上 下
590 / 622
21章

555話 いいこちゃん

しおりを挟む
 さて、私がロテアになってから2週間。
 このゲームをやってから仕事に身が入ってないと突かれたのと、ロテアになって自由気ままに、なおかつ目的もなくだらだらと傭兵の様な事をしているせいでゲームのログインと言うか、1プレイの質が下がり気味になっている若干由々しき問題が発生しているが、私は元気です。
 それにしても私って何かしら「目標」がないとこんなにも無気力になるとは……モンスターを狩るゲームだったり、デカいロボットに乗るハクスラ系もそうだし、牧場経営するのもてきぱきやりすぎて中盤以降だれるのも多い。サブクエが多いのだったり収集要素の多い物は全部回らないと気が済まないし、こうやって考えると生粋のゲーマーよね。
 そんなわけでだらだらとゲームを続けての2週間。さほど何かしら変わったことがあるわけでもなく、フレンドと言うか、私を知っている連中も「またなんかやってるわ」くらいの感覚でほったらかしにされている。まあ最初は「誰だお前!」からの「ああ、うん」って感じの反応だったから、何となく察したってのも多いが。

「何しようかねえ……」

 エルスタンの中心にあるベンチに座って一息と言うか、まったり。そういえばゲーム開始の時もこんなふうにどうしようかなーって時にベンチでまったりしていた。あの時はβでやりにくくなったガンナーが絶滅して私だけってのもあって珍しい目で見られてたっけか。

「そう思えばガンナー人口も増えたなあ」

 銃剣付けたライフル振り回しながら一番の雑魚に殴りかかっていた時が懐かしい。その時と比べたらガンナーの人口はかなり増えてる。あの犬野郎の所も私以外のガンナーを加入させて遠距離攻撃に手厚くしているくらいだし、しっかりパーティーメンバーとしての人権を得てきたのは確か。

「まあ、元々固定ダメージって特徴があるから強いんだけど」

 ウサ銃のコッキングレバーをがっちゃがっちゃと動かしながら辺りを見回す。流石にサービス開始の時みたいに大したことない装備だったり、デフォ衣装のまんまの奴はかなり減っている。とは言え、人口は増え続けているのでちらほらと初心者っぽいのはいる。私にもあんな時代があったなあ。銃剣付けるまでライフルで殴ったりなんだり、なけなしの金でナイフとロープを買って銃剣作って、そこからひたすら銃を撃たずに自作銃を作り、火薬を作り、銃弾を作ったらギルドを見つけちゃって結局苦労が水の泡……って訳でもなかったか、高級品だったし。

「こうして考えると、だいぶ遠い所まで来たような気もする」

 そんな色々やってたアカメは休止中だから、そのうち変な噂もなくなるとは思う。別に噂を消すために名前やらキャラ変えたわけじゃないんだけど、一時期目立った変なプレイヤーってのでそのうち噂も消えていくだろうよ。そのために容姿やら名前を変えたってのは決して違う、大事な事だから2回。

「銃弾込めて、抜いてを繰り返してるだけで楽しいっちゃ楽しいんだけど……それにしてもだなあ」

 あまりにも何もしないというのも、如何なものか。どっかかしらのパーティに参加してレベリングやボス戦に……ってのもなんかなあ。必要なアイテムってのがピンポイントなのとモンスター産じゃないから旨みが少ない。金策って点で言えばドロップ品をうっぱらうのはあるが、結局の所あれこれやるなら火薬の精製して流したほうが稼げる。なんかゲームプレイが寂しくなってきたような気がする。

「初心に帰ってラビットでも縛りプレイで狩ろうか」

 強くなり過ぎたのもあるから、縛った所で一撃かつ確実に銃剣を当てられると……思えないのがこのゲームなんだよなあ。
 

 そんなこんなで久々にやってきた西エリア1、犬片付けて1発で経験値美味しい何ていいつつあっという間に銃弾枯らして苦行になったわけだけど、今思えばアホな事をしたもんだ。
 とりあえずウサ銃に入っている銃弾をがっちゃがっちゃとコッキングレバーを動かして銃弾を抜いて、抜いたのはしっかりガンベルトに収めてから銃剣を付けたウサ銃を構える。もちろん目の前にいるのは久々のラビット。ノンアクティブだし、こっちから先手を取れるわけで、流石にこれに攻撃して外すって事はないだろう。とにかく腰を落として銃剣を構えて踏み込みと同時に突き出してラビットに一撃。流石にこっちをタゲってないノンアクティブに外すって事はないのでしっかり一撃。レベル差って大事ね。

「流石にLV70超えてLv1相手に外したら恥ずかしいわな」

 多分射撃だったら外してたかも。そこそこ動き回るちいさい的って当たらないのよね。

「……暫く銃剣縛りでもしようかな」

 最近射撃ばっかりしているし、近接戦も忍者刀使うようになっていたから、じっくり相手のレベル上げていって近接戦の立ち回りを改めてやる?って思ったんだけど、私ガンカタ覚えてるんだった。

「そういえばカンストしたらどうなるんだったかな」

 転生システムはちらっと聞いたことがあるし、敢えてレベルカンストからの転生してやり直し。ってのも悪くはない。どういう引継ぎされるのかが分からないけど、ステータスとSPをある程度引継ぎ、スキルは0だけど覚えたのはそのまま。ってのが妥当な所かな。全部リセットして1からってのはゲームとしてあり得ないわけだし。

「ちょっとそっちの路線も考えてみて……」

 なんて事を考えていたら、バウンドドッグに追いかけられライフルを抱えて必死に走っているガンナーが一人。私もあんなふうに此処でやっていたような覚えがあるな。まあデスペナもあってないようなもんだし、放っておいても大丈夫だろう。

「助けてー!」

 随分遠くから走ってきたと思ったら種族的にドワーフ……じゃないな、もっと小さい種族っぽい。移動速度やらは変わらないからちょこちょこ走っている割には速度が出ているけど、ありゃ追いつかれるな。

「しょうがないなあ……全く」

 ガンベルトから1発銃弾を取り出して素早くウサ銃に装填。金属音と装填する時の独特な音を聞きつつ、コッキングレバーを戻して構え、息を吐き出し、止め、引き金を絞り込む。して銃声一発、頭に当たって一撃。ポリゴン状に消えていくバウンドドッグを見て一息つくと共にコッキングレバーを引いて空薬莢を弾き飛ばす。追いかけられてたのは途中で素っ転んだのか、少し向こうでべちゃっと突っ伏している。

「お節介だよなあ、私って」

 べちゃって動かなくなったちんちくりんのチェルシーより小さい種族、これなんだったかな……小人って時点でドワーフなんだけど、それ以下のはしらんな。って言うかさっき銃剣だけで立ち回りを、何ていってたのに速攻で破って射撃してるってどうなんだろうね。

「ああー、死んだあ!死んだあ!」

 突っ伏して叫んでるプレイヤーを見ながらため息一つ。別にリアルで死ぬわけじゃないし、何かしら反動があってやばいって事もない、デスペナがちょっと痛いくらいで此処まで騒げるのはある意味凄いわ。

「ほら、大丈夫だから立てって」
「え、あ、はい!」

 そのままがばっと置きあがり、ライフルを両手で抱えた状態で私の方に向き直る。うん、身長1mもないんか?私が長身のキャラってのもあってサイズ差えっぐ。

「さっさと射撃反撃したら1匹くらいどうにでもなるんだから気を付けなさいよ」
「ええー……だって怖いじゃないですかぁ」
「そんなんでなんでこのゲームをやってるんだか」

 ため息一つ付きながら、しっかり周辺警戒。犬系モンスターはアクティブかつリンクして殴ってくることもあるから、追手を考えてライフルは下ろさずに。

「うー、こんなに怖いって知らなかったしぃ」
「リアルなゲームもいっぱいあるってのに……もう助けないからな」
「……」
「なんじゃい」

 ああ、この顔は見たことある。ポンコツピンクの奴を助けた時と同じ顔だ。

「じゃあ、これで」

 そのままダッシュ……ではなく帰還アイテムを使ってしゅぱっとエルスタン経由のマイハウスに。

「おかえりなさいませ」
「何となくやばい気がするなあ」

 フィーラにライフルを持たせ、庭先の椅子に座って一息。
 やばいやばい、私のいい子ちゃんの部分が出すぎた。こういうのはしっかり隠しておかないと、後でアカメに戻った時が厄介そうだし、気を付けないと。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜

FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio 通称、【GKM】 これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。 世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。 その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。 この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。 その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…

後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~

夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。 多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』 一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。 主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!! 小説家になろうからの転載です。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...