と言うか勘違い諸々あるので反対寄り。

「概ね予想通りね……ま、考えてちょーだい、損はさせないから。あー、そうそうバイパー、例の頼んだの渡しておいてね」

 そう言うと手を叩いて解散と言うように、部屋からはけさせる。




 5人が外に出てどうするか考えている所、バイパーが手を叩いてお土産の話を進める。

「銃のアタッチメントなんだが、好きなのを持って行っていいぞ」

 インベントリから取り出した何個かのアタッチメント、RDSやレーザー、ライト等、小型化されたあれこれを広げる。

「……どうやって、これを……!?」
「あそこの我がままが見つけた成果だな」

 窓際、葉巻を吹かしてメイドロボといちゃついているアカメを指さす。

「情報共有って話なら、僕の所もいけそう……かも」
「人の事惑わすの好きだよね、ボスって」

 小型のライトをももえが取り、自分のハンドガン、銃身下部に取り付けて具合を確かめてにんまり。

「配信してでかでか宣伝したら楽しいだろうから、説得しーよお」
「即物的な所も好きです」

 




「……さーて、表舞台で頑張りますかねぇ」
「影ながら応援いたします」
「迷惑を掛けないレベルで、派手に遊ぶのがゲームだかんね」
「その通りです」

 気分よくフィーラの頭をわしゃわしゃと撫でまわしてから葉巻の煙を燻らせる。

「しゃぶりつくさないと勿体ないもんな」

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