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21章

555話 いいこちゃん

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 さて、私がロテアになってから2週間。
 このゲームをやってから仕事に身が入ってないと突かれたのと、ロテアになって自由気ままに、なおかつ目的もなくだらだらと傭兵の様な事をしているせいでゲームのログインと言うか、1プレイの質が下がり気味になっている若干由々しき問題が発生しているが、私は元気です。
 それにしても私って何かしら「目標」がないとこんなにも無気力になるとは……モンスターを狩るゲームだったり、デカいロボットに乗るハクスラ系もそうだし、牧場経営するのもてきぱきやりすぎて中盤以降だれるのも多い。サブクエが多いのだったり収集要素の多い物は全部回らないと気が済まないし、こうやって考えると生粋のゲーマーよね。
 そんなわけでだらだらとゲームを続けての2週間。さほど何かしら変わったことがあるわけでもなく、フレンドと言うか、私を知っている連中も「またなんかやってるわ」くらいの感覚でほったらかしにされている。まあ最初は「誰だお前!」からの「ああ、うん」って感じの反応だったから、何となく察したってのも多いが。

「何しようかねえ……」

 エルスタンの中心にあるベンチに座って一息と言うか、まったり。そういえばゲーム開始の時もこんなふうにどうしようかなーって時にベンチでまったりしていた。あの時はβでやりにくくなったガンナーが絶滅して私だけってのもあって珍しい目で見られてたっけか。

「そう思えばガンナー人口も増えたなあ」

 銃剣付けたライフル振り回しながら一番の雑魚に殴りかかっていた時が懐かしい。その時と比べたらガンナーの人口はかなり増えてる。あの犬野郎の所も私以外のガンナーを加入させて遠距離攻撃に手厚くしているくらいだし、しっかりパーティーメンバーとしての人権を得てきたのは確か。

「まあ、元々固定ダメージって特徴があるから強いんだけど」

 ウサ銃のコッキングレバーをがっちゃがっちゃと動かしながら辺りを見回す。流石にサービス開始の時みたいに大したことない装備だったり、デフォ衣装のまんまの奴はかなり減っている。とは言え、人口は増え続けているのでちらほらと初心者っぽいのはいる。私にもあんな時代があったなあ。銃剣付けるまでライフルで殴ったりなんだり、なけなしの金でナイフとロープを買って銃剣作って、そこからひたすら銃を撃たずに自作銃を作り、火薬を作り、銃弾を作ったらギルドを見つけちゃって結局苦労が水の泡……って訳でもなかったか、高級品だったし。

「こうして考えると、だいぶ遠い所まで来たような気もする」

 そんな色々やってたアカメは休止中だから、そのうち変な噂もなくなるとは思う。別に噂を消すために名前やらキャラ変えたわけじゃないんだけど、一時期目立った変なプレイヤーってのでそのうち噂も消えていくだろうよ。そのために容姿やら名前を変えたってのは決して違う、大事な事だから2回。

「銃弾込めて、抜いてを繰り返してるだけで楽しいっちゃ楽しいんだけど……それにしてもだなあ」

 あまりにも何もしないというのも、如何なものか。どっかかしらのパーティに参加してレベリングやボス戦に……ってのもなんかなあ。必要なアイテムってのがピンポイントなのとモンスター産じゃないから旨みが少ない。金策って点で言えばドロップ品をうっぱらうのはあるが、結局の所あれこれやるなら火薬の精製して流したほうが稼げる。なんかゲームプレイが寂しくなってきたような気がする。

「初心に帰ってラビットでも縛りプレイで狩ろうか」

 強くなり過ぎたのもあるから、縛った所で一撃かつ確実に銃剣を当てられると……思えないのがこのゲームなんだよなあ。
 

 そんなこんなで久々にやってきた西エリア1、犬片付けて1発で経験値美味しい何ていいつつあっという間に銃弾枯らして苦行になったわけだけど、今思えばアホな事をしたもんだ。
 とりあえずウサ銃に入っている銃弾をがっちゃがっちゃとコッキングレバーを動かして銃弾を抜いて、抜いたのはしっかりガンベルトに収めてから銃剣を付けたウサ銃を構える。もちろん目の前にいるのは久々のラビット。ノンアクティブだし、こっちから先手を取れるわけで、流石にこれに攻撃して外すって事はないだろう。とにかく腰を落として銃剣を構えて踏み込みと同時に突き出してラビットに一撃。流石にこっちをタゲってないノンアクティブに外すって事はないのでしっかり一撃。レベル差って大事ね。

「流石にLV70超えてLv1相手に外したら恥ずかしいわな」

 多分射撃だったら外してたかも。そこそこ動き回るちいさい的って当たらないのよね。

「……暫く銃剣縛りでもしようかな」

 最近射撃ばっかりしているし、近接戦も忍者刀使うようになっていたから、じっくり相手のレベル上げていって近接戦の立ち回りを改めてやる?って思ったんだけど、私ガンカタ覚えてるんだった。

「そういえばカンストしたらどうなるんだったかな」

 転生システムはちらっと聞いたことがあるし、敢えてレベルカンストからの転生してやり直し。ってのも悪くはない。どういう引継ぎされるのかが分からないけど、ステータスとSPをある程度引継ぎ、スキルは0だけど覚えたのはそのまま。ってのが妥当な所かな。全部リセットして1からってのはゲームとしてあり得ないわけだし。

「ちょっとそっちの路線も考えてみて……」

 なんて事を考えていたら、バウンドドッグに追いかけられライフルを抱えて必死に走っているガンナーが一人。私もあんなふうに此処でやっていたような覚えがあるな。まあデスペナもあってないようなもんだし、放っておいても大丈夫だろう。

「助けてー!」

 随分遠くから走ってきたと思ったら種族的にドワーフ……じゃないな、もっと小さい種族っぽい。移動速度やらは変わらないからちょこちょこ走っている割には速度が出ているけど、ありゃ追いつかれるな。

「しょうがないなあ……全く」

 ガンベルトから1発銃弾を取り出して素早くウサ銃に装填。金属音と装填する時の独特な音を聞きつつ、コッキングレバーを戻して構え、息を吐き出し、止め、引き金を絞り込む。して銃声一発、頭に当たって一撃。ポリゴン状に消えていくバウンドドッグを見て一息つくと共にコッキングレバーを引いて空薬莢を弾き飛ばす。追いかけられてたのは途中で素っ転んだのか、少し向こうでべちゃっと突っ伏している。

「お節介だよなあ、私って」

 べちゃって動かなくなったちんちくりんのチェルシーより小さい種族、これなんだったかな……小人って時点でドワーフなんだけど、それ以下のはしらんな。って言うかさっき銃剣だけで立ち回りを、何ていってたのに速攻で破って射撃してるってどうなんだろうね。

「ああー、死んだあ!死んだあ!」

 突っ伏して叫んでるプレイヤーを見ながらため息一つ。別にリアルで死ぬわけじゃないし、何かしら反動があってやばいって事もない、デスペナがちょっと痛いくらいで此処まで騒げるのはある意味凄いわ。

「ほら、大丈夫だから立てって」
「え、あ、はい!」

 そのままがばっと置きあがり、ライフルを両手で抱えた状態で私の方に向き直る。うん、身長1mもないんか?私が長身のキャラってのもあってサイズ差えっぐ。

「さっさと射撃反撃したら1匹くらいどうにでもなるんだから気を付けなさいよ」
「ええー……だって怖いじゃないですかぁ」
「そんなんでなんでこのゲームをやってるんだか」

 ため息一つ付きながら、しっかり周辺警戒。犬系モンスターはアクティブかつリンクして殴ってくることもあるから、追手を考えてライフルは下ろさずに。

「うー、こんなに怖いって知らなかったしぃ」
「リアルなゲームもいっぱいあるってのに……もう助けないからな」
「……」
「なんじゃい」

 ああ、この顔は見たことある。ポンコツピンクの奴を助けた時と同じ顔だ。

「じゃあ、これで」

 そのままダッシュ……ではなく帰還アイテムを使ってしゅぱっとエルスタン経由のマイハウスに。

「おかえりなさいませ」
「何となくやばい気がするなあ」

 フィーラにライフルを持たせ、庭先の椅子に座って一息。
 やばいやばい、私のいい子ちゃんの部分が出すぎた。こういうのはしっかり隠しておかないと、後でアカメに戻った時が厄介そうだし、気を付けないと。
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